【国公労連第49回定期大会】2003年8月27日
中央執行委員長あいさつ
日本国家公務員労働組合連合会 中央執行委員長 堀口士郎

 大会にご出席いただいた皆さんと全国の仲間たちのこの間のご奮闘に心より敬意を表します。また、大変ご多忙の中激励のためにかけつけていただいたご来賓の皆さまに、日頃のご指導・ご協力に対する感謝と合わせて心よりお礼を申し上げます。

 さて本大会は、日本の平和と国民の雇用・くらし・いのちを守る運動を発展させる上で重要な節目となる大会であります。
 いま私たちは、憲法を蹂躙してすすめられる軍事大国化と市場原理優先の社会・経済構造への改編を許すのか、それとも憲法を基本とした民主主義の発展と、労働者が人間らしく生き・働く社会をめざすのか、その歴史的な転換点に立っていると思います。
 また職場では、引き続く賃金引き下げによる生活悪化と定員削減による労働強化・健康破壊が深刻となり、行政減量化・民間化が強行される中で仲間たちの将来不安が高まっています。
 その意味では、組合員と家族の切実な要求と勤労国民全体の生活と権利を守る運動を統一的に追求する国公労働者の役割発揮が、今日ほど求められているときはないと思います。
 政府は国民の反対を押し切って有事関連法に続き、自衛隊の派兵を目的とするイラク特措法を成立させ、さらに、1年以内に国民への戦争協力を強制し、基本的人権を蹂躙する「国民保護法制」の国会提出を予定しています。
 私は皆さんとともに、国民を戦争に動員するなど戦争する国づくりを担う公務員労働者になることを断固拒否するとともに、有事法制の発動を許さないたたかいに全力をあげる決意を固め合いたいと思います。
 58年前、私たちの先輩は侵略戦争の惨禍と反省の上に立って、働く者の生活を守り、官庁を民主化し、日本と世界の平和をめざしてたたかうことを決意して、国公労働運動を立ち上げました。
 いまその「原点」に沿って、職場の仲間一人ひとりが「国家権力を制限し、人権を保障する」ことを最大の特徴とする日本国憲法の平和原則、基本的人権擁護などの諸原則を学びあい、「憲法を職場、くらし、行政に生かす」運動の先頭に立つことが求められていると思います。
 国公労連はその立場から労働組合の責任を自覚し、日本の平和と働く者の雇用・くらし・いのちを守る運動の一翼を担い、奮闘することを表明するものです。 
 
 次に、小泉「構造改革」に反対する国民共同のたたかいについて申し上げます。
 「聖域なき構造改革」を掲げた小泉内閣の発足から2年4カ月が経過しました。
 この間、380万人もの失業者が生みだされ、過労死が後を絶たず、年間の自殺者が3万人を超え、ホームレス、凶悪犯罪が激増するなど、人間らしく生きることさえ許されない過酷な社会がつくられています。
 大企業・多国籍企業の利益擁護をはかるため国民に犠牲を強いる「構造改革」路線が、日本経済を支える中小企業の経営基盤や勤労国民の生活を危うくし、消費購買力の低下・デフレ不況の要因となっていることは明らかです。
 さらに6月に決定された「骨太の方針・第三弾」では、財政・雇用・税制・社会保障・教育などのあらゆる分野で、国民負担の増大やナショナルミニマムの切り下げ・低位平準化の方向が打ち出されています。
 国公労連は、戦後民主主義や平和原則、国民の最低限の生きる権利さえも否定する「構造改革」路線を国民共同の力で転換していくため、年金制度改悪反対・最低保障年金創設の要求を国民共通の対抗軸として位置づけ、奮闘していきたいと思います。 
 保険料引き上げと給付削減を柱とする制度改悪は85年以来の抜本改悪であり、大企業・財界は、総額人件費抑制・法定福利費削減の立場から、消費税増税を財源とした基礎年金の税方式への転換を主張しています。
 このたたかいは、国民の生きる権利を基本に、消費税率引き上げなど新たな国民負担を許さず、国の予算配分・財政政策を国民本位に転換させるものであり、21世紀の国づくりの基本ともいえる課題です。
 「構造改革」の強行によって小泉政治と国民との間の矛盾があらゆる分野におよんでいるもとで、この1年間に総選挙と参議院選挙がたたかわれます。
 国公労連は「構造改革」の強行が労働条件や国民生活改善、日本経済の民主的再建の障害になっていることを明らかにしながら、雇用・くらし・いのち・平和を守る政治への転換をめざして奮闘するものです。
 
 次に民主的公務員制度確立と公務リストラのたたかいについて申し上げます。
 公務員制度改革をめぐるたたかいは新たな段階に入ります。
 申し上げたいことの1つは、公務員制度改革関連法案の通常国会提出を阻止した到達点を今後の教訓にしたいということです。
 政府・推進事務局は通常国会会期中に少なくとも4回にわたって関連法案の閣議決定を画策したといわれています。
 これを阻止したのは、民主的公務員制度の確立など3つの基本要求にもとづいて粘り強い交渉・協議をすすめ、「改革」内容の矛盾点を社会的に明らかにしてきたこと、全国キャラバン行動、ILO要請など、全労連規模での世論喚起の運動に全力をあげてきたこと、などの運動の反映であり貴重な到達点だと思います。
 しかし、7月16日、自民党の行革推進本部は、「法案提出にむけてさらに準備をすすめる」ことを確認したといわれており、引き続く秋のたたかいが重要となっています。
 2つは、ILO勧告にもとづく民主的公務員制度確立にむけた運動の具体化であります。
 人事院による不当な賃下げ勧告を見るまでもなく、労働基本権制約が要求の前進と職場・行政の民主化にとって大きな障害になっていることは明らかです。
 ILOの2度にわたる勧告は、人間の尊厳にもとづく権利確立にむけて、私たちに主体的にたたかうことを呼びかけた国際社会からの要請だと思います。
 国公労連は全労連に結集して労働基本権回復の要求・政策を確立するとともに、国公権利裁判の意義や賃下げ勧告の社会的影響を訴えるとりくみとも連携しながら、ILO勧告に沿った民主的公務員制度確立にむけて具体的な運動を開始するものです。
 
