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◆第1594号(2004年8月15・25日付)◆


2004年人事院勧告 「マイナス勧告」許さず
地域間格差拡大にも言及
寒冷地手当の改悪を強行

 人事院は8月6日、一般職国家公務員に関わる給与等の勧告・報告を国会と内閣に行いました。「較差は微小なもので、官民給与はほぼ均衡」として月例給改定を見送り、初の「ベアゼロ勧告」を行うとともに、民間企業では回復傾向にあるといわれる一時金についても、「支給月数が(官民で)おおむね均衡」として改定しませんでした。
 結果として、3年連続の月例給引き下げ、6年連続の年収マイナスという最悪の事態を回避できたことは、ナショナル・センター全労連に結集し、最賃闘争とも結合させて全国の職場・地域から公務・民間一体でたたかってきた到達点ともいえます。
 しかし、人事院は、寒冷地手当について、250を超える地方議会の意見書採択にも示されている、地域と職場に広がった改悪反対の声を押し切り、機械的な「民間準拠」論による支給地域の切り捨てと支給額の切り下げなど、全面的かつ大幅な制度改悪を本年10月から実施する勧告を強行しました。
 加えて、民間賃金の低い地域と「均衡」させるところまで俸給表の水準を引き下げた上で、「地域手当」を新設して最大20%もの地域間格差を公務員賃金に持ち込む姿勢を示したほか、昇給カーブのフラット化をはじめとする年功賃金体系是正と「査定昇給」導入などの実績反映の給与制度への転換や、「本府省手当」の新設など機関間格差の拡大にも言及するなど、1985年以来ともいえる給与制度の大「改革」の具体化方向を打ち出しています。
 政府が6月に決定した「骨太の方針2004」で、「国家公務員賃金への地域の民間賃金水準の反映」が強調され、人事院にはその具体策を本年勧告で示すことが求められており、人事院は、そのような圧力に屈したともいえる経過の中で、給与制度の大「改革」を打ち出しました。
 また、「報告」では、育児を行う職員の部分休業の拡充、短時間勤務の導入、男性職員の育児参加促進策の検討などにも言及。同時に、政府が進めている「公務員制度改革」も意識して、能力・実績に基づく人事管理、再就職ルールの適正化やキャリアシステムの見直しなど、従来から問題意識を表明していた課題にも触れています。
 全厚生は、国公労連に結集し、官房長交渉(厚生共闘)や、人事課長交渉などを実施し、中央行動、人事院地方事務局包囲行動、寒冷地手当改悪反対地域集会などへの参加、賃金改善署名4、334筆(全体27万3千筆)の取り組みなどを行ってきました。引き続き、秋の臨時国会での寒冷地手当法改悪反対、給与の地域間格差拡大につながる制度改悪に反対するたたかいを強めましょう。

