見出し

◆第1649号(2006年5月25日付)◆


憲法を活かして「特上の国」へ
明文改憲も実質改憲も許さない運動を
 全厚生、全労働、全医労の3労組は5月12日、全労連会館ホールで「憲法学習会」を開催。法政大学の五十嵐仁教授が、「『活憲』〜特上の国をめざして〜」と題して、憲法改悪攻勢の嵐の中で私たちは今何をなすべきか、ジョークも交えながらの巧みな弁舌で講演。学習会には、3労組の他、国公労連、全労連などから72人が参加しました。五十嵐教授の講演要旨を紹介します。

憲法とは何か
 憲法を変えるという動きが急速に具体化しつつあります。そもそも憲法とは何か、自由と人権のために権力行使の在り方を定めるのが憲法です。99条にあるとおり憲法を尊重し擁護する義務を負うのは、天皇、摂政、国務大臣、国会議員、裁判官、公務員であって、国民は入っていません。ここが憲法概念としては一番重要なところです。ところが、自民党の新憲法草案はじめ憲法を新しくしようという勢力は、憲法に基づいて政治をする立憲主義から、国民に守らせるべき規範を憲法に列挙する規範主義へと、大きな転換をねらっています。
 今日における改憲攻勢の特徴は、憲法を書き変えるという明文改憲だけではなく、憲法に反する法律を制定し憲法理念を空洞化させる実質改憲が同時に進行しているということです。憲法を変えないという運動とともに、実質改憲も阻止する運動が大切です。

進む明文改憲準備
 昨年10月、自民党が発表した新憲法草案は、9条2項の戦力の不保持と交戦権の否認を削除し、「自衛軍を保持すること」を明記。アメリカと共に海外で戦争できる国への大転換が図られようとしています。また、96条の改憲の手続きを「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が発議」から「過半数の賛成で国会が議決」できるよう簡略化。いつでも改憲できるよう狙っています。
 自衛隊は今や世界有数の実力を有します。9条は、モンスターとなった自衛隊を縛り繋いでいる鎖の役割を担っています。この鎖を解いてはなりません。現状に9条の条文を近づけるのではなく、条文に現状を近づけるべきです。
 アメリカにとって戦争は「公共事業」であり、企業はもうかります。しかし、日本は戦争で不利益を被ります。アジアに進出しているグローバル企業を自衛隊が守ることはなく、むしろ、日本の軍事大国化は、商売の邪魔。経済同友会が小泉首相の靖国参拝を批判したのは正常な感覚と言えます。

実質改憲の問題
 実質改憲の問題では、教育基本法を改悪して外国で戦争できる人をつくる、自衛隊を「戦える軍隊」に変える、共謀罪などの新設によって戦争できる社会をつくることなどが進んでいます。
 自民党は本来、憲法を改悪して実現しようとしていたものを教育基本法の改悪で実現しようとしています。古典的な愛国心だけでなく、「国際平和」のために外国で戦争できる人を作りたい。ここに改憲と教育基本法改悪の目的があるのです。
 また、自衛隊をアメリカ軍と一緒に戦える軍隊にかえる工作は着々と進んでいます。在日米軍再編で自衛隊と米軍の一体化はさらに進みます。共同演習はすでに行っており、08年までにキャンプ座間、横田基地には自衛隊が同居します。
 ビラを配っただけとか住居不法侵入などの微罪で捕まる人が多いが、共謀罪では、これら微罪について相談しただけで捕まります。

憲法理念具体化を
 では、何をすればいいのでしょうか。改憲を阻むとともに、憲法理念の具体化をはかることが求められます。まず、悪法を阻止しよう。行政改革推進法、医療改革関連法案、共謀罪新設法、教育基本法改正案の廃案。国民投票法案の上程阻止。防衛省格上げ法案を断念させるなど。
 つぎに、米軍再編問題で反撃することです。米軍のグアム移転費用7000億円、総経費3兆円の日本の負担は必要なのでしょうか。米軍への思いやり予算2400億の支出に留まらず、米軍騒音被害対策(新嘉手納基地騒音訴訟賠償28億、新横田基地騒音訴訟賠償32億など)への支出。これらは、まさに憲法違反のコストです。

「特上の国」めざし
 普通の国を「並」としたら、日本は「上の国」。日本は9条があるから他国とは違います。9条体系からくる国の生き方、戦争に訴えない生き方があります。憲法9条の理念を世界に広める、周辺諸国との友好をはかるなど、平和・外交政策の転換をはかろう。チリなど南米、イタリアなどEU、東アジアなど世界の民主化の流れに加わろう。
 また、新しい福祉国家をつくろう。事後対処型(アメリカ型)から事前予防型(北欧型)へ転換を。格差の拡大、絶対的貧困、自殺者8年連続3万人突破、過労死、過労自殺、少子化など日本の社会はおかしい。生きる希望をもてる社会に、新しい命を生み出そうという意欲がわく社会にしよう。公共というものを民営化しても儲からないものは捨てられ、国民生活は自己責任となっていく。公共の役割をもう一度見直そう。
 「上の国」から「並」に転落するのではなく、「もう一つの日本」=「特上の国」をめざそう。「活憲」とは、憲法を現実政治に活かすことです。憲法を尊重し擁護しなければならない公務員のみなさんは「歩く活憲」。世界から尊敬される国になるために、行政の最前線にいるみなさんに、力を尽くして頑張って頂きたい。

