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◆第1562号(2003年8月15日付)◆


史上最悪の「賃下げ勧告」強行

平均16.3万円(2.6%)の年収マイナス

不況、生活破壊さらに深刻  「悪魔の賃下げサイクル」許さない

 8月8日、人事院は、国会と内閣に対して、月例給の平均4、054円(1.07%)引き下げ、一時金の0.25月削減による16.3万円(2.6%)もの年収マイナスなどを内容とする史上最悪の「賃下げ勧告」を行いました。さらに、月例給の引き下げを実質的に4月に遡らせる「不利益遡及」の脱法行為をまたしても勧告しました。
 人事院勧告の社会的影響の大きさはもとより、連年の賃金引き下げや税金、社会保障費などの負担増で生活苦を強く訴える組合員の要求に照らして、本年勧告を断じて受け入れることはできません。同時に、財界が賃金引き下げ攻撃を強めているもとで、機械的な民間準拠論に固執して「賃下げのサイクル」を加速させる勧告を行った人事院に強く抗議します。
 本年勧告の内容には、見過ごすことのできない重大な問題点があります。一つには、1.07%というマイナス較差の大きさです。厚生労働省の毎月勤労統計調査4月分(所定内給与は対前年比で0.4%減)などと比較しても勧告のマイナス幅は大きく、官民賃金比較方法への疑念を抱かざるを得ません。
 2つには、本年も賃下げを4月に遡及させたことです。しかも、昨年と同様、12月の一時金で「調整」するとしており、期末手当0.25月削減に上乗せしたまさに「生活破壊の措置」です。
 3つには、政治圧力への迎合ともいえる内容が含まれていることです。国会質問に端を発した調整手当・異動保障の期間短縮と逓減措置や、内閣官房長官の「指示」を受けて検討した「地域に勤務する公務員の給与のあり方に関する研究会」の「基本報告」を無批判に受け入れたことに端的に示されています。 
 ILO結社の自由委員会「勧告」がくり返し指摘しているように、労働基本権制約の「代償措置」は、政治からの「完全な中立と公正」が生命線です。手当の「見直し」や本俸・手当の配分比率を含む賃金制度の「見直し」などは、原資内の配分問題であり、公務員労働者の意見より政治の圧力に重きを置くことは、労働基本権に対する重大な侵害行為です。
 4つには、諸手当をはじめ給与制度の全面的な「見直し」に言及していることです。
 5つには、超過勤務縮減策や非常勤職員の制度的な改善など、人間らしく働くルールの確立要求には背を向け、短時間勤務や裁量労働制の導入なども視野においた「多様な働き方研究会」の設置に言及したことです。
 全厚生は、国公労連に結集し、官房長交渉(厚生共闘)や、人事課長交渉、社会保険庁交渉などを実施、職場からの上申による各省当局の使用者責任追及や、中央行動、全国統一行動、署名や職場決議などで要求実現を迫ってきました。
 勧告に基づく給与法「改正」に反対して、引き続きたたかいを強めましょう。


2003年勧告の主な内容
◎ 本年の給与勧告のポイント
 〜 平均年間給与は5年連続、かつ、過去最大の減少
  (年収△16.3万円(月例給△1.1%と期末・勤勉手当△1.5%を合わせて△2.6%))
(1) 官民給与の逆較差(△1.07%)を是正するため、2年連続で月例給の引下げ改定
 ― 俸給月額の引下げ、配偶者に係る扶養手当の引下げ、自宅に係る住居手当の支給対象を限定
(2) 期末・勤勉手当(ボーナス)の引下げ(△0.25月分)
(3) 通勤手当の6箇月定期券等の価額による一括支給への変更、調整手当の異動保障の見直し
(4) 本年4月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る官民較差相当分を解消するため、4月の給与に較差率を乗じて得た額を基本として、12月期の期末手当で調整

◎ 官民給与の比較
約8,100民間事業所の約36万人の個人別給与を実地調査(完了率93.5%)
 ○ 官民較差(月例給)   △4,054円 △1.07%  〔行政職…現行給与377,535円 平均年齢 41.0歳〕
俸給△3,459円扶養手当△209円住居手当△ 173円はね返り分△213円

