参院行財政・税制特別委員会 6月28日午後の質疑
(国公労連「行革闘争ニュース」1999年6月29日付 第131号)

 6月28日午後、参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会は中央省庁再編法案と地方分権一括法案の「総括的質疑」をおこない、川橋幸子(民主)、渡辺孝男(公明)、池田幹幸(共産)、照屋寛徳(社民)、入澤肇(自由)、奥村展三(参議院の会)、石井一二(二院クラブ)各議員が質問にたちました。
 各議員がおこなった質疑の要旨は、以下のとおりです。

<民主党・川橋幸子議員の質疑(午前の続き)>
(川橋議員)内閣府の中に、男女共同参画会議が設置される。この会議は、官房長官が長となっている。他の会議の長は首相がなっている。総理が長になるべきではないか。
(総務庁長官) 基本法で官房長官と定められている。
(川橋議員)官房長官の仕事は多岐にわたる。専任の副大臣が必要ではないか。
(総務庁長官) 副大臣の3人をどう分担させるかは、その時その時で決める。
(川橋議員)法務省の所掌事務にある人権擁護の中味は。
(法務大臣) 憲法が定める基本的人権のことだ。
(川橋議員)法務省と外務省が扱う人権は同じか、違うのか。
(法務大臣) 人権そのものの擁護のための行政をおこなう。
(外務大臣) 法務省と外務省の人権は、基本的に同じものだ。

<公明党・渡辺孝男議員の質疑>
(渡辺議員) イギリスでは、重要な政策を打ち出す際、グリーンペーパーを発表して広く国民の意見、各界の意見を聴取し、それを参考にしてホワイトペーパーを出す。日本はこれを見習うべきではないか。
(総理大臣) 国会での国民に開かれた議論など、現在の日本でもそういう努力ははらっている。中央省庁改革法案では、総理のリーダーシップを強化し、経済財政諮問会議を設置して、民間有識者や学識経験者からも意見を聞いていく。
(渡辺議員) 一般の国民の声や関係諸団体の意見などは、どう聞いていくのか。
(総理大臣) 規制の設定・改廃に関わるものについては、パブリックコメント制度を有効に活用していく。
(総務庁長官) 政令までの改廃を広く国民に聞くまでになっているが、法律までにいたっていない。今後、法律も考えたい。審議会は政府が意見を聞きたい人に聞くという形で、パブリックコメントは、不特定多数に広く国民から様々な意見を聞くという形だ。それぞれ補完的な関係になっている。
(渡辺議員) イギリスは「総合保健戦略」を策定し、国民の寿命をのばし、健康の持続的向上をめざしているが、日本でも生涯現役社会をめざした健康政策が必要ではないか。
(総理大臣) 来るべき少子高齢社会にあたって、健康政策は重要課題だ。21世紀のクオリティ・オブ・ライフをめざし「健康日本一」という名の健康政策を現在、厚生省で検討中だ。
(渡辺議員) 痴呆症対策はどうなっているか。
(厚生大臣) 痴呆症予防の総合的な対策を検討中。国立療養所の中部病院等で、痴呆症予防など老齢病予防の専門的な対策を進めていく。
(渡辺議員) 行政評価法を制定してチェック機能を高めることが大切だと考えるが。
(総理大臣) 行政評価法の制定もひとつの考え方だが、中央省庁改革法では各府省が自ら評価する。このシステムの各府省の実施状況をみて、再考して設定していきたい。
(渡辺議員) 固有の行政目的を任務とし、総務省の外局として公正取引委員会を置くとあるが、放送電気通信事業や郵政事業など利益誘導が生ずるものが2つもあり、独立性を保てるのか。
(総務庁長官) 公正取引委員会の職権は、独禁法で定まっている。委員は、内閣に任命されると独立性が高く口をはさめない。行政監察という自己チェックを持っている行政管理局に勧告をしているなど、自己チェック型の省庁に対して厳しくチェックしてきているので心配はない。
(渡辺議員) 国民の利益・権利を守ってきた行政措置法一部改正案には地方分権には関係のないものがあるが。
(自治大臣) 規制緩和、国から地方へ、官から民へ、などとあわせて、都道府県の事務の簡素化・合理化も地方分権推進の一貫だ。
(渡辺議員) 総合科学技術会議は現在の科学技術会議とどこが違うのか。
(総理大臣) 現在の科学技術会議は審議会で、総合科学技術会議は内閣府に置かれる。総合科学技術会議は、科学技術の基本政策について審議し、科学技術に関する予算などの重要なものについて自ら意見を述べ、科学技術会議より自主性や機能を強化したものとなる。
(渡辺議員) 文部省と科学技術庁がいっしょになり、文部科学省となるが、どう再編成されるのか。
(科学技術庁長官) 今回の省庁再編の中で、いちばん円滑にいくのが、文部科学省だ。現在でもすでに脳の研究などで文部省と科学技術庁は協力しているし、昨年からは共通テーマで研究を進めている。人事交流などもしていて、新しい研究体制ができてきている。

