見出し

◆第1542号(2003年1月5・15日付)◆

行政を支える研究者集団

医薬品や食品の安全のために奮闘
国の研究機関だからできること
衛生微生物部安全性生物試験研究センター毒性部
 食品添加部環境衛生科学部療品部薬品部
組合活動は研究所のスタイルにあわせて
研究環境が多様化する中で組合の役割が輝く
科学的根拠で国民を守る  全厚生国立医薬品食品衛生研究所支部

 東京都世田谷区用賀にある国立医薬品食品衛生研究所は、私たちの命や健康に密接にかかわる、医薬品や医療用具、食品などの品質や安全性を正しく評価するための試験研究をしています。この研究成果は、厚生労働行政の主に医薬品や食品に関する施策に反映され、国民の命と健康を守るために大いに力を発揮しています。昨年12月、全厚生国立医薬品食品衛生研究所支部(以下、国衛研支部)を訪ね、仕事や組合の話をうかがいました。

医薬品や食品の安全のために奮闘

 国立医薬品食品衛生研究所(以下、国衛研)は、東京の用賀本所、医薬品医療機器審査センター、大阪支所、北海道・筑波・和歌山・種子島薬用植物栽培試験場で構成されています。
 今回訪問した用賀本所の組織は、総務部、薬品部、生物薬品部、生薬部、遺伝子細胞医薬部、療品部、環境衛生化学部、食品部、食品添加物部、食品衛生管理部、衛生微生物部、有機化学部、機能生化学部、代謝生化学部、化学物質情報部、医薬安全科学部。そして、安全性生物試験研究センターとして毒性部、薬理部、病理部、変異遺伝部、総合評価研究室があります。医薬品や食品の安全を守るために、企業の利害にとらわれることのない国の研究機関で、国民の安全、命と健康を守ることを最優先に日夜奮闘する研究者集団の姿がそこにはありました。

国の研究機関だからできること

 「中国産冷凍ほうれん草からクロルピリホス検出」「遺伝子組換えトウモロコシのスターリンク混入、焼却処分」など、昨年、残留農薬や遺伝子組換え農産物をめぐるニュースはたくさんありました。これらの検査を実際に行っているのは、検疫所や都道府県の衛生研究所などですが、国衛研には、これらの検査にかかわる大事な仕事があります。食品部では、残留農薬や遺伝子組換え食品をはじめ、レバーの中などの残留動物用医薬品、食品汚染物質、食物アレルギー物質、照射食品などについて、標準的検査法の設定や開発、それに関する研究などを行っています。
 食物アレルギーによる健康被害や遺伝子組換え食品の安全性への国民の関心の高まりもあって、2002年4月からアレルギー物質を含む食品(小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目)の表示が義務化されました。また、遺伝子組換え食品については、2001年4月から、安全性審査を受けていない遺伝子組換え食品の輸入、販売等が法的に禁止され、遺伝子組換え農産物5種類(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実)について、「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」の表示が義務化されました。
 食品部第3室では、遺伝子組換え食品やアレルギー食品を担当しています。室長の穐山浩さんは、「安全性の研究は利益になりませんし、企業の利害に左右されない国の機関が担わなければなりません」と、真剣なまなざし。しかし、アレルギー食品や遺伝子組換え食品の分野は、国民の期待が大きいにも関わらず、組織再編で縮小。個人に大きな負担がかかるようになり、連日深夜に及ぶ仕事をしています。「行政対応に追われて視野が狭くなると、質の高い研究ができなくなり、安全性も保たれなくなる。とにかく人、正規雇用の研究者を増やして欲しい」。穐山さんたちの要求は切実です。
 昨年11月、「ポテトチップスから発がん性指摘物質のアクリルアミドを検出」と新聞報道されましたが、これは、国衛研食品部での研究結果を発表したもの。アクリルアミドの発がん性分類は、ディーゼルエンジンの排ガスなどと同じ「2A」(人に対しておそらく発がん性がある)。アクリルアミドについては、スウェーデンの発表が先にあって、各国でも分析を進めており、世界の動きにあわせて国衛研でも分析、研究を進めていました。食品部第1室の佐々木久美子室長は、「食品中のアクリルアミドは無視できない問題なので、どの温度でポテトチップスを揚げたらアクリルアミドを低く押さえられるかなど、企業も真剣になっている」と言います。「今回のアクリルアミドにしても残留農薬にしても、こういった問題は、企業にとっても、また、国と国との関係においても大きな問題なので、慎重にならなければなりませんが、発表するのは、企業や国の利害の入らない実験的根拠によるものです。私たちのよりどころはそこですが、その科学的根拠があるからこそ、企業や外国を納得させ、国民を守るための、いい関係を作れるのではないかと思います」

●衛生微生物部
行政の求めに応じて緊急の検査も

衛生微生物部では、行政の求めに応じて、緊急の検査が入ることもめずらしくありません。
 2001年末、西日本一帯で起こった韓国産生カキによる赤痢集団感染騒動について記憶に残っている人も多いでしょう。11月下旬から、西日本では赤痢患者が急増。調査により生カキが原因と考えられました。しかし、各地で数百の生カキが検査されましたが、赤痢菌は検出されませんでした。それまで、自然汚染した赤痢菌を食品から検出した例はなかったそうです。そこで、厚生労働省からの検査依頼を受けて、国衛研に検体のカキが持ち込まれることに。室長と二人で担当した宮原美知子さんは、クリスマスを挟んだ連休を返上して、新しい検査法を考えた上で、検査に当たりました。そして、それまで検出不可能とされてきた赤痢菌を冷凍生ガキから分離検出することに成功しました。この赤痢菌は、国立感染症研究所細菌部によって、患者からの赤痢菌とDNAパターンが一致することが確認され、12月28日、なんと御用納めの日の夕方、韓国産の生カキの禁輸入措置が厚生労働省によってとられ、赤痢菌騒動は収束することになりました。
 赤痢菌の食品からの検出について宮原さんは、「菌の培養の仕方を変えてみた。ちょっとした発想の転換」だと言います。これは、カイワレ大根の種がO157に汚染されているのではないかという検査・研究が行われた時の経験の積み重ねと日々の研究の成果からくるもの。「検査や研究の向上のためには、行政対応に追われるばかりでなく、常にチームの誰かが最先端の研究に携わっている必要があります」

