◆第1451号(2000年1月15日付)◆

●政治の流れを変えよう
 社会保険職場からみえる世の中
 神奈川県支部の仲間を訪ねて

 昨年暮れの国会で年金改悪法案が国民の反対で継続審議となった。前回の改悪に続き、65歳までの年金をゼロにするというとんでもない内容だった。度重なる年金改悪、そしてこの不況。国民のくらしや営業はどうなっているのだろう。
 社会保険事務所は、国民年金や厚生年金、健康保険の仕事を通して、国民との接点を持っている。
 社会保険職場からみえる社会の矛盾を職員はどう感じているのか。全厚生神奈川県支部の仲間を訪ねた。

(写真と文・近藤浩美)

将来設計たたぬ人の相談はつらい

 横浜市戸塚区にある年金相談サービスセンターのセンター長の木戸口洋子さん(57)は、年金が改悪されるたび、お客さんに怒られているという。
 国民の声が反映された1970年代は、物価スライド制の導入など「たばこ銭」から「暮らせる年金」に改善されたが、それ以降は悪くなる一方だ。65歳支給に改悪された後、定年が65歳に延びるとは限らない。定年時に年金が給付されないのなら、霞を食って生きて行けということになる。相談センターには、まだ定年前だが、年金額を知りたいと言う人も訪れる。蓄えがなく、わずかの年金では将来設計が立たず、人生相談しているようになる時もあるという。
 法律改正(改悪)がありすぎるというのが年金の一番のひずみだと木戸口さんは指摘する。国民には、財源がないと危機感をあおって改悪し、不承不承ながら納得させる。「財源はあるんです。社会保障費を増額すべきですよ」と語気を強める。

不況直撃で滞納事業所増える一方

 「ここ2〜3年、滞納する事業所が増えています。資金繰りが苦しいところと折衝して、保険料を徴収するというのはたいへんです」。
 横浜中社会保険事務所徴収課の高橋利昌さん(37)は現状をこうきりだした。お金がなくて、1カ月2カ月遅れになって、雪だるま式にどんどん滞納が増えていく。
 同じく徴収課の佐藤文彦さん(30)は、「景気が悪い。保険料は上がる一方だし、払えない会社が増える。悪循環だ」。
 二人が所属する徴収課は、健康保険、厚生年金の保険料を会社(事業所)から徴収している。納付が遅れている場合は、訪問して納付計画をつくるなどの指導を行い、財産の差し押さえなども行う。
 滞納している事業所は、公共事業が目減りしている建設関係、バブルがはじけて影響を受けている不動産関係、下請けの自動車関連などに多い。特に下請けの中小零細企業はたいへんだ。

銀行の貸し渋りが保険料徴収にも影響

 建築関係は単価を下げられ赤字になっても仕事を受けざるを得ない。仕事があるだけいい。「取引先が払ってくれないとか、倒産してしまったとか、もう、やりきれない話が山ほどある」と佐藤さん。
 高橋さんは、新聞などに、景気が横バイとか、やや上向きとか書いて欲しくないという。景気はどの事業主さんに聞いてもよくなっていない。また、おととしくらいから銀行による貸し渋りは深刻で、どの事業所も借り入れには苦労している。社会保険料の延滞金は国税と同じ年14・6%にもなるので、これより安い金利で銀行から借りて納めていた事業所もあった。ところが、銀行の貸し渋りで、借り入れもできず、延滞している事業所もある。商工ローンに手を出したところもあり悲惨だ。かなりすごいとりたてで、金利が年40%。銀行が貸してくれないのでやむを得ず借りたらしい。
 「一昨年、銀行救済のために何

