参議院行革・税制特別委員会
−13日午前の審議

(国公労連「行革闘争ニュース」1999年12月13日付その1)


 参院行革・税制特別委員会の審議は、民主党・藤井俊男、同・内藤正光、公明党・荒木清寛、共産党・富樫練三の各議員が質問しました。

<民主党・藤井俊男議員の質問 国家賠償法の適用は?>
藤井議員:本省の実施部門にも手をつけるべき。
続総務庁長官:その通り。1府22省庁が1府12省庁になることにともない、局が128から96に、課室が1200から1000、5年後には900にされ、スリム化の実践を図る。
藤井議員:イギリスは、社会保険や旅券業務を独立行政法人化した。社会保険を独法化することは考えないのか。
持永総務政務次官:日本の場合、記録の管理の他に裁定、給付の決定を行い、公権力の行使そのものであり、国が直接やる業務として、独法にならなかった。
藤井議員:国と別の法人といっても、特定独法の職員は、国家公務員だ。国家公務員が職務で行った行為総体が国の行為でないというのはおかしい。
持永次官:質問の趣旨は、国家賠償法の適用の問題と理解しているが、国または公共団体の職員が損害を与えた場合、国または公共団体が賠償責任を負う仕組みだが、公共団体には特殊法人も入るという判例になっている。公権力行使にあたるならはいるということだ。特定独立行政法人が、第一義的に賠償責任を負うが、国が人件費支給をしている限り国にも責任が生じうるが、賠償責任は個々の裁判所が判断する。責任がはっきりしたら国も賠償する。
藤井議員:大臣は都政に長く携わってきたが。
続長官:第一義的には法人が責任を負い、最終的には国が責任を負う。
藤井議員:特定独法の業務は、国家公務員が担当しており、国の責任がないとはとても言えない。
持永次官:国家賠償法は、公共団体を幅広くとらえており、公務員だけでなく特定団体職員も含む。被害者の方々が、国に責任ありと判断するなら訴られ、判断が裁判所から下される。
藤井議員:通則法は、長の任命、役員の解任、中期目標、中期計画、評価、財務諸表の認可など、独立行政法人といいながら、国の関与は十二分にある。どうしても、法人の管理運営、業務の執行が気にかかる。官僚OBが役員になり、主務省の意のままに動くようになり、不祥事の際には、独立した法人だからと法人への指導を行わない理由にされないか。
続長官:国民の期待に応える最善の方法。執行機関や執行責任者には、運営の妙を発揮できる適正な人を任命し、ご懸念のようなことがないよう運営していく。期待に応えられるようこれから育てる。国権の最高機関である国会や国民が監視の目を向けて下さるようお願いする。
藤井議員:新たな天下りの懸念がある。公益性が極めて強く、公権力を行使することもある特定独法は、マイナスの面も考えられ、特殊法人以上に心配。天下り防止、管理運営、業務執行の適正さをどのように確保していくのか。
続長官:天下りは、完全に悪ではない。私の経験から言っても、識見を持っている人もいる。独法は天下りの温床にはならない。288人の常勤役員がおり、いま審議官以上が96人だからたくさん増えるという報道がされているが、これは上限。特殊法人は天下りの温床という批判に答えるために、独立行政法人化をする。天下り批判を受けないようにするのは当然。役人で適正な人を任命し、批判を受けないようにする。

