◆第1433号(1999年5月25日付)◆


●社会保険は国の責任で  

 地方分権一括法案の国会審議が始まりました。地方事務官制度を廃止し、社会保険業務を国の直接執行事務とする旨の法案に対して、社会保険職員を地方公務員にし、社会保険は都道府県の法定受託事務にせよとの「修正」の動きが急浮上。情勢は緊迫しています。

「地方へ」修正の動き急=地方事務官制度廃止めぐり
 5月13日に開催された衆議院本会議において、地方分権一括法案に関する趣旨説明と代表質問が行われました。
 代表質問では、地方事務官制度に係わって、民主党、公明党、社民党から地方事務官を地方公務員とすべきとの主張がありました。
 民主党は、「社会保険、職業安定業務を国の事務とすることは分権に逆行し、国の行政範囲の拡大」、公明党は、「地方事務官を廃止し国一元化するのは行革に逆行する」、社民党は、「社会保険では職員も地方公務員を希望している」などと主張しています。
 こうした質問に対して政府は、地方事務官の取り扱いについては、「社会保険は国が経営責任を負うべき保険事業であること」「直接執行事務となっても市町村への法定受託事務などもあり利便性に影響しない」「地方事務官は国家公務員であり、定員上も人件費を増やすことにはならない」と答弁しています。
 また、新聞各紙では、日本共産党を除く野党が、地方事務官問題でほぼ足並みがそろっており、修正の可能性がある、あるいは、今後の審議の焦点であるかのごとく報道しています。
 社民党は、社会党時代から地方事務官を地方公務員とすることを主張しており、民主党も元社会党議員等を中心に同様の主張をしていましたが、公明党については、今回初めて態度を鮮明にしており、とりわけ「自自公」路線の模索や総選挙対策などとも絡み合い、政治的色彩を強めており、情勢は一気に緊迫の度合いを強めています。
 社会保険行政は、憲法25条に基づく社会保障制度の根幹的制度としてナショナルミニマムを確保する上でも重要な役割を果たしており、国が責任を持って運営することは、ますます重要になっています。いま、社会保険の事務を都道府県の法定受託事務とし、国の責任を放棄させることは、まさに社会保障から国の責任を放棄させることにも直結する重要な問題です。
 ましてや、職員の身分をどうするかは、行政責任と事務の執行責任と密接不可分のものであり、単に身分だけを地方公務員になどと扱われる性格のものではありません。
 戦後50年の闘いの中で、国民の手に取り戻した社会保障制度をさらに大きく発展させるためにも、名実とも国の責任で社会保険制度を発展させなければなりません。

修正許さぬ闘いを=可能な限りの行動を全力で
 全厚生は、自民、自由、公明の三党が地方分権一括法案と行革関連法案を今国会で成立させることで合意しており、短期間で結論が出される可能性があることを重視し、社会保険関係支部代表者会議を開催し当面する行動について意思統一を図りました。
 会議では、(1)当局責任をしっかり追及する(2)全組合員に情報をきっちりと伝える(3)地元選出の国会議員や各政党に要請を強めるなど、考えられる可能な限りの行動を積極的に展開することを確認しました。

社会保険は国の責任で=5.20中央行動に参加して
 民主党議員の秘書に要請内容を説明「社会保険は国が責任を持ってやるべきです」にうなづいているので、「自治労と反対の者です」と言ったら、ニガ笑いしてました。もっと我々の主張を、政党を問わず訴え、地方事務官部分の法案修正をストップさせなければ!(神奈川県支部・平丸寿博)

 米人のジャーナリストが厚生省を撮影に来て、偶然私達の座り込みを見て、取材していった。日比谷野外音楽堂に2000人の国公組合員が、悪政に抗議し、国民の命と生活を守る政治を要求して集会を開催したことを、日本のマスコミは報道してくれただろうか。(静岡県支部・中島淑子)

 長い間、組合に関係していますが、どういうめぐりあわせか、国会議員要請は初めての経験でした。残念ながら議員本人と話はできませんでしたが、今後も積極的に参加していきたいと思います。(滋賀県支部・西村伊知朗)

