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◆第1651号(2006年6月15日付)◆


「小さな政府」反対の世論と運動を
06年夏期闘争に全力で
 いよいよ、夏期闘争の開始です。国公労連は6月3日、第126回拡大中央委員会を開催。06年夏期闘争方針及び06年人事院勧告に対する国公労連統一要求を満場一致で決定。政府が強引に押し進める「戦争する国」「小さな政府」づくりを断じて許さず、仲間たちの切実な諸要求の実現をめざし、総力をあげてたたかう決意を固め合いました。 夏期闘争の中心的な取り組みは、次の通りです。

「小さな政府」に反対する世論と運動を
 第1の課題は、「小さな政府」の大きな負担と「公共サービス商品化」に反対し、民主的行財政・司法の確立をめざす取り組みを強めることです。通常国会では、まともな審議を経ずに「行政改革推進法案」や「市場化テスト法案」が強行されました。政府は今、「官から民へ」の攻撃を強め、「骨太方針2006」の策定作業や、07年概算要求の議論を進めています。こうした下で、国民生活を破壊する「構造改革」に反対する世論と運動を広げるために中央・地方で様々な取り組みをすすめます。
 第2の課題は、「9条改憲」を許さず、平和と民主主義を守り発展させる取り組みを強めることです。通常国会では、憲法改悪のための「国民投票法案」が国会に提出され、教育基本法「改正」案の審議入りが強行されました。改憲勢力の危険な動きが強まる一方、草の根の憲法運動が大きく前進し、「9条の会」が地域や職場に無数につくられ、元気な活動を広げています。まさに、正念場のたたかいです。平和憲法を守る一点での共同を広げる職場、地域からのたたかいをこの時期に前進させます。
 第3は、公務員労働者の賃金改善をめざすたたかいです。06人勧の焦点は、比較企業規模の見直し問題です。人事院の民間給与実態調査は、これまで「100人以上」で固定してきたものを現在「50人以上」で調査しています。この結果を人勧に反映させれば、賃下げにつながることは明らかです。
 政府は総人件費削減のため、公務員賃金水準引き下げの圧力を強めています。@「賃下げ勧告」は断じて行わず、公務員労働者の生活と労働の実体をふまえた賃金改善を行うこと、A比較企業規模を引き下げた「06年民間賃金実態調査」結果を勧告に反映させないことを基本要求にして、たたかいます。厳しい情勢ですが、人事院勧告の持つ社会的な影響も踏まえ、人事院闘争を強めます。

年金免除問題は現場のみの責任にするな
 今、社会保険庁改革の中で、国民年金の免除手続きの不適正な処理が明らかになり、重大な問題になっています。法令に反する手続きはあってはなりません。だからこそ、この問題の原因や背景を深く掘り下げ、解明することが必要です。そもそも、社会保険庁自身が、国民年金保険料の収納率をあげるために現場にノルマを押しつけ、民間出身の長官が「言い訳は無用」「まずは行動を起こし、責任をもって結果をだせ」と檄をとばす等、一連の改革方向が行政運営にどんな影響を与えたかを検証しなければなりません。その全容を明らかにし、現場のみに責任を押し付けるのでなく、事の本質を語ることが必要です。
 国民の願いは、老後が安心して暮らせる公的年金制度、安心して受けられる医療制度の確立です。社会保険を限りなく民間保険に近づけるのではなく、社会保障の立場で制度を拡充・改善し、民主的で効率的な行政運営をめざすことが必要です。厳しい職場環境の中にあっても、国民の権利保障をめざす公務員労働者として、社会保険行政の担い手である基本を見失わず、職場(支部・分会)での話し合いの場をつくりましょう。働くルールを確立し、雇用を守るために団結してたたかいましょう。

リレーずいそう
●礼儀と人格
 先日、通勤電車に乗っていたら下腹部の膨らんだ若い女性が立っているではありませんか。心やさしきオジサンとしては早速彼女に席を譲ったのでした。ところがその女性、一言の言葉を発することもなく座席に座ったのでした。「エッ!違うんじゃないの」と思わざるをえませんでした。この話を、帰宅して娘にすると娘も同じような光景に遭遇したというのです。アメリカからの帰りの飛行機で収納棚に荷物が上げられなくて数人の若い日本女性が騒いでいました。そこに居合わせた心やさしき外国人男性が、彼女たちに代わって荷物を上げてくれたそうです。ところが、彼女たちの誰一人として「サンキュー」とか「ありがとう」の言葉を発することはありませんでした。同じ日本人に見られるのが恥ずかしいという思いは娘だけではないはずです。ついつい、「礼儀」とか「人格」とか考えてしまいます。広辞苑によると「礼儀」とは、「人の行うべき礼の道」とあります。ウーン難しい。次に「礼」を引いてみました。いくつか解説がある中に「謝意を表すこと」とあります。これならなんとなくわかります。同じく「人格」は、「道徳的行為の主体としての個人。自立的意志を有し、自己決定的であるところの個人」とあります。いずれにしても、「礼儀」や「人格」は、家族や社会とのかかわりのなかで、そして教育をとおして完成されていくものではないでしょうか。政府は道徳教育を重視するといいます。10人が10人とも直立不動で「ありがとうございます」と唱える人間形成もこれはこれで恐ろしい。
(大阪支部 組合員)