リレーずいそう
●続 麗しのイングリッシュ・ローズ
 バラの季節がやって来た。わが庭のハイブリッド・ティー(HT)は次々と花咲き、二十株以上ある自慢のイングリッシュ・ローズも数え切れない程の蕾を付けた。あと一週間もすれば、淡いパステル調の花色で溢れ、うっとりする香気で満たされるだろう。雨よ、降らないで、陽よ、強く照らないで、と願う季節である。
 花屋のバラは薫らないけれど、我が庭のバラは結構薫る。実は、芳香種を集めているのだ。イヴリンとG・ジェキルが香りの双璧だ。ジェキルは強烈に香水の如く、イヴリンは貴婦人の匂袋の様に香る。S・アスマ(淡夢色)も強く、甘く官能的な香りだ。黄色いシャルロットは軽い紅茶に似た香り、濃い赤紫のダークレディは優しい果物の香りがする。変わり者はクレシーダ(淡杏色)だ。歯医者に行って、歯に詰め物をする、あのツンとした香気である。丁字や八角にも似ている。HTなら、ブルー・ムーン(淡いグレー)とパパ・メイアン(深紅)をお薦めする。ブルーの、青バラ特有の爽やかで甘い芳香は夢の様であり、パパのまさに馥郁とした香りは強く、しかも永く持続する。
 今年は、ソニア・リキエルという芳香種を植えた。幾つもの蕾が上がり、もうすぐ開花する。どんな香水の香りがするのか、とても楽しみである。
 先行き不安や毎日の煩雑さ、せせこましさで余裕の無い私の脳を、芳しいバラはひととき正常に戻してくれるだろうか。
(栄研支部 組合員)

News
医療制度改悪法案を採決強行
5.17国会前座り込み行動の最中

 5月17日、与党自民党・公明党は、衆議院厚生労働委員会において、「医療制度改革関連法案」の採決を強行しました。法案の内容は、高齢者の窓口自己負担増、高額医療費の負担限度額引き上げ、高齢者の食費全額自己負担、医療保険制度の再編、療養病床の削減・廃止など、いずれも医療制度の大改悪であり、十分かつ慎重な審議が求められていましたが、委員会における実質審議は35時間程度にすぎず、審議はまったく不十分。採決強行の日、国会前では、座り込み行動が行われ(写真上)、全厚生も参加しました。

6月の主なスケジュール
3日  国公労連126回拡大中央委員会
4日  国公労連中央労働学校
9日  憲法改悪阻止「9の日」統一行動
14日 「公共サービス商品化」反対統一宣伝
15日 国公労連第40回行(二)労働者全国集会
16日 第9回中央執行委員会
17日 第30回全厚生女性交流集会(〜18日)
24日 国公労連第5回非典型労働者交流集会
    全厚生青年交流集会第2回実行委員会
    全厚生退職者会第9回総会

平和の大切さ学べる交流集会に
全厚生青年交流集会実行委員会を結成
 今年10月の全厚生青年交流集会に向け、5月13日に青年交流集会実行委員会を立ち上げました。業務センター・秩父学園・愛知県・京都・神奈川県支部と本部から7人が参加しました。
 雨が降る中、午前中からフィールドワーク。日本で「最初で最古の軍事博物館として開館した」(靖国神社HPから引用)施設である、靖国神社内の遊就館を見学しました。800円の入場料を払って館内に入り、まずはビデオ『私たちは忘れない』を鑑賞。その後、19世紀から2つの大戦を経るまでの、「戦争美化」と言われる独特の歴史認識に基づく展示を見学しました。
 午後からは自己紹介をまじえ、遊就館の感想交流と、青年交流集会のテーマや企画について議論しました。
 「戦争で多くの人が頑張ったのだ、と洗脳される感覚になり恐かった」「刺激が強すぎて漠然と見ると恐い」などの感想が出されました。また「内容が重いため、遊就館は交流集会のフィールドワークからはずした方がいい」という意見も。靖国神社を題材に「平和・憲法」について考えることの難しさとともに、漠然と見学するだけではなく学習と一体で進めることの必要性も実感しました。
 実行委員長には尾崎直人青年対策部長、現地実行委員長には佐藤憲一青年対策部事務局長が選ばれました。他に、青年交流集会の宣伝としてオリジナル手ぬぐいの物品販売も決定しました。
 実行委員会ではまだまだメンバー募集中ですので、興味がある方はぜひご連絡ください!

