国公FAX速報 2005年4月15日《No.1617》

国公権利裁判控訴審・第1回口頭弁論
原告代表2名が意見陳述!

 「不利益遡及は許さない!国公権利裁判」控訴審の第1回口頭弁論が、4月14日11時00分より、東京高等裁判所第101号大法廷で開かれました。昨日までの雨が嘘のように晴れ上がった中、昨年10月の第1審不当判決許さず、高裁での勝利判決を目指して、原告33名を先頭に、各単組・ブロックの参加者が、一連の諸行動にとりくみました。

 裁判所周辺宣伝行動/原告5人が熱き思いを訴え!

 冒頭、盛永副委員長が主催者あいさつに立ち、「昨年の東京地裁判決は、公務員の団体交渉権は憲法上認められていない、ILO結社の自由委員会勧告には法的拘束力がない、不利益不遡及原則は国家公務員には直ちに当てはまらない、というとんでもない内容だ。人事院でさえ、国公法や人事院規則は、民間企業における就業規則だと言っており、不利益不遡及原則は公務にも当然適用されるべきだ」と訴えました。
 続いて、公務労組連絡会・若井事務局長から「給与構造の見直し、郵政民営化など公務の民間化や三位一体改革など、公務労働者への攻撃はますます厳しいものになっている。国公権利裁判は、公務員の労働基本権回復のために大きな意義をもっている。公務労組連絡会は引き続き組織をあげて、裁判を支援していく」と激励の熱いメッセージが送られました。
 続く原告(全気象・冨安さん、全労働・成島さん、全法務・宮崎さん、全経済・藤井さん、全厚生・宮田さん)からの決意表明では、昨年の不当判決に対する怒りや、この裁判にかける熱い思いが訴えられました。
 最後に、国公労連・山瀬副委員長の団結がんばろうでしめくくり、引き続き裁判傍聴行動に入りました。

 裁判傍聴行動/国の主張をしりぞけ、第二回弁論期日決定!

 東京高裁第101号大法廷には、原告席19名(原告14名と岡村団長をはじめ弁護団5名)、傍聴席98名(各単組代表、国公労連、公務労組、全労連)で全体117名が参加し、満席のなか控訴審の第1回口頭弁論が開かれました。
 この日は、原告側が「控訴人準備書面(1)」と専修大学・晴山教授の鑑定意見書をそれぞれ陳述し、国側からは答弁書が陳述されました。そして、原告を代表して全港建・福嶋委員長、全通信・星野東海支部長が意見陳述を行いました。(※意見陳述原稿は別添
 まず、全港建・福嶋委員長からは、「私達101人の控訴人は国公労連に結集する13万人の仲間を代表しており、働くルールを守って欲しいという願いを代弁している」と裁判長に訴えました。続いて全通信・星野支部長からは、「子供達にも説明できる『働くルール』を正義と道理をもって判断して欲しい」と訴えました。
 原告側からの二人の意見陳述後、弁護団はもう一度弁論を開催するよう主張し、被告・国側は結審を主張しましたが、結局、裁判長は国側の主張をしりぞけ、第2回弁論が行われることとなりました。注目の第2回口頭弁論は、6月14日11時から、今回と同じ東京高裁第101号法廷で行われます。再度、大法廷の傍聴席を満席にし裁判官に強くアピールすることが求められます。

 意思統一集会/判決に向け内外の運動を強めよう!

 冒頭、堀口委員長は、「昨年10月21日の不当判決から約半年を経て控訴審が始まった。おそらく短期間の勝負となるが、不利益遡及のくやしさ、不当判決への怒りを力に、控訴審勝利に向けた決意を固め合いたい」とあいさつしました。
 激励のために裁判所前宣伝行動から参加してくれた全労連・国分副議長からは、「最近の司法の動きは政府の労働組合つぶし、労働運動つぶしに大きく加担している気がする。国鉄分割民営化による1047名採用拒否事件では、最高裁がJRの使用者責任を認めない不当判決を出した。皆さんが闘われている国公権利裁判の東京地裁判決もまさに同じ流れといえるものだ。全労連は、国公権利裁判や国公法弾圧・堀越事件について支援を強化すると共に、官民一体の闘いが進むよう奮闘していきたい」と力強いあいさつがありました。
 続いて、弁護団の佐久間事務局長からこの日行われた裁判手続きと、不利益遡及の違法性を重視した原告側の主張の組み替えについて解説を受けた後、小田川書記長が行動提起を行い、「公務員に対する攻撃の強まりとかかわって、国会や地方議会が決めればなんでも通るということへの反論と世論づくりが必要だ。同様の裁判は5〜6件行われており、千葉の高校教員では、国公と同様な判決が出て東京高裁に控訴したとのこと。国公権利裁判は先頭を走っている裁判であり、しっかりと頑張っていく必要がある。法廷外の大衆運動を盛り上げ、裁判の意義を確認し、世論形成のために署名目標をやり遂げたい。6月のILO総会も活用しながら、国公権利裁判の勝利に向けて大いに奮闘していこう」と呼びかけました。
 最後に岡村弁護団長が「ILOの二度の勧告が公務員制度に大きな影響を与えている。日本の公務員制度のような現状は世界で通用しなくなっており、このような有利な状況を生かしたい。不利益遡及ではなく減額調整だという被告・国の主張はいかにも苦しい。判決は秋になると思うが、その間運動を強めて欲しい」と締めくくりました。


