見出し

◆第1637号(2006年1月5日付)◆


守ろう国民の命とくらし
みんなの力でまともな日本をつくろう
 「もっとまともな仕事を」「生活できる賃金を」「将来不安のない社会保障を」「戦争の危険のない平和な社会を」…多くの労働者や国民がそう願っています。
 私たちの職場にも様々な要求が渦巻いています。4部門の取り巻く情勢にも相違はありますが、「誇りの持てる仕事がしたい」「働き甲斐のある職場を作りたい」…思いは同じです。小泉構造改革の中、医療保険制度の更なる改悪や意図的な公務員バッシングが吹き荒れています。しかし、国民本位の厚生行政の実現を目指す取組みも胎動しています。2・3面に4部門の取り組みをリポートしました。

小泉流「改革」の陰で広がる格差
 昨年の総選挙では、「郵政民営化」を声高に叫び、自民・公明の与党が圧勝し、参議院で否決された法案でも、再度衆議院で2/3以上の賛成で可決可能となる絶対多数を占めるという異常な国会構成となりました。こうした結果を受け小泉内閣は、通常国会では多くの反対で否決された「郵政民営化法案」や、幅広い障害者団体が反対した「障害者自立支援法案」などの可決を強行。「小さな政府」「官から民へ」「公務員の大幅削減」の流れが加速しています。民主党も「改革の主導権争いで遅れをとらない」として、公務員総人件費抑制や定員の削減など、自民党と「改革」を競い合っています。
 行政サービスは切り捨て、国民負担をさらに増大する「改革」の流れをストップし、国民の声が生きるまともな日本を作るために、民間労組や広範な団体などと協力・共同の関係を強化し、職場・地域から運動を進めましょう。

小さな政府は大きな国民負担
 「小さな政府」の正体は、公務員の大幅削減や市場化テスト・民営化で公共サービスを切り捨てて、大企業の儲けの対象にする一方で、定率減税廃止や、消費税二けたへの増税、社会保障制度の更なる改悪などで逆に国民に大きな負担を押し付けようとするものです。とりわけ、1000兆円を越える国と地方の財政赤字、国の予算の半分近くを国債が占める状況を脅しに、労働組合バッシング、公務員の人件費削減に血道をあげ、公務・公共サービスを切り捨てて、国民の安全・安心を根底から破壊しようとしています。公務員バッシングは、国民への更なる負担を覆い隠そうとするものであり、すべての労働者や国民にかけられている攻撃にほかなりません。
 こうした公務員の賃金、人員抑制攻撃は、人事院勧告準拠の730万労働者の賃金水準引き下げと賃金体系改悪につながることはいうまでもありません。また、06春闘の相場や最低賃金の改定に悪影響を及ぼし、さらに公的年金や生活保護費などの社会保障給付にもマイナス連動し、国民生活を悪化させることは歴史の事実です。

国民世論を味方に多彩な運動の展開を
 ルールなき競争によってとめどない格差社会を作り出す小泉政治には、「すべてを小泉首相に白紙委任したわけではない」と、自民党に投票した人を含め6割以上の国民が「選挙結果」に不安を感じています。また、総選挙で小泉構造改革を徹底してもちあげたマスコミでさえも、国民総犠牲の「小さな政府論」に疑問を投げかける新たな状況も生れています。
 私たちも、賃金改善だ、労働条件改善だと叫んでいるだけでは要求は前進しません。他の国公労働者や、様々な雇用形態で働く多くの民間労組・労働者との協力・共同を目指した運動の積み重ねがなくてはなりません。かつてない厳しい職場実態ですが、06春闘を新たなスタート台にともに奮闘しましょう。

本省庁
長時間残業なくし働きがいのある職場に
本省
ただ働き残業なくせ

 本省の職場では、度重なる定員削減と行政需要の増大により、長時間残業が長期にわたり蔓延し、職員は身も心も疲れ果てています。5号館低層棟2階講堂前のソファーには昼夜を問わず、外来者への「体面」を顧みる余裕もなく、「寝ころんでいる」姿が見受けられる実態です。
 近年、うつ病の増加や過労死を疑わせる事例も多く発生しており、このままでは職場の崩壊すら危惧されます。また、残業代の一部不払いを放置したままで、勤務時間の変更、拘束時間の延長を行うことは許すわけにはいきません。
 働きがいのある職場とするためにも超過勤務縮減対策は、支部にとって最重要課題であり、当局に対し長時間残業の実態を数量的にきちんと把握すること、各種対策の実行とそのフォローアップを求めていくとともに、引き続き「残業アンケート」の実施、定時退庁行動(早朝宣伝ビラ、退庁時鐘鳴らし)等の運動を強めていきます。

