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◆第1607号(2006年1月25日付)◆


2005年春闘要求アンケート全厚生の結果

賃上げ実現で景気回復、生活改善はかれ

 昨年11月に取り組んだ「国公労連2005年春闘要求アンケート」は、全厚生分として16支部・分会1378名分を集約しました。(約43%)
 全厚生は、アンケートは誰でも参加できるとともに、1人ひとりの切実な要求を運動に反映させるため、全員参加を重視して取り組んできました(昨年同時期1389名)。 決して十分な集約状況とはいえませんが、暮らし、賃金要求、制度要求など、職場の現状を知ることができます。このアンケート集約結果をもとに職場で大いに議論し私たちの要求を「みんなの要求」として確立しましょう。
 全体の構成は、男性61%、女性31%、収入構造は図1のとおり。

生活実態「苦しい」が6割以上

 生活実態(図2)については、「かなり苦しい」「やや苦しい」をあわせて61%となっており、昨年(64%)と比べても、依然として苦しい生活実態にあることを表しています。
 05春闘での月額での賃金要求(図3)では、1万円要求が最も多く、次いで3万円、2万円、5千円となっており、1万円〜1万円未満の比率が増加しています。これは賃上げをめぐる環境が悪化しているという認識が組合員の中に拡がっており、それだけ要求は切実度が増しているとみるべきです。
 制度要求(図4)では、圧倒的に「年金改悪阻止と最低保障年金確立」「医療・介護・福祉・保育などの充実」が全体の約5割を占め、小泉改革による医療・年金など社会保障改悪による不安が制度要求に反映された結果となっています。

サービス残業など労働条件悪化

 意見欄では、公務員削減や増え続ける業務量でサービス残業など労働条件の悪化が進んでいる実態。市場化テスト問題などによる雇用不安。社会保険庁批判の中、業務遂行に支障をきたしているなど。この間の社会保険庁を取り巻く情勢の中、組合員の苦悩が多く寄せられました。
 国公労連は、アンケート結果を中心に賃金を平均月額12,000円(3.1%)の引き上げを要求して、民間労働者と一体で賃下げの悪循環を断ち切り、公務員賃金の社会的影響力などを明らかにして、国民春闘の一翼を担いたたかう決意を明らかにしています。
 制度要求では、まさに全厚生の出番です。医療、年金、福祉などあらゆる分野での連続的な改悪を許さず、憲法25条に基づき社会保障制度に対する国の責任の明確化を求め、その行政運営は国の機関が直接責任を持って行うことを求め「生きがい働きがいのある職場」をめざし、05春闘をたたかいます。


リレーずいそう
● 「金八先生」に思う
 ここ数年、急に少年犯罪が浮上し、それとともに性犯罪も増加しています。うちには単身赴任でいないお父さんの代わりになるしっかりものの長女、小さい時から周りの人に好かれる癒し系の長男、生意気だけど甘えん坊、「お母さんはデート」と言うと「えっ、お母さん離婚したん?」と言う二女と3人の子どもがいます。幸いまだ環境のいいところに住んでいるので大丈夫と思いつつも、やはり子どもの帰りが遅いと悪いことも考え心配になります。
 1番上の娘は中学2年生。毎日毎日休みなしでクラブ活動の練習に明け暮れています。そんな娘と一緒に新しく始まったテレビドラマ『金八先生』を見てびっくり。最近の学校ものでは確かに荒れた生徒を更生させるような筋書きのドラマは多いですが、それにしてもいきなり荒れた生徒に妊娠・覚せい剤の話。「これが今の一般的な中学生の姿なのかしら…」と頭を傾げました。こんなドラマを見たがる娘。「どんな事を思いながら見てるんだろう?」と、つい横目で見てしまいました。幸いドラマは最後に『金八節』で、うまく生徒の心に感動を訴えて終わります。もう身長は私と同じになり、少し気難しくなってきた娘。いいことも悪いこともいろんな情報を耳にする時代ですが、どうか『金八節』の言わんとする事が伝わっていますように。
(京都支部 組合員)


News
● 大増税、憲法改悪やめよ ―162通常国会開会に向け請願デモ―
 第162通常国会が開会した1月21日、全労連や民主団体など国民大運動実行委員会の仲間500人あまりが国会請願デモを行い(写真右)、全厚生も参加しました。小泉首相は施政方針演説で、憲法改悪、郵政民営化を正面に、増税や社会福祉関連の負担増をはじめ、国民生活を苦しめる「構造改革」の断行を表明。「7兆円の国民負担をやめよ」「憲法改悪を阻止しよう」とシュプレヒコールをあげながら行進しました。国会開会中は、隔週の水曜日に、議員面会所集会と議員要請行動が行われます。


