国公FAX速報 2003年9月12日《No.1445》
 国公権利裁判・第4回口頭弁論
  準備書面や求釈明をめぐって議論応酬

 「不利益遡及は許さない!国公権利裁判」の第4回口頭弁論が、9月11日(木)10時30分から、東京地方裁判所第705号法廷で開かれました。
 これに先立って、9時45分から裁判所周辺でとり組まれた街頭宣伝行動では、宮城、愛知、大阪など全国各地から参加した原告団6名と、各ブロック国公および各単組の代表者など、全体で70名を超える参加者が、真夏を思わせる日差しと熱気のなか、道行く人たちにビラを差し出して支援を訴えました。また、裁判終了後には、前回同様、弁護士会館で報告集会及び連続学習会(第3回)を開催しました。

 ▼街頭宣伝/脱法(不利益遡及)くり返す政府・人事院に怒り!

 街頭宣伝行動では、冒頭、山瀬副委員長が、「私たちは、国が昨年行った『減額調整』措置は不利益遡及そのものであり、正に脱法行為であると追及してきた。しかし国側は、公務員の労働基本権制約は合憲であり、今回の特例措置も合理的かつ適法だとしている。さらに、今年も月例給で1.07%、年収で2.6%のマイナス、しかも4月に不利益遡及させるとの人事院勧告が出され、来週早々にも『完全実施』の閣議決定が強行されようという緊迫した状況となっている。今こそ官民ともに『働くルールを守れ!』『労働者の権利の一方的な切り下げを許すな!』の行動が極めて重要となっている。その意味からも国公権利裁判への絶大な支援をお願いしたい」とあいさつしました。
 決意表明では、8月8日の2003年人事院勧告に対する激しい職場の怒りの声が続きました。
 「8月の人勧には職場で大きな怒りが渦巻いている。これでは住宅ローンが払えない、子供の教育費が払えない、など切実な声が聞かれる。不利益遡及という脱法行為をくり返したことにも強い怒りを感じる。国公労働者だけでなく全ての労働者の問題としてたたかっていく」(原告団・森井さん/大阪国公)、「政府は景気回復しつつあると言うが、公務員賃金を下げ続けておいて何を言っているのかと思う。世の中は暗くなる一方で、政治家は黒を白と言いくるめようとしている。この裁判で何とか一石を投じたい」(同・酒徳さん/全運輸)。このほか、国公近畿ブロック・秋山事務局長、全経済・伊波書記長、全気象・鯉川副委員長からも、それぞれ力強い決意が語られました。最後に堀口委員長から「これまで3回の口頭弁論が行われたが、国側の主張は矛盾に満ちている。生活の糧であり、最も重要な労働条件である賃金は労使対等の交渉で決めるのが当たり前で、代償措置機関が決めるようなことがあってはならない。政府は使用者責任を果たそうとしていないだけでなく、公務員制度改革でさらに公務労働者を無権利にしようとしている。小泉内閣の本質を全国で訴えていこう」とのあいさつがあり、団結ガンバローで行動を締めくくった原告団・傍聴団は、法廷へと向かいました。

 ▼口頭弁論/本件の賠償責任は、人事院総裁、総務大臣及び
   総務省人事・恩給局長、総理大臣、国会議員にある


 東京地裁705号法廷は、原告6名、弁護団5名、傍聴席40名(国公労連、各単組・ブロック国公代表)で全体51名が出席し、被告の指定代理人と併せて、これまでの弁論期日と同様、満席となりました。
 この日は、原告側から2通の準備書面と1通の求釈明書(※PDFファイル64KB参照)、8通の書証(別項参照)が提出されました。第2準備書面は、事実経過及び人事院・政府が国公労連と十分な交渉協議を行わないままに給与減額措置改定法を制定・実施したことの不当性を主張するもの、第3準備書面は、本件の国家賠償責任を負うべき不法行為の主体について、前回の弁論で被告から出されていた求釈明に答えるものです。裁判長から、この第3準備書面について確認の質問があり、弁護団は本件の不法行為者が「人事院総裁、総務大臣及び総務省人事・恩給局長、内閣総理大臣、国会議員」であることを、改めて主張しました。
 次回、国側は、原告の求釈明に答えるかたちで、公務員の「不利益不遡及の原則」「情勢適応の原則」について、見解を明らかにすることとなります。「不利益不遡及の原則」は民間だけに適用されるのか、それとも、公務にも適用されるが本件特例措置はこの原則に違反しないということなのか。また、本件特例措置について、国は「国公法が定める情勢適応の原則にのっとり行われたもので、合理的な措置であり適法」と主張していますが、その場合の「情勢適応の原則」とは何なのか、果たして脱法行為が正当化できるのか―。これまで政府・人事院が曖昧にしてきたこれらの点について、初めて国の正式な見解が明らかにされることになります。

《指定告知された期日》
 (第5回)11/6 AM10:30 被告:原告第2準備書面への反論、求釈明への回答
  原告:第3準備書面の補強

 (第6回)12/18 PM13:30 原告の主張


 ◆報告集会/不利益不遡及原則と「情勢適応原則」で連続学習

 裁判終了後、弁護士会館5階の508号会議室において、報告集会と「不利益不遡及原則と『情勢適応の原則』」とのテーマによる連続学習会(第3回)が開催されました。
 報告集会では、弁護団事務局長の佐久間弁護士より、本日行われた手続の説明がありました。
 佐久間事務局長は「本件の国家賠償責任を負うべき不法行為の主体については、手続段階で関わった公務員は当たらない、突き詰めれば、法律をつくった国会議員だけ、というのが国の指定代理人の主張である。しかし、団体交渉の応諾義務を果たさなかった総務大臣、総務省人事・恩給局長はもとより、不利益遡及という違法・脱法な調整措置を勧告に盛り込んだ人事院総裁、人勧の取扱いと給与法改正の手続を進めた内閣総理大臣も、同様に不法行為者として損害賠償責任を負う、というのが私たちの主張だ」と、専門家でも分かりづらい内容を丁寧に説明しました。
 連続学習会では、加藤弁護士を講師に、本件の焦点でもある「不利益不遡及原則と『情勢適応原則』」について学習しました。「民間企業では、労働条件の不利益変更をする場合、労使交渉を尽くすなど高いハードルが設けられている。そして、それが許される場合でも、遡って不利益変更の効力を及ぼすことはできない。その意味で今回の調整措置は、4月に遡って賃金を切り下げる、正に脱法行為と言える措置だ。『情勢適応の原則』の本来の意義は、労働基本権制約の代償措置という点にあり、この原則を口実にして公務員の賃下げや不利益遡及を行うことは本末転倒だ」との講義を聴き、参加者は権利裁判における私たちの主張の正当性に確信を深めました。
 最後に、山瀬副委員長から、弁護団会議の予想では年内にも主張整理が終わり、年明けから証拠調べ(証人尋問)に入るのではないかとの見方をしていること、03人勧の取り扱いをめぐって来週16日にも「完全実施」の閣議決定がなされようとしており、2年連続の「不利益遡及」を許さないためにも引き続く午後からの第一次中央行動への参加などが提起され、参加者全員で決意を固め合いました。

【今回提出された書証】
 ・国公労調査時報(2002年人勧特集号)
 ・人事院あて国公労連要求書(2002.2.15付)
 ・人事院あて国公労連要求書(2002.6.19付)
 ・国公労連の抗議声明及び談話
 ・会見要旨(人事院作成のもの)
 ・会見要旨(総務省作成のもの)
 ・衆議院総務委員会議録
 ・参議院総務委員会議録
以上

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