<日本共産党・池田幹幸議員の質疑>
(池田議員) 6月16日の国会で、太田総務庁長官は、今回の行革で政官財癒着にメスは入るのかという質問に対し、政策立案と実施部門の分離で癒着はなくせると答えている。しかし、行革のはしりとなった金融監督庁でも、長銀の問題に明らかなように銀行甘やかしの行政は変わっていない。昨年の8月8日に住友信託の社長を官邸によんで、「最大の支援をするから」と言って小渕首相は長銀との合併をすすめているが、長銀の不良債権の実態を知っていてすすめたのか。
(総理大臣) 当時、日本の金融システムはたいへんな状況だった。手をこまねいて見ているわけにいかなかった。金融2法もまだなく、長銀側もリストラ等の再建策を示していたので、合併をすすめた。長銀の債務超過の実態は金融監督庁が検査中でまだ公表されていなかったので知らなかった。当時は長銀は債務超過になっていないという金融監督庁の報告を信頼していた。
(池田議員) 結局、だまされていたということですね。結果は粉飾決算だった。知るよしもなかったというのは、あまりに無責任で反省がない。長銀が債務超過では公的資金は出せなかった。長銀の実態をあばきすぎると公的資金をつぎこめなかった。刑事事件になった粉飾決算問題を先送りし、傷口を広げて国民の税金投入をふくれあがらせた反省がない。今の答弁では納得できない。
 次に銀行の貸し渋りの問題だが、この5月まで17カ月連続で貸出額を減らし続けているが、金融監督庁の対応はどうなっているのか。
(金融監督庁長官) 貸し渋り問題への対策として、トップへの要請や、苦情相談窓口の開設、実態の報告、地方での情報交換会や電話相談などの様々な処置をおこなっている。
(池田議員) 公的資金注入を受けた銀行の貸し渋りは解消されたのか。
(金融再生委員会委員長) 3月末の数字では、中小企業向け貸し出しは、大手15行は貸出額を114兆1700億円としていたが、実際には113兆4千億円で、不足額は7154億円。ある1行が未達成の額が大きかった。
(池田議員) 4、5月の数字はいつでるのか。
(金融再生委員会事務局長) 半年に1回報告を求めている。
(池田議員) 半年に1回では、現在の貸し渋りは、たいへんな状況で間尺にあわない。7千億円が未達成ということだが、未達成の銀行の数はいくつあるのか。
(金融再生委員会委員長) 未達成の銀行の数は8行だ。
(池田議員) スタートから半分以上の銀行が未達成で、それを問題にしないのは、あまりにルーズではないか。
(金融再生委員長) それぞれの銀行の状況や、全体の経済状況もあり、計画経済ではないからできない面もあるが、銀行が計画達成に努力しないときは、法令上、許された手段を講ずる。
(池田議員) 法令上でやるといっても何もないじゃないか。このような答弁は納得できない。次に金融行政にとって大切な消費者保護の問題だが、大蔵省は通達でやっていたが、今はどうなっているか。
(金融監督庁長官) 消費者保護として、金融機関苦情相談窓口やインターネットの窓口開設、苦情の音声自動応答システムなどを設けている。通達は6月に改正され、金融機関の苦情相談窓口を紹介している。
(池田議員) 大蔵通達がなくなって、金融監督庁に苦情を訴えたら受け付けてくれないと、金融機関の窓口に行けと、ここには消費者代表は入っていず、消費者の保護とならない。大蔵省に苦情をもっていってちゃんとやってくれたかどうかはともかく、以前は大蔵通達があった。これをなくして、行政サービスを切り捨てた。結局、金融監督庁に分離したら、やらなくなった。銀行甘やかしの行政は変わっていない。企画部門と実施部門を分離しても政官財癒着はなくならない。企業献金の禁止や天下りの禁止などの具体策をおこなうべきだ。最後に経済財政諮問会議についてだが、最終報告では一部の既得権益を守ることではいけないということがいわれているのに、民間から4名、総理が選ぶということになっていてこれでは一部の利益が優先されることになるのではないか。
(総務庁長官) 各界からの人選は総理の政治責任でおこなうことで、総理の見識が国民から問われることになる。
(池田議員)内閣機能の強化、総理のリーダーシップ強化で、経済財政諮問会議は、総理の権限で重要な政策がやられていくことになる。経団連は、経済財政諮問会議を評価し、委員などが産業界に配慮されることになったと喜んでいる。委員は財界代表となるのではないか。
(総理大臣) 議会制民主主義に基づき選ばれたそのときどきの総理が見識をもって、各界から人選していくということだ。