政治を変えなければ
国民のためのいい仕事はできない

資格取得より喪失が多い適用課

 「最近資格喪失届が多い。それに見合う適用がないから、失業者が増えているということだろう」。横浜中社会保険事務所社会保険適用課の片平祐志さん(40)は、そう分析する。
 適用課は、会社の人が年金の資格取得、喪失、報酬月額変更などの届出、資格の登録をする課だ。
 最近目立つのは月額変更届。今までレアケースだった社長を含む会社役員の給与を下げる月額変更届が非常に多い。一般の社員は昇給にともなう報酬月額の増額などほとんどない。
 社長や役員の報酬は税金対策であっても社会保険料は徴収されるので、名目だけでも出せなくなったのが今の現状ではないか。ひどいのになると、役員の月給が1万とか、常識はずれのものが多い。そうならざるを得ない社会の状況がある。
 片平さんは、「私たちとしては体裁が整っていれば受けざるを得ないが、世の中、これで回っていけるのか、人間もお金も停滞してしまっているのではないか」と気が重くなる。
 一方、多量に資格取得があるのは派遣会社。派遣会社というと、若い人が多いのかなと思うだろうが、10代から50代の人までいる。届けられている給料の額も年齢相応とは思えないほど少ない。派遣会社は、毎月、入るのも大量、出るのも大量で長く続かない。派遣というとスペシャリストのように聞こえるかも知れないが、製造業が主だ。
 ご存じの通り、昨年の通常国会で労働者派遣改悪法が成立した。今までTV局のプロデューサーや記者などスペシャリストの26業務に限られていた派遣が全面自由化となった。一昨年から昨年にかけて労働法制の改悪が続いたが、私たち全厚生も何度も国会前に座り込んで反対してきた。当時、懸念されていたとおりの「リストラの受け皿」「人ころがし」「労働者のレンタル化」が進んでいる実態を聞き、ぞっとした。この現状は、政府が作り出したものに他かならない。
 「世の中、悪い方に行っている。会社に人が入らなければ保険料は減る一方。政府は、雇用対策を進めて欲しい」。片平さんの要求は切実だ。

来所者がイライラしてる健康保険給付課

 「最近、ぎすぎすしている」という同社会保険事務所健康保険給付課の河原豊さん(36)。出産手当金や埋葬料など医療保険の現金給付の届出の受付と決定を担当する課だ。ぎすぎすしているのは、職場の人間関係ではなく、来所者との関係。
 届出は事業主がするのだが、自らの給料やボーナスを下げてカーっとなっている社長も来るし、来所する人が全体にイライラしているという。「こんな環境では、いい仕事はできない。政府には、とにかく景気をよくしてもらいたい。そうすれば、職場もなごやかになるのに」と河原さん。この不況は政府の無策から生じている。
 「年金が改悪されれば、クレームはまず社会保険事務所にくる。保険料を払っていても給付がないのでは、という話になるのでやりづらい面がある。今回の改悪法案はとんでもない。年金は増やしこそすれ、これ以上悪くして欲しくない」。
 河原さんの国民のためのいい仕事がしたいという願いと政府への怒りは強い。

保険料の免除申請が増えた国民年金

 国民年金の資格記録の管理、国民年金保険料(前年度分)の徴収、保険料納付免除の認定を行っている横浜中社会保険事務所国民年金業務課の曳地宏司さん(31)によると、現状は、収納率が減り、免除申請が増えているという。同じ課の冨永和江さん(41)も、厚生年金のようないわゆる「天引き」と違い国民年金は自分の財布から現金で納めるので、不況になれば、ますます、未納者が増えると分析する。
 免除申請には、収入が減り住宅ローンも払えない、妻がパートで首切りにあった、子供の学費が高く家計にのしかかっているなど理由がさまざま書かれている。曳地さんも冨永さんも「年金保険料の免除基準の緩和」を希望する。
 「年金改悪がされる度に、年金制度への不信感がつのり、なぜ保険料を納めなければならないのかとの苦情も多く、理解してもらうのに苦慮している」と冨永さん。
 曳地さんは、「保険料を据え置いて、国庫負担を増やしてほしい。国の予算が、公共事業費50兆円、社会保障費20兆円というのは、逆立ちしている」と厳しく批判した。

社会保険事務所は国民からの苦情の窓口

 「リストラされた。年金はどのくらいだろうかと電話がかかってくることが増えた」とは、年金加入者の年金裁定請求の受付、審査、裁定をしている同事務所年金給付課の諏訪亜紀子さん(30)。
 年金改悪で受給年齢がだんだん高くなり、年金制度を不信に思っている人たちが増えた。どう納得してもらうのかがたいへんだ。受給者の苦情や意見は、社会保険事務所が窓口となる。その苦情が、上の方まで届かない。国民の声の届かないところで法律を作っているのではないかと諏訪さんは疑問に思う。
 「年金改悪は許せない。年金の支給は65歳では遅すぎる。せめて60歳。生活の保障ができる年金額を。政府には、横須賀基地はじめ、あんなに軍用機をガンガン飛ばす米軍のために使うくらいなら、社会保障にまわせと言いたい」。