◎ 改定の内容
〈月例給〉 官民較差(マイナス)の大きさ等を考慮し、月例給を引下げ
 (1) 俸給表:すべての級のすべての俸給月額について引下げ
  [1]行政職俸給表 級ごとに同率の引下げを基本とするが、初任給付近の引下げ率は緩和、管理職層の引下げ率は平均をやや超える率(平均改定率△1.1%)
  [2]指定職俸給表 行政職俸給表の管理職層と同程度の引下げ(改定率△1.2%)
  [3]その他の俸給表 行政職との均衡を基本に引下げ

行(一)の級別平均引下率(再任用職員もほぼ同じ)
1234〜89〜11
引下率(%)△0.5△0.7△0.9△1.1△1.2△1.1

 (2) 扶養手当 配偶者に係る扶養手当の支給月額を500円引下げ(14,000円→13,500円)
 (3) 住居手当 自宅に係る住居手当を新築・購入から5年間(2,500円)に限定(月額1,000円に係るものは廃止)
 (4) 通勤手当 ・6箇月定期券等(交通機関等利用者)の価額による一括支給を基本とすることに変更するとともに、2分の1加算措置を廃止し、55,OOO円まで全額支給
・交通用具使用者に係る通勤手当について片道40q以上の使用距離区分を4段階増設
 (5) 調整手当 ・いわゆる「ワンタッチ受給」防止のため、異動前の調整手当支給地域における在勤期間が6箇月を超えることを要件化
・異動保障の支給期間(現行3年間)を2年間とし、2年目の支給割合は現行の80/100

〈期末・勤勉手当(ボーナス)〉 民間の支給割合に見合うよう引下げ 4.65月分→4.4月分
  (一般の職員の場合の支給月数)
 6月期12月期
本年度期末手当1.55月(支給済み)1.45月(現行1.7月)
勤勉手当0.7月(支給済み)0.7月(改定なし)
16年度期末手当1.4月1.6月
勤勉手当0.7月0.7月

[実施時期等]◎改定内容の(1)、(2)、(3)、及び期末・勤勉手当等の改定については、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から実施。改定内容の(4)及び(5)の改定については、平成16年4月1日から実施

<その他の課題>
 (1) 教育職俸給表の検討 国立大学の法人化等に伴い、教育職俸給表の在り方等について早急に必要な改正を行うため検討
 (2) 寒冷地手当の実態の把握 速やかに全国的な調査を実施し、調査結果を踏まえて検討
 (3) 特殊勤務手当の見直し 手当ごとの実態等を精査して廃止を含めた見直し等を検討
 (4) 月例給の比較方法の見直し 行政職俸給表(二)を来年から比較の対象外とする方向で検討
 (5) 特別給の算定方法の見直し 民間の特別給の前年冬と当年夏の実態調査に基づき特別給を改定
 (6) 独立行政法人等の給与水準 役職員の給与水準の公表に向けた検討への協力

◎ 給与構造の基本的見直し(省略)



リレーずいそう
● 継続は力なり
 一病息災『ちょっとした病気のある人の方が体に注意するので健康な人よりもかえって長生きするということ』の意味らしいが、果たしてそうなのだろうか?
 採用後7年も医者いらずの生活を送っていたが25歳で痛風が発症。7年間も健康だったのではなく、7年間も不健康に過ごしたためのツケが回ってきたのである。以来、痛風によくないとされているビールや内臓系の食物はなるべく多くは口にしないよう心がけているつもりだが、なぜか痛風の症状は定期的にやってくる。なんでだろう?
 答えは簡単。注意する力が継続しないからである。歩くのさえ困難になると必ず頭をよぎる。「最近ちょっと・・・だったなー」。自己管理が問題なのだが、私の場合、一病息災は当てはまらないのかも。
 でも、通風治療ではまず血液検査をするので、痛風以外の簡単な健康チェックが受けられ、再び体に注意するようになる。これってやっぱり一病息災?いやいや、本末転倒だな。
 『継続は力なり』ということ組合活動を通じて学んだハズが、日常生活では全然活かされていない。恥ずかしい限りである。物事の根本的な重要なことを取り違えないよう日々生きたいと思う今日この頃。まずは、カミさんとのバイキング通いはやめにしなきゃだな!?。
(秋田県支部 副支部長)



