【国公労連第50回定期大会】
2004年8月25日
中央執行委員長あいさつ

日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎

 大会にご出席いただいた皆さんと全国の仲間たちのこの間のご奮闘に心より敬意を表します。また、大変ご多忙の中、激励のためにかけつけていただいたご来賓の皆さまに、日頃のご指導とご協力に対する感謝と合わせて心よりお礼を申し上げます。

 さて、本大会は激動する情勢のもとで開催されます。
 いま私たちはこの国のありかたをめぐつて、平和憲法を守り、くらしや行政に活かす方向をめざすのか、それとも憲法を改悪し「戦争する国」づくりに大きく踏み出すのかという重大な岐路に立っています。
 私はまず、この国の進路と国民生活に責任を負う国公労働者の使命にてらして、憲法改悪阻止の運動に全力を上げる決意を表明するものです。
 国会の憲法調査会が来年に最終報告をまとめることと合わせて、自公民三党の改憲案づくりも本格化しています。
 自民党は戦力の保持と集団的自衛権の行使など戦争放棄を謳った9条の全面改悪を打ち出すとともに、「人類の多年にわたる努力」によって確立された個人の尊厳・人権保障の基本原則を後退させ、「愛国心」を強調した国家主義を前面に押し出す(案)を提起しています。
 その最大の狙いが日米安保体制を強化し、アメリカの戦争に世界的規模で日本が共同して参加するための9条改正にあることは明らかです。
 同時に、戦後民主教育の柱である教育基本法の改悪によって、「実直な臣民」としての「戦争する人づくり」をすすめようとしています。
 また、民主党も「武力の行使」を容認し、9条を大きく転換させる方向を打ち出しており、「改憲」の一点で自公民三党は足並みをそろえたと思います。
 イラク戦争で明らかなように、戦争が最大の人権侵害であり、平和なくして労働者の生活も民主的権利も保障されないことは歴史の貴重な教訓でもあります。
 国公労連は、戦争に反対し憲法の平和原則を活かすために努力することは、労働組合の基本的な責務であることを自覚し、憲法理念を国民生活と行政のあらゆる分野に活かしていく運動を強める決意です。
 憲法12条は国民の自由及び権利の保障は国民みずからの不断の努力によるものであることを謳い、その理念を活かす攻勢的な運動の重要性を指摘しています。
 国公労連はこの「原点」を再確認し、自衛隊のイラク駐留や多国籍軍参加など憲法原則を踏みにじる行為を許さず、大企業本位の「構造改革」反対・公務の公共性と国民の生活と権利を守る運動を一体的に追求し、憲法が活きる社会の実現をめざして奮闘していく決意です。
 大江健三郎さんなど日本の良心を代表する著名な9氏による「9条の会」は、「アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決がいかに非現実的か」と訴え、憲法を守るという一点でのあらゆる努力を呼びかけています。
 国公労連は全労連の提起する諸行動に結集するとともに、「9条の会」の呼びかけに応え、草の根的な運動の広がりに全国各地で奮闘するものです。

 次に、直面している課題について申し上げます。
 まず、公務員制度「改革」をめぐるたたかいであります。
 政府・推進事務局は、さまざまな矛盾を抱えつつも秋の臨時国会に関連法案を提出するべく作業をすすめています。
 しかし、その内容は労働基本権制約の現状は維持したままで、能力実績主義の人事管理を強化しょうとするものであり、到底容認できるものではありません。
 この間の運動で明らかなように、ILO勧告にもとづく労働基本権の確立は国際世論の強い要請であり、これを基本とした民主的制度の確立は国民の求める方向であります。
 公務員の権利侵害の実態を放置したままで人事管理のみを強化することは、国民に痛みを強いる反動行政の担い手となる「もの言わぬ公務員づくり」そのものだと思います。
 国公労連はその立場から全労連規模での国民世論の拡大と、職場からのたたかいに全力を上げるものです。
 
