衆院行革特別委・6月7日中央公聴会
(国公労連「行革闘争ニュース」1999年6月7日付 第118号)


(午前・地方分権)
 6月7日(月)午前、衆議院・行革特別委員会で中央公聴会が開催され、地方分権一括法案について、公述人の意見陳述と質疑が行われました。

<恒松制治・元独協大学長の意見陳述・要旨>
○今回の地方分権法案で、機関委任事務を廃止することに大賛成だ。国と地方の関係は、上下・主従関係であってはならない。それが、実現することはすばらしいことだ。
○機関委任事務に変わって法定受託事務が導入されことは、制度的には大きな変化だ。しかし、何がどう変わるかは明らかではない。国が本来、果たすべき役割を地方自治体におこなわせるシステムは、機関委任事務と変わっていない。
○自治事務に対する「是正の要求」措置があまりにも多い。具体的にどう運用されるかにかかっているが、国が関与することは決して望ましくはない。明治以来の中央集権的な仕組みを直すのには、ほど遠い。
○地方自治体の議会の機能は重要だ。議員定数は、地方議会の条例で定めるべきで、中央政府が決めるべきではない。
○都道府県は市町村にとっては、お神的存在。地方自治の上で、どう位置づけるかを明確にすべきだ。
○地方分権は、中央の権限を地方に移すものと考えられているが、権限の量の大小ではなく、仮に権限が小さくても、行政に自主性が尊重されることが大事だ。
○ゆっくり、時間をかけて国民の納得がえられるように審議してほしい。

<井下田猛・姫路独協大学教授の意見陳述・要旨>
○今回の地方分権一括法に、基本的に賛成だ。しかし、注文やら疑義の部分がないわけではない。一括法という立法形式になっているが、量があまりにも多い。機関委任事務でも351本。審議そのものが、物理的に無理な話だ。精査がなされない一括法では、国会の存在が疑われる。審議時間の確保が必要だ。
○今回の分権改革は、中央省庁の機能の純化、分権ぼかしが顕著であり中央集権は依然として健在だ。機関委任事務を廃止しても、法定受託事務で国の関与が及んでいる。
○自治事務に対する「是正の要求」で、現行は「必要な措置」が義務づけられていない。それも「是正の要求」は、総理大臣だけだ。法改正では各大臣が「是正の要求」ができ、「必要な措置」が義務づけられている。かなりの後退だ。
○法定受託事務を可能な限り削減することは、時代の要請だ。地方事務官制度を廃止し、国家公務員にすることには、住民の利便性などを考えると大いに問題が残る。

<池上洋通・自治体問題研究所常務理事の意見陳述・要旨>
○地方分権推進法には賛成する。機関委任事務はあってはならないものだ。憲法のもとで、地方自治が発展することを願う。
○今回の一括法案は、機関委任事務を全廃する。心から賛成したい。しかし、同時に懸念をもっている。一括法案にはぎょっとした。一回の国会、一つの委員会だけの審議でいいのか。
○地方自治法では住民にとって何が権利なのか、自治体は何をするところなのかが判ることが大事だ。しかし、法改正でこの点がわからなくなってしまう。国と地方の事務配分で法定受託事務の範囲が広すぎる。
○議員定数は自治体が自由に決めるべきで、上限を決めるべきではない。
○国の自治体に対する関与では、国が正しいという構えだ。自治事務に対する「是正の要求」を見ても、国と自治体の関係が現行法より強い支配の関係がうまれかねない。また、形のかえた通達行政が広がるのではないか。
○市町村合併について行政の単位を広域化すると、高齢社会の到来でお年寄りが行政への参加ができなくなる。生活レベルで行政を考えてほしい。
○本気になって、現場の声を聞いて全ての自治体の参加で法案の審議をしてほしい。
◆なお、冒頭におこなわれた西尾勝・国際基督教大学教授による意見陳述は、傍聴できず。

<小野寺五典議員(自民)の質問>
小野寺議員:西尾氏に対し、委任事務の全廃による中央の関与と改善義務の内容を質問。恒松氏には、財源問題を聞きたい。
西尾参考人:委任事務を正確に把握していなかったので、第1次答申では削除が8割、法廷受託が2割と答えた。
 全体像を知らないで発言したことが原因だ。しかし、政府の考えで法案になった。
小野寺議員:文献後の財政確保と国庫負担について
西尾参考人:自治事務に対して、勧告から要求になったのは、是正の改善は、「要求」は「勧告」寄り強い。係争の対象になる。
 現在の国庫補助負担金を整理合理化して、財源にあてる。配分比率は妥当かどうかは十分審議していない。
恒松参考人:自主財源の強化が必要。いまは、国の税金を地方に配分。自主的に徴収できるかどうか。行政が65%で財源が35%なら、行政も35%にすればいい。

<三沢淳議員(自由党)の質問>
三沢議員:「国と地方は対等に」と提言で言っている。
西尾参考人:全く同意見。国の権限は限定し、地域にゆだねることになる。しかし具体化は難しい。推進法は3点列挙。線引きは議論だけではダメ。いい知恵はない。地域住民の自己決定と自己責任の社会。分権法が通れば市民の発言は、いっそう活発になると思っている。
三沢議員:外交・貿易難しい。短期的な影響は?
西尾参考人:国による関与の縮小・削除だから。知事たちが、改革の意味を良く理解して真剣に考えて欲しい。これを使いはじめて国民にわかるには10年かかる。
三沢議員:税源の交付税のあり方は。
恒松参考人:交付税はきわめて重要な財源だ。徴収は国。正しく運用されていれば。

