◆第1415号(1998年10月5日付)◆
●独立行政法人化反対
栄研に加え、感染研、衛研、業務センターが検討対象に

 全厚生は10月9日、98年度第1回行革闘争本部事務局会議を開き、直近の中央省庁等改革推進本部の検討状況や厚生省の対応などの情勢を確認するとともに、推進本部への申し入れなど当面の行動について討議しました。この会議は、独立行政法人化などが「改革」の焦点となっていることもあって、本省庁・試験研究機関の支部代表者会議と合同で行われました。
 冒頭、あいさつに立った杉下委員長は、推進本部事務局が10月6日「独立行政法人化検討対象事務・事業案」を各省庁に対して個別に提示し検討を要請したこと、そのなかで国立健康・栄養研究所に加えて、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所、社会保険業務センターなどが新たに独立行政法人化の検討対象機関に挙げられていることを指摘し、「11月下旬には法案・計画の事務局原案が策定される。いよいよ行革闘争も大きな節目をむかえる。独立行政法人化阻止にむけて全力をあげていきたい」と表明しました。
 会議では、加藤闘争本部事務局長(副委員長)が、最近の情勢と行動提起を行いました。そのなかで、加藤事務局長は、推進本部が新たに24機関・事務を独立行政法人化に追加し、97機関・事業が検討対象になったことにふれて、「これは小渕首相が10年間で各省庁の定員を20%削減することを公約したことが前提になっており、減量・効率化を徹底的にすすめるために独立行政法人化が不可欠になっている」と指摘し、政府がなにがなんでも公務員の減量を推進しようとしており、行革闘争は重大な情勢をむかえていることを強調しました。
 こうした情勢のもとで、試験研究機関支部に対して、加藤事務局長は(1)国民的視点に立って試験研究機関が現に果たしている役割を広く国民に明らかにする(2)独立行政法人化の問題点をまとめる(3)そのうえに立って減量化反対の要請・抗議行動を行う、などの取り組みをできる限り10月20日までに行うよう提起しました。また、各支部は職場集会を開催し、独立行政法人化反対についての合意形成と決議を挙げていくことの重要性を強調しました。
 会議では、各支部の実態を報告するとともに、本部の情報収集をいっそう機敏に積極的にすすめること、また、推進本部、厚生省の対応当局への「申し入れ」案を確認するとともに、10月12日の週に申し入れ行動を行うことを確認しました。


●独法反対表明せよ
厚生科学課・庁に申し入れ

 全厚生は10月12日、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所及び社会保険業務センター等が新たに独立行政法人化の検討対象機関に挙げられたのをうけて、社会保険庁と厚生科学課に対して、独立行政法人化に反対であること、あわせて中央省庁等改革推進本部等に対して独立行政法人化しないよう働きかけるよう申し入れました。申し入れは杉下委員長、加藤副委員長、岡野書記長らが行いました。
 厚生科学課では、西沢研究企画官、星川補佐らが対応。西沢企画官は「厚生省の試験研究機関は国民の命と健康を守るというかけがいのない機関だ。新たな情勢のもとで研究機関の再編等も考慮しながらも私どもとしては厚生省の研究所として存続していくという従来のスタンスを堅持して関係機関に働きかけていく」と表明しました。
 社会保険庁では、吉武総務課長、宮沢職員厚生室長らが対応し、「業務センターは、社会保険業務における頭脳・心臓部ともいうべき機関であり独立行政法人化にはなじまない、と考えている」(吉武課長)と基本的見解を表明しました。


●給与法が成立
55歳昇給停止を強行

 国家公務員給与法は10月9日、参議院本会議で可決成立しました。
 今年の人事院勧告は史上最低の平均0.76%、2785円というベースアップとなっていますが、配分では、「早期立ち上がり、高位号俸抑制」がより鮮明になり、「55歳昇給停止」という許し難い制度改悪の実施も含まれています。一方、超過勤務の上限規制に関わっては、「年間360時間の目安時間」とする内容で不十分さが残るとはいえ、これまで人事院が「超過勤務規制は公務になじまない」としてきた姿勢を転換したことは、厚生本省・社会保険庁本庁における無定量超過勤務の短縮や、各職場の労働時間短縮に向けての足がかりとする必要があります。
 さらに、福祉職俸給表の新設について、来年度の勧告に向けて言及しており、早期実現を求めていく必要があります。しかし、あいかわらず政府部内において人事院勧告の取り扱いに関し、定員削減の強化や行革推進による総人件費削減を前提にされています。


