◆第1408号(1998年7月5日付)◆
●昇給延伸・停止年齢引き下げ許すな
6月中決着を断念させる・提案撤回までたたかおう

 6月30日の昼休み人事院前行動の後、昇給延伸・停止年齢の引き下げ問題で、国公労連は人事院と3回目の交渉を行いました。
 この中で、国公労連は6月中に成案を得たいとの人事院の提案に対し、重大な問題にもかかわらずあまりにも拙速であり、納得できるデータも示されていないことを指摘し、「見直しは断念すべきであり、強行などはしないこと」を求めました。
 これに対し、人事院は「6月いっぱいに成案を得るという状況ではなく、強行などはしない。しかし、人事院としてはこの問題については引き続き勧告にむけての検討課題だと考え、これからも話し合っていきたい」と回答しました。
 私たちの取り組みにより、早期決着は断念させたものの、人事院は今回の提案の導入姿勢を崩していません。今後引き続きこの闘いを、人事院が提案を撤回するまで強めていく必要があります。具体的には、中央行動により多くの組合員の参加、支部での上申闘争を積極的に取り組んでいく必要があります。

みんな怒っている
 30日の昼休み人事院前要求行動には、本部はじめ本省・統計・人口研・神奈川県の各支部から28人が参加しました。
 統計支部の菅沼支部長は、「職場では、怒りがわき起こっている。『団塊の世代はいつも損をみる。特に女性は今までにも定数枠を理由になかなか昇格できなかった。双子3つ子も経験した。なのになんでまた、やりきれない』『人事院は能力・実績に応じた見直しを進めると言っている。では、53歳以上は年齢だけの条件で能力・実績が鈍ると判断されるのか。高齢化社会に逆行している』『人事院の考え方は給与の総枠だけを考えた卑劣なものだ。公務員の生活を守ろうとしているのか大いに疑問だ』などの声が上がっている。撤回まで支部のみんなでがんばりたい」。
 神奈川県支部の平丸書記長は、「職場の反応は早かった。特に40歳後半を中心に怒りの声が上がっている。人事院に断念させるまで、中央行動に積極的に参加したい」と決意を語りました。


●98夏季闘争のポイント
 人事院勧告に向けたたかいや行革闘争など今年の夏季闘争の主要課題について岡野書記長に聞きました。

行革闘争=国民生活への影響具体的に反論
 6月9日に「中央省庁等改革基本法案(行革基本法案)」が成立しましたが、行革闘争の今後のたたかいはどうなりますか。

 行革基本法案は、これまでの国会審議を通じて、規制緩和や地方分権を枕言葉に、事務執行部門の減量化、とりわけ公務員総数の純減が強く主張されました。このことは、公務の「合理化」圧力が極めて強いことを浮き彫りにしています。各省庁の実施部門の果たしている役割、民営化などが強行された際の国民生活への影響を具体的な事例で反論することが求められています。
 全厚生は、行革闘争本部を中心に今後の対応を検討し、7月25日に開催する全国支部委員長会議・行革闘争本部合同会議で具体化を図ります。
 政府は、行革基本法案の成立を受けて、7月段階から行政組織法や各省設置法の改正作業を開始します。行革基本法案の国会審議の状況もふまえつつ、それらの法案作業が開始された場合、速やかに対応できるよう、全厚生、全労働、全医労、3団体による対策委員会を具体化し、「労働福祉省」設置に向けた諸課題への取り組みを強化します。

人事管理=民主的公務員制度の確立めざし
 人事院の「新たな時代の公務員人事管理を考える研究会」は今年3月、報告書を発表していますが、人事院は、公務員制度をどうしようとしているのですか。

 今年3月26日に発表された報告書の内容は、職場の様々な差別解消、無制限の超勤縮減、地方機関における職務評価の低さ、行政需要が高まるなかでの定員削減など、大多数の国公労働者が直面する問題には触れていません。
 春闘期に人事院事務総長は、この研究会報告を参考に結論を得たものから実施していくことを表明しています。「天下り」問題、懲戒手続き問題、2・3種採用職員の登用問題、勤務時間の弾力化問題などがあります。
 国民から厳しい批判を受けている「天下り」問題では、早急な対処が求められており、最低でも定年までの雇用確保の実現を求める運動を大前提に、「天下り」問題を検討します。

