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◆第1657号(2006年8月15・25日付)◆


水準改定行わず実質的な引き下げ勧告
官民比較企業規模「50人以上」に改悪
 8月8日、人事院は、諸手当を含む月例給、一時金ともに水準改定を行わないとする給与勧告等を行いました。これは、「比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上」に官民賃金比較方法を改めた結果であり、人事院の意図的な公務員賃金決定基準の引下げは断じて、受け入れることはできません。
 人事院が、「従来の比較方法であれば、1・12%(4252円)の水準改善、0・05月の一時金改善となる」ことを明らかにしているように、「公務員賃金引き下げのための勧告」が行われたことは明らかです。官民賃金比較方法の「見直し」については、7月7日に政府が閣議決定した「骨太の方針2006」でも、「50人企業規模以上への引き下げ」を人事院に要請しており、政府の圧力が直接的な契機になっています。今回の給与勧告は、政府の圧力に屈し、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院の役割を投げ捨てるに等しい行為です。
 本年勧告では、給与構造「見直し」の2年目として、広域異動手当の新設や特別調整額の定額化、地域手当の「暫定支給割合」の設定などに言及するとともに、扶養手当の改善(第3子以降の1000円引き上げ)を07年4月から実施するとしています。
 勧告と同時に、就学前の子の育児のための短時間勤務制及び自己啓発等の休業制度の新設にかかわる意見申し出も行われ、育児休業の部分休業(育児時間[仮])の対象となる子の年齢を「3歳」から「小学校就学始期」に、昇給の復職時調整を「1/2」から「2/2」に改めるとしています。

リレーずいそう
●映画の音声ガイドから
 私の職場が移転して1年が経ちましたが、その後も特に問題もなく、過ごしています。ただ、今年度は来年度に病院の統合がひかえているため、敷地内では病棟の改修などが進んでおり、いまも組織再編の動きが続いています。
 職場以外のほうでは、映画に視覚障害者のための音声ガイド製作をするボランティア団体の活動に参加し、おもにそのガイドの内容をチェックするモニター役をやっています。最近では、この秋に日本点字図書館主催のチャリティー上映会で上映される映画「ALWAYS三丁目の夕日」の音声ガイド・モニターをしました。 このチャリティー上映会では、視覚障害者のために音声ガイド、聴覚障害者のために字幕つきで、上映します。
 この映画で描かれているのは、昭和33年。ちょうど東京タワーが完成した年です。 近所の子供たちのことやお年寄りのことは、みんなが知っていた。町内のことは、ご近所さん同士でといった時代。でもこれは、何かに強制されたものではなく、ごく自然に、各個人の考えと思いによってなされたもの。 現在、このようなことは、社会の変化で難しいものとなっていますが、まだあるのではないでしょうか。現にこうしたチャリティー上映会が企画されたり、DVDなどにおいて、ごくわずかですが、音声ガイドや、邦画に日本語字幕がついているものが発売されてもいます。 こうした企画や事業は、団体や企業がやっていることですが、その発端には、その団体や企業の一員である各個人の考えや思いにあると思うのです。
 こうしたことは、忘れてはならないことですし、これからも注目すべきことかと思っています。
(精研支部 組合員)

2006年勧告の主な内容 その(1)
◎本年の給与勧告のポイント
  〜 月例給、ボーナスともに本年は水準改定なし
(1) 官民給与の較差(0.00%)が極めて小さく、月例給の水準改定を見送り
(2) 期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合とおおむね均衡し、改定なし
(3) 比較対象企業規模など官民給与の比較方法の見直し
(4) 給与構造の改革の計画的な実施
   − 広域異動手当の新設、俸給の特別調整額の定額化等

◎本年の給与改定
1  比較方法の見直し(月例給)
(1) 比較対象企業規模 従来の「100人以上」から「50人以上」に変更
企業規模50人以上100人未満の企業の各役職段階との対応関係の設定
(2) 比較対象従業員 ライン職の民間役職者の要件を変更
要件変更後のライン職の役職者と同等と認められるライン職の役職者及びスタッフ職に拡大
(3) 比較における
対応関係の整理
給与構造の改革による俸給表の職務の級の新設・統合に伴う対応関係の整理
2  官民給与の比較
約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.1%)
〈月例給〉 官民の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
○ 官民較差 18円 0.00%〔行政職(一)…現行給与  381,212円
平均年齢 40.4歳〕
 官民較差が極めて小さく、適切な俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、本年は月例給の水準改定を見送り
〈ボーナス〉 比較対象企業規模の見直しを行った上で、昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
○ 民間の支給割合 公務の支給月数(4.45月)とおおむね均衡
〈その他の課題〉
(1) 特殊勤務手当の見直し 引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを検討
(2) 独立行政法人等の
給与水準
専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において今後とも適切な協力

