◆第1463号(2000年6月5日付)◆
私たちの願いかなえるチャンス
   総選挙で政治の流れを変えよう
 国会が6月2日に解散し、13日公示、25日投票日で総選挙が行われることになりました。  この間、自民党は自由党・公明党と組んで、中央省庁再編関連法、総定員法、年金改悪、労働諸法制改悪、新ガイドライン法(戦争法)、盗聴法、日の丸・君が代の法制化、憲法調査会の設置など、悪法を次々と強行成立させました。  全厚生は、こうした自民・自由・公明(のちに、自民・公明・保守)各党の数の横暴による悪法の強行を厳しく糾弾するとともに、「早期の解散・総選挙で国民の信を問え」と主張してきました。  「公共事業費50兆円、社会保障費20兆円」(右下の図「ふくらむ公共事業、日本だけ逆立ち」参照)に象徴される、大企業の利益優先の逆立ちした自民党型予算を国民本位に切り替えることをはじめ、中央省庁再編・独立行政法人化反対、年金改悪(左下の表「こんなに削られる夫婦の年金額」参照)反対、大企業の横暴なリストラ反対、憲法を擁護し、平和と民主主義守れなどを柱に運動を進めてきました。

◆ 悪法成立で私たちの願いは遠のくばかり

 私たち国家公務員は、国会で決まる法律に基づいて仕事をしています。いくらいい仕事をしたいと願っていても、悪法が次々と成立していては、想いは遠のくばかりです。  行革関連法や国家公務員の25%削減、行政コストの30%削減なども強行され、ますます、仕事は忙しくなるばかり。厚生省本省の残業実態(2面に掲載)は、平均月78時間という驚異的な数字となり、過労自殺や過労死が生じており、命を守るべき厚生省が、職員の命と引き替えに行政を行っているという悲惨な実態が浮き彫りになりました。福祉の職場では、公的責任を大きく後退させる社会福祉事業法等「改正」法案が強行され、障害者福祉施策に大きな不安を与えています。国立健康・栄養研究所の独立行政法人化も強行されました。社会保険では、「年金相談窓口で毎日、国民からのお叱りを受け、国民との関係がぎすぎすして、仕事に生き甲斐が感じられなくなる」との悲痛な声があがっています。

◆ 要求実現のためたたかった党はどこか見極めて

 この総選挙は、「国民のためのいい仕事がしたい」「残業をなくして、家族との団欒を大切にしたい」というあたりまえの要求を実現する社会をめざすチャンスです。  職場で一人一人の政党支持の自由は保障されています。どの政党が私たちの要求実現のために誠実にたたかってきたかを見極め(上の表「自自公が数の横暴で成立させたおもな悪法」参照)、棄権することなく、一票を投じましょう。  21世紀の新しい時代へ向けて、私たちの願いが実現する政治をめざして「政治を変えよう」の声を大きくしていきましょう。



賃金職員の雇い止め反対所長交渉を実施
--業務センター支部
 
 5月26日、業務センター支部は、賃金、超過勤務の縮減、昇格、そして賃金職員の雇い止め問題などで所長交渉を実施。賃金職員の雇い止め問題では、これまでの採用及び更新方法の不備を明らかにするとともに、まずは雇い止めの通告を白紙に戻し、労働者・労働組合との話し合いをすべきだと追及しました。 1つ目は、突然なぜ、雇い止めの通告なのか、との組合側の問いに、所長は「3年前から計画してきた。3年で打ち切ることにより長期化が是正される。長期雇用者に段階的にお辞めいただく時期になってきた」と回答。しかし、「計画」は当局の自分本意の計画であり、3年前にすでに勤務していた賃金職員に対し、具体的な説明はいっさいありませんでした。その事実の前に「3年前には(雇い止めするとは)言っていない」と認めざるを得ませんでした。  2つ目は、採用・更新時の対応に問題があります。平成7年当時、職業安定所における求人票で「アルバイト、定年65歳、簡単な事務補助」と求人募集を行っています。また、いつまで勤められるかの問いにも、「いつまででも」「できる限り」などと答え、事実上65歳となっていました。平成9年には、基礎年金番号創設にともなう電話相談の設置がされます。その際、電話相談の場合、業務の専門性があるので、賃金アップを図るが、更新は5年とする。賃金職員のままであれば、賃金は変わらないが、雇用更新は続けると説明しています。例をあげればいくつもあり、労働者と使用者との雇用継続に対する期待感、信頼関係はつくられてきたといえます。今回の問題の大きな特徴です。  3つ目に業務センターのおかれている状況と賃金職員の業務上の性格です。当局は、賃金職員の業務を臨時的業務との認識を示しています。この認識は、私たちと大きく違います。行政需要が増大する一方、定員が増えない中で賃金職員の業務は、各課の庶務、係の入力業務、人手に頼らざるを得ない集団的業務など平常業務の中に組み込まれています。継続性、そして、その能力なしには、年金事務に支障をきたすのは明らかです。  現在、交渉は継続中です。当局は、方針は変えないとしています。業務センター支部は、引続き粘り強く奮闘します。
(峰一史書記長)


