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◆第1604号(2004年12月15・25日付)◆


厚生共闘 尾辻厚生労働大臣と交渉

社会保険業務の民間開放やめよ 

 12月7日、厚生共闘(全厚生・全医労)は、尾辻厚生労働大臣と3つの要求項目((1)「大綱」を撤回し、ILO勧告にそった公務員制度改革を行うこと(2)高度専門医療センター・ハンセン病療養所の看護師を増員すること(3)社会保険行政は国の責任で拡充し、市場化テストの対象として民間開放を行わないこと)で交渉を行いました。
 保木井議長(全医労委員長)が(1)と(2)を、杉下副議長(全厚生委員長)が(3)について要求趣旨説明を行いました。
 公務員制度改革では、「政府・行革推進事務局が今年8月に示した『公務員制度改革関連法案の骨子(案)』は、能力等級制の導入と再就職の内閣一元的管理を2本柱としているが、ILOが二度にわたって勧告した公務員労働者の労働基本権回復問題の検討には触れていない、また、天下りについては、現行よりも緩和される内容になっている」と指摘し、「公務員制度は、労働条件の基本に関わる問題であり、労使交渉・協議を尽くすこと」と要求。
 看護師の増員では、「高度専門医療センターは、4〜5人夜勤が必要な病棟もあるが、最低でも全病棟で3人夜勤体制の確立、ハンセン病療養所の不自由者棟の夜間看護体制の強化のため、早急に看護師を増員すること」と要求しました。

市場化テストの導入やめよ

 市場化テストでは、「規制改革・民間開放推進会議は、公務の民間開放の手法として市場化テストを持ち出し、モデル事業として社会保険業務を対象に上げている。社会保険制度は、憲法25条の生存権保障に基づく制度であり、これを後退させたり、縮小させてはならない。同時に、事業運営については、国民の信頼のもと、安定的、継続的に行政機関が責任をもって実施しなければならない。こうした極めて公共性の強い事業を営利を目的とする民間企業に委ねることには重大な危惧をいだくものであり、強く反対する」と主張し、「社会保険行政は、市場化テストの対象として民間開放することなく、また、社会保険庁の独立行政法人化や民営化を行わないこと」と要求。
 これらの要求に対して尾辻大臣は、一括して次のように回答しました。
 公務員制度は、「職員の勤務条件の基本に関わる問題であり、関係職員団体からの意見も十分聞いて検討されるべきものである。制度を見直す上で十分な協議が不可欠であると考えており、引き続き行革推進事務局に、各省及び労働組合と十分協議が行われるよう働きかけていきたい」と回答。
 看護師の増員は、「看護体制について、看護業務の実態、入院患者の状況等に応じた「複数・月8日以内夜勤」体制の確保を最重点事項として取組んできた。非常に厳しい定員事情の中、必要度・緊急度・優先度を十分考慮し、人員の確保につとめたい」と回答。
 社会保険庁関係については、「市場化テストについては、社会保険業務の効率化の観点から外部委託の範囲を拡大していく必要があると考えている。社会保険庁の業務のうち、権利義務を具体的に確定する業務や『公』の名義で行うことが必要な業務などは、引き続き社会保険庁自らが実施する必要があると考えているが、例えば、国民年金保険料の収納業務や年金電話相談業務などは、外部委託の拡大を検討しており、市場化テストの実施についても検討している。また、独立行政法人化や民営化については、有識者会議の議論の結果を踏まえ、適切に対応していきたい」と回答しました。
 大臣の回答を受けて、保木井議長は、「看護体制強化のため、看護師増員について格段の努力をお願いしたい。職員は国民の大事な生活部門の援助ができる仕事に誇りを持っている。国民生活の安全を守るべき、これらの事業を民間企業のもうけの対象にすることは許されることではない」と主張して交渉を終わりました。


リレーずいそう
● 気になる言葉
 みなさんは、まわりの人が使っている言葉が実は間違っていても、なかなか指摘できずにもどかしく感じることってありませんか?ちょっとおこがましいですが、どうしても気になってしまう言葉をひとつ。
 「あの2人はいつもケンケンガクガクと議論している」、この使い方が間違っていると気づいたあなた、素晴らしい。間違いだと気づかなかった方、ラッキーですね。大いに論じ合うのはカンカンガクガク、口やかましく騒ぎ立てるのがケンケンゴウゴウ。日本中どの辞書を調べてもケンケンガクガクという言葉はないんです。にもかかわらず、間違える方が実に多いんですが、まさか大の大人をつかまえて「ケンケンガクガクは間違ってます!」って言うわけにもいかないんですよね、これがまた。でも、ついつい間違って使ってしまう言葉って色々ありますよね。汚名挽回、青色吐息、素人はだし、的を得た意見などなど、ただこういったものは繰り返し使われていくうちに、正しいものとして浸透していく傾向にあるようです。最近ではさしずめ「全然大丈夫です」といったところでしょうか。
 最後に気になる言葉づかいをひとつ。飲み屋などに行くと、「お飲物のほう」とか「ご注文のほう」、「お勘定のほう」など、やたらと「〜のほう」を耳にします。「〜のほう」はなくても十分会話は成立すると思うんですが、この提案のほういかがでしょうか。
(岐阜県支部 組合員)


