◆第1410号(1998年7月25日付)◆
●昇給制度改悪は許さない
「見直し」案の撤回まで人事院に怒りをぶつけよう

 「昇給延伸・停止年齢の3年前倒し」という人事院の提案は公務労働者にとって許すことのできない重大な労働条件変更の提案です。そもそも俸給は、「給与法」で「その職務の複雑、困難及び責任の度合いに基づき、かつ、勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤務条件を考慮したものでなければならない」となっており、年齢に関係なく職務と職責に応じた給与であるということが前提です。しかも、「12月を下回らない期間を良好な成績で勤務したときに昇給させることができる」となっていたものが、1979年に「給与法」を改悪し、「昇給延伸・停止措置」を持ち込んできました。
 しかも、今回の人事院の「見直し」理由は、「民間賃金動向」を理由としていますが、その狙いは、高齢者賃金の抑制による原資確保と、「早期立ち上がり」の推進、中だるみの是正にあり、突き詰めていけば総人件費抑制の考え方でしかありません。高齢層の「官民逆格差」があるわけではなく、ただ単に一部のデータを恣意的に利用しているに過ぎません。交渉の中で、低ベア・配分の適正化問題を持ち出していますが、必要な原資はきちんと確保されるべきで、いわれなき高齢者賃金の抑制は許されません。
 職場で53歳といえば、平均的な退職年齢に該当し、地方庁(社会保険)では社会保険事務所長(八級)になる頃です。しかも、七級在級者は「枠外」に入る時期でもあります。この年齢は職務も職責も極めて困難な業務をこなしており、単に年齢だけで評価するなどもってのほかです。
 民間では一部50歳代前半から昇給カーブが減少する傾向もありますが、給与水準からすれば「官民格差」は歴然としています。そうした事実があるにもかかわらず昇給カーブの減少だけを捉えて昇給制度を見直すことは何の理由にもなりませんし、民間での昇給カーブの減少は、役職を離れるとか、その職務・職責の軽減があることも見ておかなければなりません。人事院が今回の「見直し」の根拠として示したものは、労働省、中央労働委員会、連合による外部調査で、互いに無関係な三つの「民間賃金動向に関する資料です。しかし、これらの資料は、資料の適切さや信憑性などの点で多くの問題点があり、「55歳昇給停止」等の根拠にできるものではありません。公務員に重大な労働条件の変更を迫っているのに、人事院自ら実態調査を行うことなく、その信憑性や正確さに責任が持てないデータを活用しようとしているわけです。
 全厚生は、これまでも明らかにしているように、今回の人事院の提案が(1)総人件費抑制攻撃の一環であること。(2)職場の分断につながること。(3)高齢者賃金抑制のいかなる合理的理由も存在しないこと。(4)こうした「見直し」が人事管理上、職員の働く意欲・志気に大きな影響を与えること。(5)関係当局も「慎重検討を人事院に要望している。など、職場の理解と納得も得られていない以上、「見直し案」の撤回を求めて運動を進めていきます。


●国民の権利としての年金を=愛知県支部がシンポジウム開催
 愛知県支部は7月11日、組合結成30周年の記念行事の一環として、全厚生東海ブロック連絡協議会と共催で年金シンポジウムを開催しました。
 「国民の権利としての年金」と題したこのシンポジウムは、「払える、もらえる、暮らせる、年金制度をつくろう!」という副題に象徴されるように、度重なる年金改悪によって、国民の公的年金制度への信頼が大きく揺らいでいる今日、来年年金制度見直しの時期を迎えるにあたって、厚生省が出した「5つの選択肢」に惑わされることなく、本当に国民にとって年金制度はどうあるべきなのかをみんなで考えようと企画したものです。
 パネリストとして、憲法学者、年金受給者、学生、そして本部の加藤副委員長にも加わってもらい、それぞれの立場から、年金と憲法との関係、諸外国との比較、年金生活者の生活実態、若者の年金に対する関心度、厚生省の考え方などについてお話をしていただきました。
 また、会場からは少子高齢化の問題、国年担当者の苦悩や権利意識の問題等々数多くの発言があり、パネリストとの意見交換なども行われました。
 当日は小雨もぱらつくあいにくのお天気でしたが、岐阜県、静岡県の仲間を始めとして、チラシを見てやってきたという元青年や連合職場の労働者など、全体で126名もの人が集まり、みんな熱心にパネリストや参加者の発言にメモを取ったりしていました。参加者からは「また第二弾を開いてほしい」という声も。
 また、思いも寄らなかった地元テレビ局の取材もあり、この模様が夕方のニュースで報道されました。 (寺井唯哲)