News
小泉構造改革との闘い方
中央労働学校を開催し学習

 国公労連は6月3日、東京都内で中央労働学校を開催し、78人が参加しました。午前中は、専修大学の晴山一穂教授が「公務の民間解放と公務員の権利」と題して講義。午後からは、政治評論家の森田実さんが「小泉構造改革全面批判」の講義を行いました。晴山さんは、「小さな政府」「官から民へ」の小泉構造改革のもとで、公務の民間開放がどこまで進んだか、政府と大企業の狙いはどこにあるのかを解明。これに対抗するには、日本国憲法の視点に立ち、生存権、教育権、勤労権に反するとして歯止めをかけていくことが重要。もうひとつの日本めざしての運動を強調しました。森田さんは、政治評論家としての自身の体験にもとづき、小泉自民党政権と財界、マスコミの内情を暴露しつつ厳しく批判。自民党は、アメリカの「年次改革要望書」どおりに、郵政民営化、公務の市場開放、米軍再編などを行ってきていると述べ、政権党によって牛耳られたマスコミにあって、どう事実を伝えていくか、自身の生き方ともあわせて、「国公労働者の味方となる」との力強い講義を行いました。全厚生は本部から6人が参加しました。

公害・環境対策の拡充を
全国公害被害者総行動デーで訴え

 6月6〜7日、東京で「なくせ公害 守ろう地球環境〜公害根絶と平和を求めて〜」をかかげ、第27回全国公害被害者総行動デーが行われました。今年の総行動は、3月のヤコブ病訴訟の全面勝利和解、5月末の新横田基地公害訴訟判決の上に、7月下旬の東京大気汚染公害裁判での全面勝利判決をめざしてとりくまれました。6日は、環境大臣交渉、昼デモ(写真上)、各省庁交渉を行い、夜には日比谷公会堂で総決起集会が開催され、約1300人が参加しました。全厚生は霞ヶ関の昼デモに参加しました。

平和な未来のために今できることから始めよう
第36回国公女性交流集会に参加
 「平和な未来のために、今できることを〜北の大地から届けよう、私たちの声を」をテーマに、5月26〜27日、第36回国公女性交流集会が札幌・定山渓で開催されました。15単組42県国公から388人、全厚生からは13人が参加しました。

高遠さんがイラクでの事実を語る
 イラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんが「命に国境はない―報道の見えない壁の向こうで、イラクで何が起きていたのか」とのテーマで記念講演。アメリカの報道規制の実際、イラクで引き起こされている「虐殺」の生々しい事実などを、映像をまじえて語りました。
 阿部女性協議長の基調報告の後、病院介護員の不当解雇撤回のたたかいを、北海道医労連・恵和会労組の近藤さんが、社保庁改革の問題点と職場実態を全厚生の金子さんが報告。道労連青年協の出口さんは、DVDを上映しながら北海道労連の「ギョーカク鑑定団」のとりくみを紹介しました。

金子女性部長が庁改革問題で訴え
 全厚生女性部長の金子さんは、2008年10月に社会保険庁は廃止され、年金と医療に分離される。その際、業務は継承されるが職員の引き継ぎ規定はなく、非常勤も含め1万人の人員削減が計画されている。自民党は、新人事評価制度を活用した能力分限処分や組織廃止による分限処分、業務目的外閲覧による処分を重視した選別採用を強調している。「官から民へ」「小さな政府」をすすめる小泉構造改革の狙いは、社会保険庁の不祥事を利用して、国民の年金制度への不満を公務員攻撃に向けさせ、社会保険制度を改悪することにある。医療保険の公法人(非公務員型)化は国の責任放棄に他ならない、と訴えました。最後に、厳しい状況ではあるが、いろいろな場で社会保険庁改革問題を紹介し、一人たりとも首を切らせない、これ以上憲法25条にもとづく社会保障を後退させないとの立場で頑張っていきたいと決意を表明し、会場の共感を呼びました。

