◆第1428号(1998年3月25日付)◆
●栄研の独立行政法人化反対
国立機関として存置を・4部門合同で議員要請行動

 全厚生は、3月18日、国立健康・栄養研究所の独立行政法人化に反対し、国立研究機関として存置することを求めて、衆議院「行政改革に関する特別委員会」、参議院「行財政改革・税制等に関する特別委員会」に所属する各委員(85名)への要請行動を行いました。この行動には、国立健康・栄養研究所支部をはじめ、国立リハ支部、本省支部、社会保険関係支部(前日の社会保険庁交渉に引き続いて参加)及び本部役員、あわせて24名が参加し、12組に分かれて要請を行いました。
 「議員要請は初めて」あるいは、「きちっと説明できるだろうか」などの不安を持ちつつ臨みましたが、行動終了後は元気な感想が寄せられました。
 今回、要請した議員が必ずしも厚生行政に詳しい訳ではないせいか、国立健康・栄養研究所について「あまり知らない」ということが目立ちました。要請の中で、「栄養研究を国立としてはじめたのは、世界でも一番最初で、いま世界では『国立へ』という流れになっている」というと、「は〜(世界とは)反対ですね」といった反応や、「資料を送って下さい」「がんばって下さい」「重要な研究ですよね」「国立研究所が国民にとってどういう役割を果たしているのかもっとピーアールする必要がある」といった反応がありました。中には、「独立行政法人には反対、国か民営かどちらかに整理すべき。民間のほうがいい仕事ができる場合もある」などといった意見の議員もありましたが、いずれにしても独立行政法人の問題点や国立健康・栄養研究所の果たしている役割などの理解を深め、広げることが重要です。
 この行動は、全厚生の4部門がそろって行動をした非常に重要な意義をもった行動となりました。引き続き、国会行動を強め、当局との交渉を強化し奮闘しましょう。

3月18日の議員への要請文は次のとおり。

国立健康・栄養研究所を国立試験研究機関として存置させるためのご協力のお願い

 貴職のご活躍に心から敬意を表します。
 「中央省庁等改革推進本部」は、1月26日に内閣機能の強化、中央省庁の再編、国立試験研究機関を含む84機関の事務・事業の独立行政法人の導入、国家公務員の大幅削減を内容とする減量化計画を盛り込んだ「中央省庁等改革に係る大綱」(行革大綱)を決定しました。
 独立行政法人制度の導入に関しては、厚生省関係ではその対象として、国立健康・栄養研究所がリストアップされています。
 国立健康・栄養研究所は、創設(1920年(大正9年))以来一貫して、それぞれ時代に応じた国民の栄養、健康に関する行政施策の遂行のための調査研究を行い、国立の研究機関としての役割を果たしてきました。現在、世界一の長寿国となった我が国における重要かつ緊急を要する課題として、高齢化と生活習慣病の問題を中心に研究活動を行っており、厚生省における政策的な拠点施設としての機能も併せ持っています。
 特に国民栄養調査や栄養所要量に関する調査研究は長期間を要し、その割に注目されることの少ない地味な仕事ですが、厚生行政のみならず、食糧政策、給食などの教育政策等にも重要な影響を与えるものです。
 21世紀を見据えた新時代の栄養所要量は、当然少子・高齢化社会を考慮し国民の健康の維持増進、また生活習慣病の予防を中心に据えたものになります。
 しかし、こうした研究調査は人の遺伝子マップを作ったり、超並列処理コンピュータを作ったりするのとは異なり、研究費の見返りは期待できない地味な研究です。
 貴職に置かれては、国民の健康と栄養、生活習慣病の問題への取り組み等の重要性を認識され、国立健康・栄養研究所を厚生省所管の国立試験研究機関として存置されるよう、特段のご協力をお願いいたします。