●青年交流集会の成功を−青年部長会開き確認−
 全厚生は、7月13日から14日に青年(対策)部長会議を開催しました。会議には、秋田県支部、神奈川県支部、愛知県支部、岐阜県支部、香川県支部、愛媛県支部、京都支部から九名、本部から市川書記次長と山本青年対策部長が出席しました。
 会議の冒頭、岡野書記長から本部を代表してあいさつを受け、前日に投・開票が行われた参議院選挙について、「いまのままではまずいと思って意思表示した」「投票率の引き上げに貢献したかった」「今回は関心があった」「選管がうるさいから投票しなかった」など、率直な意見を出しあいました。
 国公青年交流集会や全厚生青年交流集会の取り組みについて討議し、全厚生青年交流集会については、現地で進めている企画とともに、成功に向けて奮闘することを確認しました。
 各支部の経験交流では、秋田県支部の年2回の独自学習会、神奈川県支部のインド・パキスタン大使館への抗議行動、愛知県支部の平和行進、岐阜県支部のクリスマスパーティーや学習会、京都支部の月1回の取り組み、香川県支部の分会ごとでの取り組み、愛媛県支部の遊ぶ学ぶ積極的な取り組みの経験などを交流しました。「参加者が少ない」など共通の悩みなども出されましたが、「取り組みを重ねることにより青年の輪は広がっている。確信を持とう」と確かめあいました。
 今後の青年活動として、日常的に青年の姿が見えるように、青年(対策)部長会議を複数回開催することや全厚生青年対策部ニュース(名称:「MOVE」)を2カ月に1回程度定期的に発行し、全組合員を対象に配付することを確認しました。この日は午後から人事院・総務庁前での要求行動や人事院交渉などの国公青年協中央行動に参加し、討論と行動を通じて学習を深めました。
 なお、青年対策部ニュースの創刊号は、7月末の発行予定です。乞うご期待!

全厚生青年交流集会 in 大津&京都
日時:1998年10月23日(金)〜25日(日)
会場:滋賀県大津市 アヤハレークサイドホテル
企画:23日 記念講演 琵琶湖の生態系の研究者に自然と環境について語っていただく予定です。
    24日 京の都の名所・名物探しのオリエンテーリング
    25日 お別れ大交流会



●平和訴え行進−全国社保共闘旗を大阪へ−=京都
 朝から暑〜い夏日の中、溶けてしまいそうな気分で、大阪への引き継ぎに参加しました。
 平和行進と言うと滋賀からの引き継ぎしか参加したことがなかったので同じように思っていましたが、歩きだしてその距離の長いことに驚きました。(柏原市から八尾市で核兵器廃絶のための申し入れのあと東大阪市まで行進する。)
 途中で足が止まって動けなくなるのではと心配していましたが、途中コース誤りで遠回りをしたにも関わらず、大阪のみなさんのパワーに後押しされて、日影を求めながらどうにか八尾市まで歩くことが出来ました。
 時間の関係でそこまででしたが、行進はあと東大阪市まで歩くのかと思えば、感心するしかありませんでした。
 その後、社保共闘の大阪の仲間の方と飲んだビールのおいしさときたら格別でした。
 核兵器廃絶は、私たちの願いです。京都支部からも原水爆禁止世界大会に、6名の代表を派遺します。全厚生の仲間の皆さん、広島で京都の代表を見かけたら声をかけてください。(松本典子)


