◆第1429号(1998年4月5日付)◆


●地方分権一括法案を閣議決定
2000年4月に機関委任事務廃止

 政府は3月26日の閣議で、「地方分権一括法案」を決定し、3月29日に国会に提出しました。「地方分権一括法案」は、骨格となる地方自治法改正をはじめ475の関連法案で、厚生省関係では、91の法律が改正されます。
 この「地方分権一括法案」は、国と地方をこれまでの上下関係から対等な関係に見直すことを目的に地方分権推進委員会が2年余りをかけた勧告を盛り込んでいますが、機関委任事務は廃止されても国の縛りが一層きつくなる法定受託事務が多く、自治事務への国の関与も依然残されるなど、大きな問題を含んでいます。
 社会保険関係の改正の概要は、(1)機関委任事務の廃止、その他事務の整理等、(2)機関委任事務の廃止に伴う地方事務官制度の廃止等関係、となっており、関係法律の施行時期は、経過措置規定があるものを除いて2000年4月からとなっています。
 全厚生はこれまで社会保険行政について、(1)社会保険行政は「国の直接執行事務」とし、(2)各都道府県に地方社会保険局(仮称)を設置すること(3)地方事務官制度を廃止し、「厚生事務官」とすること、等の要求を掲げ運動を展開してきました。

社会保険は国の直接執行事務へ
 関係法案では、(1)これまで都道府県知事の機関委任事務とされている標準報酬の決定等の権限、保険医療機関の指定等、地方事務官の処理する社会保険の業務は国の直接執行事務となっています。また、国民年金関係では、被保険者に係る届出の受理等の事務については、市町村が処理する法定受託事務とし、国民年金手帳の交付、第三号被保険者に係る届出の受理等については、国の直接執行事務とし、国民年金保険料の収納の事務については、印紙検認事務を平成14年4月1日からは金融機関を通じて直接納付する方式(現金納付)へ改める等の措置が講じられ、経過措置として平成17年3月31日までは市町村が収納処理できることとなっています。(2)地方事務官制度廃止後の社会保険行政組織については、厚生省設置法改正案で、都道府県の機関として置かれている保険課、国民年金課及び社会保険事務所を社会保険庁の地方支分部局に改め、都道府県単位の地方社会保険事務局の下に社会保険事務所を設置する。となっています。また、地方社会保険事務局、社会保険事務所の内部組織は厚生省令で定めるとなっています。したがって、来年4月に各都道府県知事部局から外に出ることになります。(3)地方事務官については、地方社会保険事務局又は社会保険事務所の職員(厚生事務官)とされています。
 地方事務官制度廃止後の共済組合の取扱については、長期給付の権利義務の継承及び積立金の移換等について経過措置を講ずることとされています。

要員確保、組織のあり方に要求を
 社会保険関係の法律案では、全厚生がこれまで主張し要求してきたことがほぼ現実化していますが、国民年金事務処理体制、要員の確保等については具体的に示されておらず、地方社会保険事務局、社会保険事務所の行政組織についても省令にゆだねられていることから、今後、具体的な業務のあり方、要員問題、行政組織問題等についての考え方を早期に明らかにするよう要求を強めていくことが重要となっています。
 全厚生がこれまで築いてきた運動に確信を持って引き続きこれらの課題について職場での議論を旺盛に展開しましょう。


●通さないぞ戦争協力法

 戦争法阻止へ、4月1日、昼休み衆議院議面集会が開催され、日本共産党児玉議員が法案の危険な狙いと審議の実態を報告。政府は新ガイドライン法案の衆議院採決を16日にも強行する構えです。集会では、全厚生山本中執が法案阻止への決意を表明しました。


●News−各地のたより−

残業なくせ!父も育児したい=3.24東京国公・霞国公決起集会
 3月24日昼休み、霞ヶ関にある全厚生三支部(本省、統計、人口研)と本部は、東京国公・霞国公が主催する日比谷野外音楽堂の集会に総勢64名で参加、集会成功の一端を担いました。
 前日までの雨はすっかり上がり、青空の下での集会となりました。和太鼓の演奏で始まり、全環境庁、人事院、全農林、国会職連(衆・参両院と国会図書館)会検労(会計検査院)など、国公労連には非加盟の組合も一緒に、2000人の参加で盛り上がりました。参加各組合が決意表明をし、全厚生は統計支部の菅沼支部長が行いました。「定員削減で職場は残業が増えるばかりだ」と訴えました。また、育児をしない男を父とは呼ばないという子育て支援ポスターを引き合いにしての「厚生省職員も、父親が子育てに参加できる勤務状況にしてほしい」という発言には、会場から大きな拍手があがりました。
 うららかな春の一時、ちょっぴり元気が出た集会でした。

