参院行財政改革・税制特別委員会 6月29日午後の審議
(国公労連「行革闘争ニュース」1999年6月29日付 第133号)

 6月29日午後の参議院・行革税制特別委員会は、午後2時前に再開し地方分権一括法案を中心に、一般質疑がなされた。質問者は6会派6人で、単組・国公労連本部より3人が傍聴した。以下、主要な論点について概要を示す。

*藤井俊男委員(民主党)の質疑
(藤井委員)完全失業率が過去最悪を更新している。職業紹介等は地元密着型で行うべきである。地方事務官制度が廃止され、地元との密着が薄れる懸念がある。
(労働大臣)県独自の雇用安定制度もある。国の政策に歩調を合わせていただくとともに、県と国が連携して雇用対策をすすめる。密接な関係を保つ。
(藤井委員)分権法案のうち、福祉関係が95本もある。住民に見える変化が望ましい。住民サービスの観点でどう変化するのか。
(厚生大臣)機関委任事務を自治事務へ、設置規制の緩和等で、地方公共団体の自主判断にもとづく事務が実施できる。
(藤井委員)国と地方の人事交流について、中央の人材を活用して地域を活性化される面もあり、一律に廃止・縮減されることが懸念される。逆に人材育成で地方の職員を中央に派遣させる必要があろう。
(自治大臣)現在、相互交流を行っている。これを基本に地方公共団体と対等・協力の関係にする。また、地方自治体で人材育成を図らなければならない面もあろう。
(藤井委員)ところで、国会へ少年法改正が提出された。人権上重要な法案、慎重審議をもとめる声もある。法案審議の見込みをどう見るのか。
(法務大臣)国会で決めていただくことである。
(藤井委員)つぎに、地方分権で首長の権限が強大化する。首長を支える部局の人材育成、環境整備が必要。また権力の乱用・腐敗の観点で、連続就任回数を制限する必要も考えられる。法案に多選制限は盛り込まれなかった。
(自治大臣)政策形成能力を確保する必要がある。採用試験・研修の共用、社会人の中途登用行われている。自治省としてガイドラインを示して支援している。今後も行う。また、多選禁止制限については、否定する意見と多選による弊害化論の両意見がある。学識経験者による研究会を発足し、調査研究中である。
(藤井委員)地方議会の権限も強化する必要がある。また、議会の定数を国が規制することには疑問がある。
(自治大臣)議会のチェック機能。いままでは機関委任事務は対象外であったが、この法で法定受託、自治事務とも対象となる。また、住民による監視も大事なことである。
定数については、法定定数制度をとってきた。法定から条例でもって決める。ただし、上限を設ける。減数条例を鑑みた。

*高橋令則委員(自由党)の質疑
(高橋委員)地方の財源確保の問題について、財源の再配分をどう考えているのか。
(大蔵大臣)国の経済が異常な事態で、税収が極端に落ち込んだ。昭和62年頃まで後退した。基のパイの大きさを確かめて、見当がついた段階で再配分するしかない。日本がプラス成長になったことが確認できた段階でだ。
(自治大臣)なんとか早く税源の再配分の体系をつくりたい。経済の状況ができたらまず行う。地方税体系のなかでできるものはいますぐにも行う。
(高橋委員)統合補助金、平成12年度に具体化されると思うが各省の対応はどうか。
(大蔵大臣)[関係大臣・政府委員の後]地方団体が裁量的にできるように、来年度の予算編成に積極的にできるように考えている。
(高橋委員)依存体質財政を変えるべきである。その意味から、全国総合計画の基本的考え等も変えるべきである。

*菅川健三委員(参院ク)の質疑
(菅川委員)雇用対策について、実態は都道府県の行う雇用安定と職業安定は密接不可分だ。私としては職業安定は法定受託事務として地方事務官とするべきと考える。地方事務官が労働事務官となるとどうなるのか。
(労働大臣)労働事務官となると、都道府県に残るのは全国で240人程度である。
(菅川委員)事実上県の雇用対策は壊滅的状況になる。雇用対策における地方の役割は重要であるといわれているのではないか。
(労働大臣)支障が出ないような連携の仕組みをつくりたい。また、都道府県が自主的・主体的に必要性に応じた態勢をつくってほしい。
(菅川委員)地方は人員増しなければならない。人的配置の配慮も必要だ。
(労働大臣)行革においては業務の濃淡をつけてやりくりしなければならない。地方行革においても同様である。人事交流については検討する。
(菅川委員)常設の連絡調整の場を設けてほしい。また、積極的な情報提供を行ってほしい。雇用対策での自治体の役割について自治大臣としてはどう考えるか。
(自治大臣)地域の雇用対策は地方公共団体の重要な仕事であり、交付税の算定の基礎ともしている。今後も継続していく。緊急雇用対策については全額国の交付金とする。
(菅川委員)国家公務員の25%削減。政治ベースの話で数字合わせ。各省庁に10%程度縮減を図るとしているが、需要がある行政もある。それより地方分権との絡みで思い切った定削を図る方向にすべきだ。
(総務庁長官)10年10%は新規採用の抑制でやりたい。統合補助金の導入、規制緩和の推進がすすめば、そのための人はいらなくなる。さまざまな改革の余地はある。
(菅川委員)まず仕事減らしである。