●行革で労働条件低下させるな=人事課長交渉で追及
 全厚生は3月12日、厚生省内会議室において人事課長交渉を実施しました。
 全厚生からは杉下委員長以下14人が、人事課からは河村人事課長以下4人が出席しました。
 冒頭、杉下委員長が要求説明を行い、行政改革について、厚生省と労働省の統合、国立健康・栄養研究所の独立行政法人化には反対であることを申し入れ、今の行政改革が国民に対する行政サービスの低下をもたらし、職員の身分や労働条件の低下を招くことになると指摘しました。
 賃金問題では、公務を取り巻く状況は厳しいが公務員労働者の生活悪化も顕著となっており、使用者として責任ある回答を求め、福祉職俸給表の新設にかかわって、社会福祉に従事する職員の処遇改善が必要であり、適用職種等について基本的考えを質しました。
 これらに対する人事課長の回答は次のとおりです。
 行政改革問題では、1月26日に中央省庁等改革に係る大綱が決定され、各省設置法案等が四月の国会提出を目途に作業が進められている。職員の身分・勤務条件等については、問題が生じないよう対処していく。
 職員の処遇・勤務条件に変更がある場合は、必要な情報を伝えるとともに、要望等に対しても誠意を持って対処したい。
 賃金問題では、今春闘における民間の賃上げ水準は昨年にもまして厳しい状況であると認識しているが、給与は職員の生活を支える最大の要素であり、給与引き上げ要求については充分理解している。引き続き改善に向けて努力していきたい。
 福祉職俸給表の新設にあたっては、福祉関係職員の給与について、業務の実態に見合った適正な給与体系と社会的地位を高めていく必要があると考えており、専門性にふさわしいものとなるよう人事院に要望していく。
 超過勤務の縮減問題では、職員の健康保持のためにも極めて重要な課題として認識し取り組んでいるが、依然として本省庁の恒常的な長時間残業の実態があることを承知している。各部局で新制度や制度改正にともなう法令・国会業務への対応など、業務量の増加が大きな要因となっており、長時間残業の解消は容易ではないと考えている。
 この問題は、各職場の管理者をはじめ職員の意識の持ち方も改善を図る上で重要であり、職員の健康に十分配慮することが重要であることから、引き続き「つき合い残業」をなくすことや帰りやすい環境作りについて具体的な対応を図るよう各部局に対して一層の指導に努めたい。
 セクシュアル・ハラスメントの防止については、厚生大臣訓令による規程の制定や指針、啓発資料の配付、研修等の実施などにより職員への周知を図りつつ、管理者に対しては、各職場会議や啓発資料の配付、研修等の実施を通じて管理者の責務・役割を周知徹底したい。と回答しました。
 この後の質疑応答では、省の統合により局・課・室の削減が打ち出されていることに対して、統合される省だけが削減されることでは困る。また、今いる職員の身分・勤務条件が改悪になることでは困るとし、処遇・勤務条件問題での申し入れのに対して、重く受けとめ適正・適切に対処したいと回答しました。
 最後に杉下委員長から、省庁再編、独立行政法人化問題では職員の身分・労働条件に大きな影響を及ぼすことから、情報の提供と組合との意見交換等を十分行うよう申し入れました。

●ぎょうかく&ねんきん両輪署名 がんばる記=愛知県支部・佐藤義松さん
 愛知県支部は、組合員一人当たり「行革大規模署名」30筆、「年金改悪反対署名」10筆を目標に集め、行革イコール公務員減らし、国民生活関連部門切り捨て等政府が推し進めようとしている行政改革をやめさせようと頑張っています。しかし、一組合員は署名の意義について、「署名をやっても効果があるのか」「署名をやっても無駄ではないか」と感じている人が多くいることも正直言って事実です。
 我々役員は、これまでの私学助成金の増額署名や、最近身近なところでは、名古屋市の藤前干潟埋め立て問題での住民投票条例制定の請願署名でも実証されたように、「署名も数が多く集まれば、政治をも動かす力となる」と言うことに確信を持ち、組合員に広く訴えかけていますが、現在署名の集約数は、目標にはまだまだほど遠いというのが現状です。
 しかし先日も厚年法改正大綱が報道された翌日に行った署名集めでは、自分の方から「署名がしたい」とか「私は今まで一度も署名したことはありませんが、今の説明を聞いて、黙ってはいられない。ぜひ署名がしたい」等、多くの人達が積極的に協力してくれ、非常に嬉しく思いました。
 個人的には、全国(北海道から長崎県)の仲間が同期会で集まったときも署名用紙を持参し、行革86筆、年金改悪76筆の署名を集約できました。