リレーずいそう
● トライアングル
 先日、一人のホームレスの男性が私を訪ねてやってきた。以前「生活と健康を守る会」という民主団体の要請で年金相談を請け負ったことがあり、そこの紹介である。
 若い頃から職を転々として住居も転々、現在72歳。当然収入が無く、最後に京都に落ち着き、体調を崩して一枚の張り紙をみて「生健会」に相談に行ったそうだ。
 詳しく話を聞くために本人に来てもらった。昭和35年から58年までで14年間の厚生年金期間が確認できた。若い頃はどうしていたのか聞くと九州の炭坑を転々としていたと言う。全国分県地図を出してきてどのあたりか一つずつ確認する。それで厚生年金期間調査願を作成しようとしてはたと困った。回答書の送付先がない。本人に連絡先を聞くと、生活保護を申請し落着き先が決まるまで、検査と体力回復のため1月ほど入院するそうだ。「生健会」とケースワーカーが相談し決められたと言う。
 担当ケースの名前を聞き、連絡し委任調査をお願いした。月10万円の年金が5年間遡及すれば600万円。入院費・保護費を返しても何とかホームレスではなくなるだろう。
 私の書いたメモを折り畳み、巾着に入れ、全財産が入っているであろう紙袋とともに帰っていかれた。一人の公務員では不十分でも力を合わせれば強い。いい調査結果を期待している。

(京都支部 北久保一夫支部長)



ひどい!不夜城厚生省
   --本省支部 残業実態アンケート結果
 全厚生本省支部は、霞国公等とタイアップして3月に「残業実態アンケート」を行いました。
アンケートの結果は、厚生省本省職場の深刻かつ異常な長時間過密労働の実態を例年以上に浮き彫りにしています。

◆ 関心の高さ示す回収結果

 今年の回収は850枚、執行委員が回収の努力をした結果であると同時に、このアンケートへの関心の高さのあらわれと言えます。これは、対象職員数の半分を超えます。霞国公全体の回収枚数(3、400枚)の約4分の1を占めています。
 その内訳は表1〜3に示したとおりです。

表1職名別
職名 枚数
課長補佐 127 14.9%
専門職(専門官など) 122 14.4%
係長・主査 327 38.5%
主任 11 1.3%
係員 250 29.4%
NA・不明 13 1.5%
合計 850 100%
表2年代別
年代 枚数
10代 6 0.7%
20代 216 25.4%
30代 363 42.7%
40代 191 22.5%
50代 70 8.2%
NA・不明 4 0.5%
合計 850 100%
表3性別
759枚 89.3%
85枚 10.0%
NA・不明 6枚 0.7%
合計 850枚 100%


残業率はますます高く

 Q1では、通常業務をどの時間帯で処理しているかを聞いています。
 この結果は図1のとおりですが、「残業」と答えた人が昨年より10ポイント、霞国公よりも約8ポイント高くなっています。これは、省庁再編が具体的日程に上ってきたことやY2K問題への対応、介護保険や年金「改革」などの重要な政策課題への対応等が影響していると思われます。ちなみに阪神・淡路大震災への対応を行っていた5年前(95年)の調査が昨年調査と同等であったことを考えると、それ以上に業務量の増加が甚だしいといえます。

退庁時間いつ帰れるかわからない

 Q2では、2月の1か月間の残業時間を聞いています。(図2)これによると、一番多いのが100時間以上で二番目が75時間以上、三番目が50時間以上となっており、人事院が出した指針、年間360時間以内(月30時間以内)に当てはまる者は、5分の1にも満たない18%程度でした。
 また、Q3では、年間の平均退庁時間を聞いています(図3)が、霞国公が18時台にピークがあるのに対し厚生省本省では、それが22時台となっています。確かに、毎日22時過ぎに帰宅の途につき、休日出勤を2〜3日やれば、確実に超勤時間は月100時間を超えます。

