衆院行革特別委員会・6月1日午後の審議
(国公労連「行革闘争ニュース」1999年6月2日付 第110号)


 6月1日午後の審議は、13時から盗聴法案(組織犯罪対策3法案)採決のための衆議院本会議が開かれたため、行革特別委員会は15時から行われ、藤田幸久(民主)、中川正春(民主)、石井紘基(民主)、平賀高成(共産)、北沢清功(社民)の各委員が質問に立ちました。国公労連・各単組本部等から8人が傍聴するなか、19時15分まで行われた審議の概要は次のとおりです。   

○藤田幸久委員(民主)
防衛庁の技術研究本部が、平成2〜3年に試作した海上自衛隊の将来機雷用の「複合センサー」について、機能検査したデータはあるのか。入手した資料によると10億円あまりの税金を使っていながら、平成4年に出されていなければならない報告書がない。
また、開発試験費として平成4年度で3067万円、うち労務借り上げ費として2398万円、8割にのぼる費用が性能確認試験のためにメーカーに支払われている。1人1日平均で10万円となる。
●防衛庁及川装備局長
現在、鋭意調査中だ。労務借り上げ費は、センサーの試験の技術的な補助として実施しており、1日あたりの金額はご指摘のとおり。
○これではしかるべき製品を作ったことにはならないのではないか。たいへんな問題だ。
●野呂田防衛庁長官
平成4年に報告されるべき資料がないことは事実。当初、無線でデータ伝送する計画が有線になった経緯など、不都合なことと認識している。真相究明の努力を行っているのでしばらく猶予を願いたい。
○誤魔化すために有線に切り替えたんだ。無線でなければ意味がない。そもそも性能試験のデータがないものを、有線で形だけの・・・(「行革の議論をせよ」などとヤジ飛ぶ)
 省庁改革のなかで、調本(調達実施本部)だけでなく、技本(技術研究本部)など重要なことが盛り込まれていない、ということを強調している。川下の部分だけでなく、抜本的な改革とすべきだ。

○中川正春委員(民主)
独立行政法人について、イギリスのエージェンシーを参考にしたと伺っているが、比較してみると丸っきり違う。イギリスでは、防衛や高速道路庁、登記なども含めてしっかり行政組織の本体に切り込んで、競争原理を導入しチェック&バランスを取り入れているが、本法案では研究所や学校などある程度独立したかたちのものに止まっている。もっと本質的な部分に流れを創っていくことを期待したい。
●太田総務庁長官
一律には比較できないが、政策の企画立案と実施の分離などを参考にして制度設計している。もともと外部性の強いものからまず89機関やり、これからさらにすすめていく考えである。推進本部はあと2年存続することになっており、その後は総務省が業績評価も含めて推進する。
○地方支分部局の整理統合、権限移譲に関わって公共事業の場合、何割を移譲するのか。主旨はわかるが、これをはっきりさせないといいのか悪いのかピンとこない。企画立案といっても、中央だけでなく地方部局にもある。いかに国民や地方公共団体が参画していけるか、その装置が法案からは見えてこない。地方に任せたからあとは知らない、ではなく国民に納得し得るルールづくりをするのは国の役割だ。国民に見えていないことが最大の欠点だ。
●関谷建設相ほか
地方分権の第二次計画でおおまかな方向は示しているが、直轄がどれくらいかは今後審議会で検討するし、補助金についても来年度予算で検討することとなっており、今の時点では言えない。
国土交通省の場合、箇所づけなど、地方局に対する関与は極力行わず、地方整備局に公共事業予算を一括配分する。地方公共団体と綿密に協議し、地方局の判断で決定することとなり、相当な権限移譲だ。二級河川、公営住宅、水道、公園にかかる補助金、街づくりに関わる新たな補助金など、今まで以上に緊密に調整しながら実施していくことになる。
○財・金分離について、金融面は誰が責任をもって対処するのか。基本的には分離するが危機管理については共管するということか、確認したい。日銀との関係では、どういう役割分担になるのか、財務省は何をするのか。
●宮沢大蔵大臣
財務省の任務からは、金融関係をいっさい落として金融庁に移し、金融に関するすべての企画立案を司ると4条の所掌事務に明記した。ただし、設置法第55条に破綻処理と危機管理に関する事項のみ、財務省もかかわることとなっている。日銀との関係では、財政、通貨、外国為替などは財務省と金融庁とに結果として関係する。表にして示す。