分科会で職場実態を紹介し交流
 夕食交流会では、地元の若者たちが「YOSAKOIソーラン」の力強い舞いを披露。参加者も一緒に踊りました。
 2日目は8つの分科会を開催。全厚生は、「官から民へは誰のため、何のため」、「働く私のメンタルケア」などの分科会に参加し、庁改革問題などを訴えたのをはじめ、憲法と女性、労働組合の課題についての分科会にも参加し語り合いました。
 分科会後の全体会では「憲法改悪・国民投票法案・教育基本法改悪反対決議」と、「平和な未来のために、今できることを行動に移しましょう」のアピールを、参加者全員で確認しました。

第19回全厚生機関紙フェスティバル参加紙募集
 支部・分会の教宣活動を応援する「全厚生機関紙フェスティバル」を今年も開催します。応募紙は例年どおり、定期大会会場に展示し、交流するほか、応募紙にふさわしい賞を設け表彰し、講評を行います。
<目的>支部・分会をはじめ青年・女性部などの教宣・機関紙活動を励まし、編集内容の質的向上を支援する。
<対象>支部・分会・専門部で2005年8月から2006年7月までの間に発行した機関紙、およびメール配信されたニュース、ホームぺージに掲載されたニュース。
<参加方法>参加申し込み書(各支部に送付)に記入し、この間に発行したすべての機関紙を各5部ずつ送ってください。メールニュースの場合は全厚生のアドレスに送信してください。ホームぺージの場合は、URLをお知らせ下さい。
<締切>8月4日(金)本部必着。
<講評>全厚生中央執行委員会
<表彰等>全厚生第70回定期大会で表彰します。賞状、記念品などを贈ります。
<Eメールアドレス>ZENKOSEI@zks.dp.u-netsurf.ne.jp

障害者自立支援法施行後の国立施設の実態(連載6)
負担増で険しくなる自立への道
国立塩原視力障害センター

 国立塩原視力障害センターでは、現在、52名の視覚障害者が社会復帰に向けた訓練に日々取り組んでいます。
 今年4月からの障害者自立支援法の施行に伴い、入所者のセンター生活は多大な負担を強いられることになりました。

利用者負担に耐えきれず退所する事例も
 障害者自立支援法の施行により、盲学校理療科との間に利用者負担の大きな差が生じてしまいました。あんまマッサージ指圧師、鍼師、灸師の同じ資格取得を目指す公的施設であるにもかかわらず、盲学校に比べ国立施設の利用者負担は増大し、著しく公平性に欠ける状況に至りました。
 当センターでは、盲学校への編入の申し出が相次ぎました。国立施設から盲学校への編入は、取得単位の整合性の関係で難しいのが現状ですが、その中でセンターを退所し、盲学校に入学するケースが数名いました。
 うち1名は、あと1年で卒業の見込みでしたが、障害者自立支援法施行後、個別減免や補足給付といった負担軽減措置の対象にもならず、急激な負担増となり、それまで障害年金で賄っていた諸経費の維持も難しくなり、苦渋の選択を強いられることになりました。盲学校受験後、合格してからも悩みましたが、考えた末に盲学校で1年生からやり直す決断をしました。最終的には本人の納得を得るかたちで手続きを進めることができたことは幸いでしたが、それまでの2年間にわたるセンター生活と残り1年で念願の卒業であったことを考えると残念でなりません。

食費節約で健康管理が困難に
 食費・光熱水費は実費負担となり、収入に応じ負担軽減措置として補足給付が支給され、それを超える額が利用者負担となります。したがって、多くの入所者が少しでも食費の負担を減らそうと必死です。
 当センターは山間部に立地しており、近隣に気軽に買い物に行けるお店がなく、給食の代わりに手軽に弁当を購入することもできません。そういう状況の中でも、苦労してインスタント食品やレトルト食品を買い込んだり、自宅から調達したりして節約している入所者もいます。売店に置く品物は増やしましたが、野菜等生ものは置くことができず、その内容と品数は限られています。
 また、当センター入所者のうち、約1/3が糖尿病等の内部疾患を有しており、特別食による食事療法で血糖コントロール等を行ってきましたが、それが容易ではなくなってきています。ある入所者は、土日3食ずつと平日の朝食を欠食して食費を減らし、大量に栄養補助食品を買いだめして、カロリーコントロールを試みています。

実態は福祉と言えるのか
 障害を負い、社会復帰を目指して訓練を懸命に行っている状況に加え、なぜここまで経済的な面でも負担を強いるようなことをしなければならないのか、施設職員としてもたいへん辛い立場に置かれています。障害者自立支援法の理念は分かるのですが、その実態は福祉といえる領域を侵してしまってはいないか考えさせられます。
(塩原支部 組合員)

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