2004年勧告の主な内容
本年の給与勧告のポイント
 月例給、ボーナスともに水準改定なし(6年ぶりに前年水準を維持)
(1)官民給与の較差(0.01%)が極めて小さく、月例給の改定を見送り
(2)期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合と均衡
(3)寒冷地手当の支給地域、支給額、支給方法を抜本的に見直し
官民給与の比較
 約8,100民間事業所の約36万人の個人別給与を実地調査(完了率92.7%)
<月例給> 官民の4月分給与を調査(ベア中止、定昇停止、賃金カット等を実施した企業の状況も反映)し、職種、役職段階、年齢、地域など給与決定要素の同じ者同士を比較
官民較差 39円 0.01%〔行政職(一)…現行給与 381,113円 平均年齢 40.2歳〕
(寒冷地手当の見直しを含まない場合の官民較差△207円△0.05%)
<ボーナス> 昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
民間の支給割合 公務の支給月数(4.40月)とおおむね均衡
改定の内容
<月例給>  官民較差が極めて小さく、俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、月例給の水準改定は見送り
<寒冷地手当> 地域の公務員給与の見直しの一環として、民間準拠を基本に、抜本的に見直し
(1)支給地域 北海道及び北海道と同程度の気象条件が認められる本州の市町村に限定
(市町村数の4割強、職員の約半数を対象から除外)
(2)支給額 民間事業所における支給実態に合わせて、支給額を約4割引下げ
(最高支給額 年額230,200円→ 131,900円)
(3)支給方法 一括支給から月額制(11月から翌年3月までの5箇月間)に変更
(4)実施時期等 本年の寒冷地手当(現行10月末日一括支給)から実施。実施に当たっては所要の経過措置
<国立大学法人化等に伴う給与法等の規定の整備>
(1)教育職俸給表 教育職(一)は1級を削除、教育職(二)及び教育職(三)は廃止、教育職(四)は名称を教育職(二)とし、4級、5級を削除
(2)指定職俸給表 指定職12号俸を削除
 任期付研究員、特定任期付職員の俸給月額の上限を指定職11号俸相当額に変更
(3)研究員調整手当ハワイ観測所勤務手当義務教育等教員特別手当 廃止等の所要の改定
[実施時期]公布の日から実施
<その他の課題>
(1)特殊勤務手当の見直し 引き続き手当ごとの実態等を精査して所要の見直しを検討
(2)官民比較方法の見直し 比較給与種目(通勤手当、俸給の特別調整額等)の見直しのほか、民間企業の人事・組織形態の変化に対応できるように官民比較方法の見直しを検討
(3)独立行政法人等の給与水準 役職員の給与水準の在り方等の検討において今後とも必要な協力


リレーずいそう
● 草の根の運動こそ核兵器廃絶の力
 今年の原水爆禁止世界大会(広島)は、政府代表や世界のNGO・反核平和運動の代表の「2005年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議では、2000年のNPT再検討会議において米国政権も同意して、満場一致で合意した核兵器保有国が自国の核兵器の完全廃絶を達成する明確な約束の実行を迫るため、全世界で集中的に情熱あふれる大規模な運動を展開しなければならない」との発言が相次ぎました。
 私はこの大会参加で、第2の「スーパー・パワー」と呼ばれる「草の根の運動」が連携し、世論を高めることこそ、核兵器廃絶を実現する基本的な力であることを再認識しました。
 そのため日本の誇りである「平和憲法」を守る運動と共に、新たな国際署名「いま、核兵器の廃絶を」の集中的な取組みや被爆者と連帯した「原爆写真展」の開催など多彩な運動を地域で強めていかなければならないと決意を新たにした大会でした。
(ハンセン病研究センター支部長)


News
● 1リーグ制反対!パの灯を消すな ―日比谷野音に400人が結集―
 プロ野球近鉄とオリックスの合併に反対するファン400人が8月11日、デモ行進と反対集会を開きました。(写真)主催したのは近鉄バッファローズの私設応援団関東支部。日比谷公園から新橋周辺を「球団合併反対」「ファンの声を無視するな」を訴え約1時間デモ行進。行進後は日比谷野音で集会を開催。「デモ行進が楽しかったよな!」の司会者の呼びかけに大きな拍手と「ガンバロー」の声が挙がりました。民主党、共産党等が来賓として出席、プロ野球選手会、近鉄選手会、オリックス選手会からメッセージが寄せられました。


