見出し

◆第1633号(2005年11月15日付)◆


全厚生の基本的見解を表明
社保有識者会議が関係者ヒアリング
 分離後の健保・年金業務の運営組織や職員の移行問題などを検討している「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」(厚労相の私的懇談会)は7日、厚生労働省において第6回有識者会議を開催し、社会保険庁改革について関係者ヒアリングを実施しました。ヒアリングでは、杉下全厚生委員長、高端自治労国費評議長、宮武社会保険事業運営評議会座長(埼玉県立大学教授)、小野地秋田社会保険事務所長の4名が意見表明を行いました。会議には、川崎厚労大臣、村瀬社会保険庁長官をはじめ全委員が出席しました。 
 杉下委員長は、(1)社会保険制度に対する国民の関心は極めて高いものがあり、制度拡充はもとより国民から信頼され期待に応えられる業務遂行が求められている。こうした中での不祥事をはじめとする一連の問題では、労働組合に対する批判も真摯に受け止めなければならない(2)国民の利益を第一に必要な改革は当然行わなければならないなどの基本的立場を述べた上で、社会保険庁改革に関し4点にわたって基本的見解を表明しました。(要旨別掲)

定員削減や評価制度などについて問題提起
 これに対し委員からは、(1)労組として反省が足りないのでは。改革の流れには反対なのか(2)地方事務官制度の廃止で現場の意識に変化は(3)人事評価制度は具体的にどのような点が問題なのか(4)コストをかけずにサービスを向上させるにはアウトソーシングや民間での研修、人事交流なども必要では(5)現職死亡が増えているとのことだが庁改革との関連なのか。また、労組として健康問題をどうサポートしているのか(6)全体に抵抗感があるように感じられるがスピードが重要ではないか、などについて質問がだされました。
 杉下委員長は、(1)不祥事案について個人的には承知していた部分もあるが、内部告発的な指摘ができなかったことなどは反省している。改革の必要性は大会や中央委員会などで一貫して指摘してきたところであるが、全体を無条件に支持するものではない(2)行政のあり方と身分は直結するものであり、私たちは国の責任で国家公務員があたる必要があることを主張してきた(3)評価そのものに反対はしないが、公務の特性を考えると短期的な結果では目標や評価など難しいのではないか。また、多くの職員を抱える部・課長が公平性・信頼性のある評価ができるのか疑問。組織のチームワークよりも矛盾の方が大きいのではないか。長いスパンで考えて人材育成などに活用すべきと考える(4)既に相当部分を委託している。特にシステムは100%であり集約化できる業務は行っている。しかし、市場化テストには率直に反対する。公務は安定性・継続性が特に求められ、民間では途中で撤退することも考えられる(5)ここ3年くらい多くの職場で指摘されている。制度の複雑さとともにきわめて多忙な実態にあり、上司との関係、頻繁な人事など様々な要因が考えられ、管理者に対する教育も重要ではないか(6)すべてに賛成という立場ではないので抵抗しているような印象を持たれるのかもしれないが、改革自体に反対ではない。などと基本的な考え方を改めて表明しました。
 これらを受けて村瀬長官が発言を求め、「健康管理は使用者の責任。改革のスピードはまだまだ甘いことだけは指摘させてもらう」と述べました。
 なお、次回(11/21)の有識者会議では、組織改革に関し「共同論点整理メモ」と「事務局からのたたき台」が示され、年内のとりまとめに向けて具体的な議論が行われていくことが確認されました。

制度は国の責任で運営を
社会保険庁改革に対する発言(要旨)
《組織改革について》
 社会保険制度は、国家の責任としての社会保障制度確立の中心をなすもの。制度運営については、安定性・継続性からも、国民の信頼を基礎に国が全面的に責任を負う必要がある。公的年金の運営主体については、業務の性格・内容等から、国家行政組織法第3条に基づく行政機関、庁として位置づけることが必要。
 公的年金制度と政管健保の運営の分離については、政管健保は被用者保険の最後の受け皿。国の責任を基本に、労働者・国民の視点に立ち、どうあるべきかの幅広の議論が必要。適用及び徴収と給付は一体。事務処理の効率性等から問題があり、全国一体的に運営していくことが必要。
雇用の問題が重大な問題。新組織への移行においては最善の努力をはらうことが必要。雇用不安を起こすべきではない。また、選別や排除を可能とする「法的措置」なるものを規定することはあってはならない。
《業務改革の推進と職員の労働条件》
 職員が能動的、主体的に意欲を発揮するうえで、職員の理解を得る手順をつくすことが必要。労働条件は、勤務条件法定主義であり、そこからはずれることはあってはならない。労使協議をつくすことが不可欠。
《新人事評価制度》
 短期的評価結果を給与処遇に活用すべきではない。公務員人事管理及び行政事務の遂行においては、中立公正性の確保とともに、民主的で希望と意欲をもって安心して働ける職場づくりが重要。
 基本的な意見として、一つは、評価制度は労働条件そのもの。理解と納得が得られる労使協議を。二つは、本格実施にいたる過程において、十分な検証・検討が行われねばならない。スケジュールありきのやり方は改めるべき。三つは、公務員の労働条件の根幹を規定している公務員制度にかかわることであり公務全体との整合性をはかることが必要。
《定員削減》
  業務量見合いの要員の確保は最も重要な課題。公務現場の実際を無視した形で、公務員が少なければよいとした議論が展開されているが無責任。社会保険業務はマンパワーなくして成り立たない。増加する業務量への対応、行政サービスの向上、働くルールの確立からも、削減ありきのやり方は改めるべき。
 職場では、人間関係が希薄になり、心の病で休んでいる人が目立つほど多くなってきている。こうした深刻な事態の背景には複雑な仕事と忙しさがあることは疑いのないところ。現場の実際を踏まえた議論、対策こそが重要。
 公務は人であり、育成が重要。改革の中で、職員のモチベーションの低下をきたすようなことはあってはならない。

