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◆第1606号(2006年1月15日付)◆


秋闘要求で厚生科学課長交渉

基盤研職員の勤務条件確保を

 全厚生は12月15日、大臣官房厚生科学課と2004年の秋闘・試験研究機関の重点要求にもとづき交渉を実施。交渉には全厚生から、杉下委員長、網・藤巻各副委員長、杉浦書記長、福士書記次長、阿曽・宮田各中執及び、感染研支部、国衛研支部、社人研支部、ハ病研支部の代表計12人が出席。厚生科学課からは、上田課長、高山研究企画官、坂本補佐、野澤補佐が対応しました。
 冒頭、杉下委員長が重点要求の趣旨を説明したのに対し、上田課長が一括して回答。
 2005(平成17)年4月に設立する独立行政法人医薬基盤研究所について、異動する職員の身分・勤務条件の後退にならないよう万全の措置を要求したのに対し、「勤務条件等は、最も基本的かつ重要な問題。まとまり次第、関係職員に説明する。要望には誠意をもって対処したい」と回答。基盤研の生物資源部門では、安心して職務に専念できる体制の確保を要求。これに対し、「基盤研の生物資源研究は、医薬品の基盤的研究、研究開発振興と並ぶ新研究所の大きな柱の一つと認識している」と回答しました。

科学院の教育研修体制の確保を

 保健医療科学院の教育研修の課題では、各機関・研究者との協力体制をはじめ、充分な体制の確保を要求。これに対し、「厚生科学課、科学院、国衛研、感染研等による『国立保健医療科学院教育研修運営協議会』を設け、当該分野の講師派遣等の調整を行っている」と説明。「今後とも、本協議会等の場を通じて国衛研及び感染研にとっても過度の負担とならないよう配慮し必要な研修体制を確保したい」と回答。定員削減反対、必要な定員確保の課題では、「増員は、厳しい行財政状況下で種々困難な面が多いが、真に必要な場合には、必要な増員の確保に最大限の努力をしたい」と回答しました。
 研究者の流動化や競争的環境の課題では、継続的な研究業務や行政支援業務を遂行する部門は、短期雇用でなく任期のない恒常的な研究職員の配置に努めることを要求。これに対し、「研究者の流動性の向上を図ることは、創造性豊かで活力ある競争的研究開発環境の基礎的要件として重要」と説明。「各機関では、研究業務の性格、実態を考慮した具体的な検討を進めている」と回答。さらに、任期付研究員の任期後は、任期のない職員として採用する道を開くことを要求したのに対し、「任期終了後に当該施設において公募がある場合、任期を終了した者の応募の道を閉ざすような制限はないものと理解している」と回答しました。

基礎的研究費の増額を

 感染症研究所ハンセン病研究センターの必要な定員確保(回復)の要求では、「今後とも定員については、その業務量等を勘案し不都合が生じないよう確保したい」と回答。運営の独立性を確保する要求には、「『ハンセン病研究センター運営委員会』を設置。運営に支障の生じないよう努めたい」と回答。基礎的研究費の増額要求では、「基盤的研究費は、個別具体的な行政上の業務遂行に必要な基礎的・基盤的研究を行うためのものと認識している。試験研究機関全体で約6億4千万円を計上」と回答。国内外の学会出席旅費の増額要求では、「各研究者が行った研究内容の結果を発表する等に必要な交通費等に充てる経費で試験研究機関全体で約7百万円を計上」と回答しました。 
 研究評価の目的では、研究所および個々の研究者・職員のポテンシャルを引き上げることにおき、研究の自主的及び創造的発展を助けるために行うことを要求。これに対し、「『厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針』に基づく評価を行うにあたり、公正性、客観性、透明性、信頼性等を確保することが必要であると認識しており、各機関に対しては必要な指導を行いたい」と回答。新再任用制度では、希望者全員の雇用確保を要求。これに対し、「定員の問題など制度上の問題は認識している。今後とも、各機関に対して、制度の趣旨、目的にかなった運用を図るよう指導したい」と回答しました。
 さらに医薬基盤研究所の課題で要求。就業規則(案)の協議を早急に全厚生と行うこと、その前提として労働基準法をふまえて就業規則(案)の協議をすすめることを確認しました。