 新再任用制度はどうなっていますか。

 人事院は、5月13日に新再任用制度の導入について意見の申出を政府・国会に対して行いました。その内容は、定員問題、給与水準などでこれまで私たちが要求してきたものに比べて極めて不十分なものです。意見の申出にもとづく国家公務員法「改正」に向けた政府作業や国会審議、さらには人事院規則発出、それに続く2001年の制度発足までねばり強い運動を続け、全ての職員が年金受給年齢まで働くのにふさわしい制度にするための改善を求めていきます。

賃金改善=凍結・抑制反対 比較方法改善を
 人事院勧告に向けてのたたかいはどうですか。

 春闘時の回答内容をふまえ、この時期から人事院の不当な勧告や賃金改善勧告見送りはもちろん、勧告が出された後の政府による凍結・値切りを絶対に許さないために、政府・人事院の責任を徹底的に追及していきます。
 福祉職俸給表については、更生援護機関関係職員の処遇改善につながる俸給表新設をめざし、国公労連・全医労等との論議もすすめながら、運動をすすめます。
 職場と地域のたたかいを背景に、厚生省・社会保険庁当局、使用者政府、中立専門機関としての人事院それぞれについての責任と役割を徹底して追及していきます。
 具体的には、人勧期の統一重点課題(賃金凍結・抑制阻止、官民比較方法の引き続く改善要求を含む)を内容とする政府・人事院宛(連名)の「公務員賃金の改善等を求める署名」に取り組みます。この署名は、組合員と家族はもとより、職場管理者等にも積極的に働きかけ、全厚生全体として最低でも1万名以上の集約を目標とします。
 さらに中央行動や宣伝行動、職場からの上申の追求、政党や国会議員への中央・地方での働きかけなどに取り組みます。

年金医療=「講師団活動」で国民に知らせて
 「5つの選択肢」などで明らかになっている年金改悪のねらいを広範な国民に知らせるため、社会保険支部を中心に「講師団活動」に取り組みます。
 医療保険制度をめぐっては、国民の反対世論や、この間の医療保険制度改悪に反対するたたかいの反映により、政府・厚生省は、昨年に続く医療改悪法案の通常国会への提出を見送りました。年金改悪を許さないたたかいと連動させて、医療保険制度の連続改悪阻止にむけた国民世論を高めていきます。

 労基法改悪法案は先の通常国会で継続審議になりましたが、今後、労働法制改悪反対のたたかいはどうでしょうか。

 通常国会では継続扱いとなりましたが、政府・自民党は法案成立をあきらめたわけではなく、参議院選挙後の臨時国会で再び法案成立を目論むことが予想され、引き続き運動を強化します。

反核平和=ガイドライン関連法案許さない
 平和と民主主義の課題は。

 国民を戦争に巻き込む有事法制の阻止にむけて、広範な民主勢力と共同してたたかいます。現在、提起されている「ガイドライン関連法」反対署名に取り組みます。また、平和行進や原水爆禁止世界大会の成功をめざします。


●青年にボランティア広がる−講師活動の経験から−
神戸支部 渕上正寛

 「連合」傘下の組合にも新しい流れがあるようです。
 6月6日〜7日にかけて、S製薬の全国交流集会が神戸ポートアイランドであり、障害者体験と震災の話をしてほしいと言うことで、指導に出かけてきました。
 組合執行部の話では、若い人が震災でのボランティア活動を見て、私達も何かできるのでは、と言う意識が芽生えてきたそうです。企業ではできないことを組合でやろうと言うことで、青年部主体で実施することになったと言うのです。

阪神大震災と障害者をテーマに講演
 「阪神大震災の怖さ及びボランティア、身体障害者について」が講演のテーマでした。平均年齢26歳、120人が参加しましたが、熱心に聞き入っていました。40分でと言われていましたので、大変苦労しました。内容が多岐に渡っているため、考える手がかりを与えようと、不幸にして亡くなった卒業生の話を中心にしました。この卒業生は家族4人が震災により自宅が全壊し、避難所で19日の夕「地震ショックによる急性心不全」で亡くなりました。この間、妻が語った避難所での体験によると、「夕食の配給の際、家族全員が列に並ばなかったため、2人分のりんご2個とパン2個を4人で分け合って食べたこと、身体が不自由なのに(夫婦共全盲、子どもは小学生)、並ばなければ食事もとれないことにいたたまれない気持ちであったこと、毛布は1人1枚と決められ、異常なほど寒がっていたのにその解決方法がなかったことなどの話をしました。
 最後に、命の大切さと助け合いということで、「自分のことより他人のことが心配できるか」「自分でやれることをやろうとするのか」「人が困っているいることを解決できる手段を持っているか」と問いかけました。緊急時の行政の動きの問題では、消防車の数の問題、水の問題、建物の問題、必要不可欠な情報流通の問題、産業優先の問題等掲げておきました。
 「規則」や「平等」は、力が一定している場面では有効だが、障害者・子ども等いわゆる「弱者」(あまり好きな言葉ではないが)の場合、個別性を重視する必要があるのではないか、とも問いかけておきました。

