◆第1441号(1999年8月25日付)◆
●独法化と再編の情報提供を
雇用保障問題などで厚生科学課に申し入れ
 全厚生は、中央省庁等改革関連17法案の成立を受け、独立行政法人の問題に関して厚生科学課に対する申し入れを7月27日、省内会議室において行いました。
 組合側からは、栄研、感染研等の各支部の代表者と杉下委員長をはじめとする本部役員、当局側からは、西沢企画官をはじめ各担当者が出席しました。
 冒頭、委員長より、職員の雇用保障が明文化されていないことが最大の問題。個別法については、何ら示されていないが、見通しと内容について、示してほしい。さらに、国立健康・栄養研究所の独立行政法人化と研究機関の組織再編との関係はどうなるのか、等について、当局の見解を求めました。
 これに対し、雇用問題について企画官は、業務内容や目的が変わらなければ当然人も継続すると考えている。個別法については、次期臨時国会に提出する事を考えれば、8月中にもとりまとめを行い、推進本部との折衝や法制局との詰めが行われることとなろう。組織再編との関係については、6月23日の施設長会議で出されたものは、あくまで案の段階であり、独立行政法人となるのは現行の組織定員の国立健康・栄養研究所であると考えている、などの回答を得ました。
 栄研及び各支部の代表者からは、個別法や研究評価等に関する具体的な質問が出されました。
 最後に、あらかじめ十分な情報提供と、改めて組織再編についての話し合いの場のセットを申し入れて終了しました。

●現在の研究環境の確保を=人口研支部が移転問題で要望書

 人口研支部は本部連名で、8月18日、中央省庁再編に伴い別館から本館へ移転することに対する要望書を厚生科学課に提出しました。内容は次のとおり。

 今般、省庁再編に伴う庁舎調整の一環として、国立社会保障・人口問題研究所の合同庁舎5号館への移転が一方的に決定されたことは、独自の理念、運営、業務を有する独立機関としての立場を無視したものであり、誠に遺憾である。
 21世紀の厚生行政の焦点は言うまでもなく少子高齢社会における社会保障のあり方であり、これに対処すべき行政施策の研究的・技術的側面において、当研究所は国民に対して重大な責務を負っていると考える。このため現在、いくつかの研究プロジェクトを中心に研究、調査、開発、情報提供の分野において活動を行い、とりわけこれらの体系化に尽力しているところである。
 しかるに、いかに行政改革の一環とはいえ、活動の現場の実状把握がなされないまま移転が決定され、すでに実務レベルでの作業が進んでいることは理解しがたい。
 当研究所は、複数の資源とりわけ高度に体系化され蓄積されたインフラストラクチャー(コンピュータネットワーク上に設置されたデータベース、集計・計算プログラム、ウェブ・イントラネット環境)や膨大な書籍・資料などにその活動の多くを依存している。過去の移転の経験からすると、こうした資源の解体・再構築に要する人的、予算的コストは莫大で、また完全には再構築を図れず恒久的に失われる機能も少なくない。
 したがって、その研究活動に与える損害、あるいは中断による損失は甚大であり、国民に対する責務に鑑みたとき、これらは簡単に容認できるものではない。
 以上により、私たちは国立社会保障・人口問題研究所の職員として、一方的な移転の決定に抗議するとともに、現在の研究環境の確保を強く要望するものである。

 なお、これに先立ち、8月6日には官房会計課とも同じ内容で話し合いを行っています。

●リレーずいそう=福祉職俸給表に思う
 先日出された、人事院勧告で、福祉職俸給表の新設が打ち出された。六級までの小さな俸給表ではあるが、福祉領域においては非常に大きい俸給表だと思う。行一、行二と色々な職種で行ってきたものが一つになり、又、新しいものになるのではと期待している。
 バブル全盛のころ、福祉を志す人も少なく、3Kの職場と言われた時代があった。当学園でも、採用試験をやっても、2、3人しか受験しないこともあった。そのような背景を受け、大蔵省から人材確保のための、俸給表新設を持ちかけられたのがこの話の発端であるとの話を聞き驚いたものである。しかし、バブルもはじけてしまうと、掌を返したように、職員の処遇向上を主眼にしたものは認められないと言い出したのであるから、大蔵省自身が、バブルに踊っていたと言うことであろうか。
 結局、十数年の期間を掛け、やっと福祉職俸給表が出来たわけであるのだが、(1)専門的な知識、技術をもって(2)自己の判断に基づき独立して(3)老人、児童、心身の障害のある者等のハンディキャップを負っている者に対し、援護、育成、更生のための指導、訓練、介護等の対人サービスを行う者であること、の適用三要件がある。
 専門職としての技量が問われていく時代が来ると思うと、身の引き締まる思いがあるが、この俸給表を育てていく気持ちで臨んでいきたいと思っている。 (永吉敏弘中央執行委員)