●国立病院・療養所・研究機関を守ろう
厚生共闘第20回大会開く

 厚生共闘は9月28日、東京・茜荘で第20回大会を開催しました。  あいさつした大倉議長は、橋本政権を引き継いだ小渕内閣は、公務員定員の2割削減を公約にし、独立行政法人化を国立病院・療養所などに加え研究機関などに対象を拡大する恐れがある。この秋の闘いが重要と強調しました。
 来賓は、国公労連から阿部副委員長、全労働から橋本副委員長が出席しあいさつしました。
 議案の提案にたった田岡事務局長は、活動経過の報告の後、九八年度の活動の基調を国民生活切り捨ての小渕内閣と対決し、国民各層との共同による運動の発展をめざすこととし、特に国立病院・療養所や試験研究機関の独立行政法人化に反対する取り組みの強化、厚生省、病院当局にILO勧告の遵守を求めること、年金・医療などの社会保障の切り捨てに対し打って出る運動(年金講師団等)を提案しました。
 討論では全医労から新潟のある病院の実体や自治体病院のリストラが報告され、組織強化や中央・地方との共闘、独立行政法人化反対署名などに全力で取り組む決意が表明されました。
 この後、すべての議案が満場一致で採択され、「社会保障制度の充実を求める決議(案)」(全文を全厚生のホームページに掲載)を採択しました。
 この大会で退任した大倉前議長が思い出を交えながらあいさつしました。
 新役員は次のとおり。▽議長 遠山亨(全医労)、▽副議長 杉下茂雄(全厚生)、渡辺伸仁(全医労)、▽事務局長 加藤重徳(全厚生)、▽事務局次長 岸田重信(全医労)、市川茂(全厚生)、▽幹事 藤巻一世、岡野基喜、山本潔(以上全厚生)、田岡靖久、北川寿博、細谷均(以上全医労)、▽会計監事 宇治橋真一(全厚生)、鈴木誠(全医労)


●反対の声無視し労基法改悪法成立
国会請願デモ・国会前連日座り込み

 労働基準法改悪法案は9月25日、参議院本会議で採決が強行され、共産党を除く与野党の賛成で可決成立しました。
 多くの労働者が反対し、国会には、連日、「連合」傘下を含め多くの労働組合や団体から要請が行われ、徹底審議と労働者保護の基本にたった修正が求められてきましたが、この広範な労働者の切実な願いを無視し、法案の成立を強行したことは断じて許すことが出来ません。
 全厚生は、労働法制中央連絡会を中心に取り組まれた9月16日から25日までの国会前座り込み行動や、労働基準法改悪に反対する中央総決起集会、国会請願デモなどにも、本省支部、統計支部、業務センター支部、感染研支部、神奈川県支部などの仲間を中心に積極的に参加。また、地方支部は、抗議や要請の打電行動(レタックスを含む)、地域宣伝行動など積極的に行いました。
 労働基準法改悪案は成立してしまいましたが、人事院規則や職場でのたたかいが残っており、労働者の権利を守ることは、まだまだ可能です。
 さらに労働者派遣法改悪に反対し、共同を広げたたかいましょう。