News
● イラク派遣延長許さない ―12.7女性の緊急集会開く―
 自衛隊のイラク派遣延長に反対する緊急集会が12月7日、衆院第2議員会館で開かれました。航空労組連絡会や日本医労連など労組の女性代表らが呼びかけたもので、約180人が結集。全厚生からも参加しました。ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは、「イラク市民が期待するのは自衛隊ではなく、インフラ整備などの本格的な復興支援。一人の国民として憲法違反の自衛隊派遣は容認できない」と批判しました。(写真上)

● 長時間・過密労働なくせ ―12.8霞ヶ関昼休みデモ―
 「長時間・過密労働とサービス残業をなくそう」と国公一般労働組合は、国公労連と東京国公とともに12月8日昼休み霞ヶ関デモを実施。210人が参加し、全厚生は本省・統計支部と本部から16人が結集。(写真上)参加者は、「実効ある残業規制を」「人間らしい働き方を」「デートが出来る時間に帰せ」などのプラカードを手に行進しました。

● 派遣延長閣議決定に抗議 ―小泉首相に抗議メール―
 政府は12月9日、14日に期限を迎える自衛隊のイラク派遣を1年延長することをまともな国会審議を経ないまま、延長反対の多くの国民世論を無視し、閣議決定しました。政府の暴挙に対し「自衛隊のイラク派遣延長の閣議決定」を行わないよう、緊急抗議打電行動を取り組み、全厚生は8日、小泉首相宛に抗議メールを送信しました。


「市場化テスト」で社会保険庁交渉

社会保険制度の運営は国の責任で

 全厚生は、12月14日、社会保険庁と交渉をしました。交渉は杉下委員長以下本部役員及び、各県支部代表が出席し、社会保険庁は小林次長、宇野総務課長らが対応しました。  冒頭、杉下委員長は、公務リストラと一体で進めている「市場化テスト」(官民競争入札、以下「市場化テスト」)について、国民の生存や生活の維持・向上を目的とする分野における行政の大幅縮小と公務部門を民間企業の営利活動の対象にさらすものであり重大な問題であると指摘し、職員説明を行うことなく、社会保険業務の一部「市場化テスト」を受け入れたことに対して社会保険庁の見解を質しました。  小林次長は、前段に社会保険庁に関する様々な批判がされる中、社会保険庁の責任者として謝罪の意を表すとともに、日々、現場の第一線で国民と直に対応している職員の努力に対して感謝の意を表しました。また、こういうことがあってはならない組織であるということを、しっかりと肝に銘じておく必要があるとしたうえで、社会保険業務の一部「市場化テスト」について下記の見解を述べました。

「市場化テスト」に対する保険庁の見解

 社会保険業務の一部「市場化テスト」について小林次長は、「規制改革・民間開放推進会議」及び2度にわたる閣僚級折衝(12月6日、9日)の結果、「非コア業務」である(1)強制徴収を除く国民年金保険料の収納業務(2)年金電話相談センター業務(3)未適用事業所の適用促進業務を実施することについて政府内での合意形成がなされた。具体的な業務取り扱いや事務所選定などはこれから作業に入る、と回答。
 「市場化テスト」と民間委託の違いについては、効率的で質の高いサービスの実現を目指すため、緊急対応プログラムの一環として外部委託の範囲を拡大していく必要があり、「市場化テスト」もこの方針を具体化していく上での手法の一つと認識している。したがって、基本的には民間委託と性格を異にするものではないと考える。
 公共性や事業運営に支障が生じることは考えられないかとの問いに対しては、「市場化テスト」を行う業務は「非コア業務」(前記(1)〜(3)) であり、これらの業務は権利義務を具体的に確定したり、「公」の名義で行うことが必要な業務でないこと、また、既に業務の効率化やサービスの向上のためにその一部の業務を民間委託していることなどから、これらの業務を民間委託しても社会保険業務の公共性や機能を損なったり、統一的な事業運営に支障が出たりはしないものと考える。
 民間が落札した場合、その業務についている公務員の処遇についての問いには、民間委託の具体的な実施方法は、市場化テストの実施の検討と併せて今後検討していくことから、現時点で明確な答えはできない、権利義務を具体的に確定したり、「公」の名義で行うことが必要な「コア業務」をより充実するために振り向けることは考えられる。
 すべての業務で「市場化テスト」が可能になるのではと質したのに対し、既に「規制改革・民間開放推進会議」や閣僚級折衝においても「市場化テスト」の対象として、「非コア業務」の整理が図られたところである。社会保険庁として、「コア業務」について、庁が直接実施すべきものとして堅持していかなければならないと考える、と回答しました。