リレーずいそう
●霧の寒霞渓
 読書の秋、スポーツの秋そして忘れられない食欲の秋。そんな食欲旺盛なこの秋に、我が別府支部では毎年恒例の1泊2日の旅行を行います。
 今年は、11月に紅葉燃える小豆島の寒霞渓をメインとしたツアーに行くこととなりました。
 組合員は私も含め半数以上が看護・介護職のため、勤務交替などやりくりし、お互い協力しながらなんとか休みを入れて参加しています。今年は2班18名が集いました。
 別府から小豆島までは、バス、船、バス、そして船と7時間以上の移動でしたがお天気も良く、絶好の行楽日和でした。小豆島に着いてからは名物の素麺工場へ行き、後はのんびりとホテルで時を過ごしました。そしてメインの2日目。朝から生憎の雨。しかもどしゃ降り。寒霞渓も紅葉どころか霧で真っ白。悲しいかなロープーウェイからは10cm先も見えませんでした。なんとも悔いの残る、しかし思い出深い旅行となりました。
 また多忙な毎日の中、他の職種の方とお互いに状況を話せませんが、この旅行の場を通じてじっくりと話や意見交換する事ができました。
 今、福祉の現場ではサービスの充実が求められています。しかし、人員確保の問題など矛盾を感じる事もあります。それでも皆身を粉にして頑張っています。安心して働けるからこそ十分なサービスも提供できるのではないかと思います。そんな安心して働ける職場を目指し、皆で協力し頑張っていきます。

(別府支部 組合員)

労働運動の原点にたちかえって
声を出してみんなで支え合おう
女性部第10回総会を開催
 全厚生女性部は10月29日、第10回総会を東京都内で開催し、代議員など38人が参加。05年度の運動方針、予算を採択し、新役員を選出しました。総会では、金子部長が挨拶し、木立事務局長が04年度活動のまとめと05年の運動方針案を提案。杉下委員長、青年対策部佐藤事務局長、国公労連女性協北畠事務局長が挨拶しました。
 木立事務局長は、昨年はあらゆる活動に憲法・平和を掲げて頑張ってきたが、今年は、労働組合運動の原点に立ち返った運動を進めたい、と16項目にわたり運動方針を提案しました。
続いて、5月にニューヨークで行われたNPT(核不拡散防止条約)再検討会議の要請行動に女性部代表として参加した伊東支部の組合員が報告を行いました。