●あこがれのスウェーデン・豊かな先進的な福祉国家を見る(上)
全厚生北欧福祉視察に参加して−中央執行副委員長 杉崎伊津子−

 人口870万人ほど。女性の就業率85%、出生率2.01%。世界中から注目されているスウェーデンモデル。私たちはノーベル賞の受賞式典、晩さん会の会場があるスットクホルム市庁舎の会議室にて市議会議員で老人福祉、ハンディキャップ委員会担当のユーアン・カルロス・セビリアン氏からスットクホルムの福祉政策について概略を2時間ほど説明してもらいました。名前から分かるように彼はスペイン人です。
 ストックホルムには年間15万人が福祉政策などの見学に訪れます。市内の繁華街にあるスウェーデンセンターに行くとこうした各国からの来訪者向けに国の政策、制度などのパンフレットが各国語によって作成されて販売されていました。さすがに国際都市です。私は社会保険制度のパンフを購入しました。
 「ハンディのある人が生活する上で、普通の人より、費用がかかり過ぎることがあってはならない」が生活大国をめざすこの国の基本理念です。この基本理念にたって旧制度を全面的に改革した老人、障害者医療制度「エーデル改革」が1992年1月に施行されました。
 この改革は医療分野は県で、介護、福祉は市という役割を明確にしたもので「介護、福祉は可能な限り在宅で。そのために必要な良好な住居を市が提供する」という「ノーマリーゼーションの徹底」を目的に改革された制度だそうです。本音の部分では高齢化がいっそう進むことが予想されているので医療費の増加を押さえて、低成長の経済とのバランスをとることにあるようですが…。
 私たちは市庁舎から徒歩五分ほどで老人施設に到着。市庁舎からすぐの所ということはスットクホルム市内の真ん中で、とっても便利な場所に老人施設がありました。市街地にあっても緑が多く、静かな環境です。
 集合住宅の一部を市が買い取り、サービスハウス・グループホームなどに使用しています。私たちは日本でいうなら団地のようなところにナーシングホームが隣接しているケア付きサービスホームとグループホームを見学しました。

ケア付サービスホームを見学して
 サービスハウスとは自立した生活が送れるアパートメントが集まった建物で、この中に介護サービスを提供するセンターが組み込まれているものです。この介護センターには喫茶室、レストラン、美容院などもあり、個室が49室、2人用が78室、聴覚障害者用に10室がありました。
 このセンターでは一人の保健婦、数人の看護婦が常駐し、1週間に1回、医師と面談できますが、隣のナーシングホームに医師が常駐しているので緊急対応も問題ありません。作業療法も、足治療も受けられ、120人のホームヘルパー、派遣ヘルパーで24時間対応のサービスを行っています。ロビーには市立図書館から持ってきた大きい文字の本も置いてありました。
 このサービスハウスには65歳から99歳までの人が入居しており平均年齢85歳、圧倒的に女性が多い。サービスハウスは1DKか2DKの広さで、もちろん、バリアフリーに作られています。住宅は一般の賃貸形式。利用した食事サービスや、介護サービスの費用は収入に応じて負担することになっていますが、基礎年金(10万円くらい)に住宅手当などの上乗せがあって、利用料を払っても最低4万円程度は必ず手元に残る生活保障をされているので、必要なものを買ったり、孫へのプレゼント、友人などとの交際に困ることはないようです。
 私たちは92歳の女性の1DK、45平方メートルほどの部屋を見せてもらいました。
 車椅子でゆうゆうと通れる玄関。もちろん、日本と違って、靴を履いたままの生活なので段差はありません。真ん中の部屋にベッドが、奥の部屋は居間になっていて、これまでの生活の思い出の品々がおかれ、反対側にはキッチン。見学した私たちは「日本の我が家よりいいな」と溜め息。この女性は歩行困難で車椅子の生活ですからベッドの上にはリフトを設置、トイレにも不自由しない車椅子が用意してあります。
 スウェーデンでも、デンマークでも車椅子などの補助器具はすべて一人ずつの体にあわせて製作され、貸与されているそうです。補助器具は介護者の健康保持のため積極的に活用されています。
 ヘルパーを呼ぶためのコールボタンは、部屋に設置されている電話インターホンで部屋のどこからでも会話ができるようにセットされています。
 中庭に向かってテラスがあり、鉢植えが美しい花を咲かせていました。この女性はここでの生活に満足そうでした。
 ここには共同の洗濯乾燥室、シーツなどの大型物アイロンプレスもあります。共同のリフト付きバスの部屋もありますが各自の部屋のシャワーですませているそうです。(次号につづく)

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