有事関連3法案の衆院本会議採決にあたって(談話)
 政府・与党と民主党は多くの国民の反対の声を無視し、14日に特別委員会、15日には衆院本会議において、有事関連3法案の採決を強行した。審議も十分尽くされていないなか、政党間の協議のみによって採決するという政治決着による手法は、議会制民主主義の形骸化であり、国民不在の政治をいっそう加速させるものである。そして、世界に誇るべき日本国憲法の平和主義を真っ向から否定し、近い将来に憲法「改悪」を視野に入れた、日本を再び「戦争する国」に変質させようとする狙いをもっていることは言うまでもない。

 有事関連3法案は、その一部を修正したとはいえ、アメリカのすすめる戦争に国民を動員させることを柱とする危険な本質はまったく変わっていない。後方活動に限定されていた周辺事態法と異なり、「武力攻撃事態法案」はさらにこれを拡大し、「武力攻撃予測事態」と判断されれば先制攻撃も可能としている。「わが国」の定義についても領土・領海内に限らず、公海上の日本の艦船までも含むことを明言しており、「専守防衛」を言いつづけてきた政府のこれまでの方針を大きく変える危険な本質を持つ法案である。「予測事態」により有事法制が発動されれば、国民の諸権利を大きく制約することになることは政府も認めており、修正案に盛り込まれた「基本的人権の尊重」も、あくまで戦争政策を優先するなかでの「尊重」であり、本質的には「人権侵害法」と呼ぶべきものである。
 
 武力攻撃事態法案では、「国」が地方公共団体や「指定公共機関」に対し協力への義務を課しており、国の行政機関に働く私たちは、戦争政策遂行のためにこれらの機関を動員させる業務を負うこととなる。今回の法案ではこれらの機関に対する首相の指示権・代執行権を当面凍結するとされたが、法文上何ら変更されないままとなっている。かつて第二次世界大戦や朝鮮戦争において、多くの国民を戦争政策に動員する立場に立たされた苦い経験から、ふたたびこのようなことをくり返すこととなる有事関連3法案を断じて認めることはできない。
 
 私たちは、多くの人々の犠牲の上に掲げられた日本国憲法の平和主義を遵守し、発展させる義務を負う公務員労働者として、「憲法遵守職場宣言」のとりくみや国民平和大行進への結集など、職場や地域からさまざまな憲法擁護・平和の実現を求めるとりくみを進めている。歴史を逆行させ、国民を戦争遂行のため強制的に動員させる有事関連3法案の成立に強く抗議するとともに、反戦平和を求める全国の人々と連帯して「有事法案反対、憲法を守れ」の運動をいっそう強めていくものである。


 2003年5月15日
 日本国家公務員労働組合連合会
 書記長  小田川義和

以上

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