【国公労連第120回拡大中央委員会】2004年6月4日

中央執行委員長あいさつ
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎

 全国各地での皆さんのご奮闘に心より敬意を表します。
 私はまず冒頭に、議会制民主主義を否定して年金改悪法案を強行採決した自民、公明両党に対し、全国の仲間の怒りを代表してきびしく抗議するとともに、廃案を求めて最後まで奮闘する決意を申し上げるものです。
 同時に、国民の意思と憲法をじゅうりんし、国民を塗炭の苦しみに追い込む小泉政権と、それを支える自民、公明両党に対し、参議院選挙において鉄槌を下し、政治の民主的転換を求める運動をいっそう強めることを表明するものです。

 いま、国民生活とこの国の進路をめぐって情勢はまさに激動の状況にあります。
 私は、歴史の重大な岐路に立っている今日、組合員と国民生活に責任を負う国公労働者の使命と役割を自覚し、夏から秋、そして来年度にむけたたたかいの構築に、全力をあげることを全国の仲間に呼びかけるものです。
 その立場からまず申し上げたいことは、「国民不在・憲法じゅうりんの政治、ここに極まれり」ということであります。3年余の小泉「構造改革」によって国民生活は疲弊し、社会の病的状況が深刻になっています。
 また、国公労連が指摘してきたように、小泉「改革」が「戦争する国づくり」であり、国民を犠牲にしながら大企業本位の社会・経済システムをつくろうとするものであることはいまや事実をとおして明らかです。
 政治のありようは行政のあり方と私たちの労働条件に直結します。
 国公労働者はその立場から国民不在・憲法じゅうりんの政治の現状を、きびしく見ていく必要があると思います。
 その1つは年金問題です。
 政府の提出した年金「改革」法案に対し国民の約7割が反対し、「廃案と出直し」を要求しています。そこには年金制度の内容に対する不安と不満、これを審議する国会議員の資質と政治姿勢に対する怒りが渦巻いていると思います。
 具体的には、
週刊誌でも指摘されたように「100年安心」どころか、生活保護水準以下に給付を引き下げ「国民を定年ホームレスに追い込む」内容への不安と怒り、
国民に対して説明責任を果たさないどころか、嘘と偽りの説明によって国民の将来設計を誤った方向に導こうとする自公政権への怒り、
関係閣僚をはじめとする国会議員の未納・未加入に対する怒り、とりわけ、勤務実態のないまま厚生年金に加入するという法律違反を犯しながら、「やましいところはない」 と強弁する小泉首相に代表されるように、国民の常識とかけ離れた政治感覚に対する怒り、
年金の空洞化がすすみ公的年金制度は立ちゆくのか、使用者負担の増大によりリストラ、パート化が加速されるのではないかという不安、
年金保険料や積立金の活用方法など議論すべきことは山積している、
など、国民は怒り と不安にもとづき、あたりまえの要求をしています。
 年金「改革」法案は国民の生存権そのものが問われている課題であり、時間をかけて国民的議論を尽くすことが政治の要諦だと思います。
 これらの事実を職場の仲間にしっかり知らせ、国民に苦しみを強いる政党に対し参議院選挙できびしい審判を下し、国民本位の政治の流れに変えていく決意を固め合いたいと思います。

 政府が年金制度の改悪を強行しようとする背景には、財政難を理由とした医療、年金、介護などの分野で国民負担の増大をはかり、消費税率を引き上げ、社会保障全体の形骸化、市場化をすすめる狙いがあります。
 国公労連は、組合員と家族、国民の生活を守る立場から、国民的な社会保障闘争を構築していく必要性を痛感しています。
 この立場から、全労連をはじめとする労働組合、民主団体に国民共同の発展を呼びかけるとともに、年次方針策定にむけて具体的な議論を開始していく予定です。
 その点で確信にしたいのは、この間の年金闘争における全国の仲間たちの奮闘です。
 私は昨年の定期大会で、「『構造改革』路線を国民共同の力で転換していくため、年金制度改悪反対のたたかいを国民共通の対抗軸として位置づけ奮闘する」ということを呼びかけました。
 この間、全厚生の皆さんの2万人をこえる国民を対象とした講師活動、シール投票、ビラ配布などの宣伝や申し入れ活動、4.15休暇行動など、不十分さは残しつつも、一人ひとりの仲間のご奮闘が政府案の矛盾を明らかにし、自公政権の基盤を揺るがすまでの運動に発展したのだと思います。
 この間の教訓をお互い大切にしながら、引き続き奮闘していきたいと思います。

 2つは、憲法じゆうりんの政治を強行する小泉政権が世界の流れに逆行し、大きな矛盾に突き当たっていることも事実だということです。
 イラク情勢の泥沼化はアメリカの戦争政策が誤りであり、世界中にテロの惨禍を拡大させた原因であることを示しています。
 イラクからの撤退を表明・検討する国が相次ぐなかで、自衛隊のイラク派兵が二重の憲法違反であり、人道復興支援が「有名無実」であることもこの間の経過で明らかになっています。
 これらの事実をとおしても、有事関連法案が基本的人権や地方自治を侵害し、国民生活をアメリカの戦争政策に組み込むものであることは明らかであり、法案の成立を許さないため引き続き奮闘したいと思います。
 憲法をじゅうりんし、「戦争する国づくり」を断じて許さないためにも、憲法の「原点」を学びあい、憲法守れの具体的な行動に立ち上がることをお願いするものです。

