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◆第1578号(2004年2月25日付)◆


国民犠牲の年金大改悪法案は撤回せよ
国民から信頼される年金制度に

 政府は2月10日、年金制度を大改悪する法案を国会に提出しました。 全厚生は、国民犠牲の今回の法案は到底認められないとする別掲の『声明』発表しました。
 政府は、今回の法案における基本的な考え方として、「将来の現役世代の負担を過重なものとしないようにする」、「高齢期の生活を支える公的年金としてふさわしい給付水準を確保する」としていますが、法案の内容は、その「考え方」のように、負担は過重ではなく、ふさわしい給付水準といえるものでしょうか。
 以下、法案の主な内容を解説します。

保険料の大幅引き上げ
 【厚生年金】04年10月から毎年0・354%ずつ引き上げ、17年度以降は、現在の13・58%から18・30%へ(労使折半)。
 【国民年金】05年4月から毎年280円(04年度価格)ずつ引き上げ、17年度以降は、現在の13,300円から16,900円へ。 
 法案では、保険料の上限は法定するとしていますが、一度決めたら上限に達するまで連続して引き上げるということに最大の特徴があります。
 賃下げ、リストラによる失業・雇用不安など、国民の生活は長期不況下で深刻なとき、税金とともに保険料を連続して引き上げるなどはもってのほかです。国民生活破壊法案そのものです。
 02年の国民年金の保険料納付率は62・8%。「空洞化」といわれる深刻な状況です。厚生年金でも、V字型回復の大企業以外は「社会保険倒産」といわれる状況も生まれています。
 保険料の引き上げは、さらに悪影響を与えるこは必至です。

給付の大幅抑制
 今回、「マクロ経済スライド」なるものを年金制度にはじめて導入しました。これは、社会全体の保険料負担能力の伸びを年金改定率に反映させ、給付水準を調整するというものです(スライド調整)。つまり、少子化による支え手の減少分と年金受給期間(平均余命)の伸びを考慮して、今後、毎年一定割合で給付水準を抑制するというものです。
 いまは原則として、賃金や物価が上がれば、同じ割合で年金額も上がる仕組みですが、「スライド調整」により、上がる割合は低く押さえられ、年金の価値が目減りすることとなります。
 厚労省の試算では、「マクロ経済スライド」により、厚生年金では、現在、モデルケース(片働き世帯)で現役世代の平均的収入の59・3%(夫婦で23万円程度)が20年後頃には50・2%になるとしています。
 問題は、月額平均46,000円程度の国民年金についても引き下げの対象としていることです。これでは憲法25条の生存権が侵害されることとなり、「高齢期の生活を支える公的年金としてふさわしい給付水準の確保」などとは、とてもいえません。

国庫負担2分の1先送り
 基礎年金の国庫負担2分1は法律本則にしたものの、「09年度までに引き上げを完了する」と先送りしました。
 2分の1には新たに2兆7千億円必要だとしていますが、04年度分はわずか272億円。それも高齢者への課税強化で財源をつくるというものです。05、06年度は「適切な水準まで引き上げる」としていますが、所得税の定率減税を見直し、それを財源にあてるとしています。
 さらに07年度を目途に「消費税を含む抜本的税制改革を実現」するとして、年金を消費税引き上げに最大限利用しようとしています。
 国民に約束した国庫負担引き上げの財源は、国民からの収奪でとの政府・与党の方針は絶対に認められません。

膨大な積立金こそ活用を
 年金積立金を株式に投資して6兆円からの損失を出し、責任もとらないことに、国民から厳しい怒りの声があがっています。年金資金運用基金を解散し、新たな独立した第三者機関を設立としていますが、基本的には何ら変わるものでなく、市場運用は今後も続けるとしています。
 また、膨大な積立金をとりくずし、将来は給付費の一年分に抑制といっていますが、実際に積立金に手をつけるのは50年先、一年分に抑制は100年先というものです。
 その他、パートへの厚生年金の適用は今回は見送り、法案には、70歳以上の在職者に停止措置の適用、離婚時等の厚生年金の分割、遺族年金の見直し、国民年金保険料の徴収対策の強化(他段階免除制度の導入等)などが盛り込まれました。
いずれにしてもこんな悪法の成立は到底認められません。


〜改悪法案は撤回し、国民から信頼される 年金制度の確立を〜『声明』

一、小泉内閣は2月10日、「国民年金法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日、国会に提出した。
 政府が決定した今回の法案は、負担、給付の両面にわたって、労働者、国民に一方的に犠牲を押しつけるものであり、国が社会保障の責任を果たさず、財界・大企業の負担軽減をはかるものとして到底認められない。
 全厚生は、今回の法案は撤回すること、そして国がその責任をしっかり果たし、国民合意で国民から信頼される改革内容に改めるよう強く求めるものである。