悲惨な相談に心を痛める年金相談

 保土ヶ谷社会保険事務所副長(年金相談の責任者)の蒔田百合子さん(55)を訪ねた。
 今日も54歳の人が、何歳からもらえるのかと心配になって相談にきた。お客さんは、だんだん若くなってきている。2〜3年前の来訪者は、若くて58歳くらいだったが、今は、55歳前の人も来る。「将来設計の参考に」と聞きに来るが、一様に「少ない」「これだけか」とがっくりして帰っていく。退職金を上乗せするから55歳でやめてくれと早期退職した人や、リストラされそうで心配だから早くから試算を出してくれという相談も増えている。年金改悪されて完全に65歳支給になったら、ますます将来のプランが立たなくなる人が増える。年金改悪は、時代に逆行している。老後は年金で食べていくのが主体。ますます貧富の差がつくのではないかと蒔田さんは心配する。
 筆者が話を聞いている後ろで、来訪者の声がする。「年金もらうのは、まだまだ先なんだけど、将来設計もあるし、まあ、たいして出ないんだろうけど、どれくらいか知りたくて」と50過ぎの男性が相談に来た。何かに追われているように目線はうろうろしている。「たいして出ないんだろうけど」という言葉には「たいした額が出て欲しい」という願望が込められているようにも聞こえる。失業中のようだ。
 昨年、男性の平均寿命が自殺の増加に伴って、短くなった。不況の時代、ほんとうに悲惨な相談が多く心を痛めていると蒔田さんは言う。蒔田さん達は、いつも矛盾を感じながら仕事をしている。
 取材を終えて駅に向かったとき、肩をがっくり落としてふらふら歩くさきほどの年金相談に来ていた男性に会った。その姿は、言いようのないほど寂しく、切なく悲しくなってしまった。そして、こういう人たちを生み出す政治に心から怒りを覚えた。

総選挙は政治の流れを変える絶好のチャンス

 後日、全厚生神奈川県支部の梅田支部長に話を聞いた。
 まず、昨年暮れの国会で継続審議となった年金改悪法案を廃案に追い込む。そして、支給開始年齢を60歳に戻すことをはじめ、老後を安心して暮らせる年金制度に変えていく。それには、行政サービスという観点からいくと、住民に密着した年金相談体制の確保は不可欠であり、人員削減には断固反対する。神奈川県支部では、今後も、住民宣伝行動を重視したい。春闘期には年金相談と署名をセットした団地宣伝行動などで対話を広げる。こういった行動で寄せられた声、また日々仕事をする中で寄せられた国民の声をしっかり受け止めて、運動していきたいとの決意だ。
 梅田さんは、「今の年金改悪は、国家的詐欺が行われている。政府の政策ミスを国民に転嫁している。いい仕事をしたいという社会保険に働く仲間の願いは踏みにじられている」と、悪政をすすめる政府には手厳しい。
 「政治が悪い」ーーこれは、支部長だけの意見ではなく、神奈川県支部で話をうかがった組合員みんなの意見でもあると思った。
 梅田支部長は最後にきっぱり。「政治の流れを変えて、国民本位の政治を実現したい。政治が変われば年金制度はいい方向に変えられる。総選挙はいいチャンスだ」。

