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◆号外 (2009年1月15日付)◆


希望者全員の雇用確保を
 機構職員の採用基準や労働条件等について検討していた日本年金機構設立委員会は昨年12月22日、検討結果を公表するとともに、社会保険庁に対し希望者の募集を依頼しました。設立準備スケジュール(資料@)によると、社会保険庁長官が、「機構の職員となるべき者を選定」し、その名簿を2月16日に設立委員会に提出するとされています。その後、職員採用審査会の意見等を踏まえ、設立委員会が採否を決定(09年3月下旬)するとしています。
 設立委員会から示された職員採用基準では、昨年7月の閣議決定同様、懲戒処分歴のある職員は、正規職員だけでなく有期雇用職員にも採用しないとする極めて不当なものです。どんなに業務に習熟・精通した職員であっても、懲戒処分歴があれば機構には採用しないとするものであり、継続的・安定的な業務運営や、基本的人権・働くルールから見ても大きな問題です。懲戒処分の多くは、組織的・制度的な要因が主たるものであり、個人の責任に矮小化することは許されません。
 全厚生は、社会保険庁改革に対しては、安心して暮らせる年金制度の確立と職員の雇用確保を最大の課題に位置づけ、政府・厚生労働省・社会保険庁の使用者責任を追及するとともに、広範な支援体制の構築を目指してきました。新組織設立まで1年弱となった新たな情勢の中で、組織の団結を深め、希望者全員の雇用確保に向けて全力を挙げる決意です。


日弁連が見直しを求める意見書を発表
 設立委員会から示された職員採用基準(資料C)では、「懲戒処分を受けた者は採用しない」とされています。被懲戒処分者の一律排除問題については、自由法曹団や日本労働弁護団などの法曹界も、過去の処分の内容や程度、処分理由を問わず一律に不採用とすることは実質的な二重処分に等しく不合理・不当であると指摘するとともに、「公的年金制度を専門性のある職員によって安定的に支えることに背を向け、年金記録問題を誠心誠意解決する意思も見通しもないまま、やみくもに人員削減のみを追求するものであり、国民の公的年金の保障を崩壊させるもの」(自由法曹団)、「人員整理の必要性を問擬せず、過去の処分歴や『ヤミ専従』を理由に分限免職するのは合理性を欠くものであることは明らかであり、権利を濫用するもの」(日本労働弁護団)と厳しく指摘しています。
 また、日本弁護士連合会(日弁連)は12月19日、「過去一度でも懲戒処分を受けた者は一律に不採用・分限免職とする閣議決定は、わが国の労働法制や国家公務員法に抵触する疑いがあるので、法令に適合し、かつ合理的な人選基準を設定するよう採用基準の見直しを求める」とする意見書(全文4面掲載)を発表しました。

<資料C> 日本年金機構職員の採用基準
1、 国民本位のサービスを提供するという意識、そして、公的年金という国民生活にとって極めて重要な制度の運営を担っているという高い使命感を持ち、法令等の規律を遵守し、公的年金業務を正確かつ効率的に遂行するとともに、被保険者等のために業務の改革やサービスの向上に積極的に取り組む意欲がある者であること。
 また、日本年金機構(以下「機構」という)の理念・運営方針及び人事方針に賛同する者であること。
2、 機構の業務にふさわしい意欲・能力を有する者であること。なお、社会保険庁職員からの採用にあたっては、これまでの勤務実績、特に、年金記録問題への対応、業務改革への取組実績等に照らし判断する。
3、 職務遂行に支障のない健康状態であること。なお、心身の故障により長期にわたって休養中の者については、回復の見込みがあり、長期的に見て職務遂行に支障がないと判断される健康状態であること。
4、 機構設立時に定年(満60歳到達月の属する年度末)に達していない者であること。
5、 国家公務員法第38条各号に定める欠格事由に該当しない者であること。
6、 社会保険庁職員(過去に社会保険庁に在籍し、機構設立前に退職した者を含む)からの採用にあたっては、
@ 懲戒処分を受けた者は採用しない。なお、採用内定後に懲戒処分の対象となる行為が明らかになった場合には、内定を取り消す。また、採用後に懲戒処分の対象となる行為が明らかになった場合には、機構において、労働契約を解除する。
A 過去に矯正措置などの処分を受けた者については、処分歴や処分の理由となった行為の性質、処分後の更正状況などをきめ細かく勘案した上で、採否を厳正に判断する。
B これまで改革に後ろ向きな言動のあった者及び改革意欲の乏しかった者については、改革意欲の有無や勤務実績・能力を厳正に審査し、採否の可否を厳正に判断する。また、採用内定後に、社会保険庁で行う各種調査に協力しないなど、改革に前向きでないことが明らかとなった場合には、設立委員会において採用の可否を再検討する。