 厚生共闘提起の行動として参議院議員(公明1、社民1)の議員室へ独法化反対、地方事務官廃止に向けての2つの要望書を持ち込みましたが、いずれもガイドライン法案審議のため残念ながら全員秘書対応となりました。今後も国政に働きかけるような行動で、緊迫した情勢を打破する決意です。(京都支部・川口博之)

 話を聞くたびに腹がたつ、何をしょんやと腹がたつ。戦後教育の成果であたらずさわらずしらんぷりの国民のためにがんばりましょう。(香川県支部・香川博)

 2日間のべ7人の議員の方へ要請を行いました。加藤副委員長・静岡県支部の中島さんと共に高鳥行革特別委員長に直に国立病院療養所・栄研の独法化・地方事務官問題の3点について申し入れが出来た事がラッキーでした。地方事務官問題については、全力でがんばります。(愛媛県支部・平川正通)


●リレーずいそう=銀行栄え民さらに貧

 毎年恒例の高額納税者の番付が発表された。
 我々のような庶民には何千万円もの税金を納める人たちの日々の暮らしがいかようなものなのか想像もできない。
 スポーツ選手や役者、歌手、作家などの才能豊かな人が私たちをそれぞれの分野で大いに楽しませ、夢を見せてくれて、そして彼等はたゆまぬ努力で大金持ちになったのだから拍手喝采したい。
 しかし、今年のこの発表で目茶苦茶に腹がたった。なぜなら、銀行が危ない、銀行が倒産したら国民に混乱がおこると放漫経営の何等責任も取らず、国民の大切な血税を銀行に注ぎ込ませておきながら、それらの都市銀行の頭取らがそろって、昨年の収入が平均4000万円もあったと言うからだ。
 「銀行栄えて、民、さらに貧しい」である。不良債権だらけの会社の経営責任者らが高額の収入のまま居座り、国民から税金で援助してもらい、ゆうゆうとしているとは。彼等にはどのような才能があり、楽しみや、夢を見せてくれたというのか。
 一方ではこの史上最悪の不況によって失業、倒産、賃金カットなど将来不安のため、ただひたすら生活を切り詰めるしかない我々の日々の暮らし。
 長者番付の上位にはいわゆるサラ金の社長が並んだ。こんな政治にいまだ怒りの暴動も起こらず、しかも小渕内閣の支持率が上昇していると言うではないか。そんなばかな。(杉崎伊津子中央執行副委員長)


●News−各地のたより−

行革・独法化NOで決起=5.20〜21厚生共闘が中央行動
 国公労連行革闘争中央行動が5月20・21日に開催され、全厚生は、全医労とともに厚生共闘の独自行動に取り組みました。この行動には、本省・統計・業務センター・感染研・栄研・人口研、国リハの各支部をはじめ、神奈川・静岡・愛知・岐阜・滋賀・京都・香川・愛媛の各社会保険支部から、のべ68人が参加しました。
 5月20日の行動のスタートは、厚生省前で、「国立病院・療養所、国立健康・栄養研究所の独立行政法人反対、医療・年金の改悪阻止厚生共闘決起座り込み行動」。昼休みには、在霞ヶ関支部からたくさんの組合員がかけつけ、全体で120人参加。アメリカの放送局の取材を受けるなど、反響を呼びました。
 午後からは日比谷野外音楽堂で全労連の全国キャラバン行動の集結集会、独自の国会議員要請行動、総括集会を行いました。
 翌日は、議員要請行動・人事院前要求行動、ガイドライン法案反対国会請願デモと終日奮闘しました。

ガイドライン法案反対=国民平和大行進神奈川県行進で訴え
 5月7日川崎で東京夢の島からの行進旗の引き継ぎを受け、8日、9日、11日と代表がそれぞれ行進旗を持って行進。5月12日の横浜中心部の行進には支部の集中日として、青年部も結集して6人が参加。「ガイドライン法案を阻止しよう」と書いた支部作成の横断幕を持って、平和をアピール。高齢の被爆者が元気に行進しているのを見て、被爆者の気持ちを私達が引き継いでいかなければという思いを強くしました。夜は、「新ガイドライン反対の県民集会」にも参加し、デモを行い、長い一日行動が終わりました。(平丸書記長)