●地方社会保険事務所設置へ=社会保険庁が交渉で回答
 全厚生は、3月17日、定員・定数に関する要求とともに、地方分権と行革にかかわる課題を中心に社会保険庁と交渉をしました。交渉には、杉下委員長を先頭に各支部代表と本部役員が出席し、社会保険庁からは、宮島次長、吉武総務課長らが出席しました。
 交渉では、地方分権にかかわって、社会保険庁が次の点について明らかにしました。
 第一点は、地方事務官制度廃止後の地方組織の問題で、(1)保険課・国民年金課にかわる都道府県単位機関として地方社会保険事務局という「局」を設置すること。(2)地方社会保険事務局と社会保険事務所は、社会保険庁の地方支分部局とすること。(3)地方分権関連一括法案は、3月末に国会に提出され、成立すれば2004年4月実施となること。
 全厚生は、都道府県単位の機関として「局」を設置し、社会保険庁の地方支分部局とするよう要求してきましたが、今回示された方向は、まさに全厚生の要求を反映するものです。
 地方社会保険事務局の具体的な組織構成などについては、当局に早急に具体的な案を提示するよう要求するとともに、私たちも組織構成のあり方などについて主体的に議論を進めることが重要です。
 第二は、地方事務官制度廃止後の人事についてです。庁総務課長は、昨年の交渉で「従来の慣行をゼロにするわけにはいかない」と回答しましたが、今回の交渉でも「職員の生活をよく念頭において人事を行うという考え方に変わりはない」と回答しました。このことは、現在の県内を基本とした人事異動のあり方を変更しないことを意味するものです。
 第三は、国民年金関係事務の見直しの方向について表明したことです。印紙検認を廃止し、廃止後3年間でソフトランディングすること、第三号届を事業主経由の届出に変更すること、適用問題では国保などの医療保険情報を活用することなどの考え方を明らかにしました。この問題についても、99年度の事業のあり方なども含め、長年の蓄積された経験を十分に反映させ、行政サービスも労働条件も向上させるよう、より建設的な議論を進めることが重要です。
 この他、共済組合や宿舎の問題については、円滑な移行ができるよう努力すること、互助会については、貸付金の返済について共済組合移行の問題と併せて検討する考えを示しました。また、セクハラ対策(人規10−10)について、苦情相談窓口をそれぞれの職場に設置、セクハラ防止マニュアルの作成、社会保険大学校での研修に取り入れるなど、深刻なケースが生じないように、未然に防ぐことを重視する考え方が示されました。
 出席した各支部代表から、六級双子、七級枠外の深刻な実態、本省庁での恒常的な残業の解消、業務センターの五級昇格の問題、国年事務の改善策としての市町村への端末機の配置や謝金職員の入力作業の柔軟な取り扱いの提案、「天下り」所長の廃止、バランスのとれた定員の配置など、職場の声を訴えました。

●全員参加の春闘に=愛知・総対話集会46回開く
 愛知県支部は2月の本部中央委員会の春闘方針を全組合員が理解し、全組合員参加型の春闘を取り組むために17分会すべての小グループ総対話集会を行おうと奮闘しています。
 総対話集会は支部四役と執行委員が各分会に出向き、昼休みに昼食を取りながら春闘方針、情勢、支部要求について説明をし、その後、10人程度のグループに分けて1時間くらい討論をします。
 今年は本部から加藤副委員長にも2分会を応援してもらいました。また、特に県庁分会では集会の設定が難しいため、加藤本部副委員長に仕事中の短時間に情勢を報告してもらいました。
 対話集会では中央省庁再編にかかわって、労働福祉省になって両方の地方機関が統合されるのではないか。ブロック機関が整理されたら広域人事などがされるのではと不安が出されました。支部の課題についても到達点と今後の課題を明確にしあって議論を進めてきました。
 総対話集会の取り組みは執行部にも、分会にもたいへんな苦労がありますが、職場での人間関係が薄くなりつつある今、わずかな時間でもそれぞれが日頃の思いを率直に出し合い、認識を一緒にする、きめ細かな運動が求められています。
 愛知県支部は分会数が多いからこそ、総対話集会は組合員と執行部を身近にし、執行部にとっても大いに元気になれる重要な運動になっています。(愛知県支部発)

●両輪署名の達成を=京都・全員学習会を開き確認
 京都支部では、99年春闘を全組合員でたたかうために、全員学習会を開催しました。
 学習会は5回に分けて行い、前半は外部講師などを招いて学習し、後半は、支部の春闘方針を確認しました。
 外部講師には「社会福祉基礎構造改革の問題点」「労働福祉省に関し全労働からの問題点」「社会保険をとりまく情勢」等の講演をしていただきました。特に、「社会保険をとりまく情勢」について杉下委員長から直近の情勢をおりまぜながら、地方事務官廃止後の問題や、省庁再編にいたるまで詳しく報告していただきました。
 後半の支部春闘方針は、「両輪の署名」を一組合員当たり30名を達成する取り組みについて、外に打って出るたたかいを進めることや、支部独自課題について前進させるように学習を深めました。
 支部全体で、組合員の八五%が参加しました。この学習会をうけて、現在各分会で職場小集会を実施中です。この意見をまとめて、99年支部統一要求書を当局に対して申し入れる準備を進めています。
(中本邦彦書記長)

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