日本年金機構の職員採用に関する意見
平成20年12月19日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨
 日本年金機構への職員採用に当たっては、過去一度でも懲戒処分を受けた者は一律に不採用・分限免職とする閣議決定は、わが国の労働法制や国家公務員法に抵触する疑いがあるので、法令に適合し、かつ合理的な人選基準を設定するよう、採用基準の見直しを求める。

第2 意見の理由
 当連合会は、平成20年7月29日付閣議決定「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」(以下「基本計画」という。)の「W 職員採用についての基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)に関して、次の通り意見を述べる。

 「基本的考え方」は、「機構に採用される職員は、公的年金業務を正確かつ効率的に遂行し、法令等の規定を遵守し、改革意欲と能力を持つ者のみとする」としつつ、厚生労働大臣が任命する設立委員会が、学識経験者によって構成される職員採用審査会の意見を聴いて厳正な採用審査の上で職員の採否の判断をする、としている。そして他方で、「国民の公的年金業務に対する信頼回復の観点から、懲戒処分を受けた者は機構の正規職員及び有期雇用職員には採用されない」として、過去一度でも懲戒処分を受けた職員は、処分の理由やその内容・程度の如何に関わらず一律不採用にするとの絶対的基準を設けている。また基本計画の参考資料によれば、日本年金機構に不採用となった社会保険庁の職員は、厚生労働省等への配置転換の対象となる者や勧奨退職となる者を除き分限免職対象となる、としている。
 しかし、かかる画一的基準によって社会保険庁職員の意に反してその雇用上の地位を一方的に喪失させることは、我が国の労働法制・国家公務員法上重大な疑義があり、法治主義の観点からも慎重に検討されるべきである。

 我が国の労働法制では、客観的合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、労働者の意に反してその職を失わせることは許されない(この解雇ルールは、労働基準法第18条の2に規定されていたが、平成20年3月1日の労働契約法の施行により労働契約法第16条に移された)。これは、生存権保障を定める日本国憲法第25条及び勤労権等の保障を定める同法27条の理念から要請される法理でもある。
 また、国家公務員については、争議行為が全面禁止されている一方で、法によって強い身分保障が規定されている(国家公務員法第75条)。先ず、職員の分限や懲戒等について公正性を確保することが求められるとともに(同法74条)、本人の意に反する降任や免職が許されるのは、@「勤務成績が良くない場合」、A「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪え得ない場合」、B「その他官職に必要な適格性を欠く場合」、C「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」のみに限定されている(同法78条)。
 ところで、日本年金機構は社会保険庁の事業を承継する承継法人であり、事業承継に伴う職員の確保について採用方式をとるとしても、それは純粋な新規採用ではありえない。従って、日本年金機構へ採用を希望する社会保険庁の職員が、その意に反して採用されないことは、重大な身分上の不利益であるばかりか、不採用になった職員の殆どを分限免職するとの国会答弁に照らすと、実質的な分限免職(解雇)に相当する。
 以上からすると、日本年金機構の採用基準は、解雇法理である客観的合理性及び社会通念上の相当性の要件を充たすとともに、法定事由該当性、平等取り扱いの原則(同法27条)及び均衡の原則(事実と処分内容との均衡、二重処分の禁止)など、処分の公正性を担保するものでなければならず、これは法治主義からの当然の帰結となる。

 ところが「基本的考え方」の上記基準は、過去一度でも懲戒処分を受けておれば、その処分の基礎となった事実の性質・態様や被処分者の勤務歴などの一切を考慮することなく、一律に不採用・分限免職とするものであるから、上記労働法制・国家公務員法が求めている規範的要請を無視するものである。また、同一の非違行為を理由とする二重処分に該当し、実質的に二重の不利益処分を課すものといえ、違法無効の疑いが濃厚であるばかりか、ひいては法治主義の原則にも背馳するものと危惧せざるを得ない。
 報道等によれば、日本年金機構に採用を希望する職員のうち、過去に懲戒処分を受けた者が約900人であるところ、処分理由で一番多いのが「業務目的外閲覧」で、次いで「国民年金にかかる不適正な事務処理」となっており、中にはスピード違反等の軽微な交通法規違反で戒告処分を受けた者も少なからず含まれている、といわれている。「業務目的外閲覧」ひとつ取ってみても、同行為の禁止規定が設けられた平成16年5月以前の行為も処分の対象とされていること、当時は端末操作に必要な磁気カードが職員毎に管理されていなかったこと、その頃まで日常的に行われてきた新規採用者の研修目的による著名人の閲覧等も処分されていることなど、懲戒処分自体にも疑義があるばかりか、被処分者を全て新組織の不適格者と短絡させるには相当な無理があることは明らかである。
 また、被処分者を不採用・分限免職としつつ、他方で1000名の職員を新規採用するとされているが、法的にはこのような場合、現職員に対する人員削減の必要性、分限免職回避努力、人選基準の合理性などを充たすことが求められており、上記基準によって一律に不採用・分限免職とすることは疑問である。

