◆第1419号(1998年11月25日付)◆
●国民犠牲の「行革」やめよ
独法化断固阻止を−省庁再編関連法案大綱原案出る−


 行革闘争はいよいよ、重大な局面をむかえています。政権末期の状況ともいえる20%台の支持率に低迷している小渕内閣は、その命運をかけて、「公務員の削減」を看板に、「行政改革」の具体化を強行する構えをつよめています。
 事実、政府の中央省庁改革推進本部は当初、中央省庁再編関連法案の大綱原案とそれにともなう行政リストラ計画を11月末にまとめるとしていましたが、そのスケジュールを前倒して11月20日に決定したことにも、その決意のほどが示されています。
 大綱原案は、各省庁の執行部門を切り離して新設する独立行政法人化の検討対象を拡大、昨年末の行政改革会議の最終報告に明記された国立健康・栄養研究所、国立病院・療養所など73機関・業務に加え、新たに「国立学校、統計センターなど」を盛り込みました。今後、自民党などと調整し来年1月に大綱を決定することにしています。
 全厚生は、昨年の最終報告で独立行政法人化の対象機関にリストアップされた国立健康・栄養研究所について、全厚生全体として独立行政法人化反対・厚生省の研究機関として存続・充実させることが国民共通の要求であると訴え、署名行動、厚生科学課、人事課交渉をはじめ、「改革推進本部」への要請行動などを展開してきました。
 橋本内閣を継承した小渕内閣は、公務員の削減を10%目標から20%に引き上げ、その目標を達成するために、推進本部事務局に独立行政法人化の拡大・廃止・民営化など、さらなる見直しを指示してきました。その結果、厚生省関係では、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所、社会保険業務センターの3機関が追加されました。
 全厚生は11月24日、杉下委員長ら本部役員が人事課に対して、大綱原案について緊急の申し入れを行い、とりわけ国立健康・栄養研究所の独立行政法人化に反対し、国立研究所として存続するようつよく要請しました。また、「改革推進本部」に対しても再度、全体でとりくんだ署名を持って要請することにしています。
 小渕内閣は今後も、自民党や自由党などの行革推進派を背景にいっそう行革推進、行政のリストラを強行することは必至です。しかしその路線が行政サービスの切り捨てにつながる行革であるだけに、私たちが国民生活を破壊し、国民負担をいかに強いるかを、その本質を明らかにし、それを圧倒的な国民世論にするたたかいを一回りも二回りも広げることが切実に求められています。


●国民本位の行財政に−行革闘争11.18中央行動展開−

 「問い直そう国の役割、確立しよう国民本位の行財政」を合言葉に11月18日、国公労連行革闘争11.18中央行動が展開されました。
 この行動は、行革闘争が重大な局面をむかえている情勢のもとで、国公労働者が在京をはじめ上京団行動を組織し、総決起する目的でとりくまれたもの。
 この日の行動では、全厚生は本省・統計・業務センター・リハ・神奈川・静岡・愛知・岐阜・京都・香川・愛媛の12支部と本部をあわせて52人が参加し、総計1600人の国公労働者が結集した総決起行動の一員として立派に任務を果たしました。
 杉下委員長を先頭に、全厚生組合員は、朝8時30分からの新橋駅頭でのビラ宣伝行動にはじまり、行革推進本部前での行動、総務庁前行動をとりくんだ後、日比谷野外音楽堂での総決起集会に参加し、東京駅までのデモ行進を力強く行い、沿道の人々に行政サービス切り捨ての行革の中止を訴えました。



●栄研も感染研も国立で−日本共産党国会議員と懇談−

 全厚生は11月11日、日本共産党の松本善明、児玉健次、平賀高成の3衆議院議員と東京・新宿区にある国立感染症研究所内会議室で、独立行政法人化問題をめぐって懇談しました。これには、杉下委員長、萩原感染研支部長、斎藤栄研支部長ら本部・両支部から15人が参加。
 松本議員らはこれに先立ち、感染症研究所を約2時間にわたって視察しました。
 懇談では、感染研、健康・栄養研とも国民の健康と命にかかわる研究所として国が責任を持つ必要があり、今後とも国立の研究所で存置すべきであり、独立行政法人にすべきでない、との全厚生の基本的見解を表明し、日本共産党の国会内での支援を要請しました。
 松本議員は、「感染症研究所を視察し、独立行政法人化の問題点が鮮明になった。われわれもひきつづき院内でみなさんと一緒に奮闘するが、組合のみなさんも新聞に投書するなど世論を盛り上げる運動を旺盛にすすめることが重要ではないか」と激励しました。


●国立更生援護機関は国で、が基本
国立施設管理室長交渉で回答


 全厚生の社会福祉支部は11月16日、国立施設管理室長と当面の課題で交渉。これには、杉下委員長、加藤・鈴木両副委員長ら本部役員、7支部代表が参加し、管理室側は三枝室長、北本補佐らが対応しました。
 交渉は、行革関連、国立施設のあり方、施設機能の拡充・強化、昇格改善、調整額・諸手当、増員、福祉職俸給表の新設、宿日直、人事異動などの要求と課題について室長の回答を求めました。
 行革について室長は、「改革推進本部の事業として行政組織の減量化・効率化が課題になっている。更生援護機関には民間委託の推進という話がきている。基本的には国立更生援護機関は国でやるという方針のもとに対処していく」との基本見解を表明しました。
 国立施設のあり方をめぐって室長は、「労働省との統合問題を視野にいれて、局内で国立施設のあり方について検討会を8月から始めた。国立更生援護機関は国立でやるわけだが、その存在意義というのをこの非常にきびしい行革のなかで将来的にどこに求めていくのか、などの意見が大分出た。また国立リハと光明寮、リハと保養所との関係などについてどうするかなども課題になっている」と答えました。
 施設機能の拡充・強化では、(1)OA機器、自習室などについては予算要求している(2)実習助手については謝金対応として予算要求している(3)伊東の看護婦定数の流用についてはどう見直すのか検討するなどと回答しました。
 昇格については、「引き続き上位級確保に努力したい」。調整額の適用については「予算要求している」。福祉職俸給表の新設については「報告が出て以降動きがない。標準職務表が示されてから検討したい」。  人事異動については、「本人の希望を第一義的に考えてやることにかわりない」と話しました。