統計
ゆとりと広い視野で

 あえて表現するまでもなく、今、公務員に対する風当たりは非常に厳しいものがあります。たしかに脇のあまかった事柄も多く、真摯に受け止めなくてはいけません。労働組合としても労働者の権利は正当性をもって要求していかなくてはなりませんが、国民から指摘される以前に自浄的な要求として自ら追及すべき事項だった気がします。若者達はそんな正義に共感し、連帯してくれるはずです。それにしても、この公務員攻撃、与野党とも外交や経済、暮らしの安全に対する無策ぶりをごまかすため政治的に利用しているような気がします。小さな政府のためには公務員を減らすよりもアイドル気取りの「○○チルドレン」をそのまま議員削減したほうがよっぽど効果があるはずです。
 能力主義を目の前に掲げられギスギスした職場環境で誰が国民のことなんかに目を向けることができるでしょうか、まさに弱者切捨て行政です。公務員は、ある程度のゆとりと広い視野で国民に接するほうが長期的にみて国民にも利することが多くなるはずです。06年、ゆとりある文化を大切にし、公務員としての品格を保つため活動して行きたいと思います。

業務セ
みんなで話そう!

 今年の目標は「みんなで話そう!」です!新年を迎えるというものはいいものであります。気持ちを切り替える、また、新たな目標を持つという意味で、特段の節目ではないかと思うのです。1ヶ月という長さが12個つながって1年ですが、年の初めの1月はけっしてその13個目ではない。どなたもそんな気持ちではないでしょうか。
 いまの職場は、いくら頑張っても終わらない仕事、これから本格的に始まる人事評価制度や新組織への移行問題などで、切ないくらい閉塞感に充ちた状況となっています。また、職場はどうなるんだろう、自分はどうなるのか、などと将来についての不安や動揺もたくさんあると思います。
 支部では「明るい民主的な職場をつくろう」「なにごともみんなで話し合い、みんなで実行しよう」「みんなで学び力強い組合員になろう」「他の組合とも手をつないで行こう」「私たちの組合です。私たちで育てよう」と5つの呼びかけをしています。でも、これは呼びかけだけでは成りえません。それには日常の「対話」が大切と思います。「気の置けない仲」などという表現が珍しくなった世の中ですが、同じ職場内でも、なかなか会話すること、遊びに行くことが少なくなっています。おはよう、お疲れ様、失礼します、だけではね。心の風邪もそんな環境から起こっていることは確かです。
 今年の目標は、みんなで話そう、対話しよう、です。もちろん楽しいことばかりではありませんが、つらいこともいやなことも話そうよ、ということです。この閉塞感から脱する特効薬にはなりませんが、大いに対話していきましょう。
 2006年が、お互いに明るく悔いのない1年となることを心からそう願います。

研究機関
基盤研支部
利益直結型研究では厚生科学研究の未来はない
 医薬基盤研究所は非公務員型の独立行政法人として、昨年4月1日に設立されました。本所は大阪府茨木市に、霊長類医科学研究センターが筑波に、薬用植物資源研究センターの研究部が北海道、筑波、和歌山、種子島にあります。基盤研の業務のうち生物資源研究部門は、国立感染症研究所と国立医薬品食品衛生研究所から、研究部がまるごと移転する形で設立され、そこで活動してきた全厚生の組合員が中心となって、4月7日に11人で基盤研支部を結成しました。その後、職員全員に加入呼びかけの手紙を渡すなどして、次々と組合員を増やし、現在42人で活動しています。