2006年勧告の主な内容 その(2)(給与構造の改革)
給与構造の改革
 昨年の勧告時において表明。地域間給与配分の見直し、職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を平成18年度以降平成22年度までに逐次実施
1  平成19年度において実施する事項
(1) 地域手当の支給割合の改定
 地域手当は、平成22年度までの間に計画的に改定することとしており、職員の地域別在職状況等を考慮し、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの間の暫定的な支給割合を1〜3%引上げ
(2) 広域異動手当の新設
 広域的に転勤のある民間企業の賃金水準が地域の平均的な民間企業の賃金水準よりも高いことを考慮し、広域異動を行った職員に対して手当を新設
 異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後の官署までの距離のいずれもが60q以上となる職員(異動の態様等からみて、広域異動手当を支給することが適当でないと認められる職員を除く。)に支給
 手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離が、60q以上300q未満の場合には3%(平成19年度は2%)、300q以上の場合には6%(平成19年度は4%)を乗じて得た額。異動の日から3年間支給
 地域手当、研究員調整手当、特地勤務手当に準ずる手当と所要の調整
 諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎に
 平成19年4月1日から実施
(3) 俸給の特別調整額の定額化
 年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、定率制から俸給表別・職務の級別・特別調整額の区分別の定額制に移行。地方機関の管理職に適用される三種〜五種の手当額については、改善を行った上で定額化。平成19年4月1日から実施
(4) 勤務実績の給与への反映
 新たな昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用について、管理職層以外の職員についても平成19年度からの実施に向けて準備
(5) 専門スタッフ職俸給表の検討
 専門スタッフ職俸給表の新設は、各府省において検討が進められている複線型人事管理の具体的内容等を踏まえ、引き続きその具体化について検討
2  その他の改革
 少子化対策が我が国全体で取り組まれている中で、扶養手当における3人目以降の子と2人目までの子の手当額の差を改める必要があることから、平成19年4月1日から3人目以降の子等の支給月額を1,000円引上げ(5,000円→6,000円)、給与構造の改革とあわせて実施

誇り持ち働き続けられる職場に
女性の労働条件改善で人事課と懇談
 全厚生女性部は8月3日、大臣官房人事課と「女性の労働条件改善を求める要求」で懇談しました。女性部は、金子部長、木立事務局長はじめ各幹事と、本省・統計・業務センター・国衛研・感染研・国リハの各支部の代表ら11人が出席。人事課は、中山人事調査官、稲葉補佐らが対応。懇談では、「女性の労働条件改善を求める要求」の重点項目についての回答を人事調査官が一括して行い、それを受けて、さらに各参加者が発言しました。
 障害者自立支援法にかかわって、国リハ支部は、「認可を受けるための体制作りに躍起だが、新体制を作るために、業務終了後の7時8時からの会議が通常になり、10月以降の体制が見えないまま入所者定員の充足を求められ、体調を崩す職員も出て来ている」と述べ、情報が管理室から末端の職員まで伝わるような指導を求めました。人事調査官は、「極力早い段階で的確な情報を提供したい」と回答しました。
 統計支部は、「勤務時間が30分延長されたことで、ますます子育てと仕事の両立がしにくい状態になってきている」と実態を具体的に紹介。勤務時間の短縮、業務量に見合った定員確保、早出遅出勤務を学童保育に行く行かないに関係なく小学生の子がいれば取れるよう制度の改善、時差通勤の柔軟な運用を求めました。人事調査官は、「次世代育成、両立支援策を厚生労働省としても率先して行う」。また、超勤縮減対策については、「霞国公の残業アンケートで、旧厚生省の職場が残業ワースト1になったとの記事が新聞に載ったが、医療制度改革、障害者自立支援法などで、他省庁に比べて国会対応がダントツに多かったことの反映。一人でも多くの増員を勝ち取っていきたい」と回答しました。
 本省支部は、「女性の採用比率は年々高まってきており、いろいろな場面で女性が活躍している」と評価した上で、採用された女性が働き続けられるような職場環境作りを求めました。人事調査官は、「採用のみならず、係長や補佐への登用にも力を入れていきたい」と回答しました。
 感染研支部は、女性の採用拡大と研究職2級高位号俸者および枠外者の解消。国衛研支部は、多くの女性が室長に留め置かれている現状を数字で示しながら、部長への女性の積極的登用を求めました。人事調査官は、「定数拡大を要求していく。女性の登用については、機会を捉えて伝える」と回答しました。
 メンタルヘルス対策では本省支部から、「復帰のための慣らし出勤から始める、ラインからはずれた安定した部署につけて治療に専念させる」など、具体的な復帰策を示すよう求めました。人事調査官は、「半日勤務から始めるなどの対応をして克服したケースはあり、事例を示していく」と回答。
 次世代育成支援対策推進については木立事務局長が、「子育て支援を実効あるものにするために、男性の意識改革という観点での推進や、育児休業の父親割当制度などの検討」を求めました。人事調査官は、「たとえば、出産補助休暇の取得を義務づけるほどの取得促進を進めたい」と回答。
 最後に金子部長から、「私たちは、国民のために誇りの持てる仕事がしたいと願っている」と労働条件改善要求事項の実現と、引き続きの懇談を訴えて、終了しました。