育児・介護行う職員の深夜勤規制=人規10-11が4月1日から施行
 人事院規則10‐7第2、3条(深夜・超勤規制)の4月1日からの廃止に関連して、人規10‐11(育児・介護を行う職員の深夜勤務の制限)と「超勤縮減に関する指針」、人規10‐7の運用の改正が行われました。育児・介護を行う職員が請求した場合、深夜勤務をさせてはならない、また、年間360時間を超えて超過勤務をさせてはならない、などとなっています。


●リレーずいそう=戦争をしない国
 日本を「戦争をしない国」から「戦争をする国」にするガイドライン法=戦争法が、猛スピードで審議されている。
 戦争は、常に弱者を社会の隅においやり、私たちが携わっている社会保障とは、まったく相容れないものだ。厚生省が戦前から設置されていて、社会保障に似た制度が戦前からあったことから考えてみると、私たちの仕事もある日突然戦争協力のための仕事に変わるのだろうか。
 国立病院が、陸軍や海軍の病院であったこと。障害者を社会の隅に追いやる一方で傷痍軍人のための施設はつくられたこと。戦費調達のために年金制度がつくられたこと。研究成果が細菌兵器づくりに歪められたこと。医薬品等の研究所が軍隊の衛生物資の補給基地とされたこと。などなど、戦前の厚生省が戦争遂行の下支えをしていたことは明らかだ。
 敗戦後、国民世論で社会保障を権利として確立し、各種制度が社会保障の見地から改善されてきた。しかし、きな臭いにおいが濃くなるにしたがって社会保障制度は矢継ぎ早に改悪されてきた。国の役割を軍事行動を含む外交に重点化し、国民生活分野から撤退しようとしていることは明らかだ。子ども達の純粋で汚れのない夢を、笑顔で一緒に語れるように、戦争体制づくりとそれを支えるニセ行革を何としても止めさせたい。 (山本潔中央執行委員)


●99年春闘最終交渉の結果
民間準拠偏重変えず=人事院武政事務総長回答

 国公労連は3月23日、人事院と総務庁との間で春闘期の最終交渉を行いました。
 人事院の武政事務総長の回答要旨は次の通り。
(1) 官民較差に基づき、適正な公務員の給与水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
(2) 公務員給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、適切に対処する。
(3) 給与勧告作業にあたっては、配分・体系を含め、みなさんの要求や今後の給与体系のあり方を念頭に置きながら検討をすすめる。
(4) 福祉職俸給表については、環境整備を図りつつ、みなさんの意見を聞き、その新設にむけて検討を進める。
(5) 調整手当の見直しについては、みなさんの意見を聞きつつ、検討を進める。
(6) 一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
(7) 公務員の勤務時間・休暇制度の充実にむけて、関係者の意見を聞きながら、引き続き検討を進める。また、公務員の福利厚生の充実については、民間の実態等を踏まえつつ、引き続き検討を行う。
 超過勤務の縮減については、本年四月から育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの施策を講じたところであり、これらの施策の趣旨の徹底に努め、一層の縮減にむけて努める。
(8) 男女共同参画社会をめざす様々な動きを踏まえ、公務においても女性職員の採用・登用等の促進が図られるよう努める。

賃金改善ふれず=総務庁中川人事局長回答
総務庁の中川人事局長の回答要旨は次の通り。
(1) 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
 平成11年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ、勧告後速やかに諸般の検討・準備を進め、勧告をできる限り早期に完全実施すべく、最大限の努力を払う。
(2) 労働時間の短縮については、公務員制度調査会の答申を踏まえ、政府決定(平成4年:「国家公務員の労働時間短縮について」)の改訂等により、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
(3) 公務員制度調査会の答申に基づく施策の具体化にあたっては、職員団体の意見も十分聞いてまいりたい。なお、調査会の審議事項については、調査会の審議の過程で決定されていくものであるが、職員団体が公務の労働関係のあり方に強い関心を持っていることを十分認識しつつ、調査会の運営に努める。
(4) ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
(5) 平成13年度の公務部門における高齢者雇用制度の発足にむけて、新たな再任用制度を導入するための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」の早期成立に努めるとともに、必要な諸準備を進める。
(6) 男女共同参画の推進にむけ、女性国家公務員の採用・登用の促進等に着実に取り組む。
(7) 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話し合いによる一層の意思疎通に努めたい。