<岩國哲人議員(民主)の質問>
岩國議員:今国会成立はなくても良いんじゃないか。うっかり・びっくり・どっきりから、ゆっくり・じっくり・しっかりして欲しい
恒松参考人:出発点になる。あと50年変わらないと思う。今国会とか、来年4月は考えないで欲しい。
岩國議員:もう一つ、自主性について、自治体の主体性が掛けてるテント思っていることは?
恒松参考人:現実は、「助役に都道府県の職員をよこしてくれ」補助金が取れる。などのこと。
岩國議員:首長の多選がの弊害は、知事の権限が強大になる。これについて。
恒松参考人:分権法とは直接関係ない。人による。
岩國議員:拙速との批判がある。国会が霞ヶ関の下請化している。確かにエコ政府は必要。しかしエゴ政府へ向かっている。一歩前進、何歩後退か?
井下田参考人:100点満点と思っていない。基本的には中央関与の側面が多い。地方不信が払拭できないまま組み立てられている。中央があまりのも大きすぎて遠い。もっと身近であるべき。その、から、落第点とは言わないまでも。
池上参考人:合併は、コストの観点から言われるが、合併したからといってコストが安くなるとは限らない。「住民の期待に応えるか」を考える事だ。
岩國議員:自治労の抵抗あって、コストが低くならない。職員の側からどのようになるか。
池上参考人:自治体の役割は、「効率は責務」本来的なコスト論。@資質(レベル)の向上すべき。A住民参加型の行政の執・向き合える。

<佐藤茂樹(公明・改革)議員の質疑・要旨>
○佐藤議員 地方事務官制度の廃止について、賛否両論がある。国の事務か地方の事務にするのか、国の事務なら直接事務か法定受託事務になるかだが、それぞれのご意見を。
●井下田公述人 地方分権推進が、生活している身近なところで自由裁量、自己決定されることが望ましい。より具体的、目にみえる形で決められることが望ましい。地方事務官は以上の観点で、決着をつけてもらいたい。
●西尾公述人 関係省庁、職員団体(自治労、全労働、全厚生)から意見をきかせてもらった。自治労は頻繁に来たし、封書の手紙などもいただいた。しかし、自治労に納得いただける結論にならなかった。事務の本質で言えば、国が最終的に責任を負う。健康保険、国民年金で見ると、保険者たる国の責任だ。厚生事務官、労働事務官に切りかえるべきだ。
○佐藤議員 機関委任事務の廃止は第1次改革というべきものだが、住民にとってどれだけ効果があるのか。住民の側からみての課題は何か。
●恒松公述人 地方分権の権限委譲の問題は、一斉地方選挙の争点にはならなかった。地方自らの判断による、今後、政策づくりの体制を検討していくべきだ。
●井下田公述人 中央政府の権限の多くを、住民に引き戻すことを大事にしたい。遠くにある中央省庁を、身近な中央省庁に引き戻す。これを分権のベースと位置づけたい。

<春名眞章(共産)議員の質疑・要旨>
○春名議員 憲法の第8章に地方自治が盛り込まれた意味や、その立場から見て国の関与についてどう考えるか。
●池上公述人 地方自治の規定は明治憲法の中にはなかったが戦前、東北などでも飢饉の時に資材をなげうって努力した人もいた。歴史的に意義のあること、国民の権利として確立したものだ。地方自治の本旨は、住民自治と団体自治を示す。その真意は、住民自治を実現することだ。その点で地方自治体にいる住民と、国との関係の問題である。議会での合意形成が大事であって、国は関与しないのが出発点だ。国の関与はやむをえない時、おこなうとすべきだ。自治事務に対する各大臣の「是正の要求」は、厳しすぎる。職員が仕事にやる気を出しているか、否かの差は大きい。国の関与が強くなれば、職員の資質は下がる。
○春名議員 議員の定数削減は議会の活性化にとって、マイナスになるのではないか。
●恒松公述人 法律で決めるのは、おかしいことではない。しかし、議員定数は住民自身が決めることだ。
○春名議員 法定受託事務では、国の関与を残すような定義の変遷になっているが、どうか。
●西尾公述人 法律の定義では、政府が考えて変わるものと覚悟していたが、そのことによって国の関与は拡大していない。
○春名議員 法定受託事務で国の関与が広がる危険性について、どう考えるか。
●池上公述人 強い危惧を抱いている。関与をおこなう判断基準が一方的に国だ。代執行もあり、強い懸念を表明せざるをえない。

<畠山健治郎(社民)議員の質疑・要旨>
○畠山議員 地方分権のこれからは、どのようにあるべきか。また地方としては、どうしたらよいか。
●西尾公述人 全自治体がかかわるには、10年かかる。今回の改革を第1次とするなら、第2次、第3次の改革を考えていかなければならない。
●恒松公述人 住民の目線で自信をもって取り組むことが大事だ。これは、機関委任事務の下でもできなくはなかった。要はやる気があるか、ないかだ。
○畠山議員 今、現場では何がおこっているか。無年金者がなぜ増えているのか。こうした問題点を起こさないために、地方事務官問題をどうしていくべきか。
●池上公述人 現実に現場の中でどういう事務が望まれているかを精査し、きちんとしていく必要がある。
●井下田公述人 政治のポイントは、現実主義にたちかえって見ることだ。地方分権で、悩みをもった人の近いところにいて、よい仕事をする人がふえてほしい。
○畠山議員 地方分権を進めるための、これからの国の関与のあり方についてはどうか。
●西尾公述人 地方分権一括法案が成立したなら、政省令の改正がおこなわれる。1件1件を丁寧にチェックして、規則を条例に変えなければならない。これは膨大だ。これらの、今後の動きを監視しなくてはならない。改めて第6次勧告をつくるかどうかは、国会の会期が終わってから慎重に検討する。

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