見出し

◆第1605号(2005年1月5日付)◆


STOP!社会保険行政の民間開放

社会保障は国民の権利だ 

公共性と専門性に確信もってガンバルぞ

 みなさんは、「市場化テスト」という言葉、知っていますか? 小泉「構造改革」路線のもとで、日本社会を根本から変えようとする動きが加速しています。特に国民のもっとも切実な要求である社会保障制度は「自律自助」の名目で連続した改悪が行われ、また、行政責任の根幹である公務サービスまで民間に開放しようとしています。
 今、何が起きているのか、政・財界の狙いと私達のたたかいの方向などについて特集します。


社会保険を企業の儲けの対象にする「市場化テスト」

 小泉首相が繰り返し叫んでいる「官から民へ」の意味は、一言でいえば公務・公共部門を含め、日本社会全体を市場原理と自由競争が支配するのに都合のいいように再編していくことです。その政策の中心に「公務の市場化」と「規制緩和」があります。
 今年、5月25日に小泉首相を本部長に規制改革・民間開放推進本部が設置され、行政サービスの民間開放を推進するための「市場化テスト」などが重要課題とされ、モデル事業としてハローワークや社会保険事務所の「公設民営」なども含め短期間の論議で実行に移そうとしています。
 12月9日、社会保険庁は2005年度からモデル事業として「非コア業務」とし(1)強制徴収を除く国民年金保険料の収納業務(2)年金電話相談センター業務B未適用事業所の適用促進業務などの社会保険業務を「市場化テスト」の対象にすることを明らかにしました。
 「市場化テスト」は、公務サービスの提供者を官民が対等に競う入札で決める仕組み(官民競争入札制度)としています。その狙いは、国民の生存権の保障や生活の維持・向上を目的とする行政の役割を大幅に縮小することと民間大企業へビジネスチャンスを拡大することです。社会保険業務にこうした手法が導入された場合、当然のごとく制度の更なる切り捨てや現在、無料で実施されている年金相談など様々な行政サービスが有料化され国民へ一層の負担が考えられます。また、国政調査権や情報公開請求権が及ばない民間企業では民主的なコントロールが困難であり、倒産や事業からの撤退も考えられます。社保庁関連では、債権回収業者が社会保険料の徴収業務の開放、また、派遣業務を関連会社に持つ企業などが公設民営化(施設ごと包括的民間委託)などを提案しています。


民営化で社会保障ズタズタ
国民の利益は守られるか

 社会保険業務の民営化で職場はどうなるでしょうか。国民にとってはどうなのでしょうか。
 ◆厳しい年金保険料の取り立てとノルマ強化が進行する?
 今、多くの職員が社会保険庁批判を受け、頭を下げながら戸別訪問をおこない、複雑な年金制度について丁寧に説明し社会保険料の徴収に奮闘しています。説明だけで終わる日も多く苦労しています。
 この徴収業務を債権回収業者が請け負うとどうなるのでしょうか?
 債権回収業の性格上、制度説明は省略し「未納額はいくらになります。納期まで納めましょう」最後は、「年金がもらえなくなります」こんな調子になるのでしょうか?強制徴収の権限まで与えることを想像するだけで恐ろしくなります。
 ◆届書や行政相談の有料化がすすめられる?
 現在、無料で配付している届書や行政相談は採算を考え有料化されることも考えられます。年金裁定の届書の受け付けは、最低でも5000円!なんてことになりはしないか心配です。
 ◆業者が変わるたびに中断する業務、採算割れで倒産・撤退もあり?
 再度の入札により、業者が変わり、その都度、研修が繰り返され業務は中断します。しまいには採算割れのため、事業からの撤退や倒産も考えられます。


市場化テストは質が違う
丸ごと「公設民営」

 定員削減がすすめられる中、年金受給者の増大や制度改正に伴う業務量の増大で、社会保険業務の一部民間委託はすでに行われてきています。しかし、政府が考えている「市場化テスト」は、これまでの民間委託とは本質的に性格が違います。狙いは「職員」を含めた丸ごと「公設民営」です。
 「民」が落札した場合、その仕事に就いていた公務員は「別部門や他の役所、落札した企業に移る」ことになるといわれています。


