行政改革関連法案で参考人質疑
--「巨大省庁・国土交通省はやめて欲しい」(五十嵐参考人)、「国立病院の独立行政法人化は地域医療の後退に」(野村参考人)と意見陳述--

(国公労連「行革闘争ニュース」1999年5月28日付その2)


 13時30分からは、行政改革関連17法案にかかわる参考人質疑がおこなわれました。手続きの関係で、佐藤幸治氏(自民党・自由党推薦)の意見陳述は傍聴できませんでしたので、五十嵐敬喜氏(民主党推薦)、加藤秀樹氏(公明党推薦)、野村拓氏(共産党推薦)の3氏の意見陳述要旨と、各参考人に対する質疑の概要を掲載します。

【五十嵐敬喜参考人】
 徳島県・吉野川河口堰にかかわる住民投票についての建設大臣の発言のゆれ(「住民の多数が反対であれば中止も検討」とその発言そのものの撤回)は、公共とはなにかを考えさせるものだ。「一度決めた公共事業は中止しない」流れが強いなかで、国土交通省は、地元の多数が反対しても公共事業を進める省になる恐れがある。国土交通省は、予算、人員とも世界に例をみない公共事業省なる恐れがある。法案を具体的に見ても、1)国の事務を限定する分権となっていない、2)補助金の整理についても見るべき成果がない、3)民間委託もPFIなどこれからだ、4)政策評価も評価を反映する仕組みがない、5)重要なのは地方支分部局への権限移譲だが、地方支分部局の多さや権限委任が省令事項となり国会の関与が及ばないし、そのシステムもない、などの点で、巨大さを改めるものになっていない。むしろ、権限の巨大化さえ伺える。国土交通省はやめるべきだ。
 公共事業に大胆なメスを入れることが今こそ必要だ。600兆円もの借金残高、環境への悪影響を考えれば、「公共事業コントロール法」の制定を今こそ考えるべきだ。

【 加藤秀樹参考人】
 これは一大改革だ。そして、器作りで、行革の出発点である。これに、どう魂を入れていくかが問われており、そのことは政治家のリーダーシップの発揮が求められている。
 その特徴を3点にわたり述べたい。1点目は各省設置法は、権限規定で大改革だ。国民の行動のいずれもが、各役所に分けられており、それらの行動がどこかの省に触れることであり、法律に基づくべきことだ。
 2点目は、内閣府と内閣官房が設置されるが、屋上屋を重ねたり、二重手間にならないように、政治家のリーダーシップの発揮を。経済諮問会議が設置されるが、有識者の集まだけではダメ。責任を持たせ、フルタイムで専念してもらうように。
 3点目は、企業や金融機関がダメになったのは、監査が機能せず、誰もがチェックせず、外からのチェックも受けなかったから。
 その前提として、バランスシート作りを。企業はここから出発。委員会は、この視点から議論を。付帯決議で、国会決議の明確化を。
 魂の入れ方や内容は大枠を決め、各省が実行を。設置法は分担区分でなく、閣議で決めその実行を。
 内閣は能力ある人で構成、長期に在任できるように。イギリスでは党の幹部が閣僚に。そうなれば、役人に頼らなくともいいし、根回し・調整も不要に。そして、役人は本来の仕事に。
 公務員制度は、制度をいじるのではなく、法律・経済の専門家としての評価制度に。

【野村拓参考人】
 独立法人化が、国民医療に及ぼす影響について述べる。
 @ 国立医療機関は、地域医療に支障を来すことに。1986年に239機関中74機関の整理案を発表。この13年間で統廃合は40目標で15機関、移譲は34目標で11機関に。その理由は、国立でしか成り立たないところで、誰も手を挙げなかった。
 A  結核などの公費医療は国立が担当してきた。重症心身はは国立しか成り立たず、国が大きな役割を果たしてきた。独立法人化になれば、地域医療が心配。
 B マクロ的・歴史的に見て、とらえなおしを。国立は戦後に設立、民主主義の産物である。