<社民党・照屋寛徳議員の質疑>
(照屋議員) 嘉手納・弾薬地区の関係地主への引き渡しで土壌分析調査をおこない、環境基準を超える有害物質が出たというが、どういうことか。
(防衛庁長官)専門業者に依頼した土壌分析調査で、基準を超える六価クロムが検出された。カドミニュウムは全く検出されていない。
(照屋議員) 6月初旬に報告を受けていた。しかし、いっさい何もしなかったのは、なぜか。
(防衛庁長官)6月17日に受注業者から報告を受けて、6月18日に詳細な調査をするよう依頼した。20〜21日に詳細な調査をおこない、23日に分析結果が判明、24日に公表した。
(照屋議員) 日米地位協定では、元どおりにしたり、補償する義務がない。国の責任で返還実施計画を作るべきだ。地主は、再調査を防衛施設庁に求め返還を拒否しているが、防衛施設庁は、もう返したと言っている。再調査を要求している件について、沖縄開発庁長官としてどうか。
(沖縄開発庁長官)再調査する必要はないし、一応のご理解もいただいている。今後も誠意をもって対応する。
(照屋議員) サミットで沖縄基地問題について、どのような話し合いがあったか。
(総理大臣) 日米首脳会談で、日米間で緊密に協力したいと述べた。クリントン大統領は、基地問題について進展を期待していると発言した。
(照屋議員) クリントン大統領は、沖縄サミットまでに大幅な進展を迫ったとマスコミは報道しているが、どうなのか。
(総理大臣) SACO(=日米特別行動委員会)の最終報告をめざして努力していく。
(照屋議員) 日米首脳会談でクリントン大統領は、普天間飛行場などの移転を、沖縄サミットの開催の来年7月を事実上の期限とみなしたともいえる。沖縄から平和を発信したい県民の思いに反し、基地問題とサミットがリンクしている。政府の考えは。
(総理大臣) いっさい、聞いていない。
(照屋議員) 地元では、発言趣旨が詳細に報道されている。県も名護市も困惑している。納得できる政府の態度を求めていく。来年7月21日にサミットが開かれる。中国をオブザーバーとして、招待するとの意見が多数あるが、どうか。
(総理大臣) サミットは共通の価値により、主要な民主主義工業国の集まり。メンバー間の議論、最新の検討が必要だ。考慮するということにはならない。
(照屋議員) 斉藤駐米大使が、サミットが近づかないときに普天間の実質的な進展をみたいと、期待感を表明している。斉藤大使の発言が、日本の本音ではないのか。
(外務大臣) 基地の話とサミットは結びつかない。直接は、関連しない。普天間飛行場の問題は、できるだけ早く解決したい。
(照屋議員) 地元の県民は、サミットと普天間がリンクしていないかと心配している。基地とからめることがあってはならない。沖縄から世界へむけて、平和を発信できるサミットにすべきだ。情報衛星の目的や機能、受信局は何カ所になるのか。
(内閣情報調査室長)情報衛星は、安全保障上の観点、大規模災害の情報収集のためだ。4機の打ち上げ、南北に受信局を一つずつ置くことを検討している。
(照屋議員) 受信局を2カ所つくるというが、南は沖縄を予定しているのか。
(内閣情報調査室長)まさに検討しているところだ。
(照屋議員) 情報衛星は、軍事面での情報を収集する。受信した情報は、日米が共有することはないのか。
(内閣情報調査室長)我が国が運用・管理するものだ。
(照屋議員) 県当局が不安を抱いている。いざ有事の事態に、まっさきに攻撃を受ける。なぜ、沖縄なのか。防衛庁は、沖縄をどう考えているのか。
(防衛庁長官)関係庁が多岐にわたっている。どこにどうするかは、協議にのぼっていない。十分協議していきたい。
(照屋議員) 詳細が決まらないうちに、防衛庁事務次官が発言したことになる。県民の思いは、沖縄に建設してほしくないということだ。その点を、真剣に受けとめてほしい