 次に、生活改善、マイナス勧告を許さないたたかいについて申し上げます。
 3年連続の月例級引き下げ、6年連続の年収引き下げをなんとしても阻止するために、各機関での使用者責任の徹底した追及とあわせて、地域からの共同の拡大に全力を上げたいと思います。
 私は同時に、公務リストラと賃金引き下げ攻撃が労働者の権利侵害をともなって強行されてくる現実を見ておくことが必要だと思います。あわせて政治の露骨な介入を許してはならないということを強調したいと思います。
 厚労省は国立医療機関の独法化において、賃金職員の雇い止め、正規職員の賃金引き下げなどの労働条件不利益変更を強行しました。
 厚労省の対応は、賃金職員の雇い止め問題は「管理運営事項」であるとして交渉に応じないばかりか、独法移行後の就業規則制定については、国公法の枠内でまともな交渉・合意もないまま賃下げを強行する、という不当なものでした。
 また、自治体の例をみても、宮城県のように財政難や新たな事業を起こすための財源確保を理由とした賃金引き下げが、一方的な交渉打ち切り、労使の合意抜きで強行されるなどの事例が相次いでいます。
 さらに小泉首相がブロック別の公務員賃金に言及し、いわゆる骨太方針第4弾でも「地域における国家公務員給与のあり方を早急に見直す」ことが明記されるなど、私たちの賃金に露骨に介入してくる姿勢を示しています。
 これらの動きに共通していることは、公務員労働者の労働基本権の否認であり、それをテコに賃金引き下げを強行し、国民に痛みを強いる政策強行の突破口にすることだと思います。
 私はたたかいの方向としてあらためて次のことを強調したいと思います。
 1つは、労働基本権制約の不当性が労働条件決定のありよう、民主的職場づくりなど、私たちの職場、くらし、行政はもとより国民生活にも重大な影響をおよぼしていることを、職場の仲間が再確認することだと思います。
 具体的には、新たな能力等級制と評価制度で人事管理を強めようとする政府に対して、ILO勧告にもとづく民主的公務員制度確立のたたかいを強めること、労働条件決定のありようを社会的に問う国公権利裁判で勝利判決を勝ち取ること、この2つのたたかいの歴史的意義と重要性を再確認し奮闘することが求められていると思います。
 2つは、使用者責任の追求とあわせて地域からの幅広い共同のたたかいをさらに強めたいということです。
 いま人事院が寒冷地手当改悪の論拠として強調しているのは、「民間準拠」と「国民の納得性」ですが、彼らはこの後の給与制度「改革」全般をにらみながらその世論づくりと実行のために、この2つを強調していることは明らかだと思います。
 給与制度「改革」の突破口と位置づけられる寒冷地手当改悪を許さないためにも、また、給与制度「改革」そのものを許さないためにも、地域からのたたかい、地域共闘づくりに全力を上げたいと思います。
 3つは、これらのことを関連してみるとき、政府の狙いが公務員バッシングを利用しながら国民との分断をはかり悪政を推進することにあることは明らかであり、その点からも行政民主化闘争を中心とする「国民の中へ、国民とともに」の各分野での実践を強めていかなければならないと思います。

 最後に強調したいことは、いまこそ団結のレベルアップと組織の量的拡大が求められている時はないということです。
 休日に一市民として政党新聞を配布した国公労働者が、国公法違反で不当逮捕・起訴されるという事件が発生しました。
 詳細は割愛しますが、政府・権力者の狙いは、社会的にも大きな影響力を持っている公務員労働者、とりわけ国公労働者を「見ざる、聞かざる、言わざる」、そして、「何も考えない公務員」、従順な「僕(しもべ)」として封じ込めてしまおう、というところにあると思います。
 労働基本権制約、政治活動の制限など人間として、労働者としてあたりまえの権利を侵害するところにこの国の政治の反動性、異常さがあると思います。
 一方、このような弾圧は国民の反撃をおそれる政府のあせりのあらわれでもあります。
 そうであるならば、私たちが労働組合活動の力量を高め、仕事と生活に直結する政治の諸問題を職場で積極的に議論し、憲法にもとづく行政や国のあり方を考え、みずからの信念にもとづいて行動していくことが最大の反撃になることは明らかだと思います。
 みなさん
 このような時代遅れの不当弾圧を断じて許さず、すべての職場に一人ひとりの仲間を大切にする国公労働運動の風を吹かせ、国民とともに歩む国公労連を「より大きく」発展させるために、全力を上げる決意を固め合おうではありませんか。
 そのことを訴え、皆さんのご奮闘を期待してあいさつを終わります。
 ありがとうございました。
以上


トップページへ  前のページへ