 この間顕在化した社会保険庁の問題は、個々の現場職員の資質等に帰因するというより、年金記録問題検証委員会報告の通り、組織ガバナンスやコンプライアンス意識の欠如に主因があり、かかる状況を長年放置してきた政府等もその管理責任を免れない。社会的連帯に基づく社会保障制度を維持していくために、ILOや先進国政府では、この「社会保障ガバナンスの確立」を重視している。従って今次社会保険庁改革においても、社会的風潮に左右されるのではなく、かかる理念を着実に実現させ国民の信頼回復を期することを急ぐべきであろう。
 以上の理由から、将来に禍根を残さないためにも、労働法制や国家公務員法に抵触する疑いのある上記基準は直ちに見直し、法令に適合しかつ合理的な人選基準を設定するよう求めるものである。

労働法制や国家公務員法に抵触する疑い
 日弁連の意見書では、「日本年金機構は社会保険庁の事業を承継する承継法人であり、事業承継に伴う職員の確保について採用方式をとるとしても、それは純粋な新規採用ではありえない。従って、日本年金機構へ採用を希望する社会保険庁の職員が、その意に反して採用されないことは、重大な身分上の不利益であるばかりか、不採用になった職員の殆どを分限免職するとの国会答弁に照らすと、実質的な分限免職(解雇)に相当する。」「被処分者を不採用・分限免職としつつ、他方で1000名の職員を新規採用するとされているが、法的にはこのような場合、現職員に対する人員削減の必要性、分限免職回避努力、人選基準の合理性などを充たすことが求められており、上記基準によって一律に不採用・分限免職とすることは疑問である。」「この間顕在化した社会保険庁の問題は、個々の現場職員の資質等に起因するというより、年金記録問題検証委員会報告の通り、組織ガバナンスやコンプライアンス意識の欠如に主因があり、かかる状況を長年放置してきた政府等もその管理責任を免れない。」と社会保険庁改革の根本的な問題点も指摘しています。

意向実態アンケートにご協力をお願いします
 設立委員会への名簿提出は、2月16日とされています。その日程に合わせ、1月中には、職員の意思確認が行われます。
 全厚生は、政治災害ともいえる未曾有の雇用情勢の悪化の中で、希望者全員の雇用確保に全力を挙げる決意です。具体的には、政府・厚生労働省・社会保険庁の使用者責任の追求、国会議員要請、労組・民主団体等への支援要請などを、国公労連の支援を受けながら取り組みます。そうした取り組みの基礎資料とし、具体的な要求実現に向けて、組合員全員の意向把握が基本的に必要です。今後、具体的な法的措置の検討などの参考にしたいとも考えます。
 社会保険庁の職員意向調査票に明確な意思表示を行うとともに、全厚生の「意向実態アンケート」にもご協力をお願いします。

被懲戒処分者の一律不採用は不当
処分原因の多くは制度的・組織的問題
 懲戒処分の多くは、「業務目的外閲覧」「国民年金不適正免除」「服務違反」などが理由とされています。(資料A)しかし、業務目的外閲覧は、長年業務目的外閲覧が禁止されていなかったこと、個人に特定しないカード管理方式であったことなど、社会保険庁の管理監督責任が厳しく問われるものです。また、国民年金不適正免除は、保険方式維持のために収納率アップが至上命題とされる中、損保会社から登用された民間出身長官の大号令が引き金となり、実態として業務命令で実施せざるを得なかったものです。さらに、服務違反は、地方事務官という変則的な身分制度の下で、地方自治体労組と同様の職場慣行を当局が認めてきたことが背景にあり、これを長年にわたって放置してきた歴代政府・厚生労働省に根本的な責任があります。