以上



〈別添〉

第1回公判での意見陳述  全港建 福嶋 実


 全運輸省港湾建設労働組合中央執行委員長の福嶋でございます。本日はこのような意見陳述の機会を与えて頂き感謝いたします。

 さて、私は2002年、2003年の「12月期末手当の減額調整措置」について、その不当性を訴えたいと思います。
 「こんな事が許されるのなら、毎年改正給与法が成立するまで自由に給与を使うこともできない」これはある職員の言葉です。私たちも給与を唯一の生活の糧とする労働者であり、しかも月々の給与で生活せざるを得ないのが大多数の実態です。一度支払った給与を何ヶ月か後になって、期末手当から差し引くという形をとって「払いすぎだから返せ」と言われても困ります。既に使っている部分が多いからです。政府や人事院は、「4月に調査しているから、その時点に遡って官民の均衡をはかるのが情勢適応原則だ。そのやり方は長年定着している」といいます。しかし、2001年以前は、僅かとはいえベースアップであり、労働者からすれば生活改善の内容です。賃下げの時も同じ、というのは、労働者の生活を顧みない暴論だと思います。
 1999年から2003年まで、毎年一時金の支給月数が切り下げられました。そういう中での、賃下げの遡及であり、生活への影響も大きく、職員の怒りも強いものでした。私が原告となったのも、そういう労働者の怒りが背景にあるからです。2002年の「減額調整措置」は、超過勤務手当を含めて差額計算しています。まさに1円の単位まで、4月に給与改定が行われたと同様の効果をもつ「減額調整措置」です。どう説明されようが、これを遡及改定、不利益遡及と考えるのが普通の感覚ではないでしょうか。政府や人事院が、「不利益遡及ではない、調整措置だ」と説明すればするほど、「言い逃れだ。すり替えだ」という受けとめが職場には広がっています。

 人事院は今年の勧告で、給与構造の「見直し」と称して俸給表を約5%引き下げる提案を行っています。2002年の勧告以降、公務員の賃下げをいとも簡単に人事院が提案するようになった、そう思うのは私だけではありません。生活悪化が必至である給与制度の「見直し」を当該労働者の意見も聞かず、生活実態もまともに斟酌しないままに決定する。これが国家公務員の「勤務条件法定主義」の主旨ではないとおもいます。いま、私たちの職場には、その点での不満が広がり、一方的に生活悪化を強いられることへの不安が大きく広がっています。公務員労働者の士気にもかかわる重大な問題だと思います。

 国家公務員の職場は今、相次ぐ定員削減と業務の高度化・多様化の中で繁忙を極め、体や心の病に冒される者も多く、大変な状況となっています。給与は02年・03年と2年連続で本俸が切り下げられ、年収では99年以降減少し、03年には退職金も改悪され、生活は悪化の一途をたどっています。そんな中でも大多数の公務員は「国民の奉仕者」としての自覚のもと、歯を食いしばって頑張っています。安定した労働条件の維持は、そのような職員の期待に応える政府・人事院の責任だと思います。しかし、その責任が果たされていないと職員は感じています。2002年、2003年の「減額調整措置」がそのことのシンボルだと職員には受けとめられていることも申し上げておきたいと思います。

 私たち101名の控訴人は、個人の立場ではなく、国公労連に結集する13万人の仲間の声の代弁者であり、さらに言えば2002年の勧告の影響を直接的、間接的にうけた多くの労働者の「働く者のルールを守って欲しい」という願いを代表していると自負しています。裁判長には、是非そのこともご理解いただけることを信じて私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。


意見陳述原稿(全通信東海支部 星野 誠)