儲かる研究に偏らざるを得ない
 独立行政法人は主務大臣から示された3から5年の「中期目標」を達成するため、自ら「中期計画」を作成し、それをもとに業務を行います。「目標」には、業務運営の効率化や、国民に対して提供するサービスの質の向上、財務内容の改善などが掲げられており、業務実績については、各府省の独立行政法人評価委員会が評価し、事務や事業の改廃に関して勧告できるとされています。
 研究機関においても独立行政法人であれば、この効率化や財務内容の改善が求められます。基盤研でも、運営交付金(国家予算)は初めから削減が決定されており、研究者は自ら研究費や運営費や人件費までも何らかの方法で作り出さねばならない状況にあります。たとえば生物資源について、今まで国民の命や健康を守るための厚生科学研究に役立てる立場で供給してきたものを、常に「儲ける」「儲かる」ことを考えながら研究し分譲することになれば、研究に偏りが生じないか、不安が残ります。「中期計画」作成に忙殺されて本来の研究ができないといった悩みもあります。
 支部長の亀岡さんは、「本来研究は、その国の文化や科学技術の水準を向上させる崇高な使命のもとに行われるもので、そこから派生する経済利益に左右されてはならないもの。独立行政法人としての研究所は、利益中心のゆがめられた研究目的を設定せざるを得なくなる」と危惧し、「国として遂行すべき事は公務として位置づけ、研究活動を支えるべきである。研究機関の独立行政法人化は誤りである」ときっぱり。

なくてはならない労働組合の存在
 非公務員型独立行政法人である基盤研では、人事院規則が適用されるのではなく、労働条件は労働基準法がベースになっています。その上、労使自治を前提に労使合意で決めていくことになり、職員にとって労働組合はなくてはならない存在となっています。「非公務員型の独法は全厚生では初めてのケースであり、勉強しつつ、一つひとつ進めてきた」と書記長の小浦さん。労基法に規定する職場代表の選挙には支部長の亀岡さんが立候補し当選。積み上げれば数pにもなる就業規則についての分析、意見の集約、使用者側との協議や労基法に基づく時間外、休日労働に関する協定(36協定)の締結、賃金改定の協定等々、職場の代表として基盤研支部は活躍しています。基盤研支部の存在は、研究者の労働条件を守り、国民のための厚生科学研究を支えています。
 *詳細は基盤研支部HPで。

福祉施設
神戸支部
視覚障害者福祉の専門家として誇りを持って仕事がしたい
 昨年の国会で成立した障害者自立支援法が4月からスタートします。小泉構造改革のもとで切り捨てられる障害者福祉施策について、国立施設が直面する問題点を神戸視力支部で取材しました。

 国立神戸視力障害センターは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師(以下あ・は・き師)を養成する理療教育と中途失明者等に対しての生活訓練を実施しています。自立支援法によって4月から国立施設はどう変わるのか、概要が明らかになるのは、政省令が出された後になりますが、国立施設の利用者も他施設同様、自己負担が大幅に増えることが予想されます。経済的な面だけで見ると国立施設を利用するメリットは無くなり、自己負担の少ない盲学校(あ・は・き師を養成する理療科がある)に利用者が集中することも考えられます。国立施設としてその存在をどう示していくかがとても大きな課題となっています。
 理療教官の今井さん(中央執行委員)は、「我々には、日本の視覚障害者施策の水準を表す専門家集団としての自信がある。視覚障害者が就労して収入を得ることはたやすいことではない中で、あ・は・き師の資格をめざす理療教育はますます重要。しかし、自己負担が増えることで、理療教育も受けられないとなると、障害者の生存権にかかわる問題」と指摘します。
 支部長の逢坂さんは、「我々は、学齢期が中心の盲学校と違って、年齢の幅も能力の幅もある視覚障害者の指導についてのノウハウを持っている。しかし、障害者にとっては、質よりお金だ。政省令の中で、低所得者の人も利用できるような減免制度が求められる」
 生活支援専門職の渕上さんは、「情報発信源となって地域との連携を深めるとともに、専門家集団として質を高めていくことも必要。たとえば、生活支援専門職については、歩行訓練のみに特化した研修でなく、視覚障害学科(RB)修了資格に匹敵するような研修が必要ではないか」
 さらに今井さんは、「今後、国立視力障害センターが、障害者のための国立施設として、何ができるのか、職場でも議論が始まりつつある。組合としても、提案をしていきたい」
 現場では障害者の立場に立ち視覚障害者福祉の専門家として誇りを持って仕事に臨んでいます。

障害が重い人ほど負担が増える自立支援法
 幅広い障害者団体から強い不安と反対意見が出される中、昨年の国会で成立した障害者自立支援法。身体・知的・精神障害のサービスを統一するとともに、利用者負担を導入し、サービス決定の仕組みや施設体系も変えるなどの抜本的改革を行いました。
 自立支援法のもとでの利用者負担は、これまでの応能負担(所得に応じて負担金額を算定する方式)から、利用料の応益(定率)負担(原則1割、上限あり)及びホテルコスト代(施設での食費や光熱水費など)の全額自己負担に変わります。障害者・家族の生活実態を無視した今回の制度「改革」は障害が重ければ重い人ほど負担が増えるしくみになっています。
 同法の具体的な中身は今後の政省令に委ねられていますので施行(4月に一部施行し、完全実施は10月)までに政省令が公布されることになっています。