質  疑
三沢淳議員(自由党)
Q 25%削減、副大臣、政府委員制度廃止など、自由党の主張が閣議決定に盛り込まれたことをどう受けとめているか。
A(佐藤参考人)
 私も公務員。25%は大変厳しいことは承知。減量化のためにはやむ得ないが、メリハリが必要であり、事後規制部門などの強化は必要。
 副大臣制は賛成だ。グローバル社会では、政治が行政のプロをどうつかうかがポイントであり、そのためにも政治家が専門家になる必要がある。
 政府委員は、法的な根拠がない。国会論戦の契機となることを期待している。
Q 経済財政諮問会議などの合議制期間が、総理大臣の指導のもとに効果を上げるポイントはなにか。
A(佐藤参考人)
 構成員を絞り込むこと、首相の意気込み、構成員をフルタイム化しその経験を活かせる雇用の流動化がポイントと考える。
Q 内閣総理大臣のスタッフにかかわって、雇用の流動化、官民の人事交流が重要と考えるが、そのようなシステムをどのように考えたらよいか。
A(佐藤参考人)
 合議制機関の事務方もふくめ、官民の交流(例えば大学の助教授を任期付きで任用するなど)が相互の経営力を高めることになる。全体の奉仕者論も大切だが、情報公開法もできており、チェックは可能ではないか。
Q 能力・実績反映の給与など公務員制度見直しの重要性をどう考えるか。
A(五十嵐参考人)
 行革でのリストラは厳しいものがあり、定員削減や、情報公開法、民間からの採用の拡大などの周辺環境の整備が公務員制度を変える契機になると思っている。
中川正春議員(民主党)
Q 行革のあり方として、中央省庁の権限削減が先にあってスリム化が検討されるべきではないか。特に企画・立案は国が独占しており、スリム化につながらないと考えるがどうか。
A(佐藤参考人)
 権限移譲が先にあればそれにこしたことはないが、地方分権でも機関委任事務の見直しだけでも多くの困難があった。地方の企画・立案力に係わっているが、その条件は少ないし現実的ではない。一つの通過点として実施分野の地方移譲がおこなわれたと理解しており、地方分権は今後とも重要課題だ。
A(五十嵐参考人) 
 行革が国民から見たムダを改革することで進められていないことが問題。官と政の関係、国と地方の関係整理には市民の関心はない。国民主権を前提とする第2行革、地方分権にすぐ取りかかるべきだ。行革法案では、国会関与の問題がほとんど論議されていない。国権の最高機関は国会であることを自覚して欲しい。
A(加藤参考人)
 行革では器が出来ただけだが、法で器を決めている日本では大きな変化だ。分権にかかわる企画・立案の問題は、結局財源を地方が握るかどうかにかかっているのではないか。
Q 国立試験研究機関や病院など、もともと独立性の高いものを独立行政法人化しただけではないか。特殊法人も含め、官民の仕切りを見直した上で独立行政法人化を検討するプロセスが重要ではないか。
A(五十嵐参考人)
 今でもエージェンシーは特殊法人、公益法人、3セクなど多数ある。全てを情報公開の対象にして、その上で全てを民営化する前提にたった見直しが国・地方とも必要だ。その際、独立行政法人はサンセット方式を取り入れ、要・不要の論議を繰り返すべきだ。
A(加藤参考人)
 独立行政法人も含め、情報公開と評価が重要な意味を持つ。特に市場に評価されない部門では外部評価を積極的に取り入れるべきだ。

石垣一夫議員(公明党)
Q 政治家のレベルをどう見ているか。
A(佐藤参考人)
 政治家のレベルは国民のレベルの反映。国民の主権者意識が低い。その面でも、一人一人の生き方が問われており、行政改革がその契機になる。
A(加藤参考人)
 個人は立派でも、全体では政治機構が機能していない。国会、内閣の機能を発揮すれば、官は後からついてくる。
Q 独立行政法人をどう考えるか。
A(佐藤参考人)
 十分、不十分はあろうが、まず独立行政法人化をやってみて評価することが良いのではないか。現実に実施しようとすれば、かなり厳しい。例えば大学で実施すれば革命的だ。独立行政法人はその評価を国民の目にさらすこと、運営の説明責任をおうことなどにより、行革の有力な方策と考える。
Q  評価の問題をどう考えるか。
 公務の評価は、企業とは異なるが、中間的な存在である独立行政法人はさらに難しい。業務内容と財務内容を公開して評価にさらすことは一歩を踏み出すものだ。
Q特別会計制度をどう考えるか。
A(加藤参考人)
 一概には言えないが、例えば道路特会では特定財源の別ポケットがあって、それが不要な使い方、事業の拡大につながっている。時限を切って見直すことは必要だ。
Q 25%削減をどう考えるか。
A(五十嵐参考人)
 大変な事だと思うが、一律削減ではなしに、どこにシフトさせるかが重要。早期退職の仕組み(民間への転職の仕組み)も必要だ。