核兵器のない平和で公正な世界を
2006年原水爆禁止世界大会に参加
 あの地獄を誰の上にもくり返すな──被爆者の叫びは人々の心を動かし、核兵器廃絶を求める大きな世論と運動を全世界に押し広げています。一方で、今も世界には2万7千発もの核兵器が存在し、米国は先制攻撃と核使用の計画を推進して被爆国日本を出撃拠点にしようとするなど、核兵器の脅威が世界を覆っています。
 「全ての国が(核兵器の)奴隷となるか<CODE NUM=00A5><CODE NUM=00A5><CODE NUM=00A5>自由となるかの岐路」(広島「平和宣言」)に立つ情勢のもと、8月4日〜6日「核兵器のない平和で公正な世界を」をメインテーマに、原水爆禁止2006年世界大会が広島市で開催されました。21カ国70人の海外代表(うち政府代表5人)を含め、8500人が参加しました。全厚生からは、ハ病研・神奈川県の各支部と本部から4人が参加しました。
 4日の開会総会。広島被団協の坪井直理事長は来賓あいさつで、「真っ黒な世界で、耳はちぎれ皮膚は垂れ、背中のシャツが燃えたまま逃げ<CODE NUM=00A5><CODE NUM=00A5><CODE NUM=00A5>誰にも助けてもらえないまま、とうとう気絶して終戦を知らない」と自身の被爆体験を語りました。「今までに3回の危篤状態、現在は2回目の癌治療、加えて心臓病に再生不良貧血症。それでも生きている限りは、苦しみも恨みも乗り越え、全ての命を使って核廃絶めざす。一緒に核も戦争もない世界をつくろう!」とよびかけました。主催者報告に立った大会議長団の安斎育郎氏は「今も苦しむ被爆者たちは、手と手をたずさえ声をあげ、世界の核被害者との連帯を生んだ」と。また「被爆者と連帯した草の根からの運動が、自治体や各国政府を動かしてきた」と述べ、核兵器廃絶に向けて運動を飛躍的に強めようと訴えました。
 この日は、広島地裁でたたかってきた原爆症認定集団訴訟の判決日でもあり、総会の途中で原告41人全員「全面勝訴!!」のニュースが会場に飛び込んでくると、会場いっぱいの参加者が総立ちになり喜びに沸きたちました。原告団が「被爆の実態を直視しない政府の態度は、加害そのもの。全国で9番目の勝利判決で、厚生労働省の原爆行政が間違っていることがいよいよ明確になった」と報告し、草の根の運動が世論を動かしていることを証明しました。千葉の青年たちが舞台から「控訴するなー!!」とシュプレヒコールすると、海外代表も一緒に拳をあげ、世界中から集まった平和への思いが会場を震わせました(厚生労働省は8月11日に控訴しました)。

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