社会保険
愛知県支部
国民の声は制度の改善
協力・共同の前進に向けて奮闘
行政懇談会やシンポなど多彩に
 公務員労働者の要求前進のためには、広範な団体との協力・共同が必要…と、愛知県支部は、愛知県労働組合総連合の春闘討論集会で、異常な社会保険職場の実態を訴えるとともに、制度改善・サービス向上に向け奮闘する決意を表明しました。
 愛知県国公は、これまでも「行政懇談会」「シンポジウム」など、民間労働組合、民主団体なども参加する様々な取り組みを展開し、全厚生愛知県支部もその中心的な役割を担っています。社会保険庁改革のおおもとには、年金制度に対する国民の不信があるなかで、国民全体の奉仕者として、行政サービスの向上に取り組んでいくことが、働きがいある職場作りや、労働条件の改善に繋がると、12月3日の「愛労連・06年春闘討論集会」のなかでも社会保険の現状を発言しました。

年金への批判を「改革」にすり替え
 「第一線で働く私たちは国民からの連日の抗議と対応で心身とも疲れ切っている。政府は問題となった年金制度の根本的な議論は行わないまま、社会保険庁内部への問題にすり替え、民間から長官を起用して、制度から国民の目をそらせてきている。一方、職員に対しては、夜間・休日の年金相談の実施や、国民年金収納率80%達成に向けた強制執行も含めた際限ない締め付け。業務の過密化と複雑化が増す中で、恒常的残業が蔓延し、心の病での休職者も増えている。雇用問題も含めて、職員にとっても重要な問題になっているが、国民生活にとっても大きな影響がある。政府管掌健康保険を都道府県単位に再編する準備が着々とおこなわれているが、国の責任の放棄であり、保険料の負担増が広がり、憲法25条の生存権をもとに制度化され、全国一律で実施されてきた社会保障制度の後退につながる。また、正規職員2割、非常勤職員6割の大幅な削減計画は現場の実態を無視している。今後団塊の世代が年金受給者になる中での大幅な職員削減計画は、国民サービスの低下を招くものである。私たちは公的年金を拡充し、誰もが一定の年齢になればもらえる最低保障年金制度を創設し、年金制度への信頼を取り戻すことが、笑顔で仕事ができる職場環境の基礎を築くものであると考えている」(発言要旨)

運動の先頭にたってがんばる
 県国公議長の磯貝さん(一宮社保)は、毎月行われている街頭宣伝で、公共サービス商品化反対と併せて、社会保険にかけられている攻撃の本質が、国民生活破壊に直結していることを訴えています。まだまだ地域へ打ってでる活動が役員の一部にとどまっており、全ての組合員が立ち上がっているという状況ではありませんが、広範な国民運動の形成目指し愛知県支部は奮闘しています。
(愛知県支部 支部長)

全厚生最北端からこんにちは
基盤研支部 組合員
(独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部

 昨年4月に結成された全厚生基盤研支部。南は種子島、北は北海道名寄市に職場があります。全厚生最北端からのお便りです。

 薬用植物資源研究センター北海道研究部は、昭和39年、北方系薬用植物の試験栽培研究を目的に国立衛生試験所北海道薬用植物栽培試験場として設置されました。所在地は、名寄市で、旭川市の北約80km、名寄盆地の北部、天塩川と名寄川の合流点付近に位置し、年平均気温5・5度,平均積雪113・2cmの道内屈指の寒冷豪雪地帯です。
 北海道研究部は、寒冷地に適する薬用植物の栽培技術に関する研究、調製方法の改良および開発に関する研究、優良品種の選抜・育成に関する研究、薬用植物資源の保存に関する研究などを行っています。職員は正職員、非常勤職員、賃金職員合わせて、夏季は12名、冬季7名の少人数の職場です。 独立法人化され、予算や職員の待遇などの改悪が行われないためにも、組合の果たす役割は益々大きくなっていくと思っています。全厚生の方々のお力を期待しております。

