「今後の行政改革の方針」決定に抗議する(談話)

2004年12月24日
日本国家公務員労働組合連合会書記長・小田川義和


1.本日、政府は、2005年度予算政府案とともに、「今後の行政改革の方針(新行革大綱)」を決定した。国公労連は、財政当局主導で効率化のみが強調され、国民生活の安定や格差是正を目的とする公共サービスの後退となる「新行革大綱」決定に抗議し、撤回を要求するものである。

2.「新行革大綱」は、今年6月に閣議決定された「骨太方針2004」を具体化し、「行政改革の手綱を緩めることなく、更に積極的に推進することにより、簡素で効率的な政府を構築し、財政の建て直しに資する」ことが目的だとしている。
  「新行革大綱」は、5年間で10%削減という従来に倍する目標で定員削減を押し進めるとし、そのために民間委託、独立行政法人化の推進、市場化テスト(官民競争入札制度)、IT技術による内部管理業務の効率化、公会計改革なの手段をそろえているところに特徴がある。このことにより、政府がいう「国が直接行う必要がある事務・事業」に国の役割を限定し、公務・公共サービス提供についての国の責任を決定的に後退させていく一里塚として大きな意味を持つといわなければならない。
  また、公務員労働者の労働条件を後退させる手段として、市場化テスト等により、雇用解体や非公務員化・身分保障撤廃を行い、派遣、期限付き雇用など多様な雇用形態導入による、不安定雇用化と低賃金化を行い、減量化を進める上でも大きな意味を持つ。
  さらに、経済財政諮問会議と財政当局によって主導された「新行革大綱」は、2007年度にも予定される消費税大増税の露払いの意味も持っている。

3.定員削減については、来年度を計画的削減と合理化減で純減624とし、再来年度移行は、新たな定員削減計画を来夏に策定する方針である。そのターゲットは、行政サービスの第一線である地方支分部局等に置かれている。また、内部管理業務について、新たな共通システムが構築されたことにともない、当該業務定員の3割以上を削減するとしている。同時に、府省内はもとより、府省を超えた定員の再配置により、治安、徴税等に定員を再配置するとしており、定員削減と相まって、現場に大きな負担が強いられることになる。

4.独立行政法人の組織・業務「見直し」では、前倒し見直し対象32法人について、研究・教育機関法人をすべて非公務員化し、14法人の統合、2法人の廃止を決定した。前倒し対象以外の24法人は来年中に見直しがされる。独立行政法人の組織・業務見直しは、主務府省の評価委員会の意見を聞き、各大臣の責任で行うものであり、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の評価は、2次チェックと位置づけられていた。にもかかわらず、始めに結論ありき的な評価と、「独立行政法人に関する有識者会議」まで設けて政治的圧力を加える中で、非公務員化や統合を法人押し付けた。

5.規制改革では、市場化テスト(官民競争入札)について、2005年度におけるモデル事業の実施と2005年中の「市場化テスト法」を含めた整備を行い、「官製市場」について、医療、教育を中心とする14項目の民間開放を推進するとしている。市場化テストは、営利企業に新たな利潤追求の場を提供しようとするものであると同時に、受託企業が頻繁に変わることを前提とした、公務・公共サービスの専門性と安定的、継続的な提供の必要性を否定するものである。「官製市場」改革も、医療の「官民分担論」により、医療保険制度を実質的に解体しようとしている混合診療問題に見られるように、徹底した公共サービスの破壊がねらいである。

6.「骨太方針2004」は、2005年度、2006年度を重点強化期間として、(1)「官から民へ」、「国から地方へ」を徹底させる、(2)政府部門の本格的な改革(「官の改革」)を行う、としており、これまで述べた「改革」具体化を一気に進めようとしている。公務・公共サービスを守る闘いは正念場を迎えようとしている。
  いま日本は、サービスをすべて利潤追求に提供し、資力の差でサービス提供に差がついて当然という「市場原理主義」国家に変質させられようとしている。しかし、混合診療自由化反対の請願が衆参厚生労働委員会で採択されたように、ねらいが国民に明らかにされればされるほど、国民の要求と公共サービスの商品化の矛盾もまた顕在化している。国公労連は、「競争より公正な社会を」をスローガンに、広く世論に訴え、国民の支持を拡大し、「新行革大綱」の具体化を許さず、憲法が保障する基本的人権を実現する公務・公共サービス再確立を実現するため、全力を挙げていくものである。

以上

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