分限免職はいかなる場合でも許されない
 国家公務員に対し分限免職ができるのは、@勤務実績がよくない場合A心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合Bその他その官職に必要な適格性を欠く場合C官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合に限られる(国家公務員法78条各号)とされています。このように限定されているのは国家公務員には身分保障規定(国公法第75条)があり、全体の奉仕者(憲法15条2項)としての政治的中立性を確保するためでもあります。
社会保険庁改革にあたって想定されている分限免職は国家公務員法78条4号に基づく分限免職であり、これは民間企業における整理解雇に相当するものです。この4号免職は戦後の大量の人員整理のために行われ、その後は1964年に、業務も組織も廃止されたことに伴う2組織の各3名が分限免職されたのを最後に行われておらず、中央省庁の再編、研究機関等の独立行政法人化、郵政事業の民営化等においても雇用は原則継承されてきました。
 社会保険庁改革にあたっていわば死文化した国家公務員法78条4号に基づく免職が行われるとするならば、約半世紀ぶりに、過去の国会の付帯決議(1969年以降)等により行わないとしてきた「公務員の出血整理」が行われることになります。
 民間企業における整理解雇については、4要件(@人員削減の必要性、A解雇回避努力、B解雇基準・人選の合理性、C解雇手続の相当性)を満たすことが必要であるとするのが確立した判例法理ですが、公務員の分限免職に際しても、同様の法理が適用されると解すべきとされています。この点からしても、社会保険庁職員に対する分限免職は、到底容認されるものではありません。


経験・継続は安定的運営の基本
 また、現在でも年金業務に従事している社会保険庁職員については大幅な定員割れであり、公的年金の適切な管理のためにはさらなる人員体制の充実が求められています。人員削減の必要性など全くなく、記録整備に伴う年金の再裁定・支払いなど体制拡充は喫緊の課題です。そして、公的年金の管理の問題が歴代政府の責任にある以上、現在の職員に対して分限免職という手段を採ること自体問題です。また、専門的な知識と経験を有する職員を排除して公的年金の管理が向上する可能性はなく、年金記録問題の真相も個々の職員の不祥事ではない以上、現在の職員を排除する正当性はまったくありません。

職場の団結強め要求前進を
政府・厚労省・社保庁は使用者責任を果たせ
 全厚生は11月28日大臣官房人事課長交渉を行い、@日本年金機構への採用にあたり被懲戒処分者を一律不採用とする閣議決定を見直すこと、A職員の雇用に万全を期し組織改廃に伴う「分限解雇」は行わないこと、B労働条件の後退・切り下げを行わないこと、などについて厚生労働省の考え方を質しました。人事課長は、「閣議決定された基本方針が前提になるものと認識している。雇用確保については、本省に限らず様々な機関に協力を求めていく」などと回答しました。今後、社会保険庁も含めた使用者責任の具体化に向け引き続き取組みを強めていきます。
 また、広範な支援体制の確立とともに、国会議員要請や労組・民主団体等への支援要請などの取組みも強化する考えです。


職員募集に関する申入書を提出
 全厚生は1月8日、公平・公正な名簿作成を求める立場から、社会保険庁に対し、「日本年金機構及び全国健康保険協会の職員募集に関する申入書」(資料E)を提出しました。なお、社会保険庁のコメントについては別途示すとしています。全厚生は、今後とも必要に応じ申し入れ等を行っていく考えです。

<資料E> 日本年金機構及び全国健康保険協会の職員募集に関する申入書
2009年1月8日
社会保険庁長官
 坂野 泰治 殿
全厚生労働組合
中央執行委員長 飯塚 勇
日本年金機構及び全国健康保険協会の職員募集に関する申入書

 社会保険庁の廃止により設置される、「日本年金機構」及び船員保険の業務移管に伴う「全国健康保険協会」にかかる職員採用基準や、労働条件などの周知が行われています。また、貴職は、職員への意思確認や意向調査の実施等について、別途打ち合わせを行ったうえで、連絡するとしています。
 設立委員会等から示された採用基準では、どんなに業務に習熟・精通した職員であっても、懲戒処分歴があれば日本年金機構及び全国健康保険協会には採用しないとされています。さらに、すでに、受けた処分で一律に不採用とされることは、実質的な二重処分に等しく、法理や労働判例からも不当です。また、国民の年金権確保や安定的な業務運営の面からも、重大な懸念を持つものです。
全厚生は、国民の信頼回復、業務の専門性・安定性の確保、職員の意欲が発揮できる環境を作ることが重要だと考えます。これらのことから、以下の事項について申し入れます。