慢性的人員不足と国会待機が原因


 Q4では、残業の主な理由を聞いています。(図4)(2者選択)そのトップは、やはり仕事の量に対して人員が少ないこと。二番目は、国会待機のため。国民生活に密着した介護保険や年金などの重要な課題への対応が不十分な人員配置のもとで行われていることを如実に表しています。

年次休暇10日以下が7割も

 Q8では、昨年1年間の年次有給休暇(夏期休暇を除く)の取得日数を聞いています。(図5)これによると、年次休暇取得日数10日以下が7割にも達し、95年の約6割と比較しても、年休がとりづらくなっている事は明白です。霞国公でも10日以下が5割程度であり、厚生本省の職場状況はおして知るべし、です。

手当は半分以下があたりまえ?

  Q12では、超過勤務手当の支給率について聞いています。(図6)これによると、支給率2割程度と4割程度と答えた者が一番多く、4割以下で半数を超えています。こんなこと、本当に許されて良いのでしょうか。給与法では、このような状態を「見て見ぬ振り」(条文では、「これらの行為を故意に容認」)をした者に対しても罰則が科せられますが、みなさんご存じでしょうか。

人間らしい生活を取り戻したい

 今回の調査で、圧倒的な人手不足、異常な職場実態が明らかになりました。
 本省支部は、引き続き25%定員削減に反対し、職員が人間らしい生活を取り戻すことができるよう、引き続き全力で超過務の問題に対処して行きますので、みなさんのご支援ご協力をお願いします。(本省支部 市川茂書記長)



命を守る厚生省で職員の命が犠牲に
--過労自殺を公務災害に認定--
 厚生省は今年4月17日、深夜勤務が続いた末、3年前の97年に自殺した元職員(当時34歳)の死亡は、公務上の災害にあたると認定し、遺族側に通知しました。公務災害と認められた職員は、本省勤務の元係長。遺族側は、「慢性的な長時間労働や深夜勤務による過労、ストレスで精神障害に陥り、自殺に至った」として、同年11月厚生省に対し公務上の災害認定を申請していました。
 過労自殺が労災や公務上の災害と認定される例は少ないけれども、昨年までの10年間に自殺した国家公務員が「公務上の災害」と認定された例は、17件にものぼる。これが氷山の一角だとしたら、なんと多いことか。
 この元係長の死に至る経過は悲しい。87年に採用され、90年に厚生省の本省勤務となり、以後、深夜の帰宅が続き、国会開会中などは未明や明け方になることも多かった。自殺する前年の12月には、連日連夜深夜の帰宅。週末は家で眠るかだるそうに横になっていた。年が明けてからも多忙を極めた生活が続いた。3月3日、朝急に「今日は、休む」と言って休暇をとった。その日の夜、彼は急に子どもを叱りつけて泣かしたり、妻の実家へ自分から電話したことがなかったのにかけたりとおかしい行動をとった。翌4日、いつもどおり出勤。駅まで送った妻に対して、車中で後輩の話をはじめ、厚生省を出ることになるらしいと話した。5日、同じく駅へ向かう途中、「一年後には、国立病院に出ようかな、少しは早く帰れるから」と話し、「今日は早く帰るから」と言った。ーこれが夫婦の最後の会話となりました。
 被災者の妻は、厚生大臣宛の意見書の中で「日本の医療の見本を掲げている厚生省が、実際は病人を作り出しているんです。厚生省で働く人達の家族はみんな淋しい思いをしている気がします。最後に私たち夫婦の交わした言葉『早く帰るよ』ーこれが現実になってほしい」と訴えています。
 遺族側代理人の川人博弁護士(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)は、記者会見で、厚生省職員の異常な長時間労働の実態について、全厚生本省支部が97年6月に実施した「残業・休暇アンケート」の結果を紹介し、「本件は、国家公務員の異常な長時間労働が職員の命と健康を破壊していることに対する重大な警鐘。国民の健康を守るべき厚生省で自殺する職員が出たことを、厚生省は反省してほしい」と強調しました。


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