【国公労連第118回拡大中央委員会】
2003年12月12日
 中央執行委員長あいさつ
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀 口 士 郎
 中央委員会にご出席いただいた皆さんと、全国の仲間たちのご奮闘に心より敬意を表します。また、大変ご多忙な中激励にかけつけていただいたご来賓の皆さまに、日頃のご指導に対する感謝とあわせて心よりお礼を申し上げます。
 
 本中央委員会の主たる任務は春闘方針の決定でありますが、討論をつうじて実践にむけた意思統一と、「たたかえば要求は必ず前進する」との決意を固め合いと思います。
 いま、この国の進路や国民生活をめぐって私たちは重大な歴史の岐路に立っていると思います。
 それは、この国が平和憲法を守り、その理念をくらし、職場、行政に生かす方向をめざすのか、それとも、歴史の教訓と憲法のめざす方向を否定し改憲への道をすすむのか、という問題意識であります。
 「政権選択」、「二大政党選挙」など、マスコミの異常なキャンペーンのもとでたたかわれた総選挙は、小泉「構造改革」に国民が否定的な態度を示す一方、小泉政治への不満や変化を求める声が民主党へ集中する結果となりました。
 この選挙で、「2005年憲法改正に大きく踏み出す」ことを公約に掲げた自民党は、その後の保守新党との合併で「新しい憲法の制定をめざす」ことを合意し、改憲の姿勢をさらに強めています。
 また、民主党はこれまでの「論憲」から憲法をつくりかえる「創憲」を提起し、2004年中に基本方針をまとめるとしています。
 これらの動きは、私たちが手をこまねいていれば国民投票法案の国会提出など、改憲の流れが一気に加速する危険があることを示しており、改悪反対の世論を早急に広げていかなければなりません。
 国公労連は、平和憲法遵守の義務を負う国公労働者として、また、平和な国づくりをめざす国公労働運動の「原点」に即して、憲法擁護・改悪反対の運動に全力を上げることを表明するものです。
その点でまず強調したいのはイラクへの自衛隊派遣を断じて許さないということです。 小泉内閣は9日、自衛隊をイラクに派遣する基本計画を閣議決定しました。
 これは、憲法9条を根本から踏みにじると同時に、海外での武力行使に道をひらくものであり、イラク全土が戦争状態といわれるもとで、「戦闘地域には自衛隊を送らない」とする、憲法違反のイラク特措法にも反する暴挙であります。
 イラクでは大量破壊兵器の保有を理由とした無法な戦争と、不当な占領支配によって数万もの国民が犠牲になっています。
 いまイラク国民が求めているのは一日も早い主権の回復と、占領軍の撤退による平和の実現であり人道的な復興支援だと思います。
 私は、歴史の岐路にある今日、「イラク派兵許すな、憲法9条を守れ」の運動に、全国の仲間が立ち上がることを心から呼びかけるものです。
  
次に、小泉「構造改革」とのたたかいであります。
 市場原理優先・弱者に犠牲を強いる「構造改革」路線のもとで、倒産や失業、自己破産や自殺は最悪の状況で推移し、刑法犯の急増、賃金水準の大幅下落など、国民のいのちとくらしが根底から脅かされています。
私たちはその状況を日々の仕事をつうじて敏感に感じると同時に、その矛盾は業務面での困難さとなって職場に押し寄せています。
 いま大切なことは、憲法にもとづく人間の尊厳を守り、個人が尊重されるための国の責任・公務の役割を再確認し、具体的な行動に結びつけることだと思います。
 国公労連はその立場から、国民の生きる権利を正面にすえた年金闘争と、増税反対の運動を最重要課題と位置づけています。
 政府は通常国会に給付の削減と掛け金負担の引き上げを内容とする法案を提出し、いわゆる「抜本改革」なるものは1年先延ばしにするといわれています。
しかし、基礎年金の国庫負担率2分の1の実施は消費税率の引き上げとセットにする方向が示されるなど、弱者に負担を強いる消費税の増税によって、社会保障財源を確保するという、本末転倒の政策が検討されています。
 1千万人といわれる無年金者層など制度の空洞化対策は政治の責任そのものであり、全労連の最低保障年金要求実現と、雇用改善による年金制度の基盤確立の運動は、国民の共感と共同を広げる大きな可能性を持っています。
 年金闘争は、この国の予算の仕組みや財政、税制のあり方を国民本位に転換するたたかいであります。
 それだけに、実務の専門家を組織する国公労連として、膨大な年金積立金の有効活用や軍事費の削減による財源の確保、税制の改善など、国民の支持と共感を広げる、より具体的な政策の確立についても努力していく必要があります。
私たち自身と勤労国民全体の生活と将来不安を解消し、希望の持てる未来を築くために、ご奮闘をお願いするものです。
 