1. 日本年金機構及び全国健康保険協会への意向把握にあたって、被懲戒処分者を排除しないこと。
2. 名簿には、希望者全員を登載すること。
3. 意向把握にあたっては、十分な検討期間を保障すること。
以 上

過半数を組織する労働組合が重要です
 国の機関で働く職員(正規・非正規)の給与や労働条件は、国家公務員法や人事院規則などの適用を受けています。しかし、日本年金機構では、正規・非正規を問わず労働基準法や労働組合法、労働契約法などの労働関係法規が適用されます。
 労働条件や働くルールは、今までの「法定主義」から「労使自治」を原則とした環境に変わります。労働基準法第2条1項には「労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものである」と規定しています。
 設立委員会から示された日本年金機構の労働条件は、俸給月額の一律3%減額、病気休暇の無給化、一部特別休暇の50%減給、住居手当の減額、広域異動手当の廃止、変形労働時間制やフレックスタイムの導入など公務の水準を下回るものも多く、設立後の改善闘争が極めて重要になります。(資料F休暇制度の比較)困難な要求を前進させるためにも、職種や雇用形態を問わず、職場の団結が要です。憲法を守り、労働者の権利を守るためにも、全厚生への結集を呼びかけます。


安心年金つくろう会の運動を広げよう
制度改悪と一体となった社保庁バッシング
 政府・与党は、社会保険庁での職員の不祥事をことさらに取り上げ、年金記録問題の解決や制度改善など政府の責任を棚上げにして社会保険庁職員バッシングを繰り返し、組織を解体・民営化すれば、あるいは社会保険庁職員を「機構」から排除すれば、すべてがうまくいくかのような発言を繰り返しています。その狙いは、国と企業の責任放棄です。
 各政党や報道機関、経済団体などが年金制度改革についての提言を発表していますが、その大半は基礎年金財源に消費税増税を充てるものとなっています。しかし消費税は、年金生活者などの低所得者の暮らしに重くのしかかる最悪の税制であり、社会保障としての年金制度とは相容れません。社会保険庁の解体・民営化は、公的年金の解体でもあります。
 第二次世界大戦の真っ只中に制度化された厚生年金は、ドイツの年金制度を参考にしていますが、その独連邦年金保険庁国際担当局長は、昨年の11月7日付朝日新聞で「私たちの組織は公的なものであり、利潤追求を目指していない。日本の社保庁が、民間の組織として再出発するのは理解しづらい面もある。」と、社会保険庁の解体・民営化に疑問を投げかけています。

安心して暮らせる年金制度はみんなの願い
 内閣府が昨年8月に公表した「国民生活に関する世論調査」結果では、「日常生活での悩みや不安を感じている者」の57・7%が「老後の生活設計」と答えています。そして、政府に対する要望のトップが「医療・年金等の社会保障構造改革」で72・8%となっています。また、「社会保障制度に関する特別世論調査」結果(9月公表)でも、社会保障制度に「不満」が75・7%、社会保障制度の中で満足していない分野は「年金制度」が69・7%、緊急に改革に取り組むべき分野も「年金制度」が63・9%でいずれもトップとなっています。
しかし、厚生年金の加入歴のない国民(基礎)年金受給者の月平均額は、05年3月末時点で約5・1万円、女性では約4・9万円であり、とても安心・信頼できる給付額ではありません。国民年金保険料の07年度実質納付率は47・3%と過去最低を更新し、無年金者も118万人にのぼると言われています。不安定雇用労働者の増大で厚生年金に加入できない青年労働者や保険未加入の企業も増大しています。年金制度の土台が崩れつつあります。

国民の年金権保障に必要な体制確保を
 昨年5月28日、政府の責任で年金記録問題を完全に解決すること、憲法25条にもとづく社会保障制度として、国民の老後の生活を保障する公的年金制度を広範な国民の要求と運動によって実現することを目的とした「国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会」(略称:安心年金つくろう会)が発足しました。
 地方段階での安心年金つくろう会は、10月11日に岐阜県で、10月15日には愛知県で発足し、香川、愛媛、大阪、兵庫などでも準備が進められています。
 年金に対する国民の期待が大きいだけに、社会保険庁での記録問題や標準報酬月額改ざんなどに対する怒りが噴出することは当然のことです。しかし、マスコミなどによる執拗なバッシングは年金制度に対する政府の責任を覆い隠す役割を果たしています。だからこそ、国民の年金権保障に必要な体制の確立や制度の改善、そのための国の責任を明らかにする宣伝と運動が求められています。

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