市場化テストなど公共サービス商品化に反対する決議

 政府は、構造改革の柱である「民でできるものは民へ」の具体化として「市場化テスト(官民競争入札)」の本格導入を押し進めようとしている。現在、民間提案にもとづくモデル事業の入札が行われているが、厚生年金・政管健保の適用促進事業においては1円入札が行われた。業界団体による採算度外視の受注で公正な事業運営が確保されるのか、入札の有りようも含めて問題点を指摘せざるを得ない。
 憲法が要請する公務の守備範囲やこの間に進められた民間委託の問題点などについてまともな検討もなく、規制改革や民間開放は民間企業のビジネスチャンスとも位置づけ、「市場化テスト」をはじめとする公務の民間開放を進める政府の姿勢は、国民に対する責任放棄とも言うべきものである。
 営利企業が効率的であるという場合、よりもうけの大きい分野へ投資を集中するために迅速な参入と撤退の自由が保障されている。規制改革・民間開放推進会議は、法的な措置によりサービスの質を確保するという議論をしている。しかし、撤退の規制など「ユニバーサル・サービスの維持」などにかかわっては、十分な議論がなされた形跡はなく、継続的、安定的なサービス提供の保障はないに等しい。
 107人の死者と500人の負傷者を出したJR福知山線の脱線事故に象徴されるように、規制緩和や民営化が国民の安全と安心を脅かしている。国民の生命と基本的人権を守るべき公共サービスの「質」をないがしろにして、利潤追求のための効率化を押し進めれば、時として取り返しのつかない事態を招くことを銘記しなければならない。
 国公労連は、現在の状況でも社会的格差が拡大し、国民生活の基盤が壊され、そのことに起因する国民の不安、不満が急速に高まっていると実感している。その点からも、進められようとしている規制改革や市場化テストには賛同できない。また、公務労働者の権利や労働条件への悪影響が懸念されるにもかかわらず、その点での議論もほとんど行われていないことも問題である。
 規制改革・民間開放推進会議は、経済財政諮問会議とも一体で、いっそうの規制改革とともに、「市場化テスト」の法制化を進めようとしているが、一部の財界代表や学者などによる一方的な検討ではなく、国民的な幅広い議論を行うことを強く求める。また、同時に、今後の検討にあたっては、以下のことを強く求めるものである。
(1)資力の差でサービスの享受に差が付けられるような民営化、民間開放は行わないこと。
(2)撤退の自由によって安定的、継続的なサービス提供を妨げられるような市場化テスト、民間開放は行わないこと。
(3)規制緩和の効果について検証を行うとともに、今後影響を被る各層の意見を幅広く聴取し、国民的な議論により、公共サービスのあり方を検討すること。
(4)雇用・労働条件に大きな影響を受けるおそれのある公務・公共部門労働者・労働組合との十分な協議を行うこと。
 以上、決議する。
2005年6月3日
日本国家公務員労働組合連合会
第123回拡大中央委員会


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