26日午後の行革特別委員会審議
--(国公労連「行革闘争ニュース」1999年5月26日付その3)
1999年5月26日 No.103


 26日午後の特別委員会の質疑の概要は以下のとおり

 伊藤忠治(民主党) 地方事務官制度の廃止はどう考えても理不尽。地方分権のはずなのに中央集権が強められる。住民からすれば自治体に行けばいろいろなサービスをうけられていたのにサービスダウンになる。住民サービスの立場に立った事務執行が重要であり、事務を国に引き取ることによって、サービスのなかみがカットされることがあってはならない。また、現に仕事にたずさわっている方々の希望にも添っていない。私のところに「自治体の職員になりたい」との署名が届いている。地方事務官の廃止で30〜40人の人が県庁からでなければならない。新たな施設が必要になる。地方事務官制度の廃止は取り下げるべきだ。
 これに対し、宮下厚生大臣は、「地方分権は、国と自治体がそれぞれの役割分担を明確にした上で、役割を明確にしていく。地方事務官については、現在でも身分は国家公務員であり、違っているのは都道府県知事の指揮監督下にあるということだが、これも実態は有名無実であり、いずれにしても中央集権化にはあたらない。住民サービスの低下が懸念されるとのことだが、これまで印紙で納付していたものを直接納付とするなど改善もしており、住民サービスが阻害されるものではない。たしかに県庁内に課はあるが、(行政改革で)統合して一つの機構としてやっていくことになっている」などと答弁しました。

伊林守(民主党) 地方分権は国民から見てわからない。(分権といっても)権限はわずかであり財源がふれられていない。法案は入り口の段階だが、改めて法案の意義が何処にあるのか答弁を求める。また、財源について見解を大蔵大臣に求める。国と地方との関係をタテの関係から対等協力の関係に、新しい関係を作っていくとのことだが、地方事務に対する是正措置、代執行が残ることは問題。このような自治事務に対する関与のあり方は分権に逆行している。
 これに対し、小渕首相、野田自治大臣から、それぞれ地方分権一括法案の提出趣旨の説明がありました。財源問題について宮沢大蔵大臣及び野田自治大臣は、国と地方の財政の悪さを強調し、「下手をすれば共倒れになりかねない状況であり、今の状況が変わらないとどうにもならない。税金の配分をどうするかを含めて今後検討する。また、国庫補助負担金を一般財源化していくことを検討する」などと答弁しました。また、地方事務に対する是正措置などについて野田自治大臣は、「基本的には自主的に是正されるべきだ。しかし、誤ったことが行われた場合、是正を求めることが必要であり、必要最小限に考えている。自治事務に対する代執行は考えていない。代執行は、地方自治法ではなく個別の法律の問題だ」などと答弁しました。

石垣一夫(公明・改革) 89機関の独立行政法人化をあげているが、これらの機関はどのような理由、分析評価で対象となったのか資料を公開し、明らかにすべきだ。職員はもちろんその家族、そして国民に対しても説明する義務がある。また、造幣、印刷が独法化対象になっているが、通貨の発行という重要な業務を行っているこれらの機関が対象とされることは理解できない。独立行政法人の長の任命について、原則「天下りを禁止」し公募を主体に考えるべき。独立行政法人の解散の規定を整備すべきだ。中期計画終了時において判断ができるように、民営化の決定基準、解散規定を整備する必要がある。特殊法人についても独立法人の「評価委員会」に準じて第三者による存・廃を決定する機関を設置すべきだ。
 これに対し、太田総務庁長官は、独立行政法人通則法案第1条及び2条の定義等を説明し、資料の公開については、「可能な限り資料は出す」と答弁しました。なお、資料の公開については、理事会で協議することとなりました。造幣、印刷の独法化について、宮沢大蔵大臣は、「関係者の懇談会を設置して検討をすすめてきた。両局とも長い伝統もあり、通貨の発行という重要な業務を行っていることはよく理解している。最終的には国家公務員であることは間違いない」などと答弁しました。独立行政法人の長の任命、解散規定の整備について太田総務庁長官は、「原則、天下り禁止というより、特別職であり実績が上がらなかった場合やめさせることが効果が上がると考える。解散規定については、個別法を作るときにつめたい」と答弁しました。

 続いて関連質問に立った桝屋敬悟議員(公明・改革)は、地方事務官制度に監視「現状維持」の観点から地方事務官廃止の理由やメリットについて質しました。政府側は「国民皆保険、皆年金は国の責任でやるべき」(宮下厚相)、「職業紹介と失業給付は一元的にやる必要がある」「国の責任を明確にすることが地方分権にも資する」(甘利労相)などと廃止の立場で答弁しました。
 松本善明議員(共産党)は、@国民が求める医療・福祉の充実に逆行する行革ではないか、A国立病院の独法化は国民に関心の高い医療分野の軽視にほかならない、B国立試験・研究機関の独法化は科学技術政策の発展からも問題、C巨大プロジェクト優先の公共事業の根本見直しの必要などについて追及するとともに、独立行政法人は「国が確実に実施すべき事務・事業」を3〜5年で再評価し廃止も勧告できるようにするというのは制度の矛盾だと政府側を追及しました。
 政府側は「国民の関心の高い福祉対策のためにも行政の在り方を変える必要がある」(小渕首相)、「病院の独法化は国が直接実施するものではないが、公共的観点からやるもので軽視ではない。国営が正常ではなく、民間病院、地方公共団体の病院など様々な形態がある。独立法人になれば経営内容の公開や業績評価もある」(太田総務庁長官)、「試験・研究機関への独立法人の導入で研究機関の多様化は進み、研究の自立性柔軟性、自由度が増し、研究者の能力重視や研究機能の発揮にもつながる」(有馬科学技術庁長官)、「苫小牧東やむつ小川原は思ったとおりにはなっていないが、地元の意向もあり何とか助けたいと思うが、望みのないものをいつまでもやるつもりはない」(宮沢蔵相)などと答弁しました。また、独立行政法人の廃止問題については、「現在の判断では実施すべき事務でも、世の中が変われば必要なくなる場合もある。評価の結果、使命を果たしていないとされたら、組織としては終わりにし、他の方法でやることもありうる」(太田総務庁長官)などと答弁しました。
 濱田健一議員(社民党)は、@今回の行革の目的・理念を明確にすること、A公務員の25%削減で行政サービス低下や職員の雇用不安、士気低下につながらないような配慮、B特殊法人へも透明化と業績評価を導入すべきではないか、などと質問。
 政府側は、「内閣制度創設以来の中央集権的で地方を上下関係にあるようにリードする仕組みは限界にきており、21省を12省庁に編成替えする時期に問題点を整理して備えたい」(小渕首相)、「改革の目的は国民主権の理念での政治主導への転換、国民からみて行政の姿を見やすくする、タテ割り是正とスリム化、政策目標達成のための効率的機動的な組織再編などがある」(太田総務庁長官)、「まず隗から始めよで、行政の中で25%スリム化を実現すること。これは純減ではないが、独法などで効率的な姿にしたい。行政サービスの停滞には十分留意する」(小渕首相)「国家公務員の世界は身分保障と労働基本権の制約があり、民間とはちがい途中で意に添わぬ解雇はないし、万全を期したい」(太田総務庁長官)「特殊法人見直しは平成9年以来やっており、切りのよいところで検討したい」


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