●安全性生物試験研究センター
安全の評価も研究の発展もチームで

 国衛研のひとつの機構として、毒性部、薬理部、病理部、変異遺伝部、総合評価研究室からなる安全性生物試験研究センター(以下、「安全センター」)があります。ここでは、医薬品、化粧品、食品、食品添加物、農薬、工業薬品、家庭用品などの生活関連化学物質の安全性を動物や細胞などの生物を使って試験をし、ヒトへの影響があるかないかの評価を行っています。
 安全センターでは、これらの試験を各部で担当し、厚生行政に科学的裏付けを与えるデータをチームとして出しています。毒性部の関田清司さんは、「国民の健康な生活を確保することが我々の使命」ときっぱり。
 昨年3月、ダイエット用「健康食品」として有名だったガルシニアに精巣毒性が認められ、過剰摂取への注意喚起が行われたのも、ここ国衛研の安全センターでラットに対する1年間の長期毒性試験を実施した結果によるものです。

●毒性部
最先端の研究チームで質的向上

 トキシコゲノミクスという時代の要請に即した新しい研究プロジェクトが2002年4月からスタートしました。トキシコゲノミクスとは、薬剤などの化学物質が特定の臓器や組織に害を及ぼす副作用の仕組みを遺伝子レベルで解明する研究のことです。このプロジェクトに携わる毒性部の小野敦さんに話をうかがいました。
 体の中では、常にさまざまな遺伝子が動いていますが、正常な時と異常な時とでは、動いている遺伝子が違います。毒物が体に入って悪い作用をするときに動いている遺伝子を捕らえて、データベース化することで、今度は、薬などの化学物質の毒性を、その遺伝子の動きをみることで検知できるようになります。化学物質が生物にどのような影響を及ぼすか、従来の動物実験よりも速く、コストも安く毒性を検知できるようになるそうです。これは、製薬企業17社との5年間の共同プロジェクト。「集めたデータベースは国民の財産ですから、国研と企業とが共同で研究を行う意義は大きい」。しかし、こういうプロジェクトでは、ポスドクなど短期雇用の研究者は増えても、正規職員が増えません。ここ安センターだけみても、職員53人に対し、客員・協力・流動研究員、研究生など、正規職員以外の人が常時約80人が在籍しています。「研究の継続的な発展のためにも、正規職員としての研究者を」それは、研究者全員の強い要望でもあります。
 関田さんは、現在、天然物由来の食品添加物の毒性試験に忙しい。安全性が確認されていない100品目あまりの毒性試験と評価を急がなければならないからです。「目の前の試験もこなしつつ、試験方法も時代とともに発展していくように、常に誰かが新しい研究もしていかなければ、全体としての発展もない」。厚生科学研究は、こうした研究者集団によって、チームとして発展しているのです。

●食品添加部
国民の安全を守る使命に燃えて

 内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)として疑われているビスフェノールA、ノニルフェノール、フタル酸エステルについては、ここ数年話題になっているので、食品容器やラップなど注意して選んでいる人が多いかも知れません。食品添加物部第3室では、食品用器具・容器包装の規格の作成および試験、検査ならびに分析法等の研究を行っています。室長の河村葉子さんは1998年、缶入りコーヒー・紅茶飲料から高濃度のビスフェノールA(コーヒー飲料で213ppb)を検出。原因を調べてみると、缶の内側にコーテイングしてあるエポキシ樹脂からビスフェノールAが溶出していることがわかりました。しかし、同様にコーテイングしてある缶ジュースなどからは検出されません。なぜか。それは105℃でエポキシ樹脂が軟化するため、120℃で殺菌するコーヒーや紅茶飲料で特に溶出が起こりやすかったのです。これに対しては、業界団体が自主的に改良に取り組みました。同じ頃、ポリ塩化ビニルのラップフィルムにノニルフェノールがたくさん入っているということもわかりました。これについても業界が対応し、現在では入っていないそうです。
 河村さんは「国民の安全を守るのが仕事。私たちは安全性を明らかにする責務がある。」と明快です。「食品の安全性を考えるとき、毒性のデータとともに、どれだけ存在し摂取するかということを、両方をみないと安全性の評価はできません。みんなが安心できるような安全な器具・容器包装であるように、研究をすすめていきたい」

●環境衛生科学部
一斉収去試験で安全の確保

 環境衛生化学部は、第1室でホルムアルデヒドなどシックハウス症候群の原因物質の研究、第2室で化粧品の品質面での研究、第3室で水道水に混入する化学物質などについての基準作成の研究を行っています。
 第2室室長の徳永裕司さんに今年度の一斉収去試験用にサンプリングした口紅を見せていただきました。昨年度は、化粧水210品目の防腐剤パラベン類が使用基準に従って入っているかどうかを調べました。今年度は、安全性が確認され、使用が承認されているタール色素58種類を取り上げ、口紅160品目の製品を調べています。徳永さんは、「化粧品製造会社は全国で1000社以上。中小企業もあるので、自分のところで、品質が十分確認できないところもあると考えられる。化粧品の規制緩和という制度を補強するという面から、一斉収去試験の重要さが増している」と強調します。

●療品部
家庭用品にもあぶないものがいっぱい

 療品部は5室からなり、透析器や人工水晶体などの医療用具から衣服や靴などの家庭用品にいたる広い範囲の製品とそれら材料の、主に安全性に関する試験・研究を行っています。また、長期間体内に留置する医療用具のデータシステムの開発も担当しています。
 家庭用品を担当する第2室の鹿庭正昭室長に話をうかがいました。
 数年前、室内や車内で使用した防水スプレーでの死亡事故などが多発しました。はじめ、原因は、溶剤中毒ではないかと疑われましたが、防水スプレーのフッ素樹脂が肺に入り、肺胞を防水してしまったことによる呼吸困難だということを動物実験でつきとめました。1998年に生活衛生局企画課生活科学安全対策室(当時)から防水スプレー安全確保マニュアルが出され、業者は自主回収し、噴霧するときの粒子を粗くするなどの改善を行った結果、事故は激減しました。
 鹿庭さんは、市場に出回っている家庭用品を常にチェックしているそうで、「抗菌」をウリにしたゴム手袋を見せていただきました。説明書きには「抗菌」と書いてありますが、抗菌剤や可塑剤(プラスチックを軟らかくする添加剤)には何を使ったか記載されていません。何が「抗菌」なのか、消費者は自分で製品の安全性を確認できません。最近、こういう家庭用品が増えているそうです。「業界では、製造物責任法(PL法)で責任を取らなければいけないので、自主基準を設けているところが多いのですが、その自主基準にもかからないモノが氾濫しています」。鹿庭さんたちのたたかいはまだまだ続きます。