一、 今回の政府法案の最悪で最大の特徴は、負担にしても給付についても、一旦法律が決まれば、今後は国会の審議なしに自動的に引き上げや引き下げができる重大な仕掛けをつくろうとしていることである。
 法案では、保険料は、厚生年金は現行13.58%を18.30%まで、国民年金では現在の月額13,300円を16,900円(2004年度価格)まで毎年連続して引き上げられることとなる。
 一方給付については、「マクロ経済スライド」なるものを導入し、老後の生活に関わりなく、「少子化」等による公的年金の被保険者数の減少及び年金受給期間の伸びを勘案して、保険料収入の範囲内で給付水準を自動的に調整(引き下げ)するとしている。厚生労働省の試算では、厚生年金の給付水準は、モデルケースで現役世代の平均的収入の59.3%が50.2%に下がるとしている。また、わずかな国民年金についても厚生年金と同様に引き下げるとしている。低額な年金まで一律に引き下げることは、憲法25条からも重大な問題である。

一、国庫負担の引き上げが最も重要な課題であったが、基礎年金への2分の1への引き上げの「完全実施」は5年後に先送りされた。
 2000年「改正」法附則で、「平成16年度までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の2分の1への引き上げを図るものとする」と規定されていたにもかかわらず、国民との約束は反故にされた。
 また、その間は段階的に実施するとして、年金課税、所得課税を強化することで「財源」をつくるとしている。何のことはない、必要財政は、労働者、国民からかすめ取ろうとしているにすぎない。
 さらに重大なことは、「生活の安心」の社会保障の財源として最もふさわしくない、最悪の不公平税制である消費税の大増税を、年金を最大限利用して打ちだしたことである。
 消費税の大増税は、政府の年来の野望であるが、財界・大企業が強く求めているものであり、こうした策動は絶対に認めることはできない。

一、今回の改悪法案を通じて明らかなことは、政府には、国民が最も強く要求している社会保障の拡充や国民生活を大切にするという姿勢が全くないということである。政府のいう「信頼の確保」どころか不信・不安がますます強まり、国民との矛盾が一層深刻になることは避けられない。
 国の責任を明確にして、国民本位に制度を改善し、信頼を回復することが何よりも重要である。
 今、全国的に改悪反対の声と運動が急速に広がってきている。
 全厚生は、社会保障の確立を目的としている労働組合として、この間、年金制度の大改悪に反対して、専門性を活かして年金講師団活動等を全国で旺盛に展開してきた。引き続き仲間の力を総結集して全力で奮闘する決意を表明するものである。
2004年2月20日  全厚生労働組合



全国支部書記長・教宣担当者会議開く

「知は力」の展望みえた

 全厚生は2月14・15日、熱海市内で全国支部書記長・教宣担当者会議を開催。45人が参加しました。会議は、2つの講義をはさんで意見交換とグループ別討論という参加者が主体となれるスタイルで行いました。
 1日目は、新聞労連の明珍美紀委員長が「真実とは何か!マスメディアの役割と責任」とのテーマで講義。イラク自衛隊派遣での政府によるメディア規制や個人情報保護法、記者クラブなどの問題点を指摘しつつ、「権力に抗するのがジャーナリズム」、「戦争のためにペンは持たない、輪転機は回さないが原点」とマスメディアの在り方や、役割について紹介。「『メディアは何しているのか』VS『世論はどうなっているのか』、と相対するのではなく、ともに良くしていく仲立ちを労働組合ができるのでは」と述べました。
 支部機関紙活動交流では、杉浦書記長が「労働組合の機関紙活動を考える」と問題提起。国衛研支部がファイルとノウハウを引き継ぐシステムづくり、大阪支部が支部の運動を全面に出した活力ある紙面づくり、神奈川県支部が当局提案と支部の考え方を知らせ組合員とキャッチボールする紙面づくりについて報告。近藤書記が「楽して楽しく機関紙を作ろう」と機関紙活動の実践編を紹介しました。
 会議は、4つのグループに分け、夕食後と2日目の1時間、グループごとに、「職場はどう変わったか、職場に必要な運動は何か、どうしたらみんなの組合運動になるか」などのテーマで討論を深めました。引き続きその内容をグループごとに発表。組織拡大を中心に討議したグループや職場の困難をどうやって克服するか提言にまとめたグループなど、充実した話し合いが伝わる発表となりました。
 それを受けるようにして、関西勤労者教育教会の中田進さんが、「21世紀私たちの未来と労働組合」とのテーマで講義。中田さんは、「組合に入ることは『生き方』の問題、労働組合に入っていて良かったと感動的に語ろう」と述べ、政治・経済の特徴や奥田ビジョンと小泉構造改革などについて紹介。統計調査などの資料を使い、暮らしの危機、平和の危機、民主主義の危機を解き明かし、「無知は無力」と学習の大切さ、労働組合の重要性を強調。また、さまざまな労働争議の勝利を紹介し、「怒りを力に政治を変えよう」と呼びかけました。
 参加者は、「活動の本音が聞けて参考になった」、「04春闘で労働組合が果たす役割など確信がもてた」などの感想が出され、今後に展望を見い出せる会議となりました。