松本善明議員(共産党)
Q 不採算医療とはどのようなものか
A(野村参考人)
 社会保険上の概念が一般的。結核法などにもとづく強制医療が典型だ。
Q 離島僻地医療は、独立行政法人化でどうなるか。
A(野村参考人)
 長崎、北海道などの離島僻地では、民間の医療機関は成り立たない。公的な責任発揮が求められる。
 長期療養の必要がある難病でも、現行の医療制度の現状は逆のながれであり、単独経営は成り立たない。公的医療機関の責任は大だ。
Q 肥大化している公共事業にメスをいれる行革になっていると考えるか。
A(五十嵐参考人)
 ムダか否かを誰が判断するかが重要で、国会が責任を持って評価する仕組みを検討すべきと主張している。国土交通省のような巨大省では組織維持の論理が働くことは必至。20世紀最大の禍根だ。
Q 行政に依存しているのは誰だと考えているか。例えば医療などは依存の中味なのか。
A(佐藤参考人)
 公共事業や規制による既得権保護は依存のさいたるものだ。自分で自立して生きることを前提に、困難な場合に自立をサポートする仕組みは必要。医療の領域は、サポートの部分が大きい。弱者切り捨てを考えているわけではない。
Q 医療・福祉の充実は国民的要求だが、その分野のスリム化は逆行ではないか。
A(佐藤参考人)
 医療は一つのシステムであり、弱者保護のシステムとして肥大化している面もある。どこまで自立をサポートするのか国会で明らかにして欲しい。
Q 独立行政法人化は、難病医療、長期研究、国立大学などを財源保障もなしに切り捨てるものではないのか。
A(佐藤参考人)
 独立行政法人は独立採算ではなく、必要な分野は国がサポートする。しかし、通則法の中では、大学はストレートに独立行政法人に乗れるものでもない。研究者は自分の研究は価値があるものと信じているが、それを国民にわかってもらうことがこれからは必要。理解が得られれば、充実するのは当然。それが社会の活力につながる。

深田肇議員(社民党)
Q 行政改革をどう評価しているか。
A(五十嵐参考人)
 市民参加のないゆがんだ議会制民主主義のもとで、国民の顔がみえる改革にはなっていない。法の量が多い割には中味は小さい。
A(野村参考人)
 アメリカでは、世界1医療研究や医療費に金をかけながら、乳児死亡率は24番目という低さにある。その逆で、日本は少ない医療費で最大の効果をあげている。国立病院への1400億円の繰り入れなどはささやかなものだ。もっと充実することが必要だ。
Q 公共事業コントロール法のポイントはどこにあるか。国土交通省ではできないのか。
A(五十嵐参考人)
 行革法案を前提にすれば、地方支分部局の権限を都道府県に回す、国会が公共投資基本計画を決議する、それで国土交通省の問題は解決の方向に向くのではないか。
Q 巨大省の問題をどのように考えているか。
A(佐藤参考人)
 成立している情報公開法は、使い方で行政コントロールの大きな力になることは確実だ。
 質疑終了後、(1)6月7日(月)に中央公聴会を開催する、(2)地方の実態調査に委員を派遣する、の2点を委員長が提案し、いずれも賛成多数で決定されました。
 この点もふまえ、5月31日以降の審議予定は次のように確認されている模様です。
 5/31 一般質疑(分権中心)
 6/1 一般質疑(省庁再編中心)
 6/2 一般質疑(分権中心)
 6/3 一般質疑(省庁再編中心)
 6/4 一般質疑(省庁再編中心)
 6/7 中央公聴会
 6/8 地方への委員派遣(地方公聴会か)
 このようなことから、政府・自民党は、6月9日にも締めくくり総括質疑をおこない、採決を強行する構えでいることが浮上してきています。それだけに、次週のたたかいをどれだけ強化するかが、採決を強行させないためにも重要になっています。
以 上

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