●薬品部
薬の安全性は消費者の立場にたって

 薬品部では、よりよい薬を作り出しそれを確実に評価するために、医薬品の安全性、有効性に関する基礎及び応用研究を行っています。第1室では医薬品の製剤評価、品質規格に関する研究、第2室では医薬品の安定性に関する研究、第3室では医薬品の品質管理に関する研究を行っています。 第2室の宮崎玉樹さんに聞きました。
 薬にはそれぞれ1年、3年などの品質保証期限があります。室温で保存してその薬が分解して違う化学物質になってしまわないか、また、分子の状態が安定しているかなど、薬の品質基準があって、その基準づくりや検査方法を設定したり開発したりするのも国衛研の仕事です。「でも、1つの薬の安定性を3年かけて調べるの?」と素朴な疑問。薬に刺激を加えて分子の動きの早さを見ることで、薬の安定性を予測できるのだとか。何を見れば予測出来るかも研究しています。また、薬は、効く成分と賦形剤という物質を混ぜてつくりますが、賦形剤の種類によっても安定性は変わるので、どういう組み合わせが安定しているかなどもさぐっているそうです。
 第1室の青柳伸男室長は、医薬品が体に吸収されて効果を発揮するまでを研究しています。投与した薬がちゃんと吸収されたか、国としての基準やそれを検査する基準づくりをしています。製品チェックの溶出試験があって、どういうやり方がまちがいないかなど試験法も研究しています。
 たとえば、胃の中は酸性ですが、高齢者ほど酸が出なくなり中性の人もいます。その酸度(pH)の違いによって、よく溶けたり溶けなかったりすると、薬としては問題です。青柳さんたちは研究結果をもとにその問題点を指摘し、5年前から、中性のpHでも試験して製品をチェックし承認をするように国の基準を改めるとともに試験方法を決めました。「医薬品は、申請するのは企業で承認するのは国。消費者は間には入らないわけで、私たち研究者は常に消費者の立場にたって、医薬品を承認する基準や試験方法を考えています」

組合活動は研究所のスタイルにあわせて

 国衛研支部の組合員数は、現在95人。執行委員会は半期ごとに交替します。役員は一部の人に負担が偏ることのないよう、部単位で選出していますので、部の組合員数に比して何期かに1回は役員を経験するというしくみになっています。執行部の他、労金委員、国公共済会委員、厚生施設委員、給与問題小委員会、定員外職員問題小委員会などさまざまな委員会もありますし、中央執行委員や本部女性部幹事への役員派遣もしていますので、ほとんどの方が役員経験者ということになります。「組合の役員を引き受け、その任を遂行するとき、研究との関係で半年が限度。逆に半年だから全力で組合活動に取り組めると言えます」とは、2002年度前期支部長の紅林秀雄さん。研究所のスタイルに合わせた組合活動の工夫です。支部では同好会活動も活発です。もちろん組合費から同好会への補助も行っています。中央執行委員の佐藤道夫さんは、長年、給与問題小委員会の委員をしてきましたが、ここでは、組合員カードをもとに現員現給のデータを持ち、昇格などで不利益がないか、常に監視し、問題が生じたら執行部が迅速に対応しています。また、教宣活動にも力を入れていて、支部ニュースの他、組合員限定のホームページがあり、各種報告や、支部大会報告、毎回の支部執行委員会の報告まで、詳細に掲載され、支部執行部により運営されています。半年交替でここまで緻密に・・やはり国衛研支部の組合の底力を感じます。
 支部は今、国衛研大阪支所(国衛研支部大阪支所分会)が2004年3月で閉鎖という重大な問題に直面しています。支部では、本人の意志を尊重し、本所受け入れや雇用確保、再就職に対して最大限努力するよう所に対して申し入れています。

研究環境が多様化する中で組合の役割が輝く

 今年度後期の執行部は、昨年12月10日の支部大会で前期メンバーと交替し、スタートしました。支部長の山崎壮さんは、支部大会で、「弱い立場の人を守るのが組合だが、今後は、学位のある人にとっても魅力ある組合活動をしていきたい」と決意を語りました。
 「独立行政法人のような評価基準を採れば、行政支援業務をめいっぱい行い、かつ、学問の世界でも高い評価を受ける独創的研究を行えということになる。それは無理」。山崎支部長は、国衛研の現状をこう分析します。研究所には、政府の原案作成のためのサポートをしている人も、ゲノムプロジェクトなど世界のトップレベルの研究を行っている人もいます。所内の研究支援をする部門もあり、研究所全体で役割分担をしています。組織として個人が別々の役割を担い、研究所全体として役割を果たしているのです。「先端的基礎的分野も行政支援研究分野もともに重要であり、両者の役割に損得があってはならない。研究環境が多様化する中で、組合として、基礎研究分野の職員と行政支援分野の職員とで処遇に差がないか十分に関心を持ち、研究業績の評価方法に対して問題意識を持ちたい」それは、02年度後期執行部の重点課題でもあります。山崎さんの組合への思いは熱い。「変化する中で、自分たちの研究環境を維持していくためには組合が必要。組合がないと、研究所が所員を理解していても、緊張関係がなくなります。注視して、もし何かあったら、組織として文句を言う。そのために組合が必要です」
(近藤浩美)