「国民本位の年金制度と真の社会保険庁改革を考える」シンポジウム
日  時2005年3月5日(土)13:00〜17:30
会  場クレオ大阪北(阪急京都線淡路駅から徒歩10分)
大阪市東淀川区東淡路1-4-21
TEL 06−6320−6300
パネラー堤 修三 氏 大阪大学大学院教授(元社会保険庁長官)
芝田英昭 氏 立命館大学教授
浜田陽太郎氏 朝日新聞記者
杉浦公一 氏 全厚生労働組合書記長
コーディネーター 飯塚 勇 氏 全厚生労働組合副委員長


リレーずいそう
● 共働きの子育て
 我が家は、夫婦共働きで、3人の子どもがいる。下の2人は保育園に通園していて、良く病気になる。となると、どちらかが仕事を休まなければならない。妻は保育士をしている為、急な休みがなかなか取れないので、私は、子どもの看病の為、何度か仕事を休んだ事がある。
 長男が小さい頃は有給休暇で消化していたが、子の看護休暇制度が出来た為、昨年はこの制度を利用させてもらった。多少であれ、とてもありがたい制度だと思う。
 話しは少し変わるが、我が家の3男は、もう少しで1歳になる。が、3人目ともなると、育児も意外と適当になっていると思う。同じように育てているはずではあるが、食事一つを取って見ても、1人目の時は、すごく気を使って、この時期にこれは大丈夫かな?なんて心配しながら食事を与えていたと思うが、今は本当に適当である。と言うよりも、時間がない為、構っていられないのが現実である。ごめんね3男坊!でもきっと兄弟の中では一番逞しく育つであろう。
 最後に、少子化と騒がれている現在だが、子どもを産んで育てやすい環境をこれからも、もっと整備して行く必要があると思う。
(統計支部)


News
● 子の看休、時間単位OK ―両立支援の人規改正1月1日施行―
 人事院は、職業生活と家庭生活の両立支援のための人事院規則(規則15-14)を改正し、2005年1月1日から施行しました。
 全厚生の強い要求であった子の看護休暇の時間単位での取得が可能となりました。5日の範囲内で取得できます。また、長年の要求であった介護休暇の請求期限も、1週間前という従来の請求期限が緩和され、「あらかじめ」の請求で足りることになりました。新たに、男性職員の育児参加のための特別休暇が導入され、妻の産後休暇中に出産に係る子、産前産後休暇中に小学校就学前の子の養育のために5日の範囲内で、日又は時間単位で取得できます。また、配偶者出産休暇(2日)の事由が拡大された他、時間単位の取得が可能になりました。
 このほか、4月1日施行で、育児等を行う職員への早出遅出勤務が適用(規則10-11)されます。
 女性部長の金子菊枝さんのコメント「私たちの長年の要求が実現し、ねばり強く運動してきて、良かったと実感しています。さらに、仕事と子育てが両立できるような制度改正へ、頑張っていきましょう」

● 食料自給率の向上を ―新宿で農民連が署名宣伝行動―
 全国食健連と農民連は1月5日、東京・新宿駅西口で、食糧自給率向上を求める国会請願署名行動を実施、全厚生も参加しました。宣伝カーに「安全無視のアメリカ産牛肉を輸入するな」「政府は国民の主食・米に責任とれ」の横断幕を掲げ、8団体20人の代表が順番に宣伝。「国内生産を増やし、国の責任で、食料自給率を抜本的に向上させること」の署名に応じた人には農民連のミカンを渡し、たいへん好評でした。


「公務の民営化と社会保険行政」全厚生学習会を開催

社会保険業務の民営化許さない

 12月23日全厚生は、東京・お茶の水で「公務の民営化と社会保険行政」全厚生学習会を開催。社会保険の12支部はじめ、本省・統計・国リハの各支部と共同する会・国公労連などから、総勢80人が参加しました。
 学習会では、二宮厚美・神戸大学教授と河村直樹・全労働副委員長が講演。基調報告ののち討論し、社会保険庁改革をめぐる情勢をしっかり深めるとともに、全厚生の今後のたたかいについて、職場の現状を踏まえ、あらゆる角度から検討。国民の期待に応える真の社会保険庁改革の実現と、憲法改悪の流れと一体となった小泉「構造改革」を止めさせるたたかいを05春闘の最重要課題として位置づけ、奮闘する決意を固めあいました。