解 説
 人事院と総務庁の最終回答は、切実な賃金改善要求を真正面からとらえないなど、従来通りの回答に終始したのが特徴です。
 人事院の回答について何点か指摘すれば、まず第一に、従来の民間準拠の姿勢から一歩もでていないということです。私たちが春闘で強調したのは、民間準拠偏重ではなく、官民比較方法の抜本的な見直しであり、さらに公務の特性をもふまえた公務員賃金のあり方についての検討が必要だというものでしたが、事務総長はこれらについて言及さえしていません。
 第二は一時金についてです。「民間の支給水準を把握し適正に対処する」との回答は、一時金は「切り下げ必至」との含みに他なりません。
 第三は、調整手当について検討をすすめることを表明していることです。人事院は改善のための検討をすすめるのでなく、切り下げの検討をすすめようとしているのです。一時金の切り下げなど実質賃金の維持が困難な状況のもとで、「切り下げの検討」をつづけることは、人事院が「賃下げもやむなし」との姿勢にたっており、私たちの要求を取り上げず、きわめて問題があります。
 総務庁の回答も、きわめて不満なものです。
 第一に、私たちの「3万円の賃金改善要求」についてまともに答えず、「国政全般との関連」を口実として「代償措置」さえないがしろにしようとしていることです。そうした姿勢を容認できませんし、使用者としての主体的な努力をつよくもとめるものです。
 第二は、公務員制度調査会についてです。同調査会の「基本答申」は、必要な民主性・公平性の確保についてはきわめて不十分なものであり、官僚と業界とのゆ着や天下り規制、行政責任の明確化などの点では国民の期待とはほど遠いものです。2・3種登用問題にしても、1種採用者の特権的優遇人事を放置するなど、根本的な問題に焦点をあてていません。その一方で、能力・業績主義による人事運用を強化することを盛り込んでおり、到底納得できません。 第三は、超勤縮減の問題です。人事院の上限・目安時間の設定をふまえて実効性をどう高めていくかが当面の重要課題です。その意味で、92年の人事管理運営協議会の縮減策の見直しを本格的に検討することが強く求められています。

●厚生省共済組合運審開く
省庁再編にらんだ対応を

 3月23日午前、厚生省共済組合は厚生省内の会議室において、来年度の予算についての運営審議会を開催しました。
 来年度は制度的なものについての変更は無く、定款等についても、昨年の伝染病予防法の改正に伴う法律名の変更と貸付金について阪神淡路大震災関係のものの1年延長が提案されたのみでした。
 今回の提案された内容について、議論があったのは「なぎさ荘」の値上げ(500円)について及び地方事務官の廃止、省庁再編をにらんで、当組合としてどのように対応していくのか、の二つです。

「なぎさ荘」500円値上げ
 「なぎさ荘」については、組合側委員から、利用者数(特に組合員の利用)を増加させるための具体的な手だて等について、当局側委員からもPR不足ではないかといった意見も出されました。
 これに対し、事務局からは、組合員への周知が十分ではなかったことを率直に認めた上で、利用率を上げるために労働省や厚生省第二の各組合と契約し割引料金で利用できるようにすること、空き室情報をインターネットのホームページに載せること、サービス内容の改善や組合員へ更にアピールすることなどが表明されました。さらに、組合側委員から、今後の保養所の在り方についての議論が必要である旨の意見が出され、検討課題として引き続き議論していくことが確認されました。

地方事務官の受け入れ準備
 来年度の予算のうち、地方事務官受け入れのための研修や帳簿作成、しおり等の印刷経費として約4700万円と、共済システムの導入(電算化)の経費として8000万円が計上されています。地方事務官受け入れの経費については、他に負担すべきところも無く、地方共済からの積立金の移管もなされる予定であることから、必要であると認められます。
 システム化の経費については、事務の合理化のみならず、組合員への明確なメリットや詳細な内容について組合側委員から質問が出されました。これに対し事務局から、この件については従来から考えていたこと、詳細については随時報告したい、経費については他にも負担を求めること、などの回答でした。
 また、組織再編等をにらみ、運営審議会の構成についても来年度以降見直されることが必至であることから、組合側委員から現在の部門別の職場代表で選出するという考え方を今後も引き続きとってほしいとの要望が出されました。当局側委員からも経過措置として、委員の人数を増やす等、大蔵省に申し入れられないかとの意見も出されました。これを受け事務局も検討を約束しましたが、委員の構成は地方事務官廃止後の大きな問題として組合としても力を入れていく必要があります。
 さらに、事務局からの明確な回答は得られませんでしたが、地方事務官廃止と省庁再編時には、定款や規則の改編の事務が膨大な作業となることが考えられるため、作業チーム等の設置により意見交換や情報提供がスムーズになるよう、組合側委員から申し入れを行いました。
 以上のような審議経過により、「なぎさ荘」については事務局側の経営努力等を期待し、組織再編等については、今後の意志疎通や情報提供を積極的に進めていくなどの事務局側の回答を受けて、原案どおり了解しました。


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