○石井紘基委員(民主)
行革はいったい何のためにやっているのか、国民には理解されていない。
●太田総務庁長官
目的は大きく3つだ。それは、政治主導による行政の透明化=国民が選ぶ議員にリーダーシップをとらせる、タテ割行政の弊害をなくす=内閣の調整機能の強化、全体のスリム化=国民負担の軽減。
○なぜスリム化が必要か。財政的にはどうなのか。25%減らすというが、外国と比較しても多くはない。問題はそこから派生した特殊法人だ。特殊法人は行政目的達成のための法人か。総務庁の資料でも、特殊法人の関連会社は2,000社を超える。このなかには住都公団など世界一の大企業まであり、役員は47万人もいる。この多くが経済活動に従事している。行政とは経済そのものを行うことではないはずだ。ここにメスを入れなければ行革とは言えない。
 これはまた、特別会計とも結びついており、38種類で一般会計の4倍にも及ぶ300兆円をこえる規模に達している。一般会計、特別会計、財投は予算審議しているが、例えば住都公団の都市開発にかかる土地取得費、住宅建設費などは明らかにされない。行革以前の問題だ。
●太田長官ほか
大きな政府を小さくし、国民負担を減らすために、事前の調整から事後のチェックへ転換する。全体として公務員の数を減らすことにもなる。特殊法人は、もともとは行政を助けるための機関として法律によって設立されたが、国の機関ではない。
また、取得費、建設費等は関係者のプライバシーの問題もあり、当人の了解なくして公表していない。


○平賀高成委員(共産)
本法案は企画立案と実施を切り離し、国民サービス部門を徹底して切り捨てるものと言える。諸外国と比較した人口1,000人あたりの公務員数はどうか。
●太田総務庁長官ほか
欧米諸国はいずれも日本を上回っているが、各国とは行政制度もサービスも異なっており単純に比較できない。具体的には、日本37人、アメリカ 71人、イギリス78人、フランス93人、ドイツ70人だ。
○日本はこれだけ低い水準に置かれているにもかかわらず、さらに25%も削減しようというが、どこを削ろうというのか。一方、自衛官はどうなっているのか。
●防衛庁防衛局長
陸上自衛隊で言えば中期防で、18万人を平成12年度末に16万2千人とする計画だ。
○それは定員上の数字だろう。実員ではどうなるのか。人件費はどれだけ減るのか。
●平成7年度15,0425 人が11年度末に147,231人となり、件費は中期防期間中に約100億円程度の減となる予定。
○事前の文書回答では「人件費の減は想定困難」となっていたため確認したが、一般職公務員が25%削減されれば41万人に、自衛官は全体で26万人と実に4割を占める。これでは軍事優先の国づくりだ。
国民生活部門、例えば97年度の労働災害は2,000件、死傷者は6,000人を超えているなかで、労働基準監督署では全体の定数が減らされ、監督官が本来の仕事ができず実施率は4%前後となっている。また、横浜職業安定所では所長以下、事務担当職員まで窓口対応せざるを得ない実態だ。こうした部門は強化すべきだ。
●甘利労働大臣
確かに監督実施率は指摘のとおりだが、産業事情や情報をふまえ優先順位を考えて実施している。監督官は10年度に70人増とするなど、若干だが増員してきている。また、職安の実態は私も視察し承知している。人手が足りない部分は、情報機器の導入もすすめるなど努力している。
○失業率5%が想定されるなど、深刻な情勢のもとでなぜ25%か。根拠は何か。
●太田総務庁長官
規制緩和や審議会の廃止等、それぞれセクション毎に仕事そのものを減らすわけで、定員もどの程度減らせるか自民・自由両党協議の結果、目標として25%を掲げた。
○これで根拠がないことがわかった。政党の都合で決めた党利党略だ。
内閣府がシステム的にも体制的にも強大な権限を持つことになるが、経済財政諮問会議は従来の審議会とは異なる。10人の委員のうち4人は有識者としているが、財界の代表は排除されるのか。
●太田長官ほか
 首相の補佐支援体制の一つとして、4条1項に定めるとおり政策立案の総合調整機能ををもつもの。委員の任命は総理の人事権に属するもので、意見を聞きたい人を選ぶのは当たり前のことだ。財界人でも大学教授でもかまわない。
○全省庁に対する強力な権限をもち、重要な政策立案を行う委員の人選について、国会承認をなぜしないのか。
●太田長官
政策に関する企画立案は、内閣に委ねられた責任だというのが今回の法案の主旨であり、 その政策にもとづく執行については、国会において国民がチェックすればいい。

○北沢清功委員(社民)
日本は、環境行政が遅れており、一元化が必要。環境庁は省に名称変更しただけではないのか。その規模や予算等どうなるのか。
●真鍋環境庁長官
環境省に与えられた任務は重大なものがあり、省にふさわしい陣容と予算、現状の倍増をお願いしたい。
○農水省の林木育種センターが独立行政法人化とされているが、長期間にわたる研究期間を要し、採算性を求められてもなじまないが、対象機関の選定基準はどうなっているのか。
●太田総務庁長官
@公共上の見地から確実な実施が必要なこと、A国自ら主体となって実施する必要のないもの、B民間主体に委ねたら実施されない恐れがあるもの、以上3条件を満たすことが基準だ。
○職員団体の十分な理解が必要であり、労働関係への配慮もうたわれているが、各省との話し合いのなかでラチがあかないということを聞いている。しっかりしどうすべき。
●太田長官
これまでも各省で各職員団体と十分に話し合って決定してきたものであり、今後も意を徹していきたい。
以 上

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