国の検定制度を形骸化するトヨタ自動車の1級小型自動車整備士技能検定試験の試験問題漏洩事件について(談話)

  国家資格である1級小型自動車整備士技能検定の試験問題がトヨタ自動車から同社系ディラーに漏洩していたことが発覚した。法律で規定された国の検定制度を形骸化するもので、トヨタ自動車の責任は大きい。
 自動車整備士は国土交通大臣が認定する国家資格で、技能検定には1級、2級、3級、特殊(タイヤや電気装置)など全14種類ある。1級試験は、ハイブリッド車など高度な自動車の登場と顧客に対する説明能力がアフターサービスにとって不可欠になっていることから2002年度から開始された。
 試験問題は、国土交通省の職員である検定委員が作成し、出題問題が適切かどうかを検討委員会にはかるシステムだ。検討委員会の検定専門委員は、25名で学識経験者や整備士と12のメーカーが推薦する者で構成されている。
 今回の事件は、検定専門委員であるトヨタのグループマネージャーが試験問題を持ち帰り専門知識のある上司に渡したため漏れたとされている。
 また、12月4日の朝日新聞は、「社内調査で漏洩した社員は、昨年の試験は、日産自動車より合格実績が悪かったので、今年は実績を引き上げたかったと動機を説明」と報道している。
日本経団連の奥田会長が、「経済界をリードすべきトヨタ自動車の不祥事は厳正な処分が必要」として、12月4日にトヨタ自動車の張社長に対し、厳重注意の処分を行ったことも新聞報道されている。
 トヨタ自動車は、この間、労働者に対する徹底したリストラ「合理化」をすすめ、1兆5千億円もの利益を上げながら、2003年春闘では賃金引き上げを行わなかった。今回の事件も利益をあげるためなら、なりふり構わず、最低のルールさえ守らない企業体質をあらわにしたものだ。
 ヨーロッパなどの先進諸国では、社会的責任を果たさない企業は信用を失墜し、国民から相手にされなくなっていることと、余りにもかけ離れている。
 小泉「構造改革」のもとで「官から民へ」をスローガンに、検査・検定業務の独立行政法人や民営化がすすめられている。しかし、これは、業界等スポンサーへの財政的・人的依存をさらに強めることをもたらすことになり、国家資格認定団体として求められる厳正・中立性を損なうことが危惧されてきたが、今回の問題は民間活力活用の弊害を表面化させた。いま求められているのは、公共分野における中立性の確保のための財政的、人的、制度的な措置である。
 国公労連は、今回の事態を受け、同様の検査・検定を行っている業務の点検を政府に求めるとともに、公正な業務を維持するためのとりくみをつよめていく決意である。

2003年12月8日

日本国家公務員労働組合連合会
      書記長 小田川 義和

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