日本の未来に想像を膨らませて

中央執行委員長 杉 下 茂 雄

 新しい時代の幕開けの年初にあたり、組合員のみなさんの日頃のご奮闘に感謝と敬意を表するとともに、心から新年のごあいさつを申し上げます。
 記念すべき2000年が平和であること、そして働く者や国民の生活が少しでもよくなることを強く希望して、私自身心あらたにこの一年もがんばりたいと決意しています。
 今年の干支はタツ(辰)。ご存じのとおりタツは想像上の動物です。干支にちなんで、日本の未来、私たちの生活を考え、大いに想像を膨らませてみたいと思います。
 日本の未来、私たちの生活、このことに思いを馳せれば政治のありようは避けて通れません。国民の希望や声が容易に反映される、そういう政治を実現したいものです。しかし現実は逆立ちをしている、といわざるを得ません。
 食料自給率40%の農業破壊、国民には、自分のことは自分で考えろと、大銀行や大手ゼネコンには国民の税金を湯水のようにつぎ込む一方で、社会保障制度には金がないといって改悪する。
 とくにこの間の自民党、自由党、公明党を与党とした政治は深刻で、それぞれの党利党略から国の進路を危うくしつつあります。
 いまの都合だけで、未来に責任を負わない政治、後は野となれ山となれ式の政治は、二十一世紀を展望したとき、この辺で終わりにさせなければなりません。
 今年はそのビックチャンスの年です。政治の舵取りの最終判断権は国民の手中にあります。
 今年は衆議院選挙の年です。まさにその結果は、二十一世紀の日本と世界の進歩を左右する、といっても過言でない重要な選挙です。
 未来に希望のもてる結果を、想像だけではなく現実のものとしたいものです。
 2000年を歴史の節目の年にふさわしく、そして本当に、人間が人間として尊重される社会、希望に輝く未来に向けて、仲間のみなさんと、ともに元気でがんばりたいと思います。


●日産村山工場の閉鎖はやめよ
 たたかうJMIU日産自動車支部の仲間

 日産自動車は昨年10月18日、村山工場など全国5工場の閉鎖と労働者3万5千人の削減という大規模なリストラ計画「リバイバルプラン」を発表した。3千人の従業員をかかえる日産村山工場(東京都武蔵村山市)の閉鎖は、労働者の雇用問題とともに、関連企業や周辺地域に大きな影響を与える。「工場閉鎖をやめ、雇用と地域経済を守れ」とのたたかいの中心でがんばるJMIU(全日本金属情報機器労働組合)日産自動車支部の仲間を取材した。


寝耳に水のリバイバルプラン発表

 「一緒に見ていた36歳すぎの工長が、真っ青になってね、唇の色がわからないくらいに」と当時の様子を話す大野良男さん(55)。
 10月18日の午後4時から、カルロス・ゴーン氏はテレビのブラウン管を通して、記者会見と同時に日産労働者に「リバイバルプラン」を発表した。
 「いちばん青ざめていたのは、課長だった。知らされていなかったようだから」と本木道隆さん(58)。まさに、寝耳に水の工場閉鎖の発表である。
 日産自動車は、昨年5月、フランスのルノー社から資本援助を受け、事実上その傘下に入った。ルノーから派遣されたカルロス・ゴーン氏は、日産の最高執行責任者として実権をにぎり「リバイバルプラン」を発表した。
 その主な内容は、東京・武蔵村山市にある村山工場や京都工場など5工場を閉鎖し、3万5千人を削減する。部品・資材購入の関連会社1145社を600社以下に削減するというものだ。
 日産村山工場にあるマーチ・キューブの組立ラインは今年9月に神奈川県横須賀市の追浜工場へ、スカイライン・ローレルの組み立てラインは、来年3月に栃木工場に移され、閉鎖される。村山工場には、プレス・メッキなどの部門(300人)を残すというが、期限などは明らかになっていない。
 3000人の従業員をかかえる日産村山工場の閉鎖は、労働者の雇用のみならず関連企業や地域社会に計り知れない大きな影響を与える。

単身赴任か辞めるかの二者択一

 11月下旬から、第1回個人面接が始まった。栃木か追浜か検討中かの三者択一である。1回目で「検討中」と回答した人が全体の3分の1にものぼる。12月下旬から、「検討中」の人の再面接も行われた。正月あけには第2回個人面接が行われ、3月には内定する。
 「若い人も単身赴任を考えているようだ。家のことや子どものことがあるので。でも、みんな、単身赴任が10年20年続くことに自信がないと言っている」とマーチラインで働いている宇山允庸さん(57)。
 日産は、住宅の子会社を作って、職員の持ち家政策を進めてきた。みんな多大なローンを組んで家を買っている。このご時世で、家を買い換えての引っ越しはまずできない。多くの人は、辞めるか、単身赴任かの二者択一が迫られている。
 「今でもきびしい労働をしているが、この後、栃木や追浜に行っても、ものすごい過酷な労働が待っている」と境繁樹書記長は言う。
 ゴーン氏が工場閉鎖と人員削減の根拠にしている「生産能力」とはまったくデタラメなものだ。労働者に二交替制と毎日の残業および月3回の休日出勤を前提にして、生産能力を試算している。
 二交替制は、朝7時から午後3時30分までと午後4時30分から午前1時までが基本だが、朝のシフトには午前6時30分から30分、夕のシフトには午前2時まで1時間の残業を毎日させるというのだ。自動車を組み立てる作業を深夜引き続き1時間多くすることが、どれだけ過酷なことか。
 ゴーン氏は、稼働時間4400時間(二交替)をベースに生産能力を計算し、2002年度には135万台の生産で82%の稼働率にするという。今の人員では稼働率が落ちるので、人員を削減して、稼働率を上げ、儲けを追求するのだ。
 「人員が過剰だと人を減らして、どうやって達成するのか。工場閉鎖になった後、労働時間がとてつもなく長くなる。労働強化だ」と鈴木信太郎さん(49)は怒る。