 次に賃金闘争の課題であります。
 今年の人事院勧告で月例給の3年連続マイナスを阻止したことは、仲間たちの粘り強い奮闘の結果得られた貴重な到達点であり、賃下げの悪循環と生活の悪化に歯止めをかけたいと願う、公務・民間労働者の共同したたたかいの反映だと思います。
 これらの共同の前進が地域最賃の目安額の引き下げを許さず、44都道府県の地方最賃審議会で、最小金額とはいえ引き上げ改定を勝ち取る成果につながったのだと思います。
 人事院は地域と職場に広がった改悪反対の声を押し切り、寒冷地手当の制度改悪を勧告しました。
 私は寒冷・積雪の厳しい自然環境のもとで公務に従事している仲間と、それを支える家族のご苦労を思う時、寒冷生計増嵩費の必要性を認めながらも、機械的な民間準拠論や矛盾の多い気象データに固執し、大幅な改悪を勧告した人事院の責任を厳しく指摘するものです。
 国公労連はこの間、寒冷地手当の改悪は給与制度全面見直しのいわば突破口であり、民間準拠論への固執は制度見直しに向けた世論づくりの一環であると指摘してきました。 
 その点では260を超える地方議会の意見書採択に示された地域での共同の広がりを、給与制度見直し反対のたたかいにいかしていくことが大切だと思います。
 人事院は給与制度の抜本見直しを来年勧告に向けて具体化する姿勢を明確にしました。 国公労連は人事院がすすめようとしている給与制度見直しには断固反対であることを表明し、全国の仲間にたたかいへの結集を呼びかけるものです。
 「俸給表の全体水準の引き下げ」を目的とする制度見直しは、6月4日の骨太の方針2004の「要請」に沿った内容であります。
 労働条件の基本である賃金は、制度のあり方や水準、配分など労使による徹底した交渉・協議によって決定すべきことは当然のルールであります。
 そのルールを守ることなく、本来あってはならない「代償制度」のもとで、政府・使用者の意向に沿って労働条件が一方的に改悪されるなどということは、重大な権利の侵害であり断じて容認できるものではありません。
 制度見直しは第一線現場で行政を支えている仲間の生活悪化をもたらすとともに、実施部門の軽視・職務評価の低下につながり、全国一律の均等待遇を基本とする行政サービスの全国均一・公正性の原則をなし崩しにする分断攻撃であります。
 同時に、この課題は小泉「構造改革」によってすすめられる、規制緩和による「民間化」や「三位一体改革」による地方切り捨てなど、国民の人権保障を使命とする公務の役割を縮小・後退させる攻撃の一環であることを見ておく必要があります。
 国公労連はこのことをふまえ、国民・住民の利益を守る要求と一体で、地域での連帯・共同のとりくみを展開していきたいと思います。

 最後に組織拡大について申し上げます。
 組織拡大はまさに「待ったなし」の最重要課題であります。
 行政機構の統廃合や独法化、定員削減など厳しい状況が続くもとで、職場の民主化と要求前進の最大の保障が組織拡大にあることは自明であります。
 本大会の議論をつうじて、後退に歯止めをかけ、拡大にむけた反転攻勢に打って出る決意を固めたいと思います。
 労働者の要求前進のためには組織労働者を増やし、労働運動が政府・財界の横暴を抑制する力を持つことが決定的に重要です。
 全労連は、7月の大会で「21世紀の新しい労働組合づくりをめざして」と題する、組織拡大中期計画1次案を発表しました。
 この中では、根強い企業内意識や男性中心の役員構成、正規雇用労働者を対象とした活動スタイルなど、日本の労働組合運動が共通してかかえている問題点の改革と組織の拡大を歴史的任務と位置づけ、不退転の決意で挑戦することを呼びかけています。
 労働者の就業状況が変化するもとで従来の発想を転換し、幅広い労働者に対して求心力を持つ組織をめざしていくことはみずからの課題であります。
 国公労連は、この提起を正面から受け止め改革に努力するとともに、公務関連職場ではたらく仲間の組織拡大を最重要課題として位置づけ奮闘していく決意です。
 いま、本省庁職場では、際限のない長時間過密労働に加えて、人権無視の人事管理がまかりとおるなどさまざまな矛盾が集中しています。
 国公労連は、本省庁職場で働く仲間の悩みと苦しみをみずからの課題としてとらえ、改善をめざす具体化として国公一般労働組合を立ち上げたのに続き、本省庁職場を対象に全労連オルグを配置することとしました。
 本省庁に確固たる国公組織を確立することは、行政の民主化とすべての職場での権利確立にとってきわめて重要であり、各単組のいっそうの努力をお願いするものです。

 戦争の惨禍と反省の上に出発した国公労働運動は来年で60年の歴史を刻み、国公労連は結成30年の節目を迎えます。
 国公労連は結成大会において、「仲間の一人ひとりの悩みや苦しみをわがものとして感じる組合」であり続けること、そして「後世の歴史的検証に耐えうる労働組合にするために全力を上げる」ことを確認し、今日までその実践に努力してまいりました。
 私たちは歴史の岐路に生き、次の世代に責任を負う者として国公労働運動の「原点」を再確認し、新たな挑戦を開始していきたいと思います。
 
 全国の仲間にそのことを呼びかけるとともに、大会成功にむけたご奮闘をお願いして、あいさつを終わります。

以上




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