インタビュー その3
労働組合が憲法9条強くした  一橋大学社会学部長 渡辺治さん

 日本国憲法を改悪しようという動きがかつてなく強まっている中、一橋大学社会学部長の渡辺治さんに、国民投票法案や労働組合の課題についてお話をうかがいました。インタビュー第3弾。今号で連載は終わりです。

国民投票はまるごと一括賛否問う

 「本当に憲法9条が良いなら、国民投票で決着つければいいじゃないか」という議論があります。改憲派の人たちが言っているのは、「憲法改正」国民投票法案で、憲法96条に基づいたものですが、本当に憲法の1つ1つの条文が、国民にとって良いか悪いかを問うような国民投票制度を作るつもりはありません。箇々の条文で良いか悪いかを判断していたら、9条改悪などはできないですから。世論調査では「憲法は少し社会に合わなくなったから、改正したいね」という国民意見が過半数です。どんな改正かというと、「知る権利」「環境権」「プライバシー」とかです。これらは改正しなくても、私はいまの憲法で十分に実現すると思いますが、ないよりあった方がいいと思います。しかし、問題なのは、それらと9条を一緒にして、一括して賛否を問うことです。9条改悪のまわりに甘いものを色々くっつけてオブラートに包んで「一緒に飲んでくださいね」と投票させるというのが、今議論されている国民投票法案です。

公務員は国民投票運動を規制される

 国民投票は、本当に国民の中で様々な形で憲法のことを話して投票できれば1番いいですよね。しかし、国民投票のための運動は、改憲派の人たちが「できるだけ自由にして、皆で議論できるようにします」と言ってるのとは実際は違って、色んな形で制限されます。
 憲法調査推進議員連盟の国民投票法案には「最小限度の規制をします」とあります。「最小限」とは何かというと、教師や公務員です。国民投票は、政治運動の1つだから、公務員はできません、という大きな規制をかけようとしています。
 公務員は、特定の党派の選挙運動を支持したり、特定の候補を当選させたりということが、公務の中立性と反するという理由から政治活動を規制されています…私はこの規制は憲法違反だと思いますが、憲法改正を議論したり憲法を守ろうと運動することと、特定の党派の利害を実現させるという問題とは違います。
 憲法改正に反対する運動は、公務員でももちろんできるし、むしろ公務員の運動としてやるべきものだと思います。まず公務員は、憲法を尊重し擁護するという責務を負っているわけです。これは、憲法を実現していくための国民の責務であると同時に、公務員という特殊な地位からも、私はふさわしいものだと思います。
 それからもう1つの規制は、国民投票は単独ではやらないで、必ず国政選挙と一緒にやるということです。そうすると、国民投票にむけて運動すると、非常に厳しい公職選挙法のもとで、たいへんな規制がかかります。
 例えば護憲の運動をやると「あんたは社民や共産党の政治運動をやっているじゃないか」と規制を受ける可能性が非常に高い。社会保険庁の人が赤旗のビラをまいて起訴されました。公務員は特定の政党の利害を実現するために活動してはいけないと、市民の1人として休暇の時にビラをまいたにもかかわらず、弾圧されましたね。
 公務員だけじゃなくて一般の市民の人たちも、護憲の運動をしたら「あなたは選挙運動だ」と言って規制される可能性が非常に強いです。
 このような国民投票では、本当に憲法を選び直すことにはなりません。国民投票法をつくるのは今の国会で、自公民が多数をとっている状況では、市民の非常に強い運動と憲法擁護の声がないと、まともな国民投票法はできません。