<民主党・内藤正光議員の質問 独法の長は公募とすべき>
内藤議員:独法一般、建設省関係について聞く。独法一般についてだが、イギリスのエージェンシーを見習ったものと言うが、イギリスでは長の任命は、特に内部のものを任命しない限り、公募するとなっている。理事長、監事の選任はどうなるのか。
続長官:広く人材を求める。内外にだ。運営の妙を発揮し、国民の期待に応えるのが主務大臣の責任だ。
内藤議員:具体的に形にすべき。イギリスは幅広く公募し、中立の選考委員会で審査、大臣に推薦し任命。
続長官:それぞれの大臣が最善の方法を考える。
内藤議員:責任者としての考えは。
続長官:副知事として国に10数年先行し、独法化をした。世界に冠たる4研究所が美濃部知事時代に作られたが、都庁内部の組織だったために、予算や人事の制約があったものを、柔軟にした。研究所長には、大変な見識を持っている人を公募し、お願いした。痴呆症の研究でも、解決し得るまでになった。予算、人事の制約がなくなって、成果が上がった。
内藤議員:後ろ指を指されないよう、透明度の高いものにすることが大事。非公務員に幅広く人材を求めるというなら、なおさら民間を含めて人材を求めるべき。
続長官:まったくその通り。
内藤議員:理念だけなのか。 続長官:それぞれの大臣が、独法化の妙を活かすことだ。
内藤議員:特殊法人は、役員が天下りポスト。いろいろの非効率を生んでいる。その失敗を繰り返してはならない。長官の望まれる独法について、具体的に言えないと言うなら、失敗を繰り返さない姿勢を明確に示すべき。
続長官:総務省では統計センターだけが独法化されるが、理事長は、統計の専門家で、広く内外の信頼を得られる練達の士を広く内外から求める。各大臣も、それぞれ同じ思いで任命すると思う。
内藤議員:古都保存法と明日香村保存法について聞きたい。今回の行革で形式以外に影響を受ける。これまで、内閣総理大臣が地方公共団体と歴史的風土審議会の意見を聞くことになっているが、これが国土交通大臣が、地方公共団体と社会資本整備審議会の意見を聞くことになっている。これは形式的変更ではない。歴史的風土審議会が、社会資本整備審議会に統合されるが、この審議会は開発のスタンス。歴史的遺跡の保存ができるか大いに疑問。
中山建設大臣:社会資本整備と古都保存は、地建に権限が移譲されることと相まって、かえって機能的になる。日本はインフラ整備が欧米に比し遅れている。遺跡のような民族的資産は、釈迦磯本整備と整合性を持っていける。古都保存を先行させ、古都を避けて社会資本を整備ということがうまくいく。
内藤議員:これまで総理府に歴史的風土審議会が置かれ、建設省が開発の立場から、文部省が保護の立場から意見を言ってきた。国土交通大臣は、文部科学大臣と協議することになるが、意見を聞き置くと言うことにならないか。まず開発ありきにならないか。
中山大臣:鎌倉、京都、奈良の自治体代表が審議会に出る。現場の知識、知恵をいただいていく。日本中が注目しており、あだやおろそかにならない。地下化や遺跡を避ける。そういう点で、万、遺漏なきを期す。
内藤議員:開発優先の懸念が払拭できない。仕組みとして、部会とか研究会とか作れないのか。
中山大臣:当然作るべき。一度損なわれれば、復元できない。戦争で国宝を失っている。残っているものは大切にしなければならない。専門部会を作ろうと思っている。
内藤議員:文部科学大臣の影が薄い。意見を厳しく受け止めるプロセスを作るべき。
中山大臣:判断は、建設とか、文部とかでなく国務大臣として対応している。専門部会の意見を尊重して、配慮していく。
内藤議員:橋本前総理の国土開発、国土保全省構想がつぶされたが、建設省が河川と道路、都市は一体と主張したため。国土交通省創設に当たり、水野行革会議事務局長は、地建に権限移譲すると調整案を出しているが、本当に移譲されるのか。
中山大臣:国土交通省は、よくこういう形で落ち着いた。交通機関と道路、北海道開発庁が統合される。地建と港湾建設局が13あるのが、8つになる。大括りで、権限移譲をする。地方整備局と地方公共団体の協議が進むようにする。都市、住宅、補助金の権限移譲と公共事業の一括配分を受け、それらを主体的に、一括して行う。議会の指摘を受けつつ、機動力ある局としていく。

<公明党・荒木清寛議員 「コスト主義」を中心にして業務を評価する>
○荒木 清寛(公明) 行政評価制度は、各省庁と総務庁とで二重に評価されるが、それについてどんな意義を感じているか。
●続 総務庁長官 国民の関心は予算の使われ方にあるが、税金を負担する国民の側からすれば、ムダづかいは許されない。そこで評価制度をつくった。来年7月をメドに専門家に検討してもらっているが、並行して評価制度を法案化する作業もすすめていく。2001年1月には間に合わないが、可及的速やかに準備したい。また、二重に評価するのは、各省庁の自前では客観性に欠ける面もあり、より客観的に評価するために、総務庁の評価委員会がある。
○荒木 行政評価にかかわって、大臣としてのイメージをうかがいたい。
●続 具体的なものは検討中だが、コスト主義が中心になるのではないか。国民の税金を有効に使っているのかを評価する方法を考える。
○荒木 アメリカの評価法も参考にしてもらいたい。結果の開示や、予算ときちんとリンクするような評価方法をもりこむべきだ。
●続 それも十分に参考にしたい。