●News−各地のたより−
 盗聴法を参議院で強行採決=民主主義の破壊は許せない
 国民のプライバシーを侵害し、人権を著しく踏みにじる憲法違反の盗聴法が、8月12日、自民党、自由党、公明党の賛成多数で参議院本会議で可決・成立しました。盗聴法反対実行委員会は、同日昼休みに参議院議員面会所で集会を開き、150人が参加。全厚生は、本省・統計と書記局から参加。
 集会では、日本共産党佐々木陸海衆議院議員が国会情勢報告。8月9日、公明党の議員が委員長を努める参議院法務委員会では、法案採決の痕跡がまったくない。まさに前代未聞の架空の採決であり、押し通した自自公の不法性は明らか。解散に追い込み、国民の審判を下そうと訴えました。

 理想とする法人に=栄研支部が定期大会
 7月23日、98年度最後の全厚生栄研支部大会が開かれ、98年度執行部から1年間の活動が報告されました。
 支部長の齋藤さんからは、栄研の独立行政法人化反対の闘いの経緯が詳しく語られました。昨年の12月に行革会議の最終報告が出されてから、数度に渡る所内の抗議集会、対外的には厚生科学課長交渉、推進本部事務局要請、国会議員に対する要請行動が展開されてきました。その間の経緯は所内メールを使って組合ニュースや支部長の闘争印象記として組合員には随時知らされていましたが、残念ながら七月初旬には独立行政法人通則法案が成立してしまいました。齋藤さんは、今後は理想とする法人をつくるためにも組合の存在が益々重要になってくると訴えました。
 支部大会は、99年度執行部の選挙を行い、閉会しました。新執行部は7月27日には早速、厚生科学課への申し入れ行動に参加し、活動を始めました。
 新執行部は次のとおり。
支部長      岡 純
書記長      松村康弘
中央委員及び会計 西牟田守

●専門性評価うれしい
−福祉俸給表の新設に思う
 今後どうするかが大切=秩父学園支部長大岡孝夫
  福祉の現場で働く者がその専門性を評価されたという点では、福祉職俸給表の新設は誠に喜ばしいことである。ここに至るまでの長き期間を考えるに、やっとやっと福祉の仕事が評価されたという思いが大きい。また、大きく変わろうとする福祉の中でその認められた専門性に恥じない知識、技術の習得にますます心がけなければなるまい。
 国の福祉職関係職員は、1000名余りであるが、福祉に及ぼす影響を考える時、出来て良しとせず、これからどうするかを考えて行きたいと思います。

 介護職の専門性を評価=別府支部長後藤正子
  福祉職俸給表が新設され、国立重度障害者センターでは、介護員が行(二)から福祉職へと切り替わります。
 金額的には、新卒の人たち含め若年層にとっては有利ですが、中堅層の人たちにとってはそれほど上がるわけではありません。が、該当する介護員さんたちは、「介護職の専門性を評価され、福祉職俸給表ができたことは喜ばしい」と評価しています。

全厚生女性交流集会から花咲かせ
 あがるさがるの合唱団

 2月に京都で開かれた「全厚生女性交流集会」から、一つの種がこぼれ、花咲かせました。それは、全厚生京都「あがるさがるの合唱団」の結成と活躍です。
 皆さん!覚えていますか?夕食交流集会のオープニングを飾ったあの歌声を。あの場だけで解散するのは惜しい、文化活動を職場で根付かせたい、そんな思いから歌声大好きで組合活動と共にライフワークとして長年「歌」を続けて来られた前女性部長の北山昌代さんがリーダーとなって合唱団を結成しました。初めの一年間は、女性部で後押しすることになり、男性も含めて、10代から50代の歌好きの老若男女が集い、活動の運びとなりました。レッスンは、専門家の先生を招いて本格的に行い、手始めに「日本歌声祭典」の職場の部代表を決める大会に出場することになりました。その大会でなんと、見事京都大会の出場権を勝ち取ったのです。練習をかねて、地域の歌声祭や、京都母親大会の歌声でのオープニングの舞台にもたち、「京都代表に選ばれ、北海道に行くことになれば費用はどうしよう」「北海道なら歌わないけど付き添いで」などと心配や期待の声が聞かれるほど盛り上がり、そして、いよいよ7月25日、京都予選を迎えました。当日は男性2名を含む九名のメンバーが参加、合唱曲は「京の戻り道」「星ふる夜に」の2曲。客席で京都らしい、しっとりした歌声を聞いていたSさんも「これは、もしかして・・・」と思った出来でした。出場した10代の尾崎さんは緊張で足ががくがくだったとか・・・。結果は、いろいろな心配は取り越し苦労に終わり、日本大会出場には至りませんでしたが、思い切り挑戦した皆には、よい財産になりました。「全厚生女性交流集会」が生んだ後日談として報告します。
 全国の皆さん、機会があったら私たちの歌声をぜひ、聞いて下さい!
 ところで、合唱団の名前「あがる、さがる」はどこから名付けられたと思いますか?深い意味があります。京都通の方ならすぐわかると思いますが・・・。(京都支部女性部長・白岩美千代)
 気になって、夜も寝られないという方のために。
  京都の街の区画は碁盤の目状になっていて、北へ行くのを「上ル」、南へ行くのを「下ル」と言います。
 京の商売人は、験を担いで、南へ行った方が近いのに、わざわざ、一つ南の通りから「上ル」として住所を表示しているところを見かけます。(山本潔)