<自由党・入澤肇議員の質疑>
(入澤議員) 内閣府を国家行政組織法の外におき、複雑な関係法規になっている。一括して国家行政組織法にすべきではないのか。
(総務庁長官) 内閣府は、他の行政機関と異なる編成をするので違う形をとった。
(入澤議員) 国の法律は、簡素でなければならない。国家行政組織法の改正で行政機関が「政策について自ら評価し」とあるが、客観的に評価できるのか。また、何をねらったのか。
(総務庁長官) 各省庁は、企画・立案をしてきた。冷静に、自らを省みる機能をもっていかねばならない。
(内閣審議官) 今回、国家行政組織法と内閣府設置法の中に、「内閣の統括の下に、その政策について、自ら評価し」と同様な規定を置き、企画立案部門が自ら評価をおこなう。
(入澤議員) これは、今までやっている。第3者の評価を受けることを義務づけるならわかるのだが。
(内閣審議官) 結果は、公表すべきものと考える。総務省に第3者機関をおいて各省に対する評価をおこなう。
(入澤議員) 内閣府は上位官庁になるが、総務省は評価できるのか。
(内閣審議官) 内閣府には、内閣の事務を助けるという任務と他省庁ならびの行政事務があるが、後者の方の評価は及ぶ。
(入澤議員) 各省庁並びでない事務は、いっさい評価はできないのか。
(内閣審議官) 内閣の補助事務については、総務省の評価は及ばない。
(入澤議員) 内閣府は、国家行政組織法の外にあり、上位官庁になる。運用の如何では、強力で大きな権限をもつ。今度のように、別世界を作ると大変なことになる。今でも総理のリーダーシップを発揮することができる。さらに、事務組織において、強大なものをつくる。内閣府の人事や事務についての考えは。
(総務庁長官) いわれる点は、ないわけではない。内閣法の改正で、国民主権の理念を明らかにする規定をあえて書いた。そのもとで、首相の発議権を入れた。その気持ちは、よくわかる。
(入澤議員) 府省間相互の調整規定で、府省間の調整ができるのか。
(総務庁長官) 有効な手段だと思っている。
(内閣審議官) 関係府省と協議をおこない、調整を図る。説明と必要な資料の提出を求めると書いた。今後、調整システムを具体的に示していく。

<参議院の会・奥村展三議員の質疑>
(奥村議員) 衆議院での附帯決議で環境省設置にあたり、体制の充実強化を図るとしているが総理の決意は。
(総理大臣) 省に格上げした。大きな期待にふさわしい体制をつくらないといけない。
(奥村議員) 環境庁は千人の体制だ。アメリカは1万8千人、フランスは4千5百人、ドイツは2千9百人、韓国は千百人いる。少なくとも、韓国並の規模にして欲しい。
(総理大臣) 省にするにふさわしく、充分努力したい。しかし、いたずらに数を増やせば良いということではない。ふさわしい人材を確保することも大切だ。
(奥村議員) 数ばかりでなく、中味も問題だ。強力な組織ができるよう努力してほしい。地方分権を進めるためには、住民のみなさんの意識改革が大事だ。そのための対策が必要と思うがどうか。
(自治大臣) 仰せのとおり。国と地方の関係を上下関係ではなく、対等・平等の関係にかえる。精一杯、意識改革をおこなっていく。運用する側が惰性や依存主義ではいけない。自治体にも自覚を要請する。
(奥村議員) 自治体が体制を整えていくためには、財政措置を明記しなくてはならない。市町村の格差も出てしまう。
(自治大臣) ご指摘のとおり。財政の裏打ちが必要だ。できるだけ、地方の自主性、自立性を高める改革をやっていきたい。
(奥村議員) 自治体は限られた人員、組織の中ではうまくいかない。定員の管理、指導を人材育成の面から支援を。
(自治大臣) 人材が今まで以上に必要だ。専門的な仕事に堪える人材の育成に努めていく。
(奥村議員) 市町村合併を推進するための指導を。
(自治大臣) 市町村合併は、分権の受け皿であり基盤強化のために必要だ。合併特例法の改正は、強力な財政的な支援になる。合併の機運が高まるよう、ガイドラインを示し、協力を要請していく。

<二院クラブ・石井一二議員の質疑>
(石井議員) 日本道路公団のバランスシートを見ると、その場を繕い、総裁が変わると償還計画を変更し、何ら責任をとっていない。累積債務が23億円といのは、正確か。
(道路公団総裁) だいたい正しい。
(石井議員) 所有株式の第三者の保有%はどのくらいか。
(建設省道路局長)この場に数字をもってきていない。
(石井議員) 36%が正しければ、50%になるように前向きに対処して欲しい。

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