ゴーン氏のやり方に財界も批判

 「だいたい、国際市場で第7位の日産がどうして第10位のルノーごときに買収されなければならないのか。アジアでも、アメリカでも、日産のほうが名が通っている」と本木さんは批判する。
 ゴーン氏のやり方は、すでに、世界的にも通用しないことが証明されている。ゴーン氏が進めたベルギーのビルボード工場閉鎖では労働協約違反が問われ、ベルギーとフランスで訴訟にまで発展し、ルノー側が敗訴し、罰金刑に処されている。
 経営者団体からも批判の声があがっている。企業は、リストラすれば、産業再生法で国からお金がもらえる。リストラすれば株価があがる。リストラは、有能な経営者の証明なんだ、という風潮が今まではあった。しかし、日産自動車の場合は違った。
 リバイバルプラン発表前の10月13日に770円だった日産の株価は、12月422円と下がり続けている。販売台数も激減した。21%のシェアがあったが、10月は16・7%、11月は17・6%で、3%もダウンしている。
 リバイバルプランでの日産のイメージダウンは隠せない。ゴーン氏はすでに国民から「ノン」をつきつけられているのである。

関連企業も地域経済も大打撃

 日産はリバイバルプラン発表の翌日、関連部品・販売会社約500社に説明会を行った。関連部品会社が現在の1145社から600社以下に削減されれば、下請け企業は、大打撃だ。
 たとえば近隣の東京・昭島市には関連会社29社がある。日産関係者1800人が住んでいるといわれる。昭島市の動きは早かった。昭島市の調査(11月8日から12日の間)では、13社が「影響が大いにある」と答え、9社が村山工場閉鎖にともない、「工場の移転」または「人員整理で生き残る」との悲痛な声を寄せた。「親が日産関係に勤める子どもたちの心理的動揺には特段の配慮を」と昭島市教育長は各学校に異例の通達を出したほどだ。
 地域経済にも大打撃を与える。 「工場閉鎖で、やっていけない関連企業がいっぱいある。自分のところも日産の仕事をしていたので、影響が出てくる」と、工場近くの建築業の男性(54)。日産通りのレンタルビデオ店の男性店員(27)は、「反対ですね。うちは、日産のお客さんもいるので。『村山と言えば日産』というイメージが定着しちゃっているのに。どうしていなくなっちゃうんですかね」。

たたかうJMIU日産自動車支部

 「ショックだった。同時に、このやろうって気持ちもわいてきた。」
 吉田泰洋さん(55)は、リバイバルプラン発表時のことを、言葉を選ぶように語ってくれた。「閉鎖しないで、この村山に生産ラインを残していく方向しかない」。
 大野さんは、工場閉鎖の発表の時、日産経営陣と一戦やらなきゃならないなと思った。
 JMIU日産自動車支部は1965年から組合の分裂攻撃、暴力、組合差別に抗して、大企業・日産と正面から闘い、1993年に全面解決で勝利している。坂ノ下征稔委員長も境書記長も組合員みんな、あの日産争議の当事者だ。
 日産自動車村山工場には、全労連傘下のJMIUと全日産労組(連合)がある。労働者はいずれかに組織されている。
 JMIU日産自動車支部はリバイバルプラン発表の翌日、日産の経営責任と社会的責任を追及し、リバイバルプランの全面的な再検討を求める見解を発表し、工場門前で配布した。一方、全日産労組は、早々と工場閉鎖を容認してしまった。