講演1
新自由主義的改革と公務労働運動の課題  神戸大教授 二宮厚美 さん
 学習会では、神戸大学教授の二宮厚美さんが「新自由主義的改革、公務の市場化・民営化をめぐる現局面と公務労働運動の課題」と題して講演しました。
 はじめに二宮さんは、新自由主義における構造改革について解明。
 新自由主義というのは、市場競争の秩序で徹底して社会全体を洗い直し、戦後の福祉国家を解体する戦略。2002年に日本の法人税の水準は10兆円を切り、厚生年金の企業拠出金が10兆2千億円で、税金を上回った。いくら人件費や税金を安くしても少子高齢化で社会保険料がどんどん伸びれば、企業は経費を削減することができないので、社会保障の構造改革をやらなければならなくなった、と述べました。

所得再分配構造の転換と公務部門の縮小

 つづいて所得再分配構造の転換と公共部門の縮小について解説。
 戦後、憲法のもとで行政の最も大事な役割は、国のさまざまな階層・企業その他から税金あるいは社会保険料を集めて、もう一回その所得を社会保障や教育・地方自治体を通じて再分配することだった。これは社会福祉の大原則。ところがこれがあるかぎり日本の企業は負担をまぬがれないので、所得再分配構造をタテ型から国民総痛み分けのヨコ型へ転換しようとしている。所得再分配構造が徹底して受益者負担主義になってくれば、いままでタテ型所得再分配を担ってきた公共部門はいらなくなり、公共部門は自由化され、営利事業化され、最後は市場に委ねられてしまう、とその危険性を指摘しました。

公務の公共性と専門性に確信をもって

 公共部門の営利事業化の流れと何で勝負するのかについては、「社会保険庁業務の公共性と専門性」と述べ、論拠について解明しました。
 市場化を進める人たちは公共部門の人件費が高いと攻撃するが、低賃金で労働者を雇うとき、徹底的な労働のマニュアル化が行われる。定型化でない専門性は、業務経験の積み重ねの中で育つ。安あがりでは専門性は育たない。また、民間の営利目的の事業と公共目的の事業はもともと性格が異なるのだから、人件費が安いかどうかにかかわりなく公共目的なものは、公共機関が維持していかなければならない。
 社会保険庁がなぜ存在するかというと、公的年金制度があるから。年金権という国民の権利を担う行政を行っている社会保険庁の仕事には公共的性格があるから。今、社会保険庁の市場化テストが言われていますが、簡単に民間に手放してはいけません。行政は全国民的公平性を担わなければならないので、社会保険庁をバラバラにしてはいけないし、民間に渡しては、公平性は維持できません、ときっぱり。
 また公務の仕事には、専門性が必要。専門性とは仕事の知的熟練のことで経験が必要。知的熟練には雇用保障が必要で、民間の不安定な雇用状況、たとえば、1年間の契約社員であるとか派遣労働では専門的知識を持っていても知的な広がりはできません。
 社会保険業務の市場化の攻撃に対して、専門性と公共性を根拠にたたかっていきましょう、と締めくくりました。

講演2
ハローワーク業務の民間開放は許さない  全労働副委員長
 ハローワーク業務の民間開放・市場化テストについて全労働副委員長の河村直樹さんが講演しました。
 規制改革・民間開放推進会議(以下、推進会議)で議論されている職業紹介業務の民間開放のねらいについて、(1)国の莫大な財政赤字の中での公務員削減(2)人材ビジネス企業への市場拡大(3)財界が安くて自由に使える労働力を求めている、と述べ、推進会議のメンバーには労働者代表が選出されないまま、人材ビジネス業界の利益拡大が議論されていることの危険性を指摘しました。
 職業安定行政は憲法27条の勤労権を保障するもの。求人受付・職業紹介の現場では労働基準・職業安定の各行政が連携しながら労働条件を底上げするなど、労働者の権利保障のための重要な役割を持つ。一方、民間委託の就職支援セミナーでは、ある企業が「面接時に賃金について聞くと印象が悪いから絶対にだめです」と教えるなど、企業の立場で使いやすい労働者を訓練していることを紹介。また実例をあげて民間事業の非効率性を解明。しかしその非効率体質を隠して正反対の報道が繰り返されている実態も指摘しました。
 職業安定行政が民間に開放されれば、労働基準行政の機能も低下し、労働者の権利保障は総体として低下することから、この攻撃は、職業安定行政のみならず全労働者に対するものと批判しました。
 推進会議では、オーストラリアを民間開放の成功例として議論していますが、「全労働はオーストラリアの前例を導入すべきではないと考えている」として、全労働のオーストラリアでの実態調査を紹介。オーストラリアでは最低賃金1200円、失業給付は全額国庫負担で支給期間は無制限など、労働者保護・社会保障も充実していて前提条件が全く違うこと。新しい機械システムを導入して成果をあげたのと民間開放が同時期だったことから、民営化の成功だとすり替えていること。そして、オーストラリアはILO88号条約との整理をせずに民間開放しているので、ILO条約違反であることなどを明らかにしました。
 社会保険やハローワークの民間開放の結果が全ての公的事業に影響します。その本質をしっかりと見据え我々が中心となって全ての公務行政を守っていく気概を持って運動をしていきましょう、と結びました。