女性部が労働条件改善で人事課と懇談

女性の採用・登用の拡大を

 全厚生女性部は、「女性の労働条件改善等に関する要求書」に基づき、8月1日に厚生労働省大臣官房人事課と懇談しました。全厚生は、北島部長、木立中執はじめ女性部幹事と、在京各支部女性部の代表ら11人が参加、人事課は、篠原人事調査官と、白川・田村の両補佐が対応しました。
 試験研究機関の組織・機構の改編について「組織・機構の改編に伴う職員の処遇・勤務条件等は、職員にとって最も基本的かつ重要な問題と認識している。05年4月に設立の方向で検討を進めている医薬研究開発機構(仮称)については、設立主体が変わることになり、労働条件等は当該組織で詰めていくことになるが、勤務条件の後退を招かないように厚生科学課に申し入れている」と回答。これに対し感染研支部から「資源部門は、任期付ではなく恒常的に業務を遂行する体制を確保してほしい」と要望しました。
 女性職員の採用拡大については、「全部局に女性職員を配しており、特に近年は積極的に採用を進めている。選考採用についてもポストに適任する者を男女問わず採用している」と回答。国立衛研支部から「選考採用の条件が年齢、資格ともに厳しく応募者が限られている。年齢の条件を緩和できないか」との問いに調査官から「それは、運用の問題になる」との回答を得ました。
 登用状況の公表について「昨年の推進会議資料によれば、係長級、課長補佐級のいづれも増加している傾向にあり、全府省と比較しても高い状況にあるが、今後、部局が登用を進める上で必要な資料を整えていき、現状を把握するよう努力したい」と回答。これに対し、木立中執が「第2回推進会議の予定はいつか。部局別に登用状況は差があり、登用拡大を進めるには、その現状把握が必須。出来るところからでも公表して欲しい」と発言し、北島部長が「採用・登用拡大の基本理念に、男女とも家族的責任の果たせる労働環境の実現がある。女性の進出で職場環境改善を実現するように人事課から強く指導して欲しい」と訴えました。
 国立リハ支部は、国立施設の宿日直制度を宿舎専任職員を配置した体制に進めることと、年次有給休暇の取得しやすい職場環境作りを訴え、統計情報支部からは、子どもの看護休暇制度の対象年齢を小学6年生(現行未就学児)に引き上げるなど制度の改善と産前休暇8週への制度改善を訴えました。
 調査官は、「国立リハの年休取得推進については、昨年の懇談以後、人事課から運用、調整を行って取得推進を図るようにしている。子どもの看護休暇、産前産後休暇の改善についても、引き続き、関係機関に対して要望していく」と回答しました。
 最後に及川幹事が、喫煙問題について、職場の喫煙室側の職員の健康が損なわれている実態を訴えると7月に人事院が定めた「職場における喫煙対策に関する指針」に基づき、受動喫煙防止対策を図っていくとの積極的回答を得ました。
 毎年、牛歩の歩みのようですが、ひとつひとつの要求を諦めずに女性の労働条件を向上させるべく懇談を続けていきたいと思います。
(女性部長)