歴史の真実を知ってほしい

〜 第2次世界大戦の反省から生まれたドイツ平和村 〜

厚生労働省3単組共同インタビュー

女優 東ちづる さん
 「私には青春の記憶がない」〜女優の東ちづるさんが昨年、東さんとお母さんの9回に及ぶカウンセリングの記録と11本の書き下ろしエッセイで構成する本「〈私〉はなぜカウンセリングを受けたのか〜『いい人、やめた!』母と娘の挑戦」を出版しました。東さんは、女優活動のかたわら、プライベートでは11年前から「骨髄バンク」や「あしなが育英会」などのボランティアとして、休日を利用して講演会やシンポジウム、病院へのお見舞い、募金活動で全国各地を訪れています。また、戦争で傷ついた子どもたちを引き取り、治療・リハビリの後、母国に帰す活動を行うドイツのNPO「国際平和村」の支援活動を行っています。全厚生、全労働、全医労の厚生労働省3単組が共同でお話をうかがいました。
(近藤浩美・西田志緒)
東ちづるプロフィール
女優。広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマから司会、ラジオ、講演、エッセイ執筆、自身のデザインによるオリジナル着物を手がけるなど幅広く活躍している。「土曜ワイド劇場/温泉若おかみの旅情殺人推理シリーズ」や「金曜エンタテイメント/京都女優シリーズ」に主演する他、テレビ朝日「土曜の奇跡TVのチカラ」(毎週土曜20:00〜21:00OA)、TBSラジオ「グッドモーニングジャパン」(毎週日曜8:30〜9:00OA)などに出演中。主な著書に、『わたしたちを忘れないでードイツ平和村より』(ブックマン社)、絵本「マリアンナとパルーシャ』(主婦と生活社)、『ビビってたまるか』(双葉社)などがある。
いい子でなくていい頑張らなくていい私は私でいい
戦争加害者でもある日本にできること
仕事だけで勝ち負け決めないで!自死遺児の進学と心のケアを
自分の言葉で表現することを大切にしていきたい
直筆サイン本を10人にプレゼント

いい子でなくていい頑張らなくていい私は私でいい

■昨年11月21日に「〈私〉はなぜカウンセリングを受けたのか 『いい人、やめた!』母と娘の挑戦」を出版されましたね。
 子どもたちは親や学校や社会の期待に応えようと、本当に頑張って、「いい子」をしてる。「気付いていないけど、いっぱい、いっぱいなんだな」と感じることがよくありました。以前はそういう子たちを見ていると、自分を見ているようで苦手だったのですが、今は「そんなに頑張らなくていいのよ。あなたらしく生きていいのよ」と抱きしめたくなる。それが、どうやったら伝わるんだろうという思いはありました。お母様方も良かれと思って「ベストを目指しなさい」って言ってるわけですしね。自分がカウンセリングを受けてみて、「人は変われるんだ!」と。日本ではカウンセリングってマイナスのイメージがありますが、「気付いて解決しようとする人のサポートなんだ」とわかりました。ある番組で自分がAC(アダルトチルドレン)だったって話をしたときに、高校生から高齢の方まで「いつ本になるんですか」という問い合わせが多くて、自分がこういう表現する仕事だから「本にしてもいいのかな」と。でも本当は書かずにいられなかったのです。親御さんたちが読んで下さるといいな、「自分も誰かの子どもだったな」と。
■お母様と心を開いて話ができるという過程が、とても共感できました。私は「できる子」ではなかったのですが、母自身は「期待に応える子」であってほしいという気持ちはあったと思います。
 「いい子」とか「優等生」って、「できる子」というわけではないのです。勉強はできなくても「いい子」になろうとしている子はたくさんいます。「いい子じゃなくてごめんね」とか「ボクがいい子じゃないから、お父さんが病気になっちゃった」とか、子どもはそういうふうにとらえたりします。若い世代に向けての発信でもあるのですが、「親を解放したい」っていうのが私はすごく強くありました。今まで60年くらい生きてきた母に、ここから意識改革なんて大変残酷なことだと思ったのですが、それでも自分らしく生きた方が心が豊かじゃないのかな、と。私の同級生は「今さら親に言うのはかわいそう」と言うのですが、そう思いながら、親を「かわいそう」なんて言ってる方が失礼な気がしたので。私はカウンセリングを受けて、年齢は関係なくて変われると思いました。
■読んでいてお母様の苦悩が伝わってきました。
 そうなんですよね。もうカウンセリング中は「しまった! リセットボタンどこ!?」って感じだったんです(笑)。
■「人生の主役は『自分』であるべきだ」というくだりがありますね。私自身は、自分を律する「自律」ではなくて、他人の価値観で「他律」している自分を感じます。自律しようと思いながら、なかなか難しいです。東さんは、自分の中に芯、軸といった、基準になるものがあるのでしょうか。
 「自律しよう」と思うことが重要だと思います。完全に「自律」なんてできないですよね。依存はし合ってるし、「他律」というバランスも必要ですしね。一匹狼で生きていくわけじゃないですから。ただ、「自律」って必要だなと思っている自分を認められるようになってから、私はラクになりました。とにかく自分の心に寄り添おうと。つらかったら、「ああ私つらいんだぁ」とかね。今までは傷ついても、「大丈夫。頑張れ!」とか呪文みたいに思っていたので(笑)。「あ、私傷ついてるんだぁ。あーよしよし傷ついたね」って自分の心に寄り添おうと決めてからは、結局自分の気持ちが支えになりました。それまでは、仕事やボランティア活動が支えだったりとか、彼や母親の存在や、いろいろなものが私にはあると思ってたのが、「私には私がいるじゃない」って。「私は自分を大切にしなきゃ」って。そうすると自然に他の事も大切にできるようになりました。以前は、先に他の事を大切にしようと思う自分が強かったと思います。特に女性の方が自分を後回しにしがちですよね、夫や子どものためとか。仕事を持ったら、男性よりも仕事をしないと評価されにくいしね。男性も、とにかく仕事が人生の中で第一になっちゃったり。
■自分の気持ちに寄り添うことが大事なのですね。
 サイン会をしたときに意外だったのは、「宛名を書かなくていい」という女性が多かったのです。初めてのことで、「なぜですか」ってお訊きすると、「後で母にも読んでもらうから」と。うれしかったですね。