【愛知・岐阜】トヨタ総行動に16人参加

大企業の横暴許すな

 春闘で大企業の社会的責任を追及しようと2月11日、全労連は「トヨタ総行動」を行い、全厚生も愛知・岐阜両県支部と本部から16人が参加しました。
 「祝日なのにトヨタはやってるの?」とある人から質問されましたが、祝日は電気使用量が安いため、トヨタの工場は稼働してます。祝日まで労働者を使い、下請け単価を切り下げさせて、昨年に引き続き1兆円を超える巨額なもうけを生み出しています。しかし今年もトヨタはベア・ゼロ、賃下げ、過密労働。こんなトヨタの身勝手を許さない決意で、早朝7時半からビラまき・集会・デモへと愛知・岐阜の仲間と奮闘しました。ビラまきでは、トヨタ側の管理者が従業員に「ビラを受け取らないように」と指導していましたが、従業員も不満があるのか積極的にビラを受け取る方も数名いました。また集会は全国から1300人が集まり、その後デモ行進では「トヨタは社会的責任をはたせ!」と怒りのシュプレヒコールを行い、我々の主張をトヨタへ訴えました。


日本平和大会 in 沖縄に参加して

沖縄の基地をなくすことが世界中の戦争をなくすことに繋がる

 日本平和大会2日目の1月31日、中北部基地調査に参加しました。那覇空港からバスが出ると、那覇軍港を皮切りに普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧、陸軍貯油施設・・・米軍基地が延々と続きます。車中では地元の方のガイドで基地について学習していきます。米兵による強姦、戦闘訓練による死者、毒物で汚染され返還された土地。沖縄には、米軍基地があるために起こった悲惨な事件が沢山あることを知りました。
 途中、嘉手納基地を丘の上から見学しました。この基地は軍用地だけで約2千万u、嘉手納市の約8割を占めます。昨年のイラク戦争では、嘉手納も含め在日米軍基地から1万人の兵士が参戦しました。目の前の基地はあまりにも広大です。また金武町伊芸区では、米軍の実弾演習による火災で自然破壊された山々を見学。快い風が吹く青空の下、目の前のグラウンドでは子供たちが草野球をしています。そして、射撃訓練の銃声が絶えず聞こえてきます。沖縄の人々は大きな犠牲を抱えていると感じました。
 いま日米両政府は、名護市辺野古に新海上基地建設を計画しています。藻場と珊瑚礁が広がり、天然記念物ジュゴンが棲むこの豊かな海の砂浜に、この日600人が集まり新基地に反対する交流集会が開かれました。
 駐韓米軍犯罪根絶運動本部のコ・ユギョンさんは「在日米軍と駐韓米軍は不可分。いま韓国でも米軍が農民の土地を奪い新基地を建設しようとしている。沖縄での基地建設を止めることができれば、韓国にとって大きな励みになる。国際連帯を強めていこう」と発言。米国フレンズ奉仕委員会のジョセフ・ガーソンさんは、1月にインドで行われた世界社会フォーラムで、世界25カ国の活動家が海外米軍基地の撤去を支援するネットワークを作ったことを報告し「皆さんを支援する人々が世界中に大勢いる」と激励しました。
 米国の基地に苦しみ、たたかっている人々が沖縄だけでなく世界中にいること、そして日本の基地反対の運動は決して少数の声ではないと実感しました。沖縄の基地をなくすことは、ただ沖縄を外国の軍隊から自由にするだけでなく、イラクをはじめ世界中の戦争をなくすことにも繋がります。青森の高校生、溝江洋明さんの発言は力強く響きました。「僕たちの力で世界を変えられると確信しましょう!」
(本部書記)



国公権利裁判第7回口頭弁論開く

国家公務員に労働基本権の保障を

 不利益遡及は許さない!国公権利裁判の原告となることを2003年2月に決意し、3月に提訴してから約1年の2月12日、東京地裁705号法廷での第7回口頭弁論に参加しました。公判の前に、東京地裁前で国公労連の宣伝行動が取り組まれ、宣伝カーの上からマイクで、「労働基本権を国家公務員にもきちんと保障せよ!」と訴えました。
 口頭弁論自体は、原告が出した6回までの準備書面に対する被告国側の4回目の反論書面の確認で特に口頭での弁論をせず開廷から5分で終わる簡単なものでした。弁論書面では、被告国側が主張の総まとめを行いましたが、国側はこれまで「今回の減額措置はあくまでも『調整』であって不利益遡及ではない」、「ILO87・98号条約は国家公務員の団体交渉権を保障したものではない」、「情勢適応原則は給与などの勤務条件を社会一般の情勢に随時適応するよう変更出来るという意味であって、原告側の主張は失当である」など、これまでの主張を繰り返しました。
 次回3月には、証人調べの確認をし、その後、証人尋問も始まっていくとのことで、いよいよ裁判もヤマ場に向けて、たたかいの強化が重要となってきました。
 「働くルール」の確立は民間でも公務員でも同じです。まともな議論をせず、原告側の主張に「失当」を連発する被告・国を徹底的に追いつめるために頑張りましょう。
(国公権利裁判原告・京都支部)


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