●福祉職俸給表勧告見送り
 人事院は、福祉職俸給表の新設にむけて準備をしてきましたが、7月8日の国公労連との交渉の席上、「98年勧告では福祉職俸給表の新設は見送りせざるを得ない」と表明しました。
 福祉職俸給表の新設をめぐっては、人事院は6月1日、「福祉職に関し専門職としての職務の特性にマッチした体系のある俸給表をもうける必要がある」として、(1)指導員、保母、介護員等を対象にする(2)給与水準は初任給等入口部分を一定程度高く設定し、俸給カーブは高原型(3)6級制の簡素な級構成などの骨格案を提示していました。
 全厚生は、6月15日の人事院交渉、7月2日の国公労連が行った人事院交渉に参加し、福祉施設の実態を指摘し福祉職俸給表の新設の意義について強調してきました。
 また、人事課、国立施設管理室に対して、(1)福祉職俸給表における職階制を早急に示すこと(2)切り替えにあたって将来とも不利益を及ぼさないこと(3)調整数は現状維持することなどを要望していました。
 今年の勧告では、福祉職俸給表の新設は見送られましたが、適用職種、給与水準などについて、社会福祉支部を中心に十分な議論をしていきます。


●新ガイドライン立法許すな!−5−
「周辺事態」法案は、米軍の武器弾薬輸送に民間を強制的に動員

 前号では、「周辺事態」法案が戦闘中の米軍への輸送、医療、修理、空港・港湾業務などの「協力」を地方公共団体に「依頼でき」、しかも「要請を拒否したら違法」となるなど無法な内容についてみてきました。その「協力」が自治体ばかりでなく民間まで巻き込むものになっているのです。米軍の軍事行動に民間動員規定が盛り込まれたのは戦後初めてです。
 米軍はすでに、「契約」という形で民間動員のシステムをつくっています。
 実弾演習では、防衛施設庁が米軍の依頼を受け、日本通運と一括契約し兵員や物資輸送のため、航空機や民間バス、船舶、トラックなどをチャーターしています。日本通運は以前から米軍の弾薬輸送などを請け負ってきましたが、昨年7月の海兵隊の実弾演習強行以来、155ミリりゅう弾砲などの兵器も輸送しています。

旅客便に弾薬
 昨年9月、米空母が長崎県佐世保に寄港したときには、「通常の業務に支障を与える」として、米兵輸送の申し込みを断ったフェリー会社が複数ありました。また、今年1月、那覇空港発関西空港ゆきの日本航空旅客便に、貨物代理店から、武器・弾薬の輸送依頼が舞い込みました。荷主は米軍でした。
 関係者は、「民間航空機が軍の武器・弾薬を輸送できるのか」と大騒ぎになりました。
 一般に、民間航空機での危険物の取り扱いについては、航空法86(爆発物輸送禁止)や国際民間航空条約(通称シカゴ条約)付属書18などによって厳しく規制されています。日航の内部規則でも「所定のケースに収納した猟銃、スポーツ用の銃弾のみ搭載可能」となっています。
 軍の武器・弾薬を持ち込んだ場合、シカゴ条約にもとづく民間航空機保護の対象外となり、テロや武力攻撃などの危険にさらされかねません。那覇空港では機長の提起を受けて、離陸直前まで協議が行われたといわれます。結局出発時間がせまり、米軍の武器・弾薬は搭載されませんでした。

攻撃の対象に
 「周辺事態」法案ができれば、戦闘中の米軍への協力のため、事実上、強制的な動員が行われる危険があります。日航機のように一般の旅客の足元に危険な武器・弾薬が積み込まれかねません。
 しかし、米軍の武器・弾薬の輸送はすでに、海上、陸上で広範に行われているのです。4月8日から始まった北富士演習場での実弾砲撃演習に際しても、米兵は米民間機と富士急行のバスなどで移動、りゅう弾砲などの装備は日本通運の船舶で横浜ノースドックまで運ばれ、陸揚げされました。
 「周辺事態」法案は、米軍の武器・弾薬などの輸送に民間が強制的に動員される危険なものです。それはまさに攻撃の対象となってしまうのです。(つづく)

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