戦争加害者でもある日本にできること

■今回東さんにお話をぜひ伺いたいと思ったのは、MBSの「世界ウルルン滞在記」で東さんが「ドイツ平和村」を訪れた回の放送を見たのがきっかけでした。
 ドイツ平和村では、世界各地の戦争で傷ついた子どもたちを連れてきて治療をし、リハビリをし、再び母国に返す活動をしています。ドイツ平和村のことを知って、たくさんのことを知りました。今地球上で行われている戦争について、単純にニュースなどでは見聞きしていたけれども、日本にいるとわからないことがありすぎてびっくりしました。ドイツが平和村を作った理由は、第二次世界大戦の反省からだったのです。子ども達の傷、心の傷とかいっぱい衝撃としてありましたが、同じような歴史を持つ敗戦国で、ドイツにできて、なぜ日本にはできないのか、実はそれが一番衝撃だったのです。ドイツ平和村はNPO団体なのですが、国の理解がないとできません。パスポートを持たない子どもたちを受け入れる〜日本でいう外務省、どんな菌を持ってるかわからない子どもたちを受け入れる〜厚生労働省など、あらゆる機関が許可を出しているのです。では、日本でできないのか、と。ドイツの人からすれば、日本の人たちは優しい、しかも被爆国であるので、できないわけがないと思ってるわけです。実は私、最初の一年は、日本に平和村ができないかという活動をしました。ところがこれは大変なことだというのであきらめて、日本にはできる事があると。それはやっぱり募金、お金だと。それでもなんとなくジレンマはありますね。まず教育からなのです。自分の国をまず知る事です。自分の国のことを知らないと、他の国をサポートするなんておこがましいと思います。自分の国を知るというのは、歴史を知るということですね。真実は一つなんだから、真実を知る。その上で今を生きる私たちに何ができるかと考えたら、それはドイツみたいにできるだろうなぁと思います。
■今も日本は、例えばアメリカがイラクに攻撃するという時に反対もしない。インド洋にイージス艦を派遣したり、憲法調査会では憲法9条を変えようという報告が出たりとか、戦争をする国になってしまうんじゃないかと。
 そうですね。私、海外に行った時「あぁ、この国いいな」と思うけど、「やっぱり日本だよね」って思うベースは、日本が戦争を放棄してる国だからです。私は広島出身ですが、長崎・沖縄・広島というのは、平和教育というのをたぶん他の県よりもきっちりやってると思います。だから戦争=恐怖だったので、「え? 日本って、どこに行くの?」っていう怖さがあります。でも、これは、きっと私たち一人ひとりの意識の相対的なあらわれじゃないのかなと思います。私たちにはどこか被害者意識があったのではと思います。「広島ってこんな大変な目に遭いました」という教育を受けてきたので。でも実は加害者でもあった。戦争ってそういうもの。ということを平和村に行くようになってやっとわかったのです。他の国が戦争をしていることを知っているのに、関わっていないからいいというわけじゃないってことも、平和村に行ってわかりました。「何もしない」という関わり方をしているんですよね。
■東さんはお忙しい中でもボランティアをなさってますよね。ボランティアに対する思いというのは・・。
 それはね!恋愛みたいなものです。SOSを発信している人との運命の出会いだったんですよね。32歳の時に、本当に恋愛と一緒で、それが私にとってはタイミングでした。ボランティアと出会って、相思相愛になって、好きになったらね、どんなに忙しくても時間作るんですよ(笑)。本当に。ケンカもするし、別れようかなと思う瞬間もたくさんある。でもやっぱり一緒にいると癒されるなー、育まれるなー、発見もあるなーと思う。それでも、やめたくなったらやめるんです。無理して続けることはない。そのくらいのスタンスなので、よく「精力的にやってる」とか言われますが、まったくそんなことないです。優先順位の一番というわけではありません。

仕事だけで勝ち負け決めないで!自死遺児の進学と心のケアを

■本気でやめようと思ったことはないんですか?
 あります。出会う患者さんがどんどん亡くなっていった時期があって、まだ骨髄バンクの登録者が少なくて。結局私がやってることは独りよがり? 自己満足? やってたって登録者は一気に増えるわけじゃないし。本当にね、「やめようかな、やめてみようかな」と思う瞬間はありました。でも、よくできたもので、「あぁ、もうやめようかな」と思ってるときに「移植して元気になりましたよ」っていう連絡がきたり、新しい患者さんと知り合って、「東さんに会いに来ました」とかね。「はぁー、やっぱり好きかも」って(笑)。
 今は気持ちの中ではあしなが育英会の方が大きいんですよ。自死遺児が増えていますので。自殺者が約3万人、自殺未遂の人が30万人。景気が良くならないから、リストラされたり、借金苦に苛まれたりとか。それが原因で鬱になったりして自殺を選ぶ方が増えていますので。一番気になっているのは日本の、親を亡くした子どもたちですね。子どもたちの心のケア、彼らが「うちの親、自殺したんだ」と言えるような環境を作ることが大切ですね。自殺をした人は、負けた人、マイナスイメージな弱い人だとか、誤解をしているような社会がありますから。いまだに勝ち組負け組みたいな意識があるでしょ。「仕事だけで勝ち負け決めないで」って思います。
■今、あしなが育英会から本も出てますね。
 タイトルは『自殺って言えない』。あの子達の本当に絞り出すようなメッセージです。たくさんの人に読んで欲しい。
■あしなが育英会は、病気・災害・自死遺児の進学の夢を継続的に支援する「あしながさん」を募集していますね。
 あしながさんはほとんどが中流家庭や年金生活者だそうです。今、不景気が長びいているので、あしながさんが「ごめんなさい」ってやめていってるのです。本当に一月500円でもいいから、たくさんの方があしながさんになってくれたらいいのですが。
■私達に何かできることはあるんでしょうか。
 人それぞれ違うと思いますが、骨髄バンクや平和村、あしなが育英会など、その団体が何を求めているのか、ニーズをまず知らなければならないですね。平和村なら、物資を送ってもダメです。それは空港の税関で止まっちゃう。とにかく平和村なら必要としているのは、ジャストお金です。とにかくお金! あしなが育英会も一番はやっぱりお金ですね。骨髄バンクならとにかく登録者。あとは、その登録するシステムを変えようという動きだとか。ニーズを知って何ができるかと考えれば絶対できることはあります。だからやみくもに「やりたいの、やりたいの」という人たちが実は危険だと思います。

