国公FAX速報 2003年10月3日《No.1452》
 法案審議に先立ち国会議員要請
 5年連続賃下げ、不利益遡及は認められない

 衆議院総務委員会での審議に先立ち、国公労連は、10月1日、各単組代表者及び国公労連本部役員の参加で、衆参両院の全総務委員に「『賃下げ勧告』にもとづく給与法『改正』法案審議に関わる要請」を行いました。参加者から各国会議員に対し、「人勧にもとづく5年連続の年収切り下げとなる給与法改正に反対してもらいたい」「実質的に4月に遡って、賃下げを実施するいかなる調整手段も講じないようにしてもらいたい」の2点について、国家公務員の生活の実態や、賃下げが民間労働者や国民生活に及ぼす影響などを、具体的な資料で明らかにしながら訴えました。
 訴えに対し、「要請に賛同し、国会で追求していく」(共産)「(給与法改正に)反対の立場で国会に臨む」(社民)と、要請に理解を示す議員がある一方で、与党の議員からは「給与法改正に反対できない」(自民)「給与法改正に賛成である」(公明)と回答してきました。
 なお、3日に行われた給与法「改正」法案の審議概要と結果は以下のとおりとなっています。

〈以下、「公務労組連絡会FAXニュース」2003年10月3日No.431より転載〉

 給与法「改正」法案が衆議総務委員会で可決
 −実質1時間にも満たない審議、争点をそらす政府−


 給与法「改正」法案は、3日午前の衆議院総務委員会で審議され、共産・社民を除く各党の賛成多数で採択されました。同日午後からは、衆議院本会議が開かれ、「テロ特措」などとともに給与法案が採択され、法案は参議院に送付されました。
 衆議院総務委員会には、公務労組連絡会から13人(国公労連6、全教3、自治労連2、特殊法人労連1、事務局1)が傍聴に入り、法案審議を監視しました。しかし、わずか3時間しか質疑時間がないうえ、給与法にかかわる質疑は実質1時間にも満たず、「こんな審議で16万円も年収を下げるのは許せない」との怒りの声も聞かれました。

 「若手職員の60%が成果賃金に賛成している」と見直し表明

 この日の総務委員会の質問に立ったのは、民主3名、共産・社民各1名の議員で、与党各党は、「審議促進」のため、はじめから質問時間を放棄しました。
 また、内閣改造後、麻生太郎総務大臣がはじめて委員会に出席したこともあり、麻生氏に対する個人追及や、選挙目当てとも思われる質問も目立ちました。そのため、給与法案の審議だけを目的に開催した委員会にもかかわらず、法案の内容を追及したのは、黄川田徹(民主)、春名直章(共産)、重野安正(社民)の3議員だけで、合計しても1時間にも満たず、きわめて不十分な質疑となりました。
 民主党の黄川田議員は、「昨年につづく公務員給与の引き下げは、民間のきびしい実態を反映したものだが、小泉内閣の失政が景気を低迷させ、それが民間の賃下げにつながっている。そうした意識は政府にはないのか?」とただしました。
 麻生大臣は、「経済対策が不十分との指摘はわからないわけではないが、しかし、賃下げは、中国の安い労働力が大量に使われだしたことも背景にある。物価も下がっている。中国の自由経済への転換の影響が大きい」などと、まるで他人事の答弁をくり返しました。
 社民党の重野議員は、「人事院は、民間の実態をふまえて、成果・実績重視の給与構造見直しを明らかにしているが、民間では、評価システムが見直され、外国からは、年功を柱にした日本の給与制度を評価する声もある。公務に持ち込むには、民間の賃金動向を慎重に観察する必要がある」と指摘し、人事院の考えをただしました。
 中島人事院総裁は、「成果主義賃金は、先進的な民間大企業ですでに多く導入されている。しかし、評価にあたって、個人主義にならず、全体としての成果をどう評価していくかなどの問題点も指摘されており、勉強したい」としながらも、「若手職員の60%が成果主義賃金の導入に賛成している」とのべ、能力・業績主義強化の方向を明らかにしました。

 「『賃下げの悪循環』の主張は理解しがたい」と大臣答弁

 この日の委員会で、もっとも時間をかけて「賃下げ給与法案」の問題点を追及したのは、共産党の春名議員でした。春名議員は、(1)公務員の賃下げによる景気への影響、(2)人事院の民間賃金実態調査の問題点、(3)「不利益遡及」の不当性などを中心に、国民生活とのかかわりから質問をすすめました。
 はじめに、「公務員の年収は、この5年間で49万円も下がっている。それが、日本経済や国民の暮らしにどんな影響を与えていると考えているか?」とただすと、麻生大臣は、「公務員給与の引き下げは、日本経済に直につながってはいない。公務員の給与を民間給与にあわせて引き下げることは、もっとも国民の理解が得られる方法だ」と答えました。
 これに対して、春名議員は、「人事院は官民比較で勧告をだすかもしれないが、それをどのように実施するかは政府が決めることだ。公務員賃金は年金にも連動する。今回の賃下げにより、7,690億円のGDPが減るとの試算もあり、景気に冷や水を浴びせることにもなる。『民間準拠』にとどまらず、国民生活や経済情勢からの議論が政府としてあってしかるべきだ。」とせまると、「影響がないとは言わないが、果たして足を引っ張っているとまで言えるのか。むしろ、公務員の給料は下がらないのかとの不満の声もある。国民の納得はえられない」とし、景気への影響については答弁を避けました。
 また、公務員の賃下げが民間に影響をおよぼし、「賃下げの悪循環」を引き起こしている事実を春名議員が具体的に指摘したことに対しても、麻生大臣は、「公務員の賃下げを口実にして給料を下げる経営者もいるかもしれないが、その主張は理解しがたい」として、事実さえ認めないとする態度をとりました。
 さらに、春名議員は、「勧告の官民較差は、日本経団連などの調査とかけ離れている。『減らしすぎ』という疑念の声もある。どうしてこうした結果になったのか?」とただしました。中島総裁は、「他の民間調査機関の方法と異なり、人事院は、民間賃金の通年の変化を定点観測している。長年実施し、定着してきた方法であり、これを変える考えはない」とし、人事院の調査方法の優位性をあれこれと説明しただけで、「なぜ、これだけの逆較差が生まれたのか」との疑念に対しては、明確な答弁はありませんでした。
 最後に、「不利益遡及」問題について、「昨年と方法を変えても、賃下げの遡及には変わらない。これでは、法改定まで公務員の給与は『仮払い』ということになり、安定的な生活は保障されない。また、給与支給の一般原則からも問題が残る。さらに、今回の定率方式では、青年層に重い負担がかかる」と指摘すると、「昨年の国会の附帯決議もあり、各省や職員団体の意見も聞き、その結果、事務の簡素化なども考えて、定率の方式をとったものだ」と麻生大臣がのべたことから、春名議員は、「労働基本権制約の代償措置として人事院勧告制度があり、公務員は労使対等の交渉で賃金を決定できない。だからこそ、不利益が生じるのであれば、使用者である政府は、職員に対して、きちんと納得できるような説明をすべきだ。そうした努力をあらためて強く求める」ときびしく指摘しました。
 質疑終了後、共産党の矢島恒夫議員、社民党の重野議員が反対討論をおこない、その後、採決に入り、一般職に関わる給与法「改正」法案は、共産・社民をのぞく各党、特別職に関する法案は、社民をのぞく各党の賛成多数により採択されました。

以上

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