「国公権利裁判」の判決にあたって(談話)
−−不当な判決に抗議する−−

 本日、東京地方裁判所(民事第36部・難波孝一裁判長)は、国公労連加盟の139名の原告が提訴していた「国公権利裁判」に対する判決を下した。
 その内容は、国家公務員労働者の団体交渉権を極めて限定的に捉えた従来の判例を踏襲し、賃金引き下げという労働条件不利益変更を強いる場合でも、その決定過程に公務員労働組合の関与を否定するとともに、実質的にも不利益遡及の脱法行為にほかならない賃金減額措置さえ是認した。
 このような判決内容は、公務員労働者の無権利状態をさらに悪化させ、公務員労働者の権利を軽視した公務リストラなどの政府の横暴に司法が免罪符をあたえるものである。
 原告及び国公労連は、そのような不当な判決に強く抗議する。

 本件裁判は、国(人事院、政府、国会)を相手に、史上初の賃下げ勧告となった2002年8月の人事院勧告とそれにもとづく「給与法改正」において、一度支払われた4月以降の給与にも賃下げを遡及させる「12月期末手当の減額調整措置」が取られたことで、労働基本権(団体交渉権)が侵害され、最高裁が認めた不利益不遡及法理の脱法行為によって発生した損害の賠償をもとめるものであった。
 我々の主張に対し、被告・国は、国家公務員には協約締結権を含む交渉権は保障されていないとする従来からの主張をくり返し、「改正」給与法施行後に請求権が発生する給与の減額措置は不利益遡及に当たらない、官民の月例給について比較時点である4月からの年間における均衡を図ることは「情勢適応の原則」に適う、などとして全面的に争った。

 本日の判決では、第1に、勤務条件法定主義のもとで、公務員労働者の交渉権が制約されることは合憲とした上で、そのような制約は賃金引き下げのような労働条件不利益変更においても変わるものではないとして、従来の判例を踏襲した。憲法第28条とILO87号・98号条約が保障する労働者の団体交渉権を軽視し、国際的には前進局面にある権利拡大の流れに背を向けるものである。
 第2に、「12月期末手当での減額調整措置」について、国の主張をみとめ、不利益遡及措置にあたらないとする判断を下した。2002年4月から11月の間に支払われた超過勤務手当をも減額の対象とする「調整措置」が、労働者の確定した権利を侵害しないとする判断が許されるならば、不利益不遡及法理が空洞化し、官民を問わず日本の労働者への悪影響ははかりしれない。

 国公労連は、2003年3月5日の提訴以来、原告を先頭に、労働基本権制約の不当性や、公務員賃金の社会的影響の大きさ、賃金引き下げの「悪魔のサイクル」への怒りなどを、宣伝行動や署名行動を軸に全国各地で訴えてきた。また、同趣旨での裁判が、我々の提訴以降、5道県(北海道、群馬、静岡、奈良、兵庫)でおこされたことにも留意し、毎回の傍聴行動など裁判闘争に全力をあげてきた。
 このようなとり組みは、公務員労働者の労働基本権回復要求への国民的な支持を拡大し、「労働基本権制約の現状維持」を前提に公務員制度改革を進める政府の策動を再三押し返す力になったものと確信する。

 本日の判決をふまえ、たたかいはあらたな段階に移ることになる。不当な判決を乗りこえ、大義も国民的支持もある公務員労働者の労働基本権回復を認めさせ、労働者の権利とくらしを守る最低限の歯止めでもある不利益不遡及法理の後退を許さないため、司法の場も含めたとり組みに引き続き奮闘する。
 そのとり組みと一体のものとして、公務員制度と公務運営の民主化を実現する「要の課題」である労働基本権確立をめざし、「ILO勧告にそった民主的公務員制度改革」をもとめるたたかいを強化する。
 引き続く、たたかいへ結集とご支援を心から呼びかける。



2004年10月21日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川義和




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