自分の言葉で表現することを大切にしていきたい

■着物のデザインもされてますね。本の中に「ペンギンは鳥なのに飛べない/でも、泳げる/飛ぶように水中を自由自在に/ほめられなくても認められなくてもいい/それも ワタシの幸せ」というペンギンの話がありましたが、他にどういうメッセージがあるのですか?
 「翼」の着物っていうのは、いつも心に翼をって。その翼はいつもいつも羽ばたいていなくていい。閉じていてもいいし。でも肩甲骨のところには翼をイメージしようとかね。他にもたくさんあります。「花の冠」というのは、野に咲く花〜猫じゃらし、露草、蓮華、白詰草の花で花輪を作っているのですが、それは、雑草という名の野花はない、雑草と呼ばれているものたちは、大輪の花を咲かせるわけじゃないけれども、その季節が来たら毎年花を、小さい花を咲かせる。枯れたように見えても実は根はしっかりと張ってるのよ、というメッセージです。
■どこにありますか?
 市原亀之助商店(笑)!そこからデパートとかいろいろなところに卸してます。京都の市原亀之助商店さんは、芸能人が大嫌いな卸問屋さんで、日本で一番大きい所です。ずいぶん経って、「どうして私のデザインを扱ってくれるんですか。デザインを気に入ってくれたんですか」とたずねたら「決めた時には東さんのデザインを見ていなかった」と言われてガクッて。で、「『ウルルン』を観たから」と言われたんです。「ドイツ平和村に行ってる東さんを観て、この人と何かやりたいと思ったから」と。びっくりしました(笑)。
■今後のお仕事や活動についてのお話を聞かせてください。
 仕事は、自分の言葉で表現することを大切にしていきたいと思います。これまでもそうですが、本や絵本を書いたり、司会やコメンテーターであったりとか。ボランティア活動は、あまり目標を持たないで、瞬間瞬間の「あーこうしたい」っていう自分の気持ちに寄り添っていきたいと思います。結果が出ても出なくても、「やりたいからやってる」っていうくらいのスタンスなので。仕事は結果を出さないといけませんが。きっと私はこれでバランスがとれてると思うのです。
■たいへんありがとうございました。

直筆サイン本を10人にプレゼント
 東ちづるさん直筆のサイン入り本『<私>はなぜカウンセリングを受けたのか』を10人の方にプレゼントします。ハガキに住所・氏名(家族の場合は組合員の氏名も)・支部名を書いて応募してください。Eメールでの応募もOK。
▽締め切り=2月10日必着。
▽宛先=〒100-8916 東京都千代田区霞ヶ関1−2−2厚生労働省内 全厚生労働組合「新年号プレゼント」係。
EメールはZENKOSEI@zks.dp.u-netsurf.ne.jp
▽発表=2月15日付紙上の予定。

●ドイツ平和村
連絡先
フリーデンスドルフインターナショナル
P.O.Box140162、46131 Oberhausen Lanterstr.21、46539 Dinslaken, Germany
TEL +49-(0)2064-49740
FAX +49-(0)2064-4974-999
日本からの募金は、以下の口座から。
東京三菱銀行 東京営業部
普通口座 口座番号2680343
名義人 Aktion Friedensdorf e.V
●(財)骨髄移植推進財団 日本骨髄バンク
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-19廣瀬第2ビル7F
TEL 03-5280-8111 FAX 03-5280-0101
http://www.jmdp.or.jp/

●あしなが育英会
〒102−8639東京都千代田区平河町1-6-8平河町貝坂ビル3F
TEL 03-3221-0888 FAX 03-3221-7676
http://www.ashinaga.com



大阪から社会保障拡充のうねりを全国に
大きな気概と確信を持って  大阪支部

 「完全失業率」5.5%、大阪府では8.4%と過去最悪です。自殺者が4年連続で3万人を突破‥。どの指標をとっても国民生活は最悪の状況にあります。
 「人身事故により電車が遅れたことをお詫びします」のアナウンスがほぼ毎日のように聞こえてきます。社会や経済の状況が反映されているのは明らかです。本当に「お詫び」してほしいのは、小泉さん、あなたです。
 こういうときこそ社会保障の充実で国民生活の安定と安心をはかり、労働者の生活と雇用を守るのが政治の役割です。「老後の安心なくして、景気回復なし」「健康守れずして、景気回復なし」です。


支部で産別をリードして02春闘でシンポを開催

 大阪支部は、02春闘で「今、社会保障に携わる労働者に求められているのは何か=医療・介護・年金を生活者の立場から告発し、社会保障の充実を求めるシンポジウム」を大阪自治労連・大阪医労連に呼びかけ、三者共催で成功させました。
 シンポジウムは、幅広い市民や運動団体からも意見を聞きともに社会保障を考えようと、これまでの労働組合の枠を超えた取り組みとしても歓迎されました。
 私たちがこのような取り組みができたのは、府民・国民の中に入って運動を続けてきたという歴史と実践があったからだと自負しています。

「まったなしの出番」年金講師団

 小泉内閣の悪政ストップ、くらし・雇用・働くルール確立の国民総決起の壮大なたたかいが03春闘に求められています。
 小泉内閣は、社会保障の分野にまで市場原理を持ち込み社会保障の根幹に関わる総改悪を狙っています。社会保障に携わる労働者としての真価が問われています。
 「国民の中へ、国民とともに」の実践的な運動が求められています。
 大阪支部年金講師団では、04年金改悪を何としても阻止するため「すべての単組・民主団体に年金講師を」と、大阪労連主催で年金講師養成講座(1月下旬〜)を開催します。大阪労連の事務局長も「100人規模の講座を4回連続で」と大いに積極的です。
 団長の竹本さんには、学習素材やパンフの作成・ニュースの発行‥と企画がいっぱい。体制も大切と、新年9日には「骨格に関する方向性と論点」の学習会を企画。