核兵器のない平和な21世紀を
 中央執行副委員長・加藤重徳

 8月6日広島、9日長崎。人類史上はじめての原子爆弾が投下されてから54年。広島・長崎はこの日、「核兵器のない平和な21世紀を」の祈りがつづきました。 私は8月3日から9日までの日程で、原水爆禁止1999年世界大会出席のため、広島、長崎を訪ねました。今年の大会では高校生や大学生をはじめ多くの若者の参加者が目立ちました。
 広島でも長崎でも、核戦争阻止、核兵器廃絶、被爆者援護・連帯をもとめた地道な運動が、全国各地で前進している報告を聞くことができました。同時にまた、海外代表から軍事同盟の解消、核戦争への懸念をはじめ、米国の新戦略への批判と日米新ガイドラインへの危惧が表明され、文字通り核戦争阻止、核兵器廃絶の取り組みがグローバルに広がっていることを肌身に感じました。
 とくに私は8月3日から5日まで広島で開かれた国際会議で、海外代表が日本をどうみているかを聞いてみたかったのです。核戦争阻止、核兵器廃絶のたたかいはもちろん、日米新ガイドライン、いわゆる戦争法のこと、そして日本国憲法と戦争放棄の9条についてどんな認識をしているか、そして、ユーゴにたいするNATO軍による武力攻撃をどうみているか、などについてでした。

NATO軍のユーゴ空爆を各国が批判
 そうした私の問題意識は、海外代表の発言から十分にみたされました。
 世界平和評議会のロメッシュ・チャンドラ名誉議長は、NATOがユーゴ攻撃にさいして人道的介入を口実にしていることについて「人道的な介入など存在しない」と言い切りました。
 NATO加盟国で米国の新戦略に組み込まれているギリシャからは、国際緊張緩和と平和のためのギリシャ委員会のパフィリス・アタナシオス書記長が、「ユーゴ戦争は国連の承認なしに行われたという点で、NATO新戦略の完全な適用だった」と指摘し、「すべての軍事同盟の解消をめざすたたかいはかつてなく決定的だ」と強調しました。
 英国・核軍縮運動のレイ・ストリート副会長は、NATO新戦略概念にふれ、「核先制使用」戦略が放棄されていないことを強調し、「世界の人々は核戦争の危険を懸念している」と発言しました。
 こうしたNATO新戦略と関連して、アジアの代表から日米新ガイドライン=戦争法の危険性を指摘する発言が目立ちました。

アジアからは新ガイドライン法に批判が
 世界大会に初参加した韓国からは、環境保護団体・韓国緑色連合の李さんが「アジア地域に起こっている危機は、軍拡競争と外国軍隊の駐留によるものだ」と述べ、日米新ガイドラインが「アジアで新たな軍拡競争を生み、日本の平和憲法を無視するものだ」と批判しました。
 12年ぶりに世界大会に参加した中国人民平和軍縮協会の朱副会長は、NATOの新戦略概念と日米軍事同盟の強化とあわせた「二海洋戦略」にあらわれた米国の覇権主義の新たな展開が、アジアと世界の平和に深刻な脅威となっていると指摘しました。
 これらの指摘は、アメリカが同盟国を動員して他国への内政干渉、先制攻撃を行うことへのきびしい批判でした。
 そして重大なことは、こうした動きが唯一他国に核基地を展開しているアメリカの「核の傘」のもとですすめられていることです。NATOでは加盟国にアメリカの核兵器が配備され、新ガイドラインによって日本への核持ち込みの危険性もいっそう増大しています。こうした軍事同盟が核戦争阻止、核兵器廃絶の世界諸国民の願いと逆行することは明らかです。
 いま21世紀の門口にたって、アメリカが国際法も国連憲章も無視した武力行使によって世界を支配しようとするNATO新戦略と新ガイドラインにたいして、多くの国々の多くの人々が批判をつよめています。

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