次に、公務のリストラと公務員制度のたたかいについて申し上げます。
 11月に開催された行政研究集会において、規制緩和の強行が国民生活のあらゆる分野で国民の安全を脅かし、労働環境を悪化させている実態が明らかとなりました。
 総合規制改革会議は、雇用、医療、教育、農業など、国民のいのち、くらし、安全にかかわる分野の民営化をさらにすすめ、もうけの対象にする攻撃を強めています。
 いま重要なことは、国公産別闘争を基盤に各行政分野で発生している諸問題を有機的に結合し、社会的に検証・告発していく行政民主化闘争の発展であり、その努力が公務の公共性を守り、増員闘争を前進させることにつながると思います。
 国立病院の独法化にともなう賃金職員の雇用確保・継承を求める運動は、重要な局面を迎えます。
 厚労省は、夜勤可能な看護師を正職員とする一方、その他の職員は賃金が大幅に低下するパート化もしくは委託化という不当な提案をおこない、管理運営事項を理由にまともな協議をおこなわない態度をとり続けています。
 全医労の仲間はきびしいたたかいのなかでも、11月だけで200人の新規加入を実現するなど、団結を基礎に大奮闘しています。
 また、全労連闘争本部規模での運動も全国に広がり、好意的なマスコミ報道も増えるなど、地域医療のあり方とこれを支える職員のリストラ問題が大きな社会問題となりつつあります。
 強調したいことの1つは、長年にわたって国立医療を支えてきた賃金職員の皆さんの生活と権利、人間としての誇りをかけたたたかいを共通の思いにすることであり、2つは、いわゆる「雇い止め」に示されるように、この問題の根底には非常勤職員制度の矛盾があること、3つは、厚労省が独法移行後の就業規則によって給与の削減、労働組合活動の制限など、一方的な不利益変更を強行しようとしていることです。
 このたたかいは、国公の職場にはたらくすべての仲間の共通の課題であり、組織改編にともなう雇用不安、労働条件の低下は断じて許さない、との立場で引き続き奮闘したいと思います。
公務員制度をめぐるたたかいも新たな段階に入ります。
 政府は推進事務局の体制を一新し、通常国会にむけた作業をすすめていますが、その内容は労働基本権の制約を維持し「大綱」の具体化をすすめるというものであり、いっそうの運動強化が必要です。
 国公労連は、ILO勧告の到達点をふまえた労働基本権回復要求のとりまとめをいそぐとともに、「大綱」にもとづく関連法案提出反対のたたかいを強めたいと思います。
 この間、長野や秋田をはじめブロック・県国公の皆さんのご奮闘の結果、地方議会での請願・意見書採択は200をこえ、有識者アピールの推進など世論喚起の運動は着実に前進しています。
 「国公権利裁判」の勝利をめざすたたかいとあわせて、ILO勧告にもとづく公務員制度確立の重要性を再確認し、奮闘していきたいと思います。

 次に賃金闘争と生活を守るたたかいについて申し上げます。
 労働者の生活を守るという点で04春闘は重要な節目のたたかいになります。
 日本経団連などの春闘解体攻撃が本格化し、これに呼応する形で連合と傘下の大企業労組が統一賃金要求を自粛するもとで、労働者全体の要求を視野においた全労連の役割は重要であります。
 重視するたたかいの1つは、大企業の社会的責任をただしていくことです。
 大企業は人件費抑制などリストラ効果によって業績を回復させています。
 大企業のリストラは景気の後退や医療・年金制度の空洞化につながり、地域経済の破壊・社会の貧困化を加速させています。
サービス残業の解消とはたらくルールの確立、雇用の確保とリストラの規制など、大企業の民主的規制は日本経済の活性化をはかる上で社会的大義をもった国民的要求であり、全労連の運動に積極的に結集していきたいと思います。
 2つは、雇用労働者の3分の1近くになった不安定労働者層の劣悪な労働条件改善なしには、私たちの労働条件改善もありえないことです。
 全労連が提起する最低賃金引き上げ、底上げ要求をめざすたたかいは私たち自身の要求であることを確認し、その立場から非常勤職員・相談員などの要求前進・組織化に向けてさらに努力したいと思います。
 3つは、もっとも重要な労働条件である賃金が、まともな労使交渉・協議もないまま一方的に切り下げられるという事態をなんとしても克服する必要があることです。
 昨年来の民間労働者との共同をつうじて、マイナス勧告が賃下げ悪循環の大きな要因であるとの認識が広がっています。
 また、人事院がすすめようとしている賃金制度の見直しは、業績主義強化と全体水準の低位平準化にその狙いがあることは明らかです。そうしたことを許さないためにも、職場からの使用者責任追及を強め、地域からの共闘を広げていきたいと思います。
 
最後に組織拡大の課題です。
 国公労連は、「国公職場にはたらくすべての仲間を労働組合に迎え入れる」との決意のもとに、国公一般労組の立ち上げと非常勤職員・相談員の組織化を具体的にすすめていきます。
 すべての機関が春闘のとりくみをつうじて、「必ず増やす」との決意のもとに、攻勢的なとりくみを展開していただくようお願いするものです。

 中央委員会成功にむけた積極的な討論をお願いし、あいさつを終わります。

以上

トップページへ  前のページへ