原水爆禁止世界大会・国際会議を開催

核兵器廃絶へ新たな署名提起

 原水爆禁止2003年世界大会・国際会議が、8月3〜5日の3日間、広島厚生年金会館で、世界23カ国、33団体、6国際/地域団体から64名の海外代表はじめ260人が参加して開催されました。国際会議の全体討論では(1)イラク攻撃をめぐる国民的運動と課題についての報告(2)新たな核使用、核開発の危険と核兵器廃絶の展望(3)被爆者連帯特別セッションの大きく3つに分けての報告・討論が行われ、分科会もこの3つのテーマで議論が深められました。国際会議では、「いま核兵器の廃絶を〜ヒロシマ・ナガサキをくりかえさないために」との署名運動について議論され、一致して、今日の情勢に立った新たな署名運動を世界に向けて提起しました。
 会議では、イラク戦争について、アメリカ、イギリスの代表はじめ各代表から、米英政府が武力攻撃の口実とした「大量破壊兵器開発」の証拠ねつ造への怒りや、アメリカ・ブッシュ大統領の単独行動主義への批判が次々と出され、反戦・平和運動の経験と教訓が紹介されました。
 イギリスの核軍縮運動(CND)副議長のケイト・ハドソンさんは、今年2月15日の200万人という史上空前の反戦運動を組織した経験も踏まえ発言。思想信条の違いを超えて「イラク戦争反対」という一致点での団結を守ったこと、反戦運動を反グローバル化運動などの運動も巻き込みながら運動の多様性を大切にしたこと、国際共同という視点を大切にしたことを紹介しました。
 フランス平和運動全国執行委員アニー・フリゾンさんは、「ブッシュにもフセインにも反対」という明確な目標を掲げたことが、かつてない大きな広がりをもつ運動を作りだした。フランス国内では、各県で政党、労働組合、各種団体などによって、地域行動調整委員会が構成され、毎週のように反戦運動が行われ、デモ、集会、ビラ配り、署名、会議、米英の平和活動家などとの討論会といった各種の行動で、ソ連崩壊後、市民運動の動員が困難となっていた国際的戦略の分野についてフランスの国民の意識を高め、国民の80%以上が戦争に反対するようになり、フランス政府はそれを無視することができなくなったと発言。
 アメリカの平和と正義のための連合、全米運営委員会のジュデイス・ルブランさんは、アメリカの平和運動は一致してひとつのスローガン「戦争反対、国連調査団の査察継続」を訴えた。何千もの市や町で、キャンドルを灯した夕べの祈りや、集会が、地域グループと平和団体によって行われた。そしてニューヨーク・タイムズ紙が「第2のスーパーパワー」と呼ぶに至った2月15日の「世界は戦争に反対する」をスローガンに掲げた全米集会を開催したことを紹介。彼女はその全米集会について、平和活動家でもない政治的組織でもない労働組合の参加に驚かされた、とも発言していました。
 国際会議での討論は、米英の一方的なイラク攻撃に反対してきた私たち全厚生の運動が、決して独りよがりのものではなく世界世論の流れに沿ったものなのだと確信が持てるものでした。
 「労働組合がなぜ平和運動をするのか」と問われた時、「日々の子どもとの語らいも、仕事の達成感も平和があってこそ」「戦争と社会保障は相容れない。憲法9条と25条を守る全厚生として」と答えていましたが、「アメリカのグローバル企業が世界に経済的支配を行う時、軍事的支配もセット。日本の深刻な不況もイラク戦争もアメリカの世界戦略の同一線上にある。私達の労働条件改善の取り組みと反戦平和運動は切り離せない関係にある」との答えも1つではないかと、国際会議に参加して、強く感じています。 
(本部)



史上最悪人勧許さない

組合員の怒りの声

代償機関の役割放棄愛媛県支部 組合員
 現実に沿わない支給基準の改正のないままの各種手当ての切り下げ、生活実態を無視し民間準拠を盾にした本俸の切り下げ、これらは代償機関としての役割を放棄しているのみならず、国民の不満を逸らすための政治の道具であると公言しているようなものである。一般労働者に多大な影響を与える事実からも、このような勧告の実施は絶対に許されない。
「上意下達」を伝える機関香川県支部 組合員
 人事院勧告制度は、労働基本権の代償措置と言われるが、結局、「上意下達」を伝える機関でしかないことをいまさらながら思い知らされる。民間準拠の名の下に政府が公務員賃金をケチるための事務をさせられている人事院を政府から解放し正しい勧告を行わせる必要を痛切に思う。
中小企業労働者にも影響国立衛研支部 組合員
 我々だけでなく中小企業で働いている人々の給与もまた昨年に続いて大きな影響を受けることになります。自分は我慢しても弟妹の家族の暮らしを思うとつらいものがあります。本当に何とかしてほしいとつくづく思います。
不況がますます深刻化神奈川県支部 組合員
 戦後最悪と言われている長期不況の中で、ここ数年倒産件数・失業率とも記録を更新しています。特に物が売れない不況型倒産が深刻です。これで公務員賃金がマイナスとなったら景気悪化に拍車がかかることは間違いありません。さらに年金マイナス、民間賃金もマイナス、悪魔のサイクルの始まりです。


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