アイマスクや車椅子体験を熱心に
 「アイマスク体験」や「車椅子体験」では熱心さが目立ちました。
 2日目は、幹部指導者26名が一般青年120名に対して指導するとのことでした。
 このような試みは、労働組合運動にも、新しい流れを作っていくものと考えられます。たとえ「連合」組織であっても、国民の福祉を考えることは重要ですし、また国民の賛同を得ることもできると思います。
 私は、今回の交流会を通じて、たいへん感動しました。「芽」が「芽吹く」時、何かが変わっていくと期待しています。一人では難しいことが、みんなで考える時、新しい世界が開けていくと確信しています。
 「それぞれの立場で、それぞれの力で、できることを精一杯やること」の素晴らしさを知りたいと思います。

●核実験に抗議・青年が印パ大使館に=神奈川
 5月にインド・パキスタンが相次いで核実験を強行。私は支部青年部長として何かできることはないのかと、抗議署名をとることにしました。短期間の取り組みにもかかわらず、インドの方は支部単独で約680筆もの署名が集まりました。また、パキスタンについては時間がないため抗議文をつくり、両大使館へ持っていくことになりました。いつもだと自分一人なのですが、今回はなんと4名の青年部員が名乗りをあげました。その中には原水禁世界大会参加者が3名も。毎年、千羽鶴を作り、代表を派遣していましたがその中で、いかに平和が大切なのかを学んできたのです。
 6月9日、両大使館に行き、抗議文を読み上げた後に手渡しました。参加者たちは「みんなの気持ちを手渡せたので良かった」「これからも自分にできることをやっていきたい」。
 今年も原水爆禁止世界大会にたくさんの代表を職場から送りたいと思います。また、街頭署名などにも取り組むつもりです。(玉木健二青年部長)

●新ガイドライン立法許すな!−3−
アメリカの戦争への自動参戦装置

 米軍関係者は、日本の米軍基地の重要性をいうときに常に、駐留部隊がアジア・太平洋全域にいつでも出動できることともに、「いざという場合の増派部隊の集結・発進・作戦の総合拠点となる」ことをあげます。その場合、拠点になるのは基地だけではありません。各地の民間空港や港湾、自治体、民間機関もその対象です。つまり、日本全土をそのような米軍の作戦のための総合拠点にしようとしているのです。法案はそうした構想を具体化するものです。
 では、どのように日本はアメリカの戦争に巻き込まれていくのでしょうか。海外「有事」で日本が軍事作戦を発動するには、「周辺事態」の認定が必要です。
 しかし、「周辺事態」法案には、だれが、どのような基準で「周辺事態」を決定するのか示されていません。
 防衛庁関係者は「(日本は)米軍への支援をするのだから、まず米軍が有事と思わなければならない。日本が有事と思っていなくても、米軍が勝手に有事と認定し、協力を迫られることもありうる。全体として米国主導にならざるをえない」との立場をとっています。
 久間防衛庁長官は「日米防衛協力をやっていこうと新ガイドラインで決めているのだから、おれは知らない、(日本は)反対だから(米国は)勝手にやりなさいと言う関係ではそもそもない」と、4月16日の参議院外交・防衛委員会で、日本共産党の立木洋議員の質問に答えています。
 政府は、「周辺事態に対する対応の手順」で、「事態の発生」があった場合、「米国自身の活動」は独自に実施され、それらをふまえて米軍への後方支援などの「対応策」が決定されることになっています。
 しかも「周辺事態」の認定や、それにもとづく自衛隊の出動、自治体・民間の動員は国会にはかることもしません。
 このような重大なことを、国権の最高機関である国会にもはからずに決定することは、議会制民主主義を根底からふみにじるものです。「迅速性が必要」というのが口実となっていますが、迅速性がもっとも必要なはずの「日本有事」の場合にも、現行法のもとで国会の承認が義務づけられており、この口実は通用しません。
 国会をないがしろにするばかりか、事実上、政府自身も「周辺事態」の判断を放棄し、アメリカに任せる、文字通りの自動参戦装置を立法化しようとしているのです。(つづく)
Back  to HOME