日ごと高まるJMIUへの期待

 職場では、JMIUへの期待が日増しに高まっている。12月5日の武蔵村山市全戸配布を境に通用門でのビラ受け取りが変わった。今まで門前宣伝で、せいぜい20〜30枚受け取ればいい方だったのが、車を止め窓から手を伸ばしてビラを受け取るようになった。「ごくろうさん」と声を掛けていく人もいる。宣伝するごとに200枚400枚700枚と増える。
受け取るだけでなく、翌日は、JMIUの組合員を囲んで「この内容は本当か」と職場の話題になる。「もう、たよりは、あんたたちしかいないよ」とも言われる。
 「がんばれって言うのだったら、自分達の問題なんだから一緒に参加してくれって言ってるんですよ」と関健二さん(59)。
 村松輝夫さん(57)は、「組合の分裂以後、たたかいつづけてきた。自分の生活、職場の自由を守るために、大企業の経営者に対して気を使うことなく自分の主張をぶつけてきた。それは、労働組合のおかげ。これほど貴重なものはない」。連合の組合員からは「おまえらいいな、僕らは言えないよ」とさえ言われる。

日本中のリストラに歯止めかける

 JMIUのたたかいは、職場も地域も自治体をも変えてきた。武蔵村山市議会は、12月21日、日産村山工場存続を求める三多摩労連の請願を自民党議員を含む賛成多数で採択した。
 「日産に方針を変更させるカギは、世論の流れを変えることにつきる」と境書記長。経済界を含めた幅広い国民、地域住民、日産労働者が一つになるとき、日産の方針を変えさせることができる。
 この日産村山工場閉鎖反対のたたかいは、日本中のリストラに歯止めをかけるたたかいだ。
 リバイバルプランは社会発展の流れに逆行している。日産のたたかいは、大企業や政府の責任を追及するたたかいであり、国民の働く権利、生きる権利を追求するたたかいだ。これは、国公労働者の中央省庁再編反対、独立行政法人化反対、25%定員削減反対のたたかいにも通じる。
 12月23日、日産村山工場近くの見影橋公園で、「日産村山工場閉鎖阻止・リストラ計画見直し12・23現地大集会」が行われた。JMIU日産自動車支部の仲間もストライキで参加した。3千5百人を超す人たちが全国から詰めかけ、集会後、日産村山工場周辺をデモ行進した。
 デモ集結地点で、デモ隊を拍手で出迎える坂ノ下委員長は真剣なまなざしで、「香川、愛媛、長野など全国から集まっていただいて、運動の広がりを実感した。工場閉鎖の中止を実現したい」と決意を語った。

(写真と文・近藤浩美)

日産村山工場閉鎖反対たたかいの記録

工場前宣伝行動

 10月18日のリバイバルプラン発表の翌日からJMIU日産自動車支部は、工場門前での宣伝行動を展開。三多摩労連とともに火曜日朝7時からと木曜日午後4時からの宣伝行動を定例化し、日産労働者を励ました。

11・17中央行動

 11月17日、全労連・国公労連・JMIUなどが、中央行動を繰り広げ、JMIUは日産自動車本社包囲宣伝行動を行った。

工場前で大宣伝行動

 11月23日、村山工場前で大宣伝行動を行い、100人が参加。

全労連が現地闘争本部を設置

 同じく23日、「日産リストラ闘争現地闘争本部」の開所式を行った。全労連の熊谷金道副議長を闘争本部長として、全労連の「リストラ闘争」のたたかいの拠点とした。

農民連が支援物資で激励

 11月28日、農民連・東北・北海道産直ネットが闘争本部を激励訪問。「日産リストラのたたかいは日本の農業を守るたたかいと同じ」と、野菜・米などの支援物資を寄贈した。

国公労連の行革闘争と連帯

 12月3日、国公労連の行政スリム化反対、定員25%削減反対のたたかいに連帯して、JMIU日産自動車支部村山分会の須藤分会長が連帯のあいさつ。

ビラを武蔵村山市全戸に配布

 12月4・5日、地域への全戸配布を実施。5日には、185人が参加して半日で武蔵村山市全戸に2万6千枚を配布。2日間で4万3千枚をまき、住民の反響を呼んだ。

記者会見

 12月10日、闘争本部は、記者会見を行った。朝日・毎日・東京新聞など各紙で報道された。

12・23現地大集会開催

 12月23日、立川市見影橋公園で、現地大集会を開催。全国から3千5百人が参加。日産村山工場周辺をデモ行進し、労働者を励ました。


●2000年新春 全厚生のひろば
 ちびっ子なりきりコンテスト なんでもコレクター

神戸支部 豊島
僕は小学校2年生の時に水泳を始め、この夏にはJOCジュニアオリンピックカップ1999に出場し、結果の方は(・・・)でしたが、イルカになりきり早いスイマーになれるようにがんばっています。

