「地域給与研究会」の基本報告について(談話)

 人事院の「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」(座長・神代和欣放送大学教授)は、7月18日に「基本報告」をまとめた。
 研究会はもともと、「各地域に勤務する公務員の給与がその地域の民間給与と比較して高すぎるのではないか」との批判の声や、「地域ごとの官民較差の明示」という政府の意向も受けてスタートしたものである。しかし、「地域の民間給与をより反映」させ、「給与配分の適正化」を図るという人事院の方針もあり、当初から地域給にとどまらない給与制度全体の検討が予想されていた。
 そのため、国公労連はその審議内容が労働者の処遇・労働条件にとどまらず、公務員賃金のあり方の基本にかかわると判断し、公務員人事管理の特殊性や給与制度運用の現状なども強調しながら、現状以上の地域格差拡大がもたらす問題点を指摘してきた。また、全国一本の俸給制度の維持と水準確保、制度の公平な運用を訴え、研究会に対する意見表明や申し入れを行うとともに、研究会の傍聴監視を行ってきた。今年3月に中間整理が出た際には「主要な論点に対する国公労連の見解」を詳細に示し、意見反映を求めるとともに、地域給与問題についての組合員の意思統一も図ってきた。
 今回まとめられた「基本報告」は、「現在の公務員給与の地域差は不十分であり、今まで以上に地域の民間給与等を反映させることが必要である」というきわめて一方的な認識のもとに、「地域の民間給与をより反映させるため」、俸給等の水準を引き下げることも念頭におく新たな地域手当の導入や、異動保障に代わる「転勤手当」制度導入などの対応策を示している。しかも、それだけにとどまらず、この地域給与問題に基本的に対応するためには、給与構造全体の見直しが必要との認識の下、「給与カーブのフラット化や昇給制度のあり方の見直しなど、年功的な俸給表構造自体の見直し、職務の級の格付や職責手当を通じた職務に応じた処遇の徹底、ボーナスにおける成績査定分の拡大等、給与構造全体の在り方の方向性について」も、広く提言を行うに至るなど、きわめて広範にわたる給与制度上の改革を求めている。
 「基本報告」の基本的なねらいが、俸給表水準の引き下げと地域格差の反映、昇給制度の再検討、職責や業績の重視などを口実にして企画立案部門の優遇と地方の切り捨てにあることは明らかである。
 それは、「同一労働同一賃金」原則と、長期にわたって公務に精励できる安定的な賃金の在り方を著しく歪める方向であり、国公労連の「賃金3目標」にも真っ向から対立するものであるといわざるをえない。
 「基本報告」に基づく具体的な施策の展開は、今後の人事院の検討にゆだねられることになる。われわれは今後、自治体の仲間とも共同しながら、その検討の問題点を徹底して追及する。同時に、いかなる見直しも国公労連との交渉・協議と合意なしに強行することのないよう運動を強める。

2003年7月18日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川 義和

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