国公FAX速報 2004年10月21日《No.1577》

「国公権利裁判」判決日行動を展開
東京地裁の不当判決に満身の怒り

 「不利益遡及は許さない!国公権利裁判」は、03年3月5日に提訴して以来、10回の口頭弁論を経て、本日(10/21)13時30分から東京地裁103号大法廷で判決の言い渡しがありました。
 国公労連は、この日に「判決日行動」を配置し、台風一過で曇り空の中、12時すぎから裁判所周辺での「昼休み宣伝行動」を展開しました。この行動には、全国から駆けつけた75名の原告組合員と各単組・ブロック国公の代表など全体で約200名の仲間が参加し、通行人にビラを配布しながら、宣伝カーの上から弁士が口々に裁判の意義と支援を訴えました。


◆昼休宣伝行動/司法の良識ある判断に期待

 冒頭、山瀬副委員長がマイクを握り、裁判の意義と経過にふれて主催者挨拶を行った後、公務労組連絡会幹事の日巻郵産労書記次長は、「郵政事業の民営化が叫ばれる中、労働基本権回復は郵産労にとっても重要な課題であり、国公権利裁判の動向を注視している。公務労組連絡会としても全力で支援していく」と参加者に力強い激励の挨拶を送りました。
 続いて原告の古澤さん(全建労関東)、山田さん(全気象沖縄)、及川さん(全法務東北)、金田さん(全国税東京)、堀田さん(全通信九州)、島田さん(全経済北海道)、河野さん(全税関本部)の7名とブロック代表の秋山さん(近畿)が、次々に決意表明を行いました。
 この中で、原告筆頭の河野さんは、「本日の判決で東京地裁が良識あるきちんとした判断を下すように期待したい。そして、公務員制度改革をめぐるたたかいで、何としても労働基本権を回復していきたい」と訴えました。


◆裁判傍聴行動/原告らの請求をいずれも棄却

 13時から「裁判傍聴行動」に移り、東京地裁103号大法廷は、原告側が103名の原告と傍聴者、5名の弁護団、被告・国側が6名の傍聴者、2名の取材記者で満席になる中で、今回は法廷にテレビカメラが入り、裁判官の入廷から判決に先立って約2分間の撮影が行われました。
 そして、全員の目が裁判長に注がれる中で、難波裁判長が硬い表情で発した言葉は、何と「判決主文は、1.原告らの請求をいずれも棄却する。2.訴訟費用は原告らの負担とする。後は判決要旨を見てほしい」というもので、ものの1分もかからない不当判決の言い渡しに、法廷内はあっけにとられつつ、怒りに包まれました。


◆裁判支援行動/怒りのシュプレヒコールを唱和

 この裁判傍聴行動と併行して、裁判所の外で引き続き「裁判支援行動」が行われており、国民金融公庫発展会の福地副会長から連帯挨拶を受けて間もなく、太田中執が「不当判決」を掲げて裁判所から飛び出してきました。これを見た参加者は、すぐさま東京地裁に向けて「不当判決糾弾!」の怒りのシュプレヒコールを浴びせた後、「判決報告集会」の会場である星陵会館に向かいました。


◆記者会見/岡村団長「ヒラメ司法はいらない」

 一方、この判決後、国公労連から山瀬副委員長と小田川書記長、原告代表の河野全税関委員長、弁護団の岡村団長と加藤弁護士の5名が司法記者会での「記者会見」に臨みました。
 国公労連からは「不当な判決に抗議する」旨の小田川書記長談を配りつつ、本件裁判の意義と経過、判決内容の批判などをコメントし、河野原告も満身の怒りをこめて判決の不当性を糾弾しました。また、弁護団も、「原告の請求を棄却するに足る理屈がまったくない、不誠実で詭弁に満ちた判決だ」と批判し、岡村団長は、最高裁が「ヒラメ裁判官はいらない」と言ったように、「政府の言いなりになるヒラメ司法はいらない」と断じました。