 いま、さまざまな分野で公務の公共性破壊・民間化の攻撃が強まっており、職場と雇用、労働条件を守るたたかいを行政民主化闘争と一体で発展させることが重要になっています。
 国公労連はその重点課題として、国立病院・療養所で働く7500人の賃金職員の皆さんの、独立行政法人移行にともなう雇用の継続に全力を上げたいと思います。
雇い止めを阻止し雇用の継続を勝ちとることは、国民の医療を守るとともに労働者の生活と誇り、人間の尊厳をかけたたたかいであります。
 同じく独法となる国立大学の非常勤職員の雇用継続と、各職場の非常勤職員の要求実現、組織化のとりくみとも結合して奮闘したいと思います。
 
 次に賃金闘争について申し上げます。
 まず私は、過去4年にわたる年収引き下げと税金、社会保険料などの負担増で生活悪化がすすむ公務員の実態を無視して、史上最悪の「賃下げ勧告」をおこなった人事院の責任を厳しく指摘するものです。
 同時に政府に対し、この勧告が公務員労働者の生活と労働の実態にてらしても、また、労働基本権制約の「代償措置」という点からもきわめて不十分なものであることをふまえ、勧告の取り扱いについて労使交渉を誠実に尽くすことを要求するものです。
 今後の局面をきりひらいていく上で次のことを強調したいと思います。
 その1つは、人事院勧告の社会的・経済的影響を国民的に明らかにしながら、公務員賃金引き下げ反対、最低賃金や、社会保障の低下に連動させるな、の世論をさらに大きくしていくことが重要だと思います。
 同時に、賃下げ・リストラの悪循環に歯止めをかけるためには、公務・民間労働者が連帯する統一的な運動の発展が不可欠であり、その実践と拡大を追求していく必要があります。
 昨年来のたたかいをつうじて、民間の皆さんにも労働基本権制約が賃下げ勧告・不利益遡及の要因となっていることや、人事院勧告が労働者の賃金水準や最低賃金の引き下げ、年金、生活保護基準などの引き下げに連動し、デフレ不況を深刻にしているとの共通の認識が広がりつつあります。
 この世論を拡大し秋のたたかいから春闘へと発展させていくことが当面する課題だと思います。
 また、賃金水準の引き下げと地域間の格差拡大などにつながる賃金制度の改悪を許さないため、各県レベルでの共闘組織結成など地域からのたたかいを強めていきたいと思います。
 2つは、国民春闘発展の重要性です。
 財界の春闘解体攻撃をうち破り、新しい国民春闘をきりひらいていくためには、労働組合の「企業内主義」を克服し、社会的力関係を変えていくたたかいの発展が重要です。
 このことから全労連は、来春闘にむけて最低賃金や社会保障の給付水準、下請け単価の改善など、労働者・国民諸階層の所得保障闘争を結合した「国民総決起」春闘を提起しています。
 国公労連は、政府・財界の系統的で全面的な攻撃が国民のあらゆる階層にむけられていることから、この提起をねばり強く実践していくとともに、大企業の横暴を規制し、社会的責任を果たさせるとりくみを春闘再構築の軸として重視したいと思います。
 これらのとりくみの具体的で地道な実践が、賃金引き下げ攻撃を阻止することにつながると確信するものです。

 最後に組織の強化・拡大について申し上げます。
 労働組合の社会的影響力の源泉は「数の力」であり、要求前進のためには国公労連・全労連の組織拡大・基盤の強化は緊急の課題であります。
 重視するとりくみの1つは、非常勤職員の組織化に弾みをつけたいということです。
 国公職場には20万を超える非常勤職員が制度の狭間におかれ、無権利、低賃金で行財政・司法の職場を支えています。
 この課題は国民連帯のたたかいを重視する運動の「原点」に即しても、また、さまざまな攻撃に反撃し、民主的な職場を確立していく上でも重要です。
 2つは、全労連の組織拡大推進基金を成功させることです。
 全労連は我が国労働者の当面10%、500万人のナショナルセンターをめざし、そのための基金設立方針を決定しました。
 国公労連は、この方針を国公労働運動の将来展望を確かなものとする運動の一環と位置づけ、「チャレンジ30」の具体化と一体でとりくみたいと思います。
 国公労連は2年後に連合体結成30周年を迎えます。
 30周年を史上最高の組織力量で迎え、21世紀の国公労働運動発展の礎を築くため、「チャレンジ30」の成功にむけていっそうのご奮闘をお願いするものです。

 大会の成功にむけた積極的な討論と、ご奮闘をお願いしてあいさつを終わります。
以上

トップページへ  前のページへ