●秋年闘争など意思統一=厚社連支部代を開催

 全厚生は11月15日、厚社連(全厚生社会福祉支部連絡協議会)支部代表者会議を開催しました。会議には函館、塩原、リハ、秩父学園、伊東、神戸、福岡の7支部と本部のあわせて12人が出席。なお別府支部は急用で欠席しました。
 鈴木副委員長(厚社連会長)の司会で翌日の管理室長交渉の意思統一、支部の現状報告をはじめ秋年闘争の課題と当面の行動などを主なテーマに行われました。
 支部報告で、困難な状況の中にあっても、機関紙の発行や地道な活動をすすめるなどして、組合員を増やしている貴重な報告は、参加者を励ましました。また、昇格改善、増員、人事異動、福祉職俸給表などをめぐって意見交換を行いました。
 最後に、代表者会議では(1)11.19昼休み職場集会を全組合員の参加で成功させる(2)国立健康・栄養研究所等の独立行政法人化反対の署名については組合員を上回る署名を集約する(3)国立施設白書を来年2月の中央委員会までにまとめる、などを確認しました。


●年金の大改悪許すな−保険料アップ、給付額ダウン−

 厚生省は、10月9日に厚生大臣に提出された年金審議会の意見書を受け、「21世紀の年金制度」と称する「年金制度改正案(平成11年)」をまとめ、10月28日に自民党年金制度調査会・社会部会合同会議に提出しました。
 今回の「改正案」は、昨年12月に発表された「5つの選択肢」のうち本命と目されていたC案を基本にしたもので、3つの案が示されています。
 もっとも有力な案は、第一案で、(1)60歳代前半の報酬比例部分の廃止、(2)報酬比例部分の5%削減、(3)保険料を月収の26%に引き上げ(ボーナス含む年収で20%)、(4)国民年金保険料を2万3000円へ引き上げ、がポイントです。
 第二案・第三案は、報酬比例部分を60歳代前半でも支給する代わりに報酬比例部分を15%または10%削減(10%削減の場合は基礎年金でも10%削減)というものです。 いずれにしても保険料負担を引き上げ、給付額を引き下げる内容であり、将来不安をいっそうあおる「改悪案」だといわざるを得ません。
 問題なのは、年金改正をめぐる問題で、「基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げる」問題について、「給付費の増大に併せて巨額の税負担をすることについて国民の理解が得られない」などと決めつけ、947年の国会における付帯決議を端から否定していることです。

新聞各紙も年金「改正案」を批判
 10月29日付の新聞各紙でも、今回の「改正案」を批判的に論じています。
 読売新聞の社説では、「この案の最大の問題は65歳までの雇用が確保されないことだ」「60歳から65歳までの間、無収入状態になる」「給付と負担の均衡という観点からだけで議論した年金改革案では『老後の不安』は解消されない」と指摘しています。 毎日新聞では、「すでに65歳支給への移行を決めているが、60歳から64歳は報酬比例部分だけ支給する約束だった。それも廃止するわけだ」と厚生省案の「裏切り」を指摘し、「やはり基礎年金の国庫負担を現在の3分の1から2分の1に引き上げ『公費注入』する抜本的な対策が不可欠になる」としています。
 朝日新聞(10月31日付)では、「国民が共通に受け取る基礎年金の財源の国庫負担割合を引き上げて保険料の上昇を抑え、国民年金財政を将来とも安定したものにすることが不可欠だ」「前回1994年快晴時の国会論議では、国庫負担を現行の3分の1から2分の1へ引き上げることが、次回への宿題とされた。これに答えを出すのが先決だろう」と論じています。
 また、自民党年金制度調査会・社会部会合同会議に出席し、厚生省幹部から説明を受けた議員から、「厚生省は年金問題で景気の足を引っ張っている。景気対策に逆行することは犯罪行為だ」など強い批判の声が相次いだとも報じられています。(10月29日付読売新聞)このように自民党議員ですら批判的な「改正案」は、何としてもお蔵入りさせなければなりません。

仕事に誇りが持てる年金制度に
 社会保険事務所で年金相談をしている仲間は、「改悪の話が多くて相談に応じるのが怖い」「ニコニコして相談に来た人が(年金額が低くて)帰るときには怒っている」など、仕事に誇りが持てず、国民的な批判に耐えかねている実態なども報告されています。年金受給者や被保険者に喜ばれる、本当に誇りを持って働ける年金制度をつくることを、社会保険の第一線で働く仲間は、切に求めています。
 厚生省は、深刻な不況と失業者の急増という事態の中で、99年財政再計算に併せて無理矢理「年金制度改正」を急ぐのではなく、将来展望を持ってじっくりと議論するべきであり、国民の意思を反映した国会決議を履行するためにこそあらゆる知恵を出し誠実に努力するべきです。
 私たちは、全労連が提起している「(1)国庫負担を基礎年金の2分の1へ(2)すべての年金を60歳支給へ(3)莫大な積立金の見直しを」という3つの要求を掲げて、対話と共同を広げ年金制度の拡充をめざして奮闘しましょう。

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