憲法25条を基に運営を
社会保険行政は国の責任で

 社会保険業務は、国民の権利保障と直接関わっています。社会保険業務の「市場化テスト」による「民間開放」は、基本的人権を保障すべき国家の責任の放棄、後退を意味し、国民の安心を奪いかねません。憲法25条の規定は、国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという意味です。社会保険行政は国家の責任として社会保障制度確立の中心をなすものです。公共性をもつ行政として、住民と直接接する社会保険労働者の役割は益々重要です。
 その上、国民の権利保障のための専門性が常に求められています。
 広範な国民と共に「小泉構造改革 STOP」の声を拡げ、2005年春闘をおおいにたたかいましょう。


シンポジウム開催のお知らせ
 全厚生は国民が安心できる年金制度確立とそれを支える社会保険行政を国民の目線から考え、真の社会保険庁改革を実現するために「国民本位の年金制度と真の社会保険庁改革を考える」シンポジウムを大阪で開催することを決定しました。ジャーナリストや社会保障に精通している学者が社会保険庁の過去・現在・未来を縦横に語ります。多くの方の参加をお願いします。

「国民本位の年金制度と真の社会保険庁改革を考える」シンポジウム
日  時2005年3月5日(土)13:00〜17:30
会  場クレオ大阪北(阪急京都線淡路駅から徒歩10分)
大阪市東淀川区東淡路1-4-21
TEL 06−6320−6300
パネラー堤 修三 氏 大阪大学大学院教授(元社会保険庁長官)
芝田英昭 氏 立命館大学教授
浜田陽太郎氏 朝日新聞記者
杉浦公一 氏 全厚生労働組合書記長
コーディネーター 飯塚 勇 氏 全厚生労働組合副委員長


公務の市場化テストに私の意見

公共の福祉を利益の対象にするな  愛知県支部 組合員(23)
 業務の効率化をはかり、民間のノウハウを生かして、無駄を省いて、国民により良いサービスを与えるために市場化テストをする。そう言われれば、聞こえが良いものだが、ここで少し考えてみたい。民営化するということは、利益の追求を目指すということである。公のサービスは、利益よりも、公共の福祉のためにされるものであって、決して利益獲得のためではないのである。特に社会保険に関しては利益の再配分をして弱者を助けるのが目的であり、民営化されることによって利益の対象となり、公共の福祉のためではなく、企業の利益のためのものになってしまっては、本末転倒である。ただ民間に託すだけで、国民本位のサービス向上にはなりえない。国民犠牲の市場化テストは、絶対に許すべきではないのだ。


日本プロ野球選手会事務局長が語る

選手がいて、ファンあっての野球界

 プロ野球経営者側の横暴に史上初のストライキで待ったをかけた労働組合・日本プロ野球選手会。たたかいの中から選手たちは何を学んだのか。選手会の松原事務局長の共同記者会見に行って来ました。

●選手たちはどんな意識で取り組んだのでしょうか?
 球団数の削減は、選手だけでなく、球団職員や球場で働く裏方さんの雇用やその家族の生活など多くの人に影響があります。また、プロ野球を目指す子供たちの将来の職場を奪うことにもつながります。選手たちは、そうした意識で球団削減をくいとめようと取り組みをはじめました。さらには、会議の中で近鉄、オリックスの選手会長が「こんな気持ちを他の球団の人に味合わせたくない」と発言。そのとき、これはパリーグだけでなく野球界全体の問題だと、改めて全体で意思統一することが出来たと思います。

●選手が団結して取り組めた背景は?
 いままで、選手会が行ってきた野球普及活動が基礎になっています。例えば、技術指導のDVDを作り全国の高校チームに配布しました。また、高野連と技術指導のシンポジウムを始めました。こうした活動への参加を通じて、一人ひとりが自分が選手会の一員だという意識を高める事になり、一丸となった取り組みにつながったと思います。