小さくてもみんなが力を合わせれば
平和な世界を築いていける
「世界ふしぎ発見!」
ミステリーハンター 末吉里花さん


*末吉里花*
すえよしりか 1976年生まれ。中学・高校とニューヨークで過ごす。慶応義塾大学総合政策学部卒。96年度・ミス慶応。これまで、フジテレビ「すぽると!」リポーター、テレビ朝日「やじうまプラス」スポーツキャスターなどのかたわら、香港映画にも出演。現在、TBSテレビ「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして活躍中。日本赤十字社の赤十字新聞に「世界の子どもたち」を連載しています。

 「世界ふしぎ発見!」(TBS系)でミステリーハンターとして活躍中の末吉里花さんにお話をうかがいました。
◆末吉さんは、「秘境担当」ということでしたが、いままで行った国で印象深いところは?
 まず思い浮かぶのは、昨年の夏に行ったタンザニアです。キリマンジャロの頂上に2015年くらいにほとんど溶けてなくなってしまうといわれている氷河が残っているんです。なぜ溶けてしまうのかというと、キリマンジャロの近くに住む人たちなどが、生活のために山のふもとの森林をどんどん伐採してしまったんですね。80年代から90年代ころのことで、いまはほとんどなくなっている状態です。そうすると必然的に温暖化が進み、大地が乾燥し、それとともに一番上にある氷河が溶けていってしまうという悲惨な状況にあります。ふもとの小学校の子どもたちが植林を始めています。どちらのスピードが早いかわかりませんが、氷河が溶けるのをくい止めようといろいろな活動も始まっています。
 シベリアに行ったときの経験も忘れられません。ヤクーツクという町から飛行機で2時間、車で6時間行ったところにあるサハ共和国にある小さなペテンキヨスク村に行ったときの経験です。冬はマイナス60度になるそうで、世界で一番寒い土地といわれているところです。そこで1週間、村の人たちの家にホームステイさせてもらいました。水道や電気がないので初めはどうしようかと思ったんですが、食べ物はそこの人たちが獲ってくるウサギだったりカモだったりトナカイだったりしてとても豊かなんですね。寒い冬を乗り切るために、夏にはお父さんは自分の息子を連れて狩りに出ます。お母さんは娘を連れてコケモモを採りに行ってそれをジャムにしたり、馬の乳を搾ってチーズにしたりして、冬に備えてたくさんの保存食をつくるんですね。その土地にあるものを豊かに食べているんですね。また、いまの日本では見られないような家族の絆を感じました。おばあちゃんからお母さん、孫へと、生きていく術(すべ)を生活の中で教えてあげている。その家族のふれあい、コミュニケーションが温かいと感じました。外から見ると、こんなに寒い過酷な自然の中で生きる民族と思うかもしれませんが、実際にそこで生きている人たちにとっては過酷でも何でもないんですね。どんなに違う国に生きていても、どんな教育で育てられてきたとしても、一度の人生をより良く生きようという思いはどこの国へ行っても同じなんだなというのを感じました。
◆末吉さんは日本の子どもたちとさまざまなボランティア活動をしているそうですね。
 一つは「PEACE」という会の活動です。主に東京の小学生たちなんですが、定期的に子どもたちを集めていろいろな国の話をして勉強会を開くんですね。その子どもたちは、自分たちが感じたことを絵にして毎年カレンダーをつくっているんです。そのカレンダーの収益を日本赤十字社に寄付し、その年にとくに支援が必要な地域のために使ってもらっています。
◆2006年はどんな仕事をしていきますか。
 2006年は「世界ふしぎ発見!」でアフリカ大陸などの秘境、そこに限らずいろいろな国に行って、みなさんにおもしろい番組をお届けできたらと思います。
 それから、世界の子どもたちとふれあう機会があったので、世界の子どもたちを取り上げる番組をつくれないかなと思っています。私が出るのではなく、企画できたらと思っています。
 また、日本の子どもたちともふれあうイベントなどを企画できないかと思っています。
 世界で困難な生活をしているところへ行って感じたのは、必ず希望を持って生きていることです。私たち日本人は希望を持って生きているのでしょうか? 2006年は小さなことでも行動を起こしていきたい。小さな力でもみんなが力を合わせれば、平和な世界を築いていけるんじゃないかと思っているんです。
◆ありがとうございました。(11月22日鰍ォかんし「あたごくらぶ」インタビューで近藤担当)

Back  to HOME