労災保険の民営化など労働者・国民犠牲の規制改革に反対する(談話)

2003年12月10日
日本国家公務員労働組合連合会書記長・小田川義和


1.
 政府の総合規制改革会議は、9日、最終答申案を固めた。焦点となった労働者災害補償保険(労災保険)について、自動車賠償責任保険(自賠責保険)と共通点が多いとして、「民営化を図るべき」とし、公共施設・公共サービスについても民間開放を進めることを求めている。労災保険の民営化は労働者・国民の安心確保を損なうものであり、公共施設・公共サービス(いわゆる公物管理)の民間開放をさらに進めることは、文化・教育の振興、生活基盤整備などの公共サービスに対する国・地方公共団体の責任を後退させるものである。国公労連は、こうした規制改革に強く反対するものである。

2.
 労災保険は、憲法と労働基準法上に規定された「人権保障」を担うものとして位置づけられ、公権力行使に裏付けられた強制責任保険で補償を確実にする制度として運営されてきた。また、適切な補償のため、使用者の協力が得られない場合も被災者等の立証責任を補完している。こうしたことによって、かつての工場における労働災害、最近の過労死にたいする補償などで大きな役割を果たしてきた。また、労災保険制度は、国家公務員災害補償制度を含めすべての災害補償制度の基準でもあり、その改悪は、その他の制度に大きな影響を与えずにはおかない。

3.
 労災保険を民間に委ねた場合、労災認定を厳しく行い、より利益を上げようとすることや保険料を払わない・払えない事業所の労働者は災害補償されない危険があることなどについて強い懸念がある。総合規制改革会議は、まず、こうした懸念に答えるべきである。

4.
 しかるに、これには何ら答えず、自賠責とは国が責任を持って作った制度だから「共通点が多い」という薄弱な根拠に基づき、民営化を強行しようとしている。同会議は、民間が行った方が効率的であるというドグマを振りかざすが、多くの州で民間企業が参入したアメリカに比べ、日本の労災保険がはるかに効率的であることについて、説得的反論ができない。

5.
 「民営化という結論を性急に出すことについては、反対である」と労働政策審議会労災保険部会が公労使委員全員一致で意見具申しているようにまともな経営者であればこの動きに反対せざるを得ない。しかるに、総合規制改革会議は、16日にも小泉総理に答申を提出し、政府に、道理でなく、市場原理主義のドグマに立ってこの暴挙を強行するよう求めようとしている。

6.
 労災保険をめぐる事態は、市場原理主義に基づく規制改革を推進する人々が、特定企業・業界の利益のみを考え、公共性破壊をねらっていることをわかりやすく示している。規制改革の本質を広く労働者・国民に明らかにし、企業経営者すら反対するような暴挙をストップさせうる。この闘いに勝利することは、医療や教育の民営化・民間化など総合規制改革会議が次にねらう攻撃を許さないためにも重要である。国公労連は、労災保険民営化阻止、公共サービス提供の国・地方公共団体責任後退を許さないため、全労連に結集し、全労働の仲間など、関連分野の労働者・労働組合、国民各層と連携し、全力で闘うものである。

以上

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