提 案
国民生活にどう影響するか世論喚起を
 学習会では、全厚生の主張と今後のたたかいについて、飯塚副委員長が提案しました。
 飯塚副委員長は、「今後のたたかいの方向性を検討するために、職場で出された多くの意見を報告していただきたい。また、社会保険庁をめぐっては、市場化テスト法案が5月の通常国会に提出されるとの動きや、有識者会議が5月をめどに最終報告を出すという情報から、5月がひとつの転機となるので、職場討議資料については、時期をにらみながら、第2弾を発表していく」と前置きした上で、全厚生が11月に発表した「社会保険行政の民主化と行政サービスの確立に向けて 社会保険庁改革に対する全厚生の主張と要求」及びそのダイジェスト版(職場討議資料)にそって、提案しました。
 主張点は、(1)社会保障制度に対する国の責任の明確化を求めます(2)市場化テストに反対します(3)国の機関が直接責任をもって行うことを求めます(4)真の行政サービスの向上と労働条件の確保を求めます(5)全額国庫負担による最低保障年金の創設を求めます、の5点。
 当面する行動については、(1)「全厚生の主張と要求」と職場討議資料を使い、1月いっぱい、各支部で学習を。本部からオルグも派遣する(2)大臣宛の署名も検討する(3)3月5日のシンポジウムの成功(4)諸団体と共闘し、学習会や懇談会、タウンミーティングを職場・地域から展開(5)地方議会や国会議員要請、などを提案。「今、職場の組合員が参加できる運動は、国民世論をたえず喚起していくこと。市場化テストが国民生活にどのような影響を与えるのか、制度にどうからんでくるのかを幅広く問題提起しながら、国民に訴えていこう」と呼びかけました。

討 論
学習と対話で大きく運動を広げよう
 講演と基調報告を受けて、討論が行われました。
 愛知県支部の組合員は、愛知県国公の「今、公務を語るとき」の懇談会開催の経験を紹介。神奈川県支部の組合員は、「労働者を締め上げて利益を得ている民間と市場化テストで競争しても、勝ち目はない。市場化テストは社会保険の職場がどうなるという次元を超えた問題を抱えている。平和な福祉国家をめざすのか、弱肉強食の資本主義をめざすのか、ということも踏まえた運動を取り組む必要がある」と発言。愛知県支部の組合員は、「我々の仕事は、年金の請求にきた方にまちがいなく年金が支給されるように、懇切丁寧に対応する、国民の権利をサポートする援助者なんだ、という視点が必要。社会保険庁の言う行動規範にはこの視点がない。主権者たる国民に対してどういう仕事で返していくかが問われている」と発言し、東海ブロック国公でもシンポジウムを開くことを紹介しました。
 業務センター支部の組合員は、「国民の権利を守るものだから、民間には任せられないというのは解る。が、もっと国民サービスで我々に足りなかったところがあるのではないか、との思いもある。もっとがんばらないと、国民の支持は得られないのではないか」また、自治労と競合するある支部からは、「自治労組合員は情報が入らず困っており、『どうしたらいいのかわからない』という現状。職場の管理職すら『市場化テストって何?』と聞くほど、解っていない。全厚生組合員も、自分たちの仕事はどうなるのか、どうたたかえばいいのか、見えていない。ぜひ教えてほしい」と発言しました。
 神奈川県支部の組合員は、「市場化反対の署名は、職場でなかなか集まらなかった。『市場化してもいいんじゃないか』という声すらあった。決定的に学習が足りないと感じる。いろいろな機会を通じて、職場を守ると同時に、国民のための社会保障である健康保険や年金制度をしっかり守っていくことが大切だということを、話していきたい」と決意を述べました。また、業務センター支部の組合員は、「業務センターは委託が多い。行政需要の多さに『委託やむなし』と20年間続けてきた経緯があり、なかなか委託と市場化の違いを理解できなかった。が、1カ月議論してきて、やっと『市場化テスト反対だ』と言えつつある。支部では、今こそ、職員に訴えていこうと、ビラも作り、毎週火・木に宣伝をしていく。今、がんばらないでどうする。このがんばりが、今後、民営化になろうが、独法になろうが、うろたえずに交渉に臨んでいける力になる。地域にも出て行きたい」と力強く発言しました。