●独立行政法人化に反対せよ

 厚生省労働組合共闘会議(略称・厚生共闘、全厚生と全医労で構成)は5月21日、厚生省の大塚義治官房長と当面の課題で交渉しました。交渉は、大塚官房長が「宮下厚生大臣に代わって要求を承りたい」とあいさつして始まりました。
 遠山亨議長(全医労委員長)が交渉議題の三要求にふれ、独立行政法人の導入には反対であること、「再編成計画」を撤回し国立病院・療養所の整備拡充こそ国民の願いであること、看護婦の夜勤体制・夜勤回数の改善は急務であることなど、官房長の見解をただしました。
 大塚官房長は、独立行政法人については、職員の身分は国家公務員であるなど「独立行政法人通則法案」の中身にふれるにとどまりました。国立病院・療養所の「再編成計画」問題については、「計画を撤回する考えはない」と回答。
 また、夜勤回数の改善について、官房長は「看護婦については重点的な増員を行ってきた」として「概ね複数月8日以内夜勤が図られている」と回答し、「再編成」の一層の推進や非効率病棟の見直しなどによって対処する考えを明らかにしました。
 この後、杉下茂雄全厚生委員長は、国立健康・栄養研究所の独立行政法人化には反対である、的確な情報の伝達がなく職場が混乱している、なぜ健康・栄養研究所が独立行政法人化されるのか、その根拠も説明されていない、独立行政法人化すれば研究に支障が出るなどと指摘し、同研究所を独立行政法人から外すよう強調しました。
 大塚官房長は、「職員の身分・勤務条件に影響を及ぼす場合にあっては必要な情報は伝えるし今後も誠意をもって対処したい」と回答し、「直接行政活動に携わるなど特別な業務にあたるもの及び政策研究機関を除き原則として独立行政法人化を図ることとされた」などと、長年にわたり厚生行政に密着した研究をつづけてきた健康・栄養研究所の業績には全くふれませんでした。
 最後に遠山議長が、行政の減量化・効率化に主眼をおいた独立行政法人化は白紙に戻せ、「再編成計画」を撤回しないとの回答は国民の医療要求に逆行するものである、看護婦の増員問題は諸外国にくらべても、また公的医療機関に比べても低水準であり、大幅増員が必要だ、と力説し、交渉を終えました。


●戦争法案反対かかげ第70回各地のメーデー

神奈川県
 神奈川県の中央会場である沢渡公園に、新入組合員をはじめ30人が参加しました。カンカン照りの暑い中、要求を書いたピンクのビニール傘をさし、横断幕を持って行進しました。終点の反町公園でバーベキューで交流を深めました。

京都
 第70回全京都統一メーデーは二条城前で開催され、京都支部は、「世直しドラえもん」のデコレーションを作成し、「年金改悪反対」「大幅賃上げ」「新ガイドライン法案反対」など訴えながらデモ行進をしました。特に、10メートル以上はある「憲法を暮らしの中に活かそう」の横断幕は、戦争法案が衆議院を通過した直後とあって注目を浴びました。メーデー終了後は、ソフトボールで交流しました。

愛知県
 今年のメーデーは、57人が参加しました。会場が初めての場所ということもあり、会場からデモ行進までルートを間違えとまどった部分もありましたが、参加者はおそろいのバンダナで、元気に行進しました。

香川県
 五月晴れの日差しのきつい中、支部より47人の仲間が参加しました。県労連議長のあいさつでは「雇用と平和を守る」ことが強調されるとともに、各職場での厳しい実態が相次いで報告されました。デモ終了後、集結地で弁当を広げ、参加者には思い出に残るメーデーになりました。

愛媛県
 松山で開催された愛媛中央メーデーを中心に県下4カ所で、総勢60人が参加し、「ガイドライン戦争法案」の成立阻止や社会保障拡充についてアピールを行いました。休日ということもあり子供を連れた組合員の姿も見られ、楽しく行動ができました。


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