 私は、総務省東海総合通信局で働く職員で、総務省の電波情報通信分野で働く仲間で組織する全情報通信労働組合の東海支部・支部長の星野と申します。
 本裁判の意見陳述を行う機会に恵まれ光栄です。職場をはじめ国公労連の仲間を代弁して発言を行いたいと思います。

 2002年の人事院勧告が出された当時、「3年連続の一時金月数切り下げに加え、いよいよ給与という賃金ベースの引き下げまで勧告するのか、これでは最早、人事院自らが認める労働基本権制約の代償措置機関としての役目を失っている」、こういった内容の怒りが職場中を巡っていました。さらに、「4月以降の賃下げ分を12月の期末手当で調整する」という減額調整措置に対しては、「そんな事が許されるものなのか?冬のボーナスで予定していた電化製品や洋服が買えない」、「もう既にボーナスを当てにして買ってしまっている。」とか、「まともに超過勤務手当も支払われていないのに、減額措置だけ取り上げるとは、真面目に働くことがバカらしくなる」、さらに、「82年の勧告は凍結し、83年には勧告を値切っておいて、奪うときはしっかり取り上げるとは、道理に合わない」等、不満と不安が職場に渦巻いていたことを、私は、はっきりと覚えています。
 結果としては、ご承知のとおり12月期末手当で減額調整措置が行われてしまいました。
 この減額調整(79,938円)のおかげで、私自身も12月のボーナス時に貰えていた小遣いがゼロになりました。この減額調整措置は翌年2003年にも行われ、5年連続の一時金切り下げとあわせ2年連続の賃金カットとなりました。
 この結果、2002年度から04年度までの給与支払い金額を源泉徴収票から眺めてみると、定期昇級はあっても3年連続で減り続けていることが分かりました。
 このことは覚悟はしていたものの、やはり、3人の子供を抱えると教育費も嵩み、その他の社会保障負担など必要経費の増加もあり、私の家では、貯金の切り崩しもしましたし、家計は今でも自転車操業的な状態です。ですから、車やテレビの買い換えなどは出来るはずもなく、我が家の購買能力は厳しい状態が続いています。このように多くの仲間がこの減額措置と5年連続の年収ベースマイナスに耐え、工夫を重ね必死にやり繰りしていたことと思います。

 私たちは、労働基本権が著しく制約されている中で人事院勧告制度が作られ存在するにもかかわらず、マイナス勧告という不利益が一方的に遡及される内容の勧告が行われたこと、そして、この不利益遡及が減額調整措置として実施されたことに対して、公務員労働者の権利が蔑ろにされた重大な問題であるからこそ裁判に立ち上がった訳です。
 しかしながら、先に出された一審判決内容に対して、職場からは、「賃金が確定していない中で誰が働けるというのか。」、「一度貰った賃金を後になって返せとは、生活が成り立たたなくなる」、「勤務条件の一方的切り下げや遡及が認められれば、労使のルールが無くなる」等の意見が続出しました。
 確かに、賃下げは仕方ないという声は職場でも聞かれました。私たち原告団も賃下げ自体を争っているわけではありません。しかし、減額調整措置による不利益遡及を職場の中で誰一人として肯定していません。私たちは、職場の不満を代弁して、この訴訟で不利益遡及を争っているのです。
 (1)不利益不遡及の原則が私企業についてだけのものなのか?(2)勤務条件が規則等で決まっている国家公務員は、不遡及が適用されないのか?(3)減額調整措置は、支給された現金の目減りという事実であるにもかかわらず遡及ではなく立法裁量であるのか?
 このように一審判決が、その理由・説明が無いまま断じられていることに対する疑念、そして、私たちの生活や労働実態について一言も触れられなかったことに対する憤り、が、現在の職場の痼りとなって残っています。
 職場は、高度化・多様化する行政領域の中で業務量が増大する反面、定員削減計画による要員不足により、年々忙しさは増し超過勤務も増大しています。このような中でも国民のために昼夜を問わず真面目に努力し、奮闘しています。
 公平・公正な公務労働の提供は、安心して働くことのできる勤務条件の上に成り立つと考えます。そのために政府・人事院が私たち労働組合と協議し、労働条件の改善に向けて最大限努力するものだと確信しています。この原則的なルールを守ることが一番大切だと思います。親が一方的にルールを破ると子供が言うことを聞かなくなったり、真似をしたりするようになります。子供たちにも説明ができる「働く者のルール」を正義と道理のある判断で示して頂くことを裁判長にお願いし、私の発言を終わります。


以上


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