学習会に参加して 私の感想
社会保険の公共性と専門性をいかに国民に訴えていき、理解が得られるかが今後の運動のポイントだと感じた。

とにかく外にうって出ることの必要性を改めて感じました。

マスコミからの一方的な情報しか得てない人が大勢だ。今、一人ひとり本当の情報を私たちが発していかなければと思う。国民の権利のこと、公務のこと、憲法のこと。

市場化テストで官から民への動きが強まる中、我々のやっている仕事が民間でも、出来てしまうことなのか?それでは国がやるべき仕事とは何?という私の疑問について一つの答えをわかりやすく提供してくれたと思います。

今日、確信出来た内容を職場に戻り、一人でも多くの組合員に伝えるぞという決意の日となりました。

公務は民間に切り売りできるようなものではないし、民間の生保や個人年金のような商品ではない。

財界の目的がよくわかり、それに小泉内閣が追従していることがわかりました。市場化テストは絶対反対です。

市場化反対の立場は組合的にみると自分たちの身分保護と国民からみられるので強く言えなかった。ただ、職場改善の立場から市場化に反対するということを学ぶことができました。

つくられた国民世論を突破するのは本当に大変。正直「社保」を名乗りながら地域へ出ることにビビっている人もいると思います。でも今やらないと問題意識をしっかり共有出来ない。

財界(奥田・宮内)の主張に基づきそれに同調し、社会保障・教育を切り捨て、国民にのみ負担を求めている小泉・竹中政治に反対し、戦争をしない・荷担しない国、国民を大切にする国づくりが大切です。


【神奈川県】新入組合員教室を開催

組合を体で体験しよう

 神奈川県支部は、潮風香る三浦海岸「マホロバマインズ」で11月26日、27日に第23回新入組合員教室を開催。新入組合員17人と、本部定期大会でおなじみのMYMY、本省支部・業務センター支部から合わせて32人が参加しました。
 今回は、「労働組合を体で体験しよう!」をテーマに、グループ・フリー討論、ワークショップ(パントマイム等)をとりいれた新企画。ワークショップではパントマイムを体験。グループパフォーマンスで、チームで一つの物を作り上げること、力を合わせることの必要性を体で体験。また、フリー討論では、労働組合のイメージ、疑問、期待することなどを率直に出し合い討論。労働組合の意義について考え、職場に労働組合が必要であることを再確認しました。
 また、基本講座で労働組合・支部の歴史、賃金・労働条件など、労働組合の原点と職場を取り巻く情勢を学習し、まとめとして、本部杉浦書記長の「21世紀を切り開く労働組合」で未来を力強く切り開いて生きていこうと新入組合員に熱いメッセージをおくり締めくくりました。参加者からは「労働組合が少し見えてきた」、「もっとフリー討論時間がほしい」、「MYMYが楽しかった」など、参加してよかったとの意見、感想が多く寄せられました。
(書記長)


【業務セ】支部定期大会を開催

業務量増に耐えられぬ

 業務センター支部は、12月22日、支部定期大会を開催し、運動方針案等を確認・採択しました。討論では「超過勤務は実績の6割しか認められていない。これを100%支給してほしい。休日出勤もなくせていない」、「若い人から『今がんばっちゃうと、またつらい仕事を回されるんじゃないか』という話が出て、そういう所まで追い込まれているという状況に悲しくなった」、「業務量が増えて、それに耐えられず辞めてしまったり、長期休暇とかにつながってしまう状況」、「部分休業を取っているが、辞める人とか長期休暇の人がいて仕事が大変。夫に早く帰ってきてもらって、その間に仕事に来たりしているが、この3カ月そういう状態」という職場の現状、仕事のあり方などの発言が続いて出されました。
 また、非常勤職員の組合員からは「3年で辞めさせられるというのはおかしな話」、「私なりに頑張ってやってきたが、昨今の報道や組合のニュースをみると3年雇い止め問題の解決は無理なのかな」と3年有期雇用に対する疑問や不安の意見が出されました。
 新役員は次のとおり。
支部長峰 一史
副支部長荒谷和正木立圭子佐藤正史
書記長佐藤憲一
書記次長北畠弥生
(支部長)