●ストを構えた時は?
 出来れば回避し、話し合いの解決を目指していました。しかし、球団側の回答は非常にあいまいで、妥協したらファンに説明できない。経営者側の言いなりの選手会になってしまうとの決意からでした。

●一連のたたかいから選手が学んだものは?
 おかしいと思うことがあったときにはきちんと発言し、行動しなければいけない、ということです。経営者だけが野球界を支えているわけじゃない。選手がいて、ファンあっての野球界です。選手たちには、これを守っていく責任があるんだ、そういう自覚が生まれました。 プロ野球の改革はまだスタートラインについたばかりです。山積みの課題解決に向けた、たたかいを選手会として続けていきます。
 今回の記者会見に参加して、プロ野球選手会の野球界改革を目指すその姿勢が、多くのファンの支持を集めた事を再確認。成績主義のプロ野球界でも、選手やそこで働く人の権利を守るために力を合わせることが大切だと痛感。改めて労働者の団結、労働組合の必要性を確信しました。
(神奈川県支部)


ミャンマーとの架け橋に
研修生に茶道と華道を教えて  大分県支部

 大分県が始めた海外技術・文化研修員受け入れ事業で、今回、初めてミャンマーの首都ヤンゴンの旅行会社に勤めているピュ・ピュ・ゾーさんが観光業や福祉について学ぶため研修生として来県し、地元の人たちなどとの異文化交流も期待されていました。そもそも、大分県とミャンマーの関わりは、大分県青少年団体連絡協議会が青少年の健全育成を図るため、以前から県内の中・高生をタイやミャンマーの厳しい現実を体験させることで、飽食の時代に暮らす子供達に本当の豊かさを考える機会を与えようと国際交流に取り組んでいました。
 本人の日本の伝統文化を学びたいとの希望から、3カ月の滞在期間中の土・日に茶道と華道の基本的作法と心得を教えましたが、片言の日本語で一生懸命理解しようとしている姿に今の日本人が忘れている真剣さが感じられました。彼女は「日本人もミャンマー人も、優しい心根は同じ。大分とミャンマーの架け橋になりたい」と抱負を語って帰国しました。話しているとき、彼女がふと涙を流し「貧しい国を思い出したので」と言った笑顔が忘れられません。


ベトナム視覚障害児と交流
マッサージ・トレーニング・スクールを開設  神戸支部 (中央執行委員)

 ベトナム視覚障害児との交流も十年目を迎えました。
 ベトナム視覚障害児者との交流のはじまりは、 1995年7月阪神・淡路大震災直後、ベトナムの福祉調査団が来日し、兵庫県の視覚障害者に対して激励をいただいたことから始まります。
 この出来事を契機として、翌96年に初めて日本の視覚障害者と関係者20名がベトナムへ表敬訪問し、交流が始まりました。以降毎年訪越し、マッサージセミナーの開催、スポーツ用具の寄贈、視覚障害者サッカー大会の開催や普及活動など、いろいろな交流や支援活動を実施しています。
 ベトナム視覚障害児の状況は大変厳しく、6才から15才の約9割は就学できていません。就労は宝くじ売りや、ほうきやゴザ作りなどの軽作業ですが、就業率は3割程度です。多くは家族の援助で生活をしています。
 近年日本などの援助により、マッサージを新職業にするためのプログラムが取り組まれはじめました。私達も全厚生の仲間や一般の方々の支援を受けながら、ホーチミン市の中心から車で40分程のところにマッサージ・トレーニング・スクールを開設。昨年9月から授業が始まりました。
 学校の名称は「NHAT QUANG(日光)」といい、お寺の一角に建物を立ち上げました。学生は18才から29才の15名(女性4名、男性11名)です。月曜から金曜の毎日、8時から授業が始まります。解剖学やマッサージの実習などを行い、2年で卒業する予定です。
 視覚障害者スポーツの普及では、視覚障害サッカーを紹介したところ、アッという間に広がって、今年の8月には、アジア大会開催を計画出来るまでに関心が高まっています。ベトナムの男の子は皆サッカー好きです。勿論視覚障害の子供達もサッカーが大好きです。今まで見ることも出来なかったサッカーを、自分たちで楽しめる喜びに、目を輝かせてボールを蹴っています。(上と左の写真は昨年12月、神戸支部の細川健一郎さんと訪問したとき撮影したものです)
 順調そうな活動ですが、まだまだ資金不足の状態です。皆さんからの援助をお願いします。