<共産党・富樫練三議員の質問 研究者がビールやおつまみで「客」を接待>
○富樫 練三(共産) 続長官も副知事時代に設立にかかわった東京都の老人問題総合研究所では、予算が年間10%削減されるなかで、研究員も削減され、所内では、研究者の流失や研究の停滞が懸念されている。また、この研究所の中期経営計画では、研究成果を企業や医療機関へ有料で売り込んで、財源を確保することが示されている。企業へのセールスとしての「営業活動」のマニュアルには、お客へのビールやおつまみの出し方までも書いてある。この実態で、なぜ中立・公平・充実した研究ができるのか。
●続 総務庁長官 研究所がよくぞここまで育ってくれたと思う。いつまでも「象牙の塔」でいるのではなく、民間をふくめて等しく門戸を開放することからはじめるべきだ。あれもこれもはよくないが、一定のルールにもとづいて情報を提供することは歓迎すべきことではないか。
○富樫 これこそ独立行政法人の未来の姿ではないか。どうして研究にセールスが必要なのか。本当にいい研究ができるのか。企業会計にもとづき効率化すると、研究がどうなっていくのかは明らかではないか。
●続 東京都の税収が落ち込むなかで、給料カットをしたりで努力している。国民サービスを低下させないように、知恵をしぼって金を集めている。セールス第一とは言わないが、むしろ、「親方日の丸」体質を脱し、効率化のなかで研究の実績をあげてほしい。
○富樫 効率化を求めれば、研究内容がゆがむ。東京都の研究所の例が示している。ところで、通則法の第35条では、中期計画の3年から5年後で業績が評価され、そのうえで、業務の継続、改廃、民営化などを判断するとしているが、それでは、2004年から独法化される国立病院・療養所の民営化や民間委託もありうると理解していいか。
●河村 厚生省国立病院部長 国としておこなうべき政策医療を独法化する。廃止しろといわれないように努力したい。

国立病院の独法化〜僻地・離島の医療は国の責任ではない
○富樫 努力するかどうかの問題ではない!聞いたのは35条にもとづいて、現実に民営化が検討されるかどうかだ。その答弁では、法律上は民営化がありうるということだ。国立病院・療養所の統廃合によって結核病床が減らされているが、民営化したらそれをつづけることができるのか。また、国立病院は、僻地・離島など不採算の医療を受け持っているが、それも民間でできるのか。
●河村 あくまでも政策医療など民間でできないものを国立でやっていく。僻地・離島などは、地域において一般医療として対応すべきと考える。
○富樫 一般医療ということは国として必要ないということだ。僻地・離島の病院は赤字経営であり、だからこそ国の責任でやる必要がある。中期目標にそって業務評価されれば、僻地の病院が民営化されることは明らかではないか。また、同じ問題として、国立大学について廃止や民営化はありうるのか。
●佐々木 文部省高等教育局長 民営化は想定していないが、一般論として民営化できる。
○富樫 つまり、国立大学が私立や廃止になるということだ。経営戦略会議は、将来の国立大学の民営化も視野に置くとしており、経済同友会も民営化を主張している。この流れからすれば、将来はそこをめざしていることとなる。日本の教育ばかりでなく、民主主義にとっても大問題だ。そのことからも、十分に国民の意見を聞いて議論せよ。
●佐々木 国立大学長や関係者と相談しながらすすめていく。
○富樫 独立行政法人の土地・建物、その他の財産は、国から出資する形となっている。国立美術館の展示物なども財産になると考えるが、民営化されたら、それらの財産はどうなるのか。
●続 国立美術館では国宝なども所有しているが、これらは国民共有の財産であり、むやみに処分すべきでない。
○富樫 もちろん、独立行政法人である限り、主務大臣が了解しないかぎりできないと思うが、しかし、民営化されたらどうなるか。
●近藤 文化庁次長 独立行政法人は、民営化を想定していない。民営化とならないよう努力したい。
○富樫 ここまで審議しても、一つ一つの独立行政法人について、どうして独法化を判断したのかまったく示されていない。前の太田長官は、それを検討した資料を提出することを約束した。なのに、続長官は、そんな資料はないと答弁している。事務の引き継ぎができていないのか。あらためて、資料の提出を求める。
●続 事務当局に資料提出を命じたが、結果として、独法化は、各省庁で検討したものであり、総務庁には具体的な資料はなかった。
○富樫 委員会に資料の提出がされるよう、委員長にあらためて要請する。
●委員長 理事会で議論する。

(以上)

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