インタビュー
憲法9条こそが真の国際貢献  一橋大学社会学部長  渡辺 治 さん

 日本国憲法を改悪しようという動きがかつてなく強まっている中、一橋大学社会学部長の渡辺治さんに、憲法9条改悪論や改憲阻止の展望についてお話をうかがいました。インタビュー第2弾です。

9条は解釈改憲でボロボロか?

 憲法9条は現実にあっていない、という意見があります。「9条は武力をもたないとか、戦争放棄とか言っているけど、自衛隊があるし、イラクに行っているじゃないか、9条は解釈改憲でボロボロ、もう死んだも同然だから、もっと現実にあわせた方がいい。理想はいいけれど、守れないルールがあってもしょうがない」という意見です。
 解釈改憲は、確かに行われています。自衛隊のイラク派遣はその典型だと思います。しかし、解釈改憲には限界があります。明文の憲法9条をなくすのと、解釈でいろいろやっているのでは、大きな違いがあります。

9条があるからできないことがある

 解釈改憲では絶対にできないことがあります。例えば、自衛隊はイラクで、アメリカ軍やイギリス軍と同じように戦闘行為はできない。しかも、行くときには、必ず復興支援だとか、武力を使わないとか、戦闘地域に行かないとか、いろんな制約を付けなければいけない。サマワでは、ロケット弾を打ち込まれても対処もできない…これは実は、すごく大事なこと。日本の自衛隊はイラクの人々を殺していない。それらは、日本の自衛隊が平和主義だからじゃなくて、憲法にしばられているからなのです。
 また、解釈改憲で米軍の後方支援をして武器弾薬も堂々と運びたいのだけれど、9条があって運べないから、荷物の中身は点検しない、と言って運んでいます。
 日本は、これだけの経済大国でありながら、核兵器をもっていません。核兵器は侵略戦争でしか使えず、自分の国の防衛では使えませんから。これも9条の力です。
 今、武器輸出禁止三原則を排除しようという動きがありますが、この三原則があるから、軍需産業ができなかった。もし、なかったら、日本の軍需産業は1960年代に復活して、おそらく、自動車とか電気製品と同じく、日本製の武器が世界の戦争で使われていたでしょう。今、世界の戦場でそういうものが使われていないということは、日本の憲法9条が力を持っているからです。

9条をもつ国だからこそできること

 もし、日本の政府が平和のためのイニシアチブをとろうとしたら、どうなるでしょうか。たとえば、国連の中で、武器移転規制をやれるのは日本しかいません。規制に反対しているのは武器輸出大国であるアメリカ、中国、ロシア、フランス、イギリス(以上、国連安全保障理事会・常任理事国)とドイツです。世界の武器輸出を本当に規制できれば、世界の紛争はすぐにはなくならないけれど、戦争はなくなるんです。武器が完全に移転規制されたらイラクでも戦えません。完全に禁止して、そのための監視団を日本の自衛隊にさせればいい。そうすれば、世界の紛争の軍事化をくい止めることができる。常任理事国の5大国は、武器移転規制に反対していますが、国連加盟の多くの国々は、規制をやった方が有利な国々ですから、そういう国々と一緒になって、日本がイニシアチブをとればいいのです。
 核兵器でも、日本が一番、規制のイニシアチブをとれます。日本は、自民党政権ですから、とっていませんけど、イニシアチブをとって、非核の国際的な枠組みを作ればいいのです。国連全体で、それぞれの国が持たないようにする、持っている国は、いついつまでに廃棄する、という方向をとっていけばいいのです。世界の中で、もっとも大きな国際貢献ができるのは日本なのです。それは、日本が憲法9条をもっているからです。
 地雷禁止条約にしても、京都議定書にしても、アメリカは両方反対しているのに、日本が賛成したからできています。地雷禁止条約に大国はどこも反対しているのに、日本がイニシアチブをとったから、地雷禁止条約が発効したわけです。この地雷だけじゃなくて、核兵器や様々な武器についても、きちんと規制をすればいいのです。
 憲法9条というのは、実は21世紀の世界の平和にとっては、非常に大きな意味をもつもので、むしろ多くの国々が、憲法9条の考え方を国連の中で具体化したり、いろんな国々の憲法の中に具体化していくような方向で日本は努力をする。これが国際貢献として日本しかできないことなんですね。