「国民の中へ、国民とともに」を実践のスローガンに

 支部としても、署名や宣伝で地域や労働組合訪問、行政相談活動など大いに奮闘したいと考えています。また、全厚生近ブロで「大津・京都・大阪を駆け抜ける、春一番、全厚生近ブロ宣伝・署名キャラバン行動」のような取り組みもできたらと執行部ではひそかに考えています。近畿の仲間のみなさんいかがですか?
 大阪から、近畿から。そして、全厚生の総力を結集して、国民のための社会保障を確立するたたかいを03年大いにつくり出しましょう。
(書記長 津川清司)


民間共同者との共闘を

函館地区での取り組み  函館支部支部長 泉 徹

 全厚生各支部の仲間の皆さん、いつも奮闘ご苦労さまです。 函館地区において、この数年重点的に参加している民間労働者との共闘について思いを紹介します。
 函館支部では、函館地区国公協議会(以下地区国公)にその発足当時から参加しています。数年前に長年、地区国公を引っ張って来られた方々が、退職となり、世代交代を余儀なくされたため、当支部もその人材を派遣することになり、副支部長の滝川(函労常任委員)と共に参加しています。
 地区国公では、その独自活動の他、年間の活動の中心として、全労連函労会議(以下函労会議)へ結集します。他の地区労連と同様に、産別加盟(公務労働者)という位置づけでの参加です。昨年から地区国公の議長を任され、それにより、函労会議に能動的な参加をしています。
 参加した当初、「民間労働者となぜ一緒に行動するのか」とか「政府が検討している政策・改悪になぜ反対し、集会やデモ行進に参加するのか」など様々な疑問があり、とりあえず、付き合ってみようという程度での関わりからのスタートでした。
 しかし、地区国公議長という立場もあり、地区春闘共闘委員会や評議員会・定期大会など代表者として出席する中で、民間労働者と公務労働者が共闘する意味が少しずつわかって来たように思います。
 昨年、情勢分析を目的に国公労連からのメール通信を日々読ませて頂き、民間労働者(特に中小企業)への待遇が国家公務員の給与に直接反映することを初めて知り、ショックを受けたことを鮮明に覚えています。国公労連は、人事院との交渉で再三、給与の削減に反対し続けましたが、結果的には、マイナス勧告、完全実施となった上、多くの年金受給者や社会福祉事業従事者などに多大な影響を与えた人事院の無力さに失望したのは私だけではないと思います。 公務員の給与体系は、民間と比べ、労働基本権の有無により大きな違いがあるため、春闘妥結報告を受けても、それほど自分たちの問題として受け止めていなかったのが正直なところです。しかし、実際にはその結果が自分達の待遇に大きく影響することを知り、その重要性を認識しました。
 昨年の熱海の大会で発言しましたが、国民の少数派である国家公務員だけが団結し、行動するのではなく、民間労働者と共にこの不況を打開することが必要な時期にきていると思います。「官が下がれば、民が下がる」という悪のサイクルが動き出しましたが、その阻止には全ての労働者が結集した国民春闘を皆と力をひとつにして運動していきたいと思います。
 国公労連はもとより全労連に結集し、「くらし・雇用・いのち・平和」を守り、更に平穏な生活を脅かす諸問題に労働組合として取り組み、よりよい社会を目指すということを大きなテーマとして、各支部と共に取り組めることを願っています。


あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします


中央執行委員長  杉下茂雄


子供や老人を大切にする政治のありように

 テレビで日曜夜に放映されている「世界ウルルン滞在記」は、よく見る番組の一つです。とくに東南アジアや南米などの奥地の少数民族の家族生活ものはとくに興味をそそられます。そこに共通していることに、長老・年輩者がとても敬われ大切にされている、当然のこととはいえ、自分が住んでいる日本と比べて見て新鮮にさえ思われます。日本でも以前はそうだったのではないかと思う。
 子供や老人が大切にされる、そうした社会や意識は人間として、世の東西を問わず何ものにもまして尊いことでなくてはならない。そうでない社会や国家は内部から瓦解し滅び行くのではないだろうか・・・。
 子供や老人を大切にしない潮流は、いつ頃からこの日本で始まったのだろうか。以前、「枯れ木に水」論をぶった有力政治家がいたが、実は、この国の政治は一貫して福祉や教育をないがしろにしてきたのではないか、国民の血のにじむようなたたかいなくして福祉、教育は語られないのではないかと思う。この流れは、社会意識の中にあるのではなく、政治のありようそのものの中にあるのだといえます。日本という国は、西欧諸国と違って、国民が生み出す経済力を、国民にまともに還元しない世界中でも特異な国なのではないでしょうか。
 年末に03年度予算の政府案が決まりましたが、率直に感じることは、国民に痛みだけを求める、小泉内閣の本性ともいえる国民大収奪路線がいよいよ本格化した、という強い思いです。企業国家然とした政治のありようを転換しないと、国民にとっては、愚王として有名なルイ15世のことばとされている「われなき後は大洪水」となりかねない。
 03春闘は絶好の機会。全労連は雇用、くらし、いのち、平和の安心をと、国民春闘としてたたかう方針と展望をしめしています。反転・攻勢の春闘で、政治の流れを変え要求を前進させるために、決意新たにがんばりたいと思います。