*富樫練三委員(共産党)の質疑
(富樫委員)機関委任事務がなくなり、従来の通達はなくなり、ルール化されると自治大臣は明確に答弁している。この点について再度聞きたい。
(自治大臣)機関委任事務がなくなり、地方自治法150条は削除される。従来の通達はなくなる。拘束力を有するものは自治事務については法律・制令で定める。法定受託事務についてはこれらに加え、処理基準を定める。それ以外は助言・勧告だ。
(富樫委員)宅地開発等の規制で地方自治体は開発指導要綱を独自につくっている。この要綱の見直しの通達を建設省は毎年出している。
(建設大臣)今度は法律・制令でルール化して行う。
(富樫委員)通達で出すことはなくなるのか。
(政府委員)法令で定めた基準を越える行き過ぎた指導については助言はあり得る。
(富樫委員)通達は財界の要請に基づいている。住民参加が自主的・主体的な地方分権である。通達は行き過ぎがあった。
(建設大臣)通達にゆきすぎがあったとは思えない。
(富樫委員)全国自治会でも国の関与がありすぎるとしている。
 助言・勧告がいままでどおりなら、国と地方の上下・主従の関係はなくならない。自治体の求めに応じて助言し、判断は地方自治体にて行われるべきである。
 つぎに、国から地方自治体への職員の出向について、地方分権推進計画ではどう位置づけられているか。総務庁ではどう定めているか。出向の長期化固定化の弊害とは何か。
(政府委員)長期・固定化の弊害を排除し、対等の関係ですすめるとしている。
(政府委員)相互・対等の関係で、特定ポストに特定省庁が固定・長期化しないこと。
(政府委員)自治体の自主性をゆがめたり、士気を低下させる。
(富樫委員)自治体の要請があればそれにお答えする形で行われている。これでは尻ぬけではないか。
 全省庁の出向は、警察を除き752である。そのうち、40年以上同一ポストが農水省だけで2、その他、10年以上同一ポストは74にのぼる。自治省、建設省、農水省が圧倒的に多い。
(農水大臣)40年以上について、石川県の方から自主的に派遣していただきたいとのことだ。
(富樫委員)石川県の農政、とくに農地の減少、農業従事者の減少は著しい。長期固定ポストの弊害そのものだ。
 自治省の職員は、589名。自治省から240人が出向している。給料は自治体だが、自治省の定員は実態800人ということではないか。
(自治大臣)自治体の要請に応じて行っている。
(富樫委員)地方分権推進計画は法律上どう具体化されているか。
(政府委員)閣議決定され人事運用上行っている。法律上は必要ない。
(富樫委員)出向という制度が地方を支配しているのである。
 つぎに、法務大臣に聞く。登記件数は2倍になっても、人員は20%しか増えていない。他の業務もあり、増員を求める請願も採択されている。大幅増員が必要と考える。昨年は純減した。人権擁護、入出国管理、法務行政において大幅増員しなければ国民へのサービスの確保ははかれない。
(法務大臣)適切に対処していく。

*照屋寛徳委員(社民党)の質疑
(照屋委員)地方厚生局が設置される。地方医務局と麻薬取締官事務所が統合される。行政の成果が異なるものが統合される。地方厚生局が設置されない地方で、麻薬取締官事務所の支局が設置されているところはどうなるのか。
(厚生大臣)ブロック単位の地方厚生局を設置する。その細部については検討中である。
(照屋委員)健保組合の指導監督は都道府県から、ブロック単位の地方厚生局に引き上げられる。行革に反するのではないか。
このほか、照屋委員は地方分権法案のうち、水道法、建築基準法、消防法の改正目的とその背景を質し、周辺事態法との強い関連性をもつと追及した。関係大臣は「機関委任事務の廃止にともなう所要の改正」との答弁にとどまった。

*山下栄一委員(公明党)の質疑
(山下委員)機関委任事務廃止にともない地方自治法150条の指揮監督権はなくなる。これにともなう従来の通達行政はなくなるはずである。
 実態はどうか。機関委任事務でないものでも通達があり国が縛っている。養護老人ホームの入所に健康診断が必要とする根拠は何か。国の助言・勧告において、変わらないままで生きていくのではないか。
(自治大臣)変えなければいけないのである。
(山下委員)法定受託事務における拘束力を持つ処理基準はどうか。
(政府委員)処理基準は各大臣が定める。
(山下委員)法令集作成の実態はどうなっているか。大蔵省が多いと思うが改革する考えはないのか。印税収入は問題がないのか。
(官房長官、大蔵大臣)調査をかけているところである。いま調べている。
(人事院総裁)実態を調べて、どのように対応したらいいのか納得がいくのか検討する。       等々について、質疑がなされた。


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