東アジア共通の経済圏とルールつくる

 また、東アジアにおいても、日本が貢献できることがあります。
 東アジアの経済圏の中で、EUを参考にしながら、共通ルールを決めていく。労働条件や環境規制など共通のルールを作れば、大企業がどんなに激しい競争をしても、同じルールで競争できる。福祉や賃金、労働条件の切り下げ競争も、女性差別も公害も起こさせない共通のルールを経済圏の中で作っていく。今、財界がめざしている全部の保護を取り払った企業にとって有利な自由貿易経済圏ではなくて、労働者たちが人間らしい活動ができるような共通の多国籍企業を規制する経済圏をつくればいいのです。東アジアで共通の経済圏があって初めて、相互に武力を行使しないような安全保障の共同圏をつくることができる。その中に北朝鮮を迎え入れ、核兵器は持たない、使わないとか、武力規制とか、戦争しないとかというルールを作っていけばいいのです。

自衛隊では国際貢献にならない

 自衛隊を国際貢献に使うためには憲法改正しなければいけない、というもうひとつの議論がありますが、これは、日本ができる国際貢献をできなくさせます。日本は東アジアの侵略戦争を反省していない、植民地支配を反省していないわけですから、その上、9条を改悪したりしたら、これは、中国だって、韓国だって、日本はあぶない、戦前と同じことになるかも知れないと思う。経済圏など、とても出来ません。
 そういう意味では、憲法9条は死んでいない。憲法9条をなくして、国際貢献ができるというわけではない。むしろ、逆だということです。

憲法改悪は必ず阻止できる

 「憲法改悪阻止はできるのか」という話ですが、憲法改正に賛成する人は確かに今多くなっています。しかし9条だけをとってみると、改正に反対する人は、NHKでも52%、朝日新聞では60%、読売新聞はもう「改憲は国民の声だ」とか言ってますけど、実際に自分のところがやってる世論調査でも、9条については改正反対の方が多いですね。そうすると1億2千万で有権者8千万くらいだと思いますけど、4千万くらいの人は、9条改正に反対しているわけです。
 昨年7月の参議院選挙では6千万人が投票したんですけど、NHKの世論調査では、約3千万の人は9条改正に反対なんです。ところが、9条改正に反対している政党に投票した人は、社民党に300万票、共産党に400万票。6千万人投票したうち、700万人しか護憲政党には投票していない。あとの人は、本当は9条改正反対なのに、自民党と民主党に入れてるんです。自民・民主は「改憲しよう」と言っているわけですから、政党の選択と9条についての社会的な選択がずれているわけですね。逆に言うと運動が本当に3千万の人たちの9条擁護の声を何らかの形できちんと力にすることが出来れば、これは9条改正は絶対できませんし、発議もできないですよね。

9条改悪反対の3千万人をつなぐ運動を

 例えば、大江健三郎さんとか井上ひさしさん達が始めた「9条の会」の運動もその一つですが、そうやって9条改正に反対する3千万の人たちの声を何らかの形で力にすれば、これはいくら国会の中で自民・民主が多数を取っていても実際には出来なくなる。ここが大きなポイントですよね。
 それは決して不可能ではないと僕は思います。
 最近の世論調査でも8割以上の人は「自衛隊は良い」と言っていますが、9条改正には過半数の人が反対しているし、「イラクの自衛隊は撤兵すべきだ」という人が7割もいる。これをどう考えるか。9条の中で自衛隊は良いけど、災害派遣などに頑張ってもらいたい。自衛隊が他の国の軍隊と同じように外へ出て人を殺すようなことはいやだと、そういう国民の意識だと考えるのが自然ですよね。その声が本当に出れば、9条改正には反対となる。本当にいま「憲法改正しよう」と自民党・民主党が頑張ってますけど、これで憲法改正ができなくなれば、政治は大きく変わりますよ。民主党だって「改憲」の旗を降ろさざるを得なくなるかもしれないし、福祉の問題についても考えざるを得なくなるかも知れない。そういう力をつくることができると思います。
(つづく)

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