女性部が労働条件改善で人事課と懇談

女性が働きやすい職場に

 全厚生女性部は8月2日、大臣官房人事課と「女性の労働条件改善を求める要求」で懇談しました。女性部は、金子部長代行、木立事務局長はじめ各幹事と、本省・統計・国衛研・感染研・人口研・国リハの各支部の代表ら13人が出席。人事課は、西山人事調査官、井上補佐らが対応しました。懇談では、「女性の労働条件改善を求める要求」の重点項目についての回答を人事調査官が一括して行い、それを受けて、さらに各参加者が発言しました。
 「超過勤務制限対象を小学校6年生までに」について、統計支部から「子どもをめぐる社会状況は非常に不安が大きい。生の声を制度に反映していただきたい」と発言。調査官は、「厚生労働省としても認識しているので関係機関に伝えたい」と回答。超過勤務縮減について、本省支部から「子育て中で平日残業できない人は、土日に出勤して仕事をこなしている。実効ある対策を」と要求。調査官は、「対外的な部分もあり、管理者の意識改革だけではすすまない。業務の分析をして改善できるところは改善する」と回答しました。
 組織・機構の改編にあたって感染研支部から、「基盤研に移行するにあたって、労働条件が示されていないのに、9月には『意思表示』しなければならない。俸給表を含め、早めに示していただきたい。また、メンバーの中に2級高位号俸者も含まれている。処遇が後退することのないよう対応を」と要求。調査官は、「先行独法を参考にしつつ当然やることはやっている。後退させないというのは非常に重要であり、そのようなことがないように、また、早めに示すように厚生科学課に話しておく」と回答。
 女性職員の採用・登用について、国衛研支部が、人員構成にかかる性別・等級別の分布図を説明しながら、「選考採用になってから女性の採用が少なく、女性の部長は一人だけ。もっと登用をはかるべき」と要求。調査官は、「処遇関係は全部人事課にくる事になるが、厚生科学課に話はする」と回答。2級高位号俸の昇格改善については、人口研支部が「社会保障研究所との再編による狭間で昇格が遅れている。研究所は論文だけではなく、研究を支えるためのいろいろな研究支援の仕事がなくては成り立たない。しっかり評価を」と発言。調査官は、「共同研究などで実績が挙げられるよう、各機関に強く働きかけていく。昇格に結びつくような知恵が必要。人事課としても承知しておく」と回答しました。
 非常勤職員の処遇の改善について、国リハ支部から、「高次能機能障害は国リハのモデル事業でありながら非常勤職員に頼って成り立っている。しかも、時給が専門性に見合っていない低さである。処遇改善を」と要求。調査官は、「必要な事業には必要な人を手当てするのが筋。定員要求はきびしいが努力はする。非常勤ならば、それにふさわしい処遇をするのが原則。うまく事業の中でやっていただくよう、リハセンターの方には伝えておく」と回答しました。
 メンタルヘルス対策について、「メンタルで休んでいる人の対応で対応する人がつぶれてしまうことがある」と、対策強化を要求。調査官は、「部や課室の中で信頼できる上司のもとに、まわりでうまく支える人達をどう作るか、健康相談室がリードするなど、意識して色々な形で対策を考えたい」と回答しました。
 最後に、金子部長代行が、「女性の働きやすい職場は男性にとっても働きやすい職場。職場環境改善を」と要求し、交渉を終えました。
(女性部事務局長)



原水爆禁止世界大会広島に参加

被爆60周年に核兵器廃絶を

 「『いま、核兵器の廃絶を』の大波をおこそう」―。原水爆禁止2004年世界大会・広島が4日から6日まで、広島市内で開催されました。4日の開会総会には、全国各地から、「ピースツアー」ののぼり旗を手に、Tシャツに核廃絶バッジを着けた青年など7800人(全厚生は13人)が集まり、世界の活動家、秋葉忠利・広島市長とともに核兵器廃絶への思いを一つにしました。
 全労連の熊谷金道議長の開会宣言の後、被爆者の田中熙巳(日本被団協事務局長)、宗教者の木津博充(日本山妙法寺上人)両氏が連帯あいさつしました。
 主催者報告をした安斎育郎・立命館大学教授は、来年五月のNPT(核不拡散条約)再検討会議、被爆60周年にむけ、「いま、核兵器の廃絶を」の大運動をおこそうと呼びかける国際会議宣言の意義を強調し、普及・活用を訴えました。
 特別発言した秋葉市長は、ことし八月六日からを「記憶と行動」の一年間とし、平和市長会議として来年五月ニューヨークで緊急行動をおこなうことをのべ、来年を核廃絶の芽がもえいずる希望の年にしていこうと訴えました。
 草の根で「いま、核兵器の廃絶を」の運動をすすめてきた全国各地の代表らがいっせいに登壇。「百人をこえる首長が『いま、核兵器の廃絶を』署名に賛同」「宗教者との共同がひろがっている」など共同行動の発展が報告され、横断幕などを手に壇上に並んだ青年たちと会場の全員とが「平和!」とコールし、大盛り上がりのうちに初日を終えました。