仕事は厳しいけれど頑張ろうね
討論で励ましあう

 討論では16人が発言。本省庁の支部からは、「残業ありきの業務運営で、女性も深夜まで残業したり、休日出勤して仕事をこなしている」(統計)、「新婚だが、夫婦で毎日終電まで残業していて子どももできない。話す時間すらもてない」(業務セ)などの実態が紹介されました。
 研究機関では、「組合を見直そうと執行部でアンケートを実施したり、少人数化対策委員会を設けるなかで、女性部の活動を重視している」(国衛研)、「組合って何なのか、どうして必要か、みんなの中に組合のイメージを示し、頑張っているのをアピールしようということになった」(感染研)。また、基盤研支部が、非公務員型の独立行政法人・医薬基盤研究所に11名で支部を結成し42名へと増やし、労働者代表選挙で組合員を当選させた経験、労働協約締結、就業規則の確定などの取り組みを詳細に発言し、参加者の関心と感動を呼びました。
 福祉部門からは、「様々な職種がいる中で、話し合いの場を組合が作っていきたい」(国リハ)、「若い人を組合に迎え入れたい」(秩父)、「管理者との意見が食い違っている時、パイプ役として組合が必要」(伊東)などの発言がありました。
 社会保険支部は、「定期大会&レク(ヨガ)&子育て支援学習会」(秋田県)、「今年は戦後60年でタペストリーを作った」(京都)「女性交流集会を開いて、みんな本音で語り合った」(香川県)など、各支部女性部の工夫された取り組みを紹介。
 新しい人事評価制度については、「内容を知り、愕然とした」(秋田県)「課長になりたくないという職員も多い。課長に評価する余裕もなく、公平に評価できるとも思えない」(愛知県)、「C・Dランクを相対評価にし、普通以下の職員を絶対作らなければならないのはおかしい。もともと公務職場になじまない。課の輪も乱れる。一般の人たちにもわかってもらう努力をする必要がある」(大阪)、「未来の子ども達の事を考えていない政治が腹立たしい。一人では力にならないが、組合だと力になる。組合の原点をここにきて見いだした気がする。子育てと仕事の責任でたいへんな世代がみんなで声をあげていく必要があることがわかった」(岐阜県)「どれだけ組合が自分たちを守ってくれるかというのを説明していきたい。みんなで支え合っていきたい」(香川県)などの意見が出されました。
 金子部長は、「若い人達に、今ある労働条件は諸先輩方が勝ち取ってきた権利であることを知らせ、声を出していく場を女性部が作っていきましょう」と呼びかけました。
 

働き続けられる職場環境を
女性部が社会保険庁と懇談
 10月28日全厚生女性部は、女性の労働条件の改善の問題で社会保険庁と懇談。女性部は、金子部長、木立事務局長ほか支部代表あわせて9人が出席。社会保険庁からは川井上席調査官らが出席しました。
 冒頭、金子女性部長は「懇談項目にそって切実な職場実態を聞いてほしい」と挨拶。川井上席調査官から懇談項目についての総括的なコメントを受けた後、それぞれが職場の状況を発言しました。
 社会保険庁改革にかかわっては、特に、10月から試行される人事評価制度について、「人事評価制度は公務になじまない」、「育児・介護などの家族的責任を担うことの多い女性がマイナス評価されることがあっては政府が進める少子化対策と逆行する」、「評価者に大変な負担が強いられる、相対評価によって職場内の人間関係が壊れる」など多くの要望を発言。
 勤務環境の整備、労働条件の改善については、「トップダウン方式による仕事の遂行で多忙を極め、メンタルな病になる人が増えている。メンタルヘルスの具体的な対策が重要」と発言。また、このような状況では子どもを産むことさえ躊躇してしまうとの生の声を届けました。
 女性職員の採用・登用の拡大と次世代育成支援対策推進については、「『子育て支援プログラム』が実効あるものとなるように周知の仕方を工夫してほしい。必要な人のところに必要な情報が届いてない」と指摘。
 子の看護休暇、母性保護にかかわる制度の改善では、子育てと仕事の両立のためには、対象年齢の拡大が必要であると要望。また、このような情勢の中、今回の懇談に参加できなかった職員からのメッセージを代読して思いを伝えました。
 これに対し、上席調査官は「庁改革については、皆さんの意見はしっかりと伝えさせていただく。健康管理対策については、人事院からの通知『職員の心の健康づくりのための指針』に基づき、色々な取り組みを行っている。今後も最重要課題と認識して引き続き実施していく。次世代育成支援対策推進等の制度周知については、再度、周知の仕方も含め対処する。制度改善の要求は、機会を捉えて関係部署に伝える」と回答しました。
 最後に金子部長が「これからも、現場の声・職場の実態を聞いてほしい」と懇談の継続を要請して懇談を終えました。
(事務局長)

人事院が勤務時間「見直し」提案
休息時間廃止、休憩時間1時間に延長
 人事院は10月31日、国公労連に対して、休息時間を廃止し、昼休みの休憩時間を60分とする勤務時間「見直し」を06年4月から実施したいとする提案をしてきました。見直し提案は、民主党・浅尾議員の国会質問に端を発した検討の結果と説明しています。
 この提案が具体化されれば、勤務時間8時間、休憩時間1時間で、拘束時間は9時間になります。現行8時30分始業、17時00分終業、昼休み(休憩、休息時間を合わせて)1時間の職場では、終業時間が17時30分に繰り下がることになります。時差通勤にともなう休憩時間の短縮特例(15分)廃止も検討としており、拘束時間が45分延長となる例(厚生労働本省など)も生じることになります。
 職場では、「拘束時間が延長されれば、子育て中の職員の中には働き続けられない人も出てくる」、「忙しくて、お昼休みは30分とれるのがやっと。ただ働き残業が増えるだけ」などの声があがっています。提案の内容は、労働条件の重大な変更であり、民間の労働時間への影響など社会的影響も大きいことを踏まえ、全厚生は、要求を早急にとりまとめるとともに、一方的な強行を許さない立場で取り組みます。

Back  to HOME