【第123回拡大中央委員会】
2005年6月3日
あいさつ
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎

 ご出席いただいた皆さんのご奮闘に心より敬意を表します。
 また、本日は大変ご多忙ななか全労連の西川副議長にご出席いただいております。日頃のご指導に対する感謝とあわせてお礼を申し上げます。

 本中央委員会は、夏期闘争方針とこの時期の要求を決定することが主たる任務であります。
 しかし、皆さんの思いは、給与構造の見直しや公務の民営化攻撃を阻止して、なんとしても局面を転換したいということだと思います。討論をとおして当面するたたかいへの決意を固め合っていただくようお願いするものです。

 国公労連は、年次方針で「いま私たちはどのような時代に生きているのか」ということを呼びかけてまいりました。
 それは憲法改悪や小泉「構造改革」とのたたかいを、この国の進路と国民生活・行政のあり方という歴史的視点でとらえながら、大きな構えでたたかっていこうという思いからであります。
 いま、私どものおかれた状況を見るときあらためてその運動方向を確認し、夏期闘争を攻勢的にたたかい、次年度の運動に結びつけていきたいと考えています。

 その観点から申し上げたいことの第1は、「構造改革」の推進・強化のために政府・財界の公務員攻撃が強められているということであります。
 奥田経団連会長は公務員賃金水準の引き下げに言及し、経済財政諮問会議は「骨太方針2005」の主要課題として、給与水準引き下げをはじめとする給与構造見直し、市場化テスト・民間委託の推進、定員削減の純減目標設定など、政府部門の総人件費削減を検討しています。
 また、経団連は、「さらなる行政改革の推進」を提言し、自らの価値観に沿った公務員制度「改革」を主導する動きも見せています。
 これらの動きは、いわゆる「小さな政府論」にもとづき、私たちの賃下げ、定員削減、公務の商品化などを「構造改革」推進の中心課題として位置づけながら、公務員と国民の分断をはかろうとするものです。
 そして、これらの思想攻撃を強めながら社会保障の切り捨て、消費税増税など国民犠牲の政治方向を強めることにその狙いがあることは明らかです。
 したがって、要求前進のためにはこれまで以上に外に目を向けた共同と国民連帯のたたかいが必要であり、その努力なくして局面打開の展望がひらけないことも明らかだと思います。

 その点をふまえ、2つの当面する課題について申し上げます。
 1つは、公務の商品化に反対するたたかいであります。
 国公労連は新自由主義改革に反対する産別統一闘争として「公共サービス商品化」反対のキャンペーンを展開してきました。
 当初は「商品化」と言う言葉に一定の違和感もあったようですが、「競争より公正な社会を」のスローガンのもと、各地での宣伝行動が定着し軌道に乗ってきたと思います。
 政府が市場化テスト推進室を設けて民間開放ありきの検討をすすめる一方、各方面で規制改革の行き過ぎが社会問題となるなか、公務の公共性を守るたたかいは正念場にきていると思います。
 いわゆる公共性ということを語る上で、大惨事となったJR福知山線の脱線事故は、重要な問題を提起しています。
 事故の背景として、JR西日本では87年の民営化時点から実に36%もの人減らしが強行され、乗客の安全より「もうけ」を優先し、労働者を恫喝と懲罰の労務管理で追いつめ、もの言えぬ職場にさせられていたことが明らかとなっています。
 働く者の人権と事業の社会的責任を軽視する営利優先は、さらに深刻な結果をもたらすであろうことを、今回の大惨事は警告していると思います。
 乗客の生命を預かる交通事業の公共性をあらためて検証し、大きな犠牲の上にあがなわれた貴重な教訓を忘れてはならないと思います。
 このことをとおして、国民の生命と基本的人権を守り発展させることを使命とする公務労働の重要性をお互いの教訓にしたいと思います。 

 当面する課題の2つは、給与構造の見直し問題であります。
 人事院は給与構造見直しの「措置案」なるものを提案してきました。
 これにより改悪の内容がより鮮明になるなかで、仲間の怒りもさらに高まってきたと思います。
 この問題点をあらためて申し上げるならば、人事院発足以来一貫した方針であった全国一律の官民比較を、当該労働者の理解と納得を得ないまま改変しようとしていること、第一線職場・国民生活直結部門の賃下げ・職務評価の切り下げであること、本省庁中心・キャリアのみの職務評価の引き上げであり優遇策であること、そして、複雑困難化する行政需要のもとで日々行政を支えている中高年職員のこれまでの努力の否定であり、将来の働きがいをも奪うものであること、などが指摘できると思います。
 強調したいことは、労働基本権制約をテコとする労働条件の改悪は断じて許さない、当事者が認めてもいない「代償制度」なるものに、賃金引き下げの権利を委ねてはいないということであります。
 公務員といえども賃金によって生活の糧を得る労働者であり、労働条件の変更は徹底した労使の交渉で決着をはかることが労働条件決定の原則であります。
 あらためて「賃金引き下げをともなう給与制度の見直しはおこなうな」、「一人の賃下げも許さない」との基本を確認し、人事院、各省庁を職場の力、地域共闘の力で追い込んでいくため奮闘したいと思います。 
 また、財界、経済財政諮問会議の動きに見られるように、政府が「骨太方針」をテコとして公務員賃金への「ルール」無視の介入を強めてくる危険性も見ておきたいと思います。 政府が賃金削減の攻撃のトーンを強めていることを見るとき、歳出削減に「政府も血を流した」とのキャンペーンをはりながら、国民負担増大の突破口として公務員賃金を利用してくる危険があると思います。
 82年、「増税なき財政再建」を政治目標とする鈴木内閣、中曽根内閣のもとで人事院勧告の凍結、俸給表改ざんが強行された経験を教訓にする必要があります。
 国公労連はそのことを視野におきながら、「骨太方針」策定に向けたたたかいと合わせて、勧告直後の対政府闘争の強化を呼びかけるものです。