☆ ★ ☆ ピカピカの小学1年生 ☆ ★ ☆
─ 3 ─

  全厚生組合員の「ピカピカの小学一年生」全員集合。今号で掲載はおわりです。
〈コメント説明〉
(1) 子どもの氏名(ふりがな)
(2) 大きくなったら何になりたい?
(3) お父さん、お母さんからのメッセージ。
坂井 美月ちゃん
(1) さかいみづき
(2) パン屋さん
(3) いつも明るく元気な美月。ふと気付くと、みんなを笑顔にしてくれてるね。これからも元気いっぱい笑顔も心も素敵な子でいてくださいね。
松久 茉奈ちゃん 疋田 栞ちゃん
(1) まつひさまな
(2) 保育園の先生
(3) 新しい環境に慣れ、たくさんのお友達を作り、楽しい小学校生活を送ってください。
(1) ひきだしおり
(2) ケーキやさん
(3) まいにちがんばってがっこうにかよっているしーちゃん。あさもはやいししんどいやろうけどたのしくがっこうせいかつをおくってね。
田中 蓮也くん
(1) たなかれんや
(2) サッカー選手
(3) 好きな事をみつけて楽しく遊んでいろんな事を吸収して下さい。

第30回全厚生女性交流集会
たまにはちょっとひと休み(^-^)v
明日への元気は癒しから
 日時 6月17日(土)〜18日(日)
 会場 熱海温泉 「ホテル池田」
 記念講演 宮崎 薫さん(社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクター)
         「香りのパワーで心と体リフレッシュ」
  *記念講演でリフレッシュ、温泉に入って、日頃の疲れを癒しましょう。
  *分科会は部門別です。学習し、交流し、展望を語り合いましょう。
  *保育室を設置しますので、お子様連れでどうぞ。詳しくは女性部まで。

障害者自立支援法施行後の国立施設の実態(連載3)
食費対策で給食を食べない入所者が急増
国立福岡視力障害センター

 現在国立福岡視力障害センターでは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を目指す理療教育課程、職場や家庭への復帰を目指す生活訓練課程合わせて95名の入所者が日々訓練に励んでいます。
 今年4月から施行された障害者自立支援法は、彼等の生活を一変させ、特に食生活の部分に大きな影響を与えるとともに、これに対応する職員の業務量も大幅に増えました。

コンビニ弁当に頼る入所者も
 入所者には食費、光熱水費合わせて最高月5万数千円の負担がかかるようになったため、せめてもの防衛策として給食の一部、あるいは全部を欠食している者が全体の半数以上に上っています。そのため平日もさることながら、土・日の食数は大幅に減少しました。
 今のところ、栄養不足等による訓練への目立った弊害は出ていないものの、毎日のことですから、例えばコンビニ弁当に頼っていると高脂血症になりやすいことが知られており、今後徐々にこれらの健康障害が出現することが懸念されます。また一時売店での弁当の販売も行われましたが、衛生上の問題もあり、すぐに中止に追い込まれました。

タンパク質制限等20名に特別食
 全体の食数は減ったものの、入所者の中には糖尿病をはじめとしたさまざまな内部疾患を抱えている者がおり、この数は逆に増え、20名の者に特別食を提供しています。そのためメニューの種類も、(1)常食、(2)カロリー制限(1,400〜2,000キロカロリーの5段階)、(3)カロリー制限+塩分制限、(4)カロリー制限+タンパク質制限、(5)カロリー制限+タンパク質制限+塩分制限、(6)青魚アレルギー食、(7)鶏肉アレルギー食、(8)そばアレルギー食、(9)アルギニン代謝障害食の9種類があり、突然の欠食や復食もあるため、調理師をはじめとした現場の職員は、食数の把握や調理の段取り等に常に振り回されている状況です。また例えばタンパク質制限食用の食事は、ご飯のみで材料費が1食あたり180円以上かかるため、全体の食費単価上昇の大きな要因にもなっています。しかしニーズがあるからこそ、高い利用料を支払ってまで本センターを利用しているのですから、国立施設としてこのような入所者の期待を裏切ることは許されません。
 行(二)職の不補充政策により、正職員の調理師が削減され、さらに5年で10%の厳しい定員削減計画のあおりで、さらなる削減の対象になることも考えられます。しかしこのように非常に煩雑な業務を遂行している現場で、1人でも病気やけがによる脱落者でも出たら、どうなるでしょうか?

「数」では論じられない福祉
 この法律は、実際に利用した食数に応じて単価も変動するシステムになっていますので、食数が減れば、単価が上がるシステムになっています。福祉は決して「数」だけで論じられるものではありません。それを推進すべき立場の国がこのような悪法を作ってしまったことは重大な問題です。
 「質」の高い福祉を実践している職場の努力を理解していただくとともに、今後この法律の改正を全力で求めていきましょう。
(福岡支部支部長)

Back  to HOME