【郵便振込】
名義:ベトナム視覚障害児の夢と未来を支える会
口座番号 00920=6=46334


インタビュー
憲法9条も25条も改悪許さない  一橋大学社会学部長  渡辺 治 さん

 日本国憲法を改悪しようという動きがかつてなく強まっている中、一橋大学社会学部長の渡辺治さんに、改憲の狙いや改憲を許さない取り組みについてお話をうかがいました。

公務の民間開放は構造改革の新しい段階

 小泉政権に入って、構造改革は明らかに新しい段階に入りました。今の社会保険庁の問題も規制改革・民間開放推進会議の動きもすべて、新しい段階の構造改革です。
 もともと構造改革は、日本の多国籍大企業の競争力を強化するために、既存の政治がもっている大企業にたいする不効率な部分を取り払うというのがポイントです。一つは、社会保障制度の改悪。法人税や社会保険の負担が大きいと大企業の競争力はマイナスになる。そこで、企業の社会保険、税負担を軽くするために、徹底して社会保障制度を切りつめました。もう一つは規制緩和。農業や自営業、労働者にたいする保護を取り払い、規制をどんどん緩和しました。この構造改革の二つの柱は小泉政権になってもガンガンやっていますが、さらに新しい段階に入りました。
 一つは、企業の競争力をつけると同時に、グローバル企業に直接市場を与える、直接グローバル企業を救済するということです。
 りそな銀行に対する公的資金注入は典型的です。企業は競争力をつけたけれど、売るところがない。不良債権を処理しても、銀行はお金を貸すところがない。不良債権処理で中小企業はつぶれているわけですから。そこで、特殊法人改革と称して住宅金融公庫をつぶして、70兆円の市場を民間の銀行に提供した。住宅ローンは一番安定した銀行の市場ですから。さらに、郵政の民営化で、何百兆円という市場を民間に開放しようとしています。また、混合診療で民間保険に市場を提供する。そのために公的な制度を切り捨てる。公的部分を切り捨てる行政改革は、昔は公務員を削減することによって、財政の縮小を狙っていたけれど、それだけではなくて、民間企業に市場を提供するに至った。これが小泉首相の言う「民ができるものは民へ」です。民でできても、官でやらなくては、貧困な人々、困難をかかえている人々が救われないにもかかわらず、です。
 もう一つは、小泉首相は、単に構造改革をして、大企業に力をつけさせるだけじゃなくて、力をつけた結果、困難に陥った多くの人々を、福祉国家でないかたちで統治できるような新しい新自由主義型の国家を作ろうとしています。一言で言うと、アメリカ型の国家です。アメリカ型国家の3つの柱は、階層的な福祉社会、保守二大政党制、治安国家。それで戦争をやっている。小泉首相は、日本もアメリカのような国にしたい。
 日本は、自民党政権のもとであるけれど、憲法25条のもとでさまざまな運動があって、たとえば医療については皆保険制度です。が、国民健康保険料を払えない人は健康保険証を取り上げられています。この人達の受診率は低く、お金のない人たちは医者に行けない、アメリカのような階層型にすでになっている。これをもっと徹底しようとしています。
 そして上層の人達の意見をきちんと政治に反映させるための保守二大政党制がある。共産党と社民党をできるだけ小さくして、下層の人達が福祉の要求を出しても受け皿となる政党をなくす。民主党と自民党の間で、政権交代しても、構造改革はストップすることはない。アメリカと同じ型にすればいいと。そして、警察をでかくして、民主的な運動や労働組合を規制していく。