全厚生参加者13人で懇親会

 その後、全厚生の参加者は、愛知県支部OBの小松さんを交え「全厚生懇親会」をおこないました。懇親会の中では、参加者の子どもによる迷?司会で、今回参加した経過・意気込みなどを発言しました。京都支部からは、今年4月採用の3人の青年の参加があり、平和のこと、仕事のことについて語り合いました。
 5日は、参加者が思い思いの分散会に参加し、学習・交流を深め合いました。その日の夕方には「国公労働者平和のつどい」がおこなわれました。フリーフォト・ジャーナリストの岡崎賢二さんより、本人が目撃したエチオピア難民キャンプのことや、戦場での体験などを通じ戦争の悲惨さを聴くことが出来ました。
 6日の早朝に行われた「平和記念式典」では、広島市長のあと、こども代表の2名が「被爆の悲惨さや平和の尊さを語り継ぎ、世界へ伝えていく努力を続けていく」と力強い誓いの言葉が述べられました。
 閉会総会では、米国のアリス・スレーターさんが「この世界大会の『いま、核兵器の廃絶を』のスローガンを分かち合い、来年五月のNPT(核不拡散条約)再検討会議を署名の山で埋め尽くそう」と発言、会場から大きな拍手が起きました。 平和と核兵器は相反するものです。平和の日本を守るため、憲法を改憲させない世論が重要になっています。草の根の運動を広げ、憲法9条を世界に発信しましょう。
(中央執行委員)




【岐阜県】寒冷地手当改悪反対

高山市の支給額が半額に

 今年の人事院勧告では寒冷地手当の改悪が出されました。岐阜県支部では高山分会がある高山市が寒冷地手当の支給対象地域になっていますが、この改悪で支給金額はほぼ半分になります。寒冷地に働く職員の苦労と改悪阻止に向けた取り組みを報告します。
 人事院が当初示した内容は「北海道以外はすべて支給対象外」でした。これまで高山市は5級地の指定を受け、本州のなかでも最も高い寒冷地手当を支給されてきており、積雪量、冷え込みは観測史上でも認められています。職員は雪下ろしや除雪、灯油など長期にわたる暖房費や水道管の凍結・破裂の対策、寒冷地仕様の乗用車購入などに苦労しています。本来の寒冷地手当ができた歴史的背景を無視して、「民間準拠」で支給の可否を判断するというのでは寒冷地に住む仲間は納得できません。いくら経過措置が設けられたとはいえ、寒冷地の職員の生活はいっそう厳しくなります。
 しかし「半分(の金額)でも残って本当に助かった」という率直な組合員の声もあります。当初の提案から一定の譲歩を勝ち取ることができたことは私たちの様々な取り組みの反映でもあります。 この間、岐阜県支部では、「寒冷地改悪阻止」を重点要求に掲げ、当局に人事院中部事務局へ強く働きかけるよう申し入れてきました。
 東海ブロック国公の人事院中部事務局長交渉にも参加して再検討を求めるとともに、県国公に結集して各自治体に対する請願・陳情行動を行ってきました。高山分会は飛騨地区国公の高山市議会議員への陳情行動に参加、支部では5級地の飛騨、下呂、郡上の3市について請願をしました。結果は、下呂・郡上では「不採択」、飛騨市では9月議会への「継続審議」となりました。
 今後は給与法案の審議前に再度、高山市、飛騨市に対する取り組みを行おうと県国公と相談しています。組合員の生活改善に向けた重要な取り組みとして、最後まで奮闘したいと思います。
(岐阜県支部書記長)

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