◆判決報告集会/「屁理屈のカベ」を打破しよう

 冒頭、主催者挨拶にたった堀口委員長は、「判決は、請求を全て棄却するという不当なものであり抗議する。到底受け容れることのできないものであり、判決を乗りこえるため控訴をふくめた対応の討議を早急にすすめる。この間の運動の到達点として、官民共同の前進や労働基本権棚上げの公務員制度『改革』を許さないとり組みの前進など確認し、今後に引き継ぎたい」と決意を述べました。
 激励に駆けつけてくれた全労連・大木副議長は、「木を見て森をみない非常識な不当判決。一度支払った賃金を返せという経営者の主張が認められたら大変なことになる。特に、人勧準拠層への影響は、労働者はもとより経営側にも甚大。不当判決を乗りこえるたたかいをともに進める」と力強く述べました。

 続いて、弁護団の佐久間事務局長と野本・大森・加藤各弁護士が、それぞれの担当分野である判決全体、憲法論、ILO条約論、不利益遡及・脱法行為論の観点から、今回の判決内容について批判と解説を行いました。
 これを受けて、小田川書記長が要旨次のとおり行動提起を行い、「たたかいの意義や到達点を過不足なく評価し、明日からの論議とたたかいに奮闘を」と呼びかけました。
 ※ 東京高裁に控訴する方向で、単組及び原告との協議を早急にすすめる。その理由は、(1)公務員労働者の団体交渉権を極めて限定的にとらえる今回の判決をこのままにしておくことは、当面する公務員制度改革課題とかかわっても放置できないこと、(2)不利益不遡及法理が公務員労働者に適用されるか否かの判断を避けており、こうした司法のあり方を見過ごすことはできないこと、の2点に集約される。
 ※ 手順としては、2週間(11月4日)の控訴期限も念頭に、10月28日の単組委員長会議の論議もふまえ、中央執行委員会として判断。その際、原告139名全員を控訴人とするのではなく、代表者を絞り込むことも含めて柔軟に論議する。
 ※ 判決結果や問題点の職場への周知は、11月11日付の国公労新聞、および国公労調査時報1月号で特集する。これらも活用し、不当判決を乗りこえるため、地域・職場からのたたかいの再構築を進める。
 ※ 当面、(1)公務員制度改革ともかかわる「労働基本権確立」の団体請願署名の早期集約、(2)給与制度見直しとかかわる地域共闘づくり、(3)憲法改悪、「構造改革」反対など国民的課題での地域共同、などのとり組みと一体で、「国公権利裁判」の意義を訴える組織内外のとり組みを進める。

 最後に、岡村弁護団長が要旨次のとおりまとめを行いました。
 ※ この裁判で、裁判所に具体的な判断を求めたのは以下の3点についてである。
 第一に、「不利益不遡及原則」は民間労働者について確定判決となっている。国家公務員労働者にもこの原則が適用されるのは当然で、認められないとするならばその根拠を示せ。
 第二に、国家公務員労働者に「不利益不遡及原則」が適用されるとすれば、実質的に不利益が遡及されていることは脱法行為だ。
 第三に、被告・国側は、勤務条件法定主義を持ち出し、国会の立法裁量を主張しているが、何でもできるというものではない。裁量の範囲を超えた行為は裁量権の逸脱であり違法だ。
 ※ これに対し、本日の判決は、一切まともに答えていない。
 「不利益不遡及原則」についての確定判決は、民間労働者にのみ適用される判例であって、国家公務員には“直ちに当てはまらない”としている。
 また、実質的に不利益遡及が行われていることに対して、被告である人事院・政府は「情勢適応の原則」から適法だと主張していたが、これに対しても判決は、“既に発生した具体的権利を一方的に処分、変更させるものであると一義的にいうことはできない”としている。
 そして、裁量権については、何の論拠も示さずに“立法裁量の逸脱があるということはできない”としている。
 このように、我々の主張や問いかけには何も答えていない判決であり、いい加減な判決といわざるを得ない。控訴する場合には弁護団も最大限奮闘したい。

 会場発言では、福嶋さん(全港建本部)、藤川さん(全労働東京)、桧山さん(全労働青森)、川嶋さん(全労働兵庫)、今さん(全運輸北海道)、金田さん(全国税東京)、大塚さん(全建労本部)が次々と立ち、最後までたたかうとの決意も出されました。
そして、最後に堀口委員長の発声で「団結ガンバロー」を三唱し、意気高く判決報告集会を締めくくりりました。


以上


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