◆第1413号(1998年9月5・15日付)◆
●労基法改悪案は参院で廃案に
衆院で修正案を強行・たたかいは最後の正念場に


 労基法改悪法案は、9月3日、衆議院労働委員会で採決が強行され、共産党以外の議員の賛成多数で可決。翌四日、衆議院本会議で可決成立し、参議院に送られました。
 全厚生は、8月31日から9月4日まで、国会前座り込み行動に連日参加した他、衆議院議員面会所集会、議員要請、9月2日の総決起集会に参加し、改悪法案廃案に向けたたかいを強めてきました。今後、舞台は参議院に移ります。先の選挙で国民が自民党の悪政ノーとの審判を下した参議院において、労基法改悪案を必ず廃案にしましょう。

8時間労働の原則くずす最悪の改悪内容
 労基法改悪法案は、(1)裁量労働制の適用職種拡大(仕事の成果さえ上げれば、実際の労働時間に関係なく一定時間働いたのと同様にみなす。対象を企画、立案、調査、分析の業務に拡大)(2)変形労働制の上限緩和(1年単位で仕事の繁忙期にあわせ勤務時間を編成できる)(3)有期雇用契約の上限緩和(現在上限一年を開発・研究部門などで3年に延長)などが盛り込まれていました。
 8時間労働制の原則をくずし、ただ働き残業・長時間労働を野ばなしにし、いらなくなったらポイ捨てするという戦後最悪の改悪内容に多くの労働者・国民が怒り、反対するなか、先の国会で継続審議になっていました。

水面下で協議し小手先の修正で改悪強行
 7月の参議院選挙で、国民は自民党の悪政にノーの審判を下しました。にもかかわらず、政府・自民党は、民主党と一緒になって、まやかしの修正案でこの労基法改悪案を押し通そうとしました。自民党・民主党が出した修正案は、(1)新たな裁量労働制に対象労働者の本人同意制度を導入し、施行時期を一年延期する(2)女子保護規定の撤廃に伴う激変緩和措置として、家庭的責任のある女子労働者の時間外労働の上限を年間150時間とするというもの。
 これに、社民党が「裁量労働制の適用に対象労働者が不同意の場合も、不利となるようにしてはならない」などの内容を盛り込むことで賛成にまわりました。
 裁量労働は本人同意と言っても、「ノー」と言える労働者はどれくらいいるでしょうか。残業代節約のために裁量労働を悪用する企業が続出するのは目に見えています。際限ない広がりに歯止めをかけるために労使委員会で決めると言っても、全労働者のうち労働組合加入率はわずか22.6%にすぎません。また、女性の深夜時間外休日労働を規制した労基法の「女子保護」規定が来年4月1日から撤廃されますが、「男女共通の労働時間規制を設ける」という付帯決議を国会自らほごにしました。
 修正案には問題点が多くあるにもかかわらず、修正案の内容が正式に明らかになったのは9月2日。翌3日、衆議院労働委員会でわずか一時間の審議で採決強行。4日の衆議院本会議では、審議なしのいきなり採決という暴挙でした。
 新裁量労働制の削除と時間外労働の規制を主張していた連合も、政府自民党や民主党、社民党との密室「修正」協議に加わり、修正案に賛成する側にまわりました。

国民の怒りで国会を動かし廃案させよう
 私たちは、労基法改悪案は、まやかしの修正ではなく、あくまで廃案をめざしてたたかってきました。
 たたかいは、いよいよ最終盤、正念場です。参議院議員は、まだまだ私達の労働実態や要求を知らないのが現実です。今後、私たちの切実な声を手紙、ファクス、要請行動などで国会議員に届け、署名を広げるとともに、毎週火・木の昼休み参議院議面集会、9月16日から24日までの国会前座り込み、9月17日・24日総行動などに全力をあげましょう。
 労働者・国民に労働基準法「修正」改悪案の危険な中身を知らせるなら、怒り、反対の世論は広がるでしょう。国民の怒りは国会の情勢を動かします。最後まで粘り強く運動を広げ、参議院で必ず廃案に追い込みましょう。


●昇任昇格の改善を−女性部が人事課と懇談−

 8月27日、全厚生女性部は、人事課と女性の労働条件改善の課題で懇談しました。
 全厚生は、岡野書記長、女性部から北島部長、根津・八木両副部長、小池事務局長はじめ各幹事と本省・統計・業務センター・感染研・国立衛研・人口研・リハの各支部の代表ら総勢18人が参加しました。人事課からは、丹羽人事調査官、中山・宮治両補佐らが対応しました。
 昇任・昇格の改善の課題では、リハ支部が四級昇格、人口研支部が五級昇格の改善を求めました。人事調査官は、問題あれば改善しなければならないとし、対応していくと回答しました。
 感染研の研究職二級高位号俸と枠外の解消については、「少しずつ改善されつつあるが、このテンポでは追いつかない。二級の定数に対し三級の定数が少なすぎるため、実績があっても昇格できない人が増えている」と訴えました。人事課は、「三級定数がネックではない」との考えを示しましたが、組合側の追及で、「三級定数につていは振り替えなどで数の増に努力する」と回答しました。
 また、感染研当局が「審査の基準が厳しくなった。今後の採用や定数に影響する」と言っていることに対し、人事課は「変わっていないし、影響もない」とし「感染研から昇格の申請が上がってこないと難しい。来れば人事課として人事院に十分説明する」と回答。
 国立衛研支部の「主任研の五級はないと所当局は言うが本当か」の問いに人事課は「制度上、主任研は三・四・五級となっている」と回答。研究職の採用について選考採用だけでなく公募をしてほしいと訴えました。
 採用における男女比率の是正については、「女性は戦力であり、局に対しても一人でも多く採用するよう言っている。多く採用したい」と回答しました。
 セクハラについては、人権問題であり職場の意識を変えるよう求めました。また、経験にもとづき産前休暇8週間産後10週を要求したのに対し、「人事院への給与改善要求でも要求しているが、制度なのでタイミングがある」と回答。「具合の悪い妊婦が多発している現在がそのタイミングだ。少子化問題をかかえる厚生省として積極的にがんばってほしい」と訴え交渉を終わりました。