民間委託と「市場化テスト」は異なる

 これに対し、杉下委員長は、この間の飛躍的な業務量の増大、さらに、求められる行政サービスの向上とも相まって、社会保険業務の民間委託が行われてきた。しかし、「市場化テスト」はこれまでの民間委託とは本質的に性格を異にするものであり、こうした仕組みを導入することは、官民での際限のない競争をもたらし、公正で安定的な業務遂行に悪影響が及ぶ。さらに国政調査権や情報公開請求権が及ばない民間企業では民主的なコントロールが困難であり、倒産、営利上の撤退もありうるという特性を考えれば、問題は深刻だとし社会保険庁の見解について指摘しました。
 小林次長は社会保険庁の置かれている状況は、正に組織存立の瀬戸際。全職員が「信頼回復」に向け、よりよいサービスとはどのようなものであるか、全厚生に参集される皆さんとも、いろいろと意見交換を行い目に見える形で庁改革の成果を内外に示すことができるよう努める。また、「市場化テスト」の実施に当たり、職員の労働条件の後退や公正で安定的な業務遂行に悪影響が出ないよう十分検討すると回答しました。

緊急対応プログラムで十分な労使協議を

 引き続き、飯塚副委員長が、社会保険庁改革に対する緊急対応プログラムについてふれ、内容には都市部の相談対策、事故防止対策など趣旨や項目は、全厚生がかねてから要求してきた事項もある。なかなか実施してこなかった社会保険庁の姿勢が、今日のような様々な批判の基となっているとし、緊急対応プログラムの実施にあたっての業務運営については事務局宛の通知日とマスコミ発表日が同日になっているケースもあり、現場に混乱をもたらしている。十分な労使協議と必要な予算や体制の確保について要求しました。さらに、夜間や休日の年金相談については、多くの国民が本当に求めているのは、平日の異常な待ち時間の解消や十分な相談時間の確保などが基本であり、全厚生が指摘している都市部対策、急増する受給権者や団塊の世代問題などの抜本的な対策の必要性を訴えました。また、メンタル対策、定員要求など課題別要求に対する見解を総務課長に求めました。


近ブロ 第5回近ブロ協議会総会開く

連帯の輪を広げて

 全厚生近畿ブロック協議会は11月20日、大阪国労会館において第5回総会を開催しました。勝井議長があいさつ、全厚生本部の杉浦書記長、国公近畿ブロック滝口議長そして東海ブロック澤村議長から激励と情勢の報告を受けた後、川口事務局長が一年間の運動の総括と2005年度の運動方針を提案しました。
 本年3月末をもって衛研支部大阪分会が職場の閉所とともに近畿ブロックの組織から消滅してしまいましたが、2005年4月には医薬基盤研究所が設立されます。また、10月27日に結成された、関空の検疫労組の正岡委員長もあいさつに駆けつけ、ブロックとしての機能を生かしさらなる連帯の輪を広げていくことを確認しました。
 総会終了後、神戸支部の紹介で、西宮市社会福祉協議会「青葉園」の清水明彦さんを講師に、障害者の福祉サービスの現状と問題点について学習会を開催しました。  
2005年度全厚生近畿ブロック協議会幹事は次のとおり。▽議長 勝井正(大阪支部)、▽副議長 逢坂忠(神戸支部)、西村伊知朗(滋賀県支部)、山本潔(京都支部)、▽事務局長 川口博之(京都支部)、▽事務局次長 津川清司(大阪支部)、▽幹事 木瀬知彦(滋賀県支部)、小坂昌博(神戸支部)、▽会計監事 川名敦(神戸支部)


公務の「市場化」 私の意見

民間で個人情報守れるか  愛知県支部 組合員
 今、個人情報ろうえい防止を職員に徹底している中、民間に委託するのはいかがなものでしょうか。委託業者が情報をもとに別ルートで別の業者に転売することが考えられます。「社保庁変わります」とか言っていますが、新長官になってから、職員の肩身がすごくせまくなっている気がします。必要以上にへこへこしすぎだと思います。今、必要なのは何かを職員、現場の声を元に考えるべきだと思います。

本当の狙い隠されている  大分県支部 組合員2名
 「俺たちは、一体、どうなるのだろう。俺達に何か責任があるのか」若い職員は動揺している。腹立たしい思いを何かにぶつけたくとも、自分に跳ね返ってくる。「情けないことになった」とOBも言う。本当に責任あるのは誰なのか。社会保障に向けられた大きな意図がマスコミの連日の報道の中に隠れてしまっている。今はじっとしているしかないのか?ただ、その一つ一つの動きの意味はしっかり捉えておきたいと思う。

福祉サービス切り捨て  函館支部 組合員
 障害者の施設において、市場化テストというのはありえないことかと思いますが、もし、強行されるのであれば、障害者の権利を切り売りし、そのコマ切れで、福祉サービスを行うということで、最も守らなければならないものを無視することではないかと思います。断じて許してはならないことだと思います。

◆◆あなたの意見募集中◆◆
公務の「市場化」に対してあなたの意見を全厚生へお寄せ下さい。
右記のアドレスへZENKOSEI@zks.dp.u-netsurf.ne.jp

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