 小泉「改革」は5年目に入りました。しかし、内政・外交とも行き詰まりが顕著となり、国民との矛盾は拡大の一途にあります。
 いまこの国の主人公である労働者・国民の状態悪化は深刻です。
 1,500万人が不安定雇用に追いやられ、年収200万円以下の労働者が2,500万人、貯蓄なしの世帯が23%に達しています。
 市場原理優先、弱肉強食の「構造改革」がいかに労働者の貧困化と国民生活の疲弊をもたらしたかは明らかであり、この局面を打開することなしに私たちの要求が前進しないことも自明であります。
 いまの時代に生きる公務労働者として最低賃金の改善、パート、非常勤労働者の組織化などを公務・民間の共通課題として、ウイングを広げた国民連帯の運動を強めていきたいと思います。
 「構造改革の本丸」とされる郵政民営化法案は国会審議が始まりましたが、これは中央省庁等改革基本法の「民営化等の見直しは行わない」との規定と根本から矛盾するだけでなく、民営化の理由がことごとく破綻するなど矛盾はいっそう拡大しています。
 また、すべての都道府県議会をはじめ9割以上の地方議会で反対・慎重審議の意見書が採択されるなど、厳しいせめぎあいのなかで国民世論の高揚で国会を動かすことも可能な情勢だと思います。
 全国の住民生活に密着した郵便、貯金、保険サービス、それらを提供する郵便局網は国民の宝であり、「本丸」とされる民営化法案を廃案にして小泉内閣の存在基盤を揺るがし、局面をきりひらくために全力を上げたいと思います。

 第2に申し上げたいことは、憲法改悪に反対する運動であります。
 この間、皆さんのご奮闘によってさまざまな学習・宣伝がとりくまれ、国公の仲間たちの憲法問題に対する認識が一定高まってきましたし、全国各地でさまざまな名称・形式の「9条の会」が発足し、多様な活動が展開されています。
 同時に、国会法「改正」、国民投票法案をめぐる動きに見られるように、改憲をめぐる動きも新たな段階に入ってきました。
 自民党の「改憲大綱草案」に見られるように、改憲勢力の狙いは国家権力を制限し人権保障の国づくりをめざす現行憲法を根本から否定し、アメリカの世界戦略に沿って海外派兵、戦争する国づくりをめざすものであることは明らかです。
 そして、そのために基本的人権と民主主義の否定、国民統制の国家主義を前面に押し出すものとなっています。
 これらの動きと同時に見ておきたいのは、昨年3月のビラ配布に対する国公法弾圧事件以降、市民のビラ配布・表現の自由に対する警察権力の介入が強まっていることです。
 あらためて強調したいことは、正当な宣伝活動にたいする警察権力の介入は、すべての国民の人権侵害・表現の自由に対する挑戦であり、憲法改悪にむけた、いわば「つゆ払い」の役割を果たしていることです。
 このことは民主主義を否定し、国民の人権を侵害するなか戦争に突き進んでいった戦前の痛苦の歴史が証明しています。
 公務員の運動を制限する国民投票法案の内容、地方公務員の政治的行為に対する刑事罰適用にむけた自民党内の地公法改正の動きなども同一軌道のものだと思います。
 いま大切なことは、このような攻撃に対し、ひるまず、臆することなく正当な労働組合活動を旺盛に展開すること、職場で徹底した憲法学習を強め、すべての職場で遵守宣言にとりくむこと、そして、私たちが主人公となって職場でも地域でも「9条の会」を立ち上げ、草の根のたたかいで改憲勢力を包囲していくことだと思います。

 第3に組織課題について申し上げます。
 本日、「チャレンジ30、セカンドステージ」を提起しています。
 これは職場の現状をふまえ定期大会以降、検討・挑戦すべき課題を網羅したものですが、1点だけ申し上げれば、国公職場での雇用の多様化・流動化、不安定労働者層の増大を真剣に受けとめる必要があるということです。
 いま職場では、非常勤、パート、相談員、委託職員、派遣など、多種多様な労働者があいまって業務を遂行しています。
 この人たちの組織化は時代の要請であり、要求前進・職場や行政の民主化のためにも待ったなしの課題です。
 発想を変え視野を広げて一歩前へ出る決意を固め合いたいと思います。

 以上申し上げ、仲間たちのご奮闘を心から期待してあいさつを終わります。

以上


トップページへ  前のページへ