極め派大集合

愛知県支部組合員
 ダンス楽しいです。
舞台で魅せる快感は、やめられません。ジャズダンスというと、「何だろ〜?」とよく聞かれますが、武富士のCMですね。衣装つけて、メイクして、ライトの中で踊る。まったく非現実の世界に浸るのがまた素敵。レッスンは汗みどろですが、もくもくと筋肉と会話しながら鍛えるのも、また楽しいのです。↓私です。
大分県支部組合員
 私は日本の伝統文化をこよなく愛しています。
 茶道とは「もてなし」と「しつらい」日本の伝統文化が全てそこにあります(着物、陶器、書道、お花、料理、精神)茶道は客と亭主で成り立っており、亭主は客をお招きするに当たり、庭の手入れ、茶室、道具の準備へと心を配る亭主の心そのままが写し出されます。客は亭主の心遣いを感謝し、一服の茶を飲む、こよなく楽しく平和な風情となります。表千家教授 秦宗由(そうゆう)
 写真は、我が家での教授者祝賀茶会にて、こちらを向いているのが私。
京都支部組合員
 私は小さい頃、飛行機の搭乗券を集めていました。20年位まえのチケットには行き先のお祭りなど(東京なら浅草酉の市など)の絵が印刷してあったり、ひな祭りや七夕などの時にもそれぞれ絵が印刷してあり、集めるのが楽しみでした。
愛知県支部組合員
 撮影当時は小学1年生(今は2年生です)生まれて初めての運転。しかし、意外に上手く運転?おなかに居る時から車に乗っていたから?隣に乗っていても安心出来ました。末はカミナリ族(古いたとえ!)かレーサー?一度乗車下さい。
愛媛県支部組合員
 必釣ゴンク釣り
 腕よし 潮よし 天気よし はねる活海老 大鯛誘う 胸の高鳴り 誰が知る とは、ある釣具店の大将のお言葉。リアス式海岸・宇和海の入り江に点在する養殖イケス、真珠の養殖ブイへ船を繋いで、マキ餌を使わない活エビ2匹だけのシンプルな釣りです。竿は胴硬、竿先30センチだけが超軟調の専用竿を使います。大鯛一同が、口を開けて、お待ちしています。
秋田県支部組合員
 私は気が向いたときに果実酒を造ることがある。最近はあまりしないが前は色々と試していた。梅、桃、柿といったものからバナナ、キウイ、キンカン、それにミントのような香草類、少しずづではあるが皆結構違いがあって面白い。これはどういう味になろう、そう思いながら残ったホワイトリカーをホッピーで飲む。そしてそれが一番ウマかったりする。
愛知県支部組合員
 みなさんこんにちはでござる。ぺこり。私は愛知の廣下といいます。“極”という程ではないですが写真の姿でコンサートに行くことにはまっていました。今ではもう解散してしまいましたけど……。今年秋には愛知で青年交流集会を開催しますので、そのときお会いしましょう。みなさんの参加を待ってまーす。
(わたしは真ん中)



医療保険制度の体系の在り方(保険者の統合及び再編)についての厚生労働省試案について(見解)
2002年12月20日
全厚生労働組合中央執行委員会

 厚生労働省は12月17日、医療保険制度の改革について、(1)保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方、(2)新しい高齢者医療制度の創設、(3)診療報酬の体系の見直しについての厚生労働省試案を公表しました。
 厚生労働省は試案をもとに与党や関係機関等との調整を行い、今年度中に基本方針を策定し、05年の通常国会に法案提出、07年の実施を目指すとしています。
 試案において、保険者の再編・統合では、都道府県単位を軸として再編・統合することが望ましいとして、政管健保については、「事業運営の効率性等を考慮し、保険者は現行の形態を基本としつつ、都道府県を単位とした財政運営を導入する。」、「保険者間の財政調整に応じて現行国庫補助を見直し、その範囲内で、政管健保内で年齢構成や所得による保険料水準の差異を調整した上で、都道府県ごとの医療費を反映した保険料率を設定する。」、「こうした仕組みについて、被用者保険の再編・統合の中で検討する。」としています。
 全厚生は、政管健保について、坂口厚生労働大臣が「都道府県単位を軸とした保険運営」を繰り返し述べてきたことに対して、(1)責任と経営(実施)は一体でなければならない、(2)年金と一体的に適用・保険料徴収を行っており、これを切り離すことはかえって非効率を生じさせることになる、(3)地域間で保険料に格差を生じさせることになり、制度の安定性・信頼性を損なうことになる等から、「これまでどおり国の責任で国の事業として、全国一体で実施すべき」と坂口厚生労働大臣や社会保険庁長官に交渉の場等で強く主張してきました。
 試案において、保険者については、「事業運営の効率性等を考慮し、現行の形態を基本としつつ」としていることは、全厚生の主張と一定符合しているとはいえ、都道府県を単位とした財政運営の導入や都道府県毎の医療費を反映した保険料率を設定するとしていることは、同一の保険集団内で医療費の高低を理由とする「地域間の格差」という新たな矛盾・問題を生じさせるもので、政管健保が抱える構造的な矛盾を根本的に解決する方向とはいい難いものです。
 医療保険制度「改革」の最大の背景や理由は、「財政」問題であり、それを圧迫している要因は、国庫補助率の削減、失業・不安定雇用者の増加、賃金低下等による保険料収入の減少、世界でも異常な高薬価構造等にあります。このことにメスを入れない政府の怠慢に問題の所在があります。厚生労働省は、高齢者の医療費が医療保険の財政を圧迫していることが課題だといいますが、高齢者が増えれば医療費が増えるのは当然であり、政府・国の責任を棚上げにして国庫補助を削減する一方で、患者、被保険者の負担増は当然とする論理や公的保障範囲を縮小する方向は、責任を転嫁するものであり到底認められないものです。
 とりわけ中小企業の従業員が圧倒的多数を占める政管健保は、健保組合や共済に比べ低い標準報酬や高い年齢構成、さらには劣悪な健康管理や福利厚生の中での高い受診率、また、被用者保険の最後の受け皿として、健保組合の中で財政状況が悪化した場合は無条件で受け入れざるを得ないなど、構造的な問題から慢性的な赤字体質を抱えています。一方、本則では16.4%と規定されている国庫補助は、平成2年度収支が黒字となったことを受けて、平成4年度から13%に引き下げられて以来、赤字が続いているにも関わらず据え置かれています。
 政管健保は、日本の医療保険制度の中核として、労働者と家族の生活と暮らしにとってはなくてはならない制度です。患者と被保険者に犠牲を転嫁し、国の責任を放棄する都道府県を単位とした財政運営の導入等ではなく、制度を充実し、これまでどおり国の責任で国の事業として、全国一体で実施すべきです。
 安心して働き暮らすことのできる医療保険制度確立、社会保障制度の拡充は国民の切実な願いであり要求です。
 全厚生は、広範な国民、関係諸団体と力を合わせ要求の実現のために奮闘していく決意です。


Back  to HOME