国公FAX速報 2004年5月28日《No.1518》

 「骨太の方針2004」
 経済財政諮問会議に申し入れ

 国公労連は27日、経済財政諮問会議に対し、「骨太の方針2004」の取りまとめに向けた申し入れを行いました。申し入れは、小田川書記長以下4名が出席し、経済財政諮問会議を担当する内閣府運営総括担当参事官付・浅田総括補佐が対応、6月上旬にも閣議決定されるといわれている「骨太の方針2004」にかかわって、地域における国家公務員給与のあり方、定員削減、独立行政法人など検討が進められている事項について、別紙申し入れ書を提出し行いました。国公労連の主張は次のとおり。

【地域における国家公務員給与のあり方】
 個々人の給与決定の基準が勤務条件であることは明白である。現行の公務員制度では、公務員労働者の労働協約締結権などが否定され、「代償措置」とされる人事院勧告制度によって補完されている。このような現行制度との関係で、使用者性が排除できない政府の決定権限も制約されている。労働基本権侵害となる確認、決定をおこなうべきではない。
 また、同一職務についた場合、個々の国家公務員の仕事に基本的な差はない。そのことから、「同じ仕事であれば同じ賃金処遇」(同一労働同一賃金原則)が基本的に確認されている。また、民間企業でも、同じ会社であれば、地域によって極端に賃金の格差を設けることは行われていない。このような事実に目を向けない「地域に勤務する国家公務員の給与見直し」は、地方の国家公務員の賃下げ分を、都市部、とりわけ霞ヶ関に働く国家公務員に「付け替え」るものでしかなく、人件費抑制にもならない。
 単純に民間との比較で整理できるものではなく、地域の状況を十分に勘案したていねいな論議を求める。

【定員削減】
 「国家公務員は減っても増え続ける借金」というのが、この間の定員削減計画実施の結果であり、国の歳出見直しがはじめられた1979年度時点と2004年度を比較すると国の借金は9.7倍化(56.3兆円 → 548兆円)する一方で、国家公務員は3分の1近く(約90万人 → 約33万人)まで減っているのが実態である。
 特に、行政サービス実施部門は、業務委託、請負、非常勤職員などに依存する態勢に転換させられ、継続的、安定的に専門性に裏打ちされたサービス提供すら困難になっている。行きすぎたリストラが、この国の「ものづくり」の基盤を壊している、とする懸念が広がっていることと同様に、公務の実施部門でも、それと類似の問題が生ずる危険性が高まっている。

【独立行政法人】
 中期目標の達成状況が明らかにならない時点から、独立行政法人の整理・縮小や民営化等を前提にした検討を開始することは、独立行政法人通則法の審議経過も含めた制度設計時点の政府答弁にも反するものと考える。独立行政法人が担う事務は、国が責任をもって実施体制を保証し、運営の自主性を担保することで効率的・安定的な行政サービスの提供態勢を確保することが目的とされており、行政実施事務の整理・縮小や、「市場化テスト」などの「あらたな合理化施策」実験の場ではない。

【社会保障制度】
 社会保障制度については、現在進められている「年金改革」にみられるとおり、多くの国民が関心を持つとともに、それぞれの立場からの意見を持っている。単に国の歳出抑制の立場からの改革を進めるべきではない。

【三位一体改革】
 乱暴な言い方にはなるが、国の財政難を地方自治体に転嫁するための改革といわざるを得ず、事実すでに多くの自治体では行政水準低下や給与の切り下げなど負の部分が出始めていると感じている。

 国公労連の主張に対して、浅田総括補佐は今後のスケジュールも含め次のとおり回答しました。

 5月19日の会議で検討された素案を元に、現在関係各省庁と調整を行っている。各省庁からもいろいろな意見が寄せられており、今回いただいた組合からのご意見も含め検討を進めていく。意見としていただいた事項のうち、公務員給与については、人事院との関係が大きく、固まった状況にはない。定員の関係についても、行政改革全体の進め方との関係が大きく、当会議だけの論議だけで出せるものではないと考えている。独立行政法人にかかわっては、ご意見のとおり、制度との関係に注意しなければならないと考えている。社会保障制度については、政府部内だけの論議ではなく、あらゆる関係機関との調整を行っているところで、固まったものにはなっていない。なお、三位一体改革については方針の中では書ききれないと考えており、年末の予算確定までの見取り図的なものを示すことになるのではないか。
 明日28日に会議が配置されており、可能であれば取りまとめに向けた最終的な会議にしたいと考えている。閣議決定については6月4日を予定している。なお、本日の申し入れについては、民間議員の方々にも伝える。

 最後に小田川書記長から、国公労連の主張を反映した方針の取りまとめを強く求めて申し入れを終えました。

以 上

《別紙》
2004年5月27日

 経済財政諮問会議
  議長  小泉純一郎  殿

日本国家公務員労働組合連合会    
中央執行委員長  堀 口 士 郎


「骨太の方針2004」の取りまとめに向けた申し入れ

 6月上旬の閣議決定がめざされている標記にかかわって、貴会議のホームページに検討過程の内容が明らかにされています。それから判断して、決定がめざされている内容は、公共サービスの商品化=新自由主義改革の徹底と、国・地方を通じた政府組織と公務員の整理・縮減という「公務リストラ」に主眼がおかれていると考えます。
 私たちは、この間の構造改革によって、国民生活の基盤を支える公共サービスが低下し、国民生活の格差がいたずらに拡大していることに強い危機感を抱いています。例えば、連年3万人をこえるという先進国では異例とも言える高い自殺率も、構造改革の強行と関連があると考えています。
 国の行政機関だけを見ても、本年4月から多くの国立病院・療養所が独立行政法人化され、国立大学も法人化されました。その結果、医療や教育という公共性の高い分野で、経済的効率性の追求が一義的にめざされることへの懸念が広がっています。また、連年の定員削減などによる全国一律の行政サービス提供態勢への悪影響、恒常的、慢性的な長時間過密労働が国家公務員の健康といのちを蝕む状況なども極めて深刻です。
国民生活の安定、安全などの維持・改善を目的とする国の責任という側面からも、最良の使用者性が求められる「雇用主としての国」の側面からも、構造改革路線そのものの見直しこそ必要です。
 「骨太の方針2004」のとりまとめに向けては、国家公務員の給与制度について、その見直し・是正に直接的な言及がおこなわれています。そのことは、労働基本権との関係で重大な問題を含んでいますが、この間の論議では、その点への配慮はほとんど伺えません。
 以上のことから、貴会議の検討事項の内、当組合とかかわると想定される事項について下記のとおり申し入れ、真摯な検討を要請します。

1 「地域毎の実態を踏まえて地域における国家公務員給与の在り方を早急に見直す」などとする決定はおこなわないこと。

2 地方支分部局など行政サービス実施部門に焦点を置いた新たな定員削減計画の策定や定員再配置を強制しないこと。

3 独立行政法人が担う分野も含め、行政の事務・事業の民営化ありきの検討はおこなわないこと。

4 社会保障給付の水準論議をおこなうこともなく、単に国の歳出抑制の立場からだけの社会保障制度改革は取りやめること。2005年度にむけた介護保険制度の見直しは国民的な合意をえて進めること。
 
5 国の財政難を地方自治体に転嫁するための改革(「三位一体改革」)は中止すること。
以上


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