秋田県支部 成田真寿美
おじゃ魔女どれみのはづきちゃんに変身した娘(3歳)と、某ドリンクの宣伝をしている息子(1歳)です。親に似ず(?)仮装が大好きなきょうだいです。

神奈川県支部 遠藤由美子
保育園のおゆうぎ会で、娘(5歳)はブレーメンの音楽隊の犬を息子(3歳)は犬のおまわりさんのすずめの役をやりました。

京都支部 松本康作
タララ〜タララタララタラララ〜で始まる懐かしいサスケのテーマ曲にあわせ、「1人のサスケが2人のサスケに3人4人5人・・・」と刀や手裏剣でポーズを決め手拍手喝采の5人でした。

愛媛県支部 渡部真徳
私のお宝は写真を見てもお分かりの通り
鉄人28号です。あまりの大きさのためコントローラしか写っていないのが残念でなりません。なお、ビデオゲームが趣味のためゲームソフトも多数所有しております。あと、友人(写真左)の所在を知っている方はご一報を。(ごめんなさい。写真の掲載はしていません。<編集部)

栄研支部 岡 純
今年は科学技術特別研究員の加柴美里さんの娘さん(2歳)に助っ人をお願いしました。
この前お父さんとお母さんと3人で東京ディズニーランドに行きました。ミッキーさんと握手しました。

本省支部 佐藤宏・陽子
お兄ちゃん(6歳)が2歳の時から集め始めたウルトラマンと怪獣ソフビ人形も今では弟(3歳)がひとり占め。そして1日に1度は必ずこう言ってます。「アキちゃんねぇ、おおきくなったらウルトラマンティガになるの。ゴハンいっぱいたべてるからティガになれるよねぇ。かいじゅうがあらわれたら、おかあさんまもってあげるからね!」

神戸支部 山田哲史
円谷特撮映像の大ファンで、懐かしの映画から平成ウルトラマンまでのLDを揃え、娘達と一緒に観ています。しかし、最近長女(小1)に「どうして他の女の子はウルトラマンを観ないの?」と質問され、模範回答を探索中です。

函館支部 小泉貴
「ちびっ子改め『へんなおじさん』なりきりコンテスト」
ぼくは国立函館視力障害センターの文化祭で、かつてのアイドル柏原芳恵ちゃんのまねをしました。みんなは、気持ち悪いって言ってたけど、結構、喜んでくれたみたい。よかったです。ぼくもうれしい。うふ。
 =支部書記長からお詫び=
正月早々、へんなもん見せてすみません。全厚生愛読者のみなさん「みんなで今年もおおいにイカロウ!」<

函館支部 高橋精一郎
毎年の流行を購入していたら釣る魚よりも、鮭釣り専用ルアーの方が増えてしまって200以上に。今や玄関の飾りに!
子供の頃からの蝶コレクションの一部。現在では専用のタンスに20箱あまり。自分で採取したものと、交換により手に入れた外国産の両方です。


子どもと一緒に映画に行こう
ウルトラマンティガ ―THE FINAL ODYSSEY―
「親子ペア入場券」を10組にプレゼント
 「全厚生」読者のみなさんに、今春3月に公開される「ウルトラマンティガ―THE  FINAL  ODYSSEY― 」の「親子ペア前売り入場券」を抽選で10組の方にプレゼント。ハガキに、住所、氏名、支部名を書いて(お子さんの場合は親の氏名も書いて下さい)、全厚生本部まで送って下さい。「全厚生」の感想も書いて下さいね。

宛先  〒100―8045
千代田区霞が関1―2―2厚生省内
全厚生職員労働組合
「ウルトラマンティガプレゼント」係
締切  2月7日必着
発表  2月15日付紙上

◆ウルトラマンティガは、2000年3月
 春休み全国松竹系ロードショー
◆主演○長野博(V6)、吉本多香美
◆監督・特技監督○村石宏實


Back  to HOME