憲法25条がじゃまになる

 構造改革が新しい段階に入ってくると、憲法が持っている平等の考え方、生存権の考え方と大きく抵触関係が生じてきます。生存権の考え方が何が問題かというと、国民は自分たちの福祉が切り捨てられたときに、裁判で訴える権利がある。これが、福祉の切り捨てとか、混合診療とか、介護保険改悪をやっていったときに、憲法25条の理念があるとまずくなるのです。日経新聞、読売新聞の改憲案も、期せずして、ぜんぶ生存権をいじってきました。自民党憲法改正草案大綱も生存権を格下げして、「社会的費用の負担の責務」を入れています。

いちばんの狙いは憲法9条

 大きく言って現代の改憲には二つ狙いがあります。一つは、大企業の安全・特権を守るために、自衛隊を海外に自由に出動させて日本を軍事大国化し、アメリカと手をつなぐための障害物である憲法9条を改悪する。これが一番切実で、改憲勢力は、なんとか早くやりたい。よく「自衛隊をイラクに派遣して、もう憲法はズタズタじゃないか」と言われるけど、イラクの自衛隊は他の国の軍隊と同じように戦争行動はできない。まだ人を殺してないし殺されてもいない。しかしそれでは軍事大国としてアメリカの要請に応えられないので、憲法9条を変えて「普通の軍隊」になりたいという欲求が非常に強くあるわけです。
 もう一つは、構造改革をもっと効率的に推進するためと、それから構造改革で破綻した国家を新自由主義型の国家に締め直すためです。これは少し長期的な狙いです。

自民党憲法改正草案大綱は改憲勢力の本音

 例えば今度の自民党憲法改正草案大綱では、「参議院を任命制」にして殆ど権限を与えていません。現在のような2つの民主的な議会制度では、様々な角度から2回も議論ができてしまう。構造改革が進まないわけです。それから構造改革を進める中で、社会が非常に大きな困難を抱えるようになりました。中高年はリストラ。正社員をうんと減らす中で、大量の若年層が失業か非正規に留まる。しかも最低限の社会保障までズタズタに切り裂かれて様々な破綻を余儀なくされる。90年代末から、考えられなかったような犯罪の重大化とか、自殺者3万4千人とか、社会の貧困化と分裂が起こってきます。
 そこで、社会を共同体的にもう一度締め直すために、「家族の法的保護」を入れて、女性の労働市場進出に歯止めをかける。「天皇の元首化」で国民を統合する。愛国心を教えるために「教育の目的」を入れる。また9条改正では、自衛隊の制服組が「あらゆる場合に自衛隊を海外に出せる」と書いた。こういうことが自民党憲法改正草案大綱で書かれていました。あまりに露骨すぎて撤回されましたが、そこに自民党や財界の本音があることをちゃんと見る必要があります。(次号に続く)

◆渡辺先生には、引き続き、「軍事大国化と構造改革への対抗策」、「国民投票」、「改憲は阻止できるか」、などについてお聞きしています。お楽しみに。


沖縄のつどいに親子で参加して

憲法9条かかげて命つなげたい

 沖縄には20年来、特別な思いがあったので、昨年11月の国公女性のつどいin沖縄に、長男(中1)と次男(小5)とともに参加しました。次男は、糸数のアブチラガマ(病院壕として使われていた洞窟)が怖かったようです。洞窟の闇の中が、当時は真っ赤に燃えた鉄のかたまりが降ってくる外に比べたら天国にも思えたと聞き、戦争という狂気の中にいることの異常さを、そして今もそれがすぐそばにあると言うことを感じたのではないでしょうか。長男は、台風銀座と言われる島の生活や基地と隣り合わせの現実を、割と冷静に見つめていたようです。辺野古の海に行った時、8年と209日座り込みを続けているという方から話を聞き、命をつなげていくのは平和の時しかできない、今のうちにできるだけのことをしたい、と強く思いました。憲法9条を今こそ高く掲げて。
(感染研支部)

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