平和運動に積極的な日本の労働組合運動

 日本の労働組合運動が平和運動に取り組むというのは非常に独特です。世界の労働組合運動は必ずしも平和運動にこれほど積極的ではありませんでした。
 僕がイギリスに留学していた年に10万人のロンドンデモがありました。これは、英独仏伊の4カ国共同で作っていた戦闘機の開発中止に反対するイギリスの労働組合の抗議デモだったんですが、軍需産業がつぶれて雇用が縮小するから「イギリス単独でも戦闘機を作れ」というデモを、TUCというナショナルセンター、日本で言えば連合が組織したんです。つまり労働組合というのは狭い意味では労働者の権利や雇用を断固として守るという形であったんです。
 しかし戦後日本の労働組合運動というのはそれとは全く逆で、総評が最初に大きく取り組んだのは、平和の問題なんです。当時も「なんで労働組合が平和の問題に取り組むのか」という声が繰り返し寄せられました。それは市民がやればよくて、労働組合がやるのは贅沢だとか、組合費をそういうところに使うのはおかしいとか。にもかかわらず日本の労働組合運動は、ほとんど一貫して平和運動をやってきたんですね。それが、9条を守り、9条を強くしました。
 労働組合運動が平和運動で広範な大衆運動をつくって、非核三原則とか武器輸出禁止三原則とか、自衛隊の海外出動禁止とか防衛費はGNPの1%の枠内とかいうものが次々作られました。日本の労働組合運動が平和運動に果たした役割はすごく大きいですね。

アジア侵略戦争の反省が労働組合動かした

 どうしてそうなったかというと、日本はアジアで侵略戦争を繰り返して、日清戦争・日露戦争、第1次世界大戦も、山東出兵もシベリア出兵も満州事変も日中戦争も、全部アジアの戦争は日本がおこして、最後は2千万人殺してます。その日本のアジアにおける侵略戦争の反省というのが、日本の労働組合、国民を含めて、「ああいうことは2度とやりたくない」というのが非常に強くあって、これが労働組合によって掲げられることにより、いわば継承されてきたと思います。平和の問題は労働組合が取り組むという日本の国民的な経験は大事にしていかなきゃいけない。

軍事大国化反対 構造改革反対の運動を結びつけ

 それから、今の日本の軍事大国化は、グローバル経済の中で起こってるんですね。ということは軍事大国化、日本の平和憲法を蹂躙しようという動きと、労働者の生活を企業のリストラや構造改革で壊そうする動きは同じ原因なんです。
 すごく面白いのは、イギリスなんかの労働組合では、決して平和問題に積極的ではないんですが、 2003年2月15日に世界同時反戦行動でブッシュのイラク戦争に反対する抗議行動が起こったんですけど、世界で1千万くらいの人たちが参加した。これは初めてですよね。ローマで300万、ロンドンで200万、ニューヨークで50万、マドリードで200万でしょ。例えばローマの人たちは、「ブッシュの戦争と年金改悪反対」なんです。ロンドンでも「雇用守れ」「公教育の充実」と「ブッシュの戦争反対」なんです。どこの国でも軍事大国に反対する運動と構造改革に反対する運動が結合したときに何百万人という労働者が立ち上がってるんですね。
 今の日本で本当に平和を守ると言うことと、構造改革に反対して自分たちの福祉を守り労働者の生活を守り国民経済を守っていくという運動は同じ根っこなんです。だから、労働組合が平和問題に取り組むということは非常に大事だと、僕は思っています。

憲法改悪と構造改革反対の両方取り組む

 労働組合が何をやるか。憲法の問題を勉強したり憲法改悪に反対したりすることが大事だと思いますね。特に9条の問題は、日本の軍事大国化を阻止する上では一番手っ取り早いし大事です。
 それと同時にすごく大事なことは、いま進行している構造改革の問題と労働組合が本当に闘うことですよね。やっぱり構造改革と軍事大国化の動きの中で憲法の問題が出てきているんで、構造改革とか軍事大国化の動きと闘わないで憲法改悪にだけ反対するということは実際にはできないし、反ブッシュの運動と反構造改革の運動が結合したからローマやロンドンの人は立ち上がった。
 例えば厚労省がすすめている混合診療とか介護とか福祉の切り捨ての問題と、労働者にかけられている市場化テストの問題とか公務員改革という問題と本当に闘う中で、その延長上にある新自由主義型の国家を作るための憲法改悪に反対していくということが出来ると思うんです。
 そういう構造改革に反対する運動と憲法改悪に反対する運動の両方に労働組合が取り組むということがすごく大事だと思います。
(おわり)


「国民本位の年金制度と真の社会保険庁改革を考える」シンポジウム
日  時2005年3月5日(土)13:00〜17:30
会  場クレオ大阪北(阪急京都線淡路駅から徒歩10分)
大阪市東淀川区東淡路1-4-21
TEL 06−6320−6300
パネラー堤 修三 氏 大阪大学大学院教授(元社会保険庁長官)
芝田英昭 氏 立命館大学教授
浜田陽太郎氏 朝日新聞記者
杉浦公一 氏 全厚生労働組合書記長
コーディネーター 飯塚 勇 氏 全厚生労働組合副委員長

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