●職場討議が重要=秋田・定期大会開き確認
 秋田県支部は7月31日、秋田市内において第31回定期大会を開催しました。
 「橋本ニセ行革とのたたかい」「昇任昇格改善」「職場の健康安全」を最重要課題として取り組んだこの1年を総括し、新年度の運動方針を満場一致で採択しました。
 また、本部の杉下中央執行副委員長が、省庁再編と機関委任事務廃止後の組織の在り方について詳細に話しあいさつしました。
 この1年間のたたかいがいかに重要か、そして要求を勝ち取るためには、これまで以上に職場討議が必要であることを再認識した大会でした。
 新役員は次のとおりです。

 支部長  小笠原 浩
 副支部長 茂内 勇人
  同   小川 久夫
  同   石塚 繁之
  同   伊藤 俊治
 書記長  新田 献
 書記次長 寺山 徹


●岐阜県支部が定期大会
 岐阜県支部は、7月17日、第31回定期大会を開きました。新役員は、次のとおりです。

 支部長  澤村 明
 副支部長 安藤 吉文
  同   藤野佐登美
  同   中村 光伸
  同   蒲  修
  同   長尾 徳緒
 書記長  真田 清司
 副書記長 国枝 英樹
 

●栄研支部長に斉藤さん
 栄研支部は、8月28日に、支部大会と98年度役員選挙を行いました。新役員は次のとおりです。

 支部長  斉藤 衛郎
 書記長  廣田 晃一


北欧の福祉事情−全厚生視察団に参加して−(1)
デンマークのお年寄りは輝いている 想像以上の豊かさに打ちのめされて


 デンマークで印象に残ったことを紹介します。私は北欧の高負担高福祉といわれる実態と、それがなぜ成り立つのかを知りたくて参加しました。行く先々で、どうしても日本と比べてしまい、その違いに打ちのめされたというのが正直なところです。
 デンマークで全厚生福祉視察団の一行は、コペンハーゲン市の厚生福祉局国際部長のアン・ヴィヴィ・ヴィセルさんを訪ね、主に老人福祉制度について聞き、その後ケア付き住宅とデイ・ケアセンターを見学しました。
 厚生福祉局は、老人ホームに隣接、と言うか、大規模老人ホームはよくないということで、小規模に切り替えるなかでできた空き棟に入っていました。

ケアの選択も本人意思尊重
 デンマークでは、年をとってケアが必要になった時、ナーシング・ホーム(特別養護老人ホーム)に入るか、在宅のまま訪問看護、ホームヘルプ、宅配食のサービスを受けるか、デイ・ケアに通うか、ケア付き住宅に入居するかは、判定委員会を開き決定します。メンバーは、本人、親しい友人、市の専門家、ホームドクターなどで構成されます。もちろん本人の意思が一番尊重されます。
 すべてのサービスは税金で行われ、自己負担はありません。施設はすばらしいし、部屋は当然個室、補助器具の貸し出しも、部屋の改造もすべて無料で受けられます。  この高福祉はもちろん高負担に支えられています。税金は収入の5から6割という高さで、専門家しかわからないほどその税体系は複雑。高い税金に対して、不満の声がまったくないわけではないが、国民の大多数が支持しているというのは事実らしいです。

男女平等で民主主義も徹底
 デンマークでは、女性の9割以上が働いており、議員をはじめ女性の活躍は当然のこと。義務教育10年は、20人学級で、1人の先生がずーと担任し、親のような役割をしています。しかも運営は、親・教師・子どもが参加し、教師の雇用から施設改善要求まで、話し合い決定します。小さい頃から、徹底的に民主主義とアイデンティティ確立の教育をしているのです。だから、デンマーク人は人に指図されるのが大嫌いで自分の意見をしっかり持っているのだそう。
 賃金も男女同一賃金。義務教育終了後に職人になっても、大学を出て専門職についても賃金格差はなく、自分がなりたい仕事につくのが当たり前。高校や大学は授業料は無料でしかも奨学金が出ます。子どもが18歳になると親は扶養義務がなくなり、子どもは自立します。比較的若いうちに親になり子離れも早く、離婚率も高く、老後は子どもにたよるとか、妻にたよるとかそういった発想はありません。自立した個人の問題なのです。もちろん心の絆は強く、親子の交流は緊密です。

政治に対する信頼感が違う
 日本とはずいぶん違います。だいたい、国民の意識が違う、政治にたいする信頼感が違う、教育が違う、歴史が違うのです。なのに、制度のいいところだけチョイスして、日本にあてはめようとするから無理も生ずると思うのです。ホームドクター制の提唱も、介護保険の要介護認定についても、あやしい。それを言うなら、まず、銀行への税金投入をやめ、労働法制改悪をやめ、30人学級にし、女性をどんどん登用し、あれもこれも、うーんすべて変えていかなければ・・・
 デンマークの街並みは美しい。建物の高さ規制もあるし、歴史ある建物も多く残っています。あの有名なロイヤルコペンハーゲンの店にも何時間も滞在してしまいました。豊かな老後が保障され、個人が尊重され、職人が大事にされるお国柄だからこそ、このロイヤルコペンハーゲンの陶器も輝いているのだと思いました。(本部書記・近藤浩美)

Back  to HOME