「公務員制度改革大綱」を撤回し、民主的公務員制度確立にむけた
「出直し」を求める(談話)

 7月28日に通常国会が閉会し、政府・行革推進事務局が画策した公務員制度改革関連法案の同国会会期中の閣議決定は見送られた。その最大の理由は、国公労連をはじめとする関係者との交渉・協議や国民的論議を十分に尽くさないまま、一部官僚と与党政治家との「密室談合」で制度改革を進めようとしたことにある。国公労連は、日本政府がILOからの二度の「勧告」を受けいれ、一昨年12月の「公務員制度改革大綱」を撤回し、民主的公務員制度の確立にむけた「一からの出直し論議」を強く求める。

 「推進事務局」は、1月20日からの通常国会会期中に、少なくとも4回、公務員制度改革関連法案の閣議決定を画策してきた。国公労連は、全労連・公務員制度改革闘争本部に結集して政府追及を強めるとともに、5月段階でとり組んだ「全国キャラバン」を通じた国民世論への働きかけや、ILO要請行動をはじめとする国内外の運動を強め、国会行動も機敏に展開するなど、一方的な閣議決定を許さない取り組みを展開した。
 そのような中で、ILOが6月に、「労働基本権制約の現状維持」とした「大綱」の「再考」と、結社の自由原則にそった制度改善を求める「再勧告」を行い、マスコミも「改悪法案の提出はやめよ」(7月5日、毎日新聞社説)などと主張する状況も生まれた。これらは、全国の仲間のねばり強いたたかいの反映であり、運動の貴重な到達点である。

 「推進事務局」は、会期末まで1カ月を切った7月2日、公務員制度改革関連法案の全文を各府省に提示し、閣議決定を前提とした「非公式協議」を開始した。しかし、同時に進められた与党協議の中で、法案内容への異論が噴出し、また怪文書の存在が明らかになるなどして、目論みどおりに事を運ぶことができなかった。
 今次公務員制度改革にかかわっては、当初から某省が「裏チーム」を編成して「推進事務局」の作業を「サポート」していることが指摘されていたが、法案決定段階でその存在が白日の下に晒されることになった。国公労連は、行政のあり方・内容にも直接的に影響する公務員制度を特定省の省益のためにもてあそぶ「改革」に強く抗議する。
 
 こうした不正常な「改革」の進め方が、公務員制度改革関連法案の内容にも強く影響している。ILO勧告に頑なに背を向け続けていること、内閣総理大臣や各府省の人事管理権限を拡大しながら労働基本権については何らの手だても講じようとしないこと、採用や再就職規制など公務員の政治的中立性にかかわる制度改悪が含まれていること、「改革」の柱とされる能力等級制度の勤務条件性を否定しているような集団的労使関係の軽視の姿勢が甚だしいことなどの法案の問題点は、「裏チーム」にも依存した無責任な「改革」作業の結果だと考える。国公労連が公務員制度改革の「一からの出直し」を求めるのは、その進め方、内容ともに歪んでいるからである。

 「推進事務局」は、通常国会への法案提出を見送らざるを得なかった根本原因には目を向けず、対症療法的な論議と「修正」で、早期の法案提出を図ろうとしている。そのことは、本日、国公労連が行った交渉で、「大綱」に固執する回答に終始したことでも明らかになった。政府は、「大綱」に固執する限り、公務員労働組合はもとより国民的な支持も広がらず、改革作業が密室化せざるを得ないという矛盾に気づくべきであり、「推進事務局」の態勢の刷新も含めた「出直し」を決断すべきである。国公労連は、そのことを強く主張する。

 「全国キャラバン」の取り組みの中で、政府に対し、165地方議会から「民主的公務員制度確立」を求める意見書が出されている。
 国公労連はこのような運動の到達点に確信を持ち、秋の臨時国会段階から来年通常国会も見通して、「大綱」にもとづく関連法案の閣議決定、国会提出を許さないたたかいをさらに強化する決意である。

   2003年8